紫禁城

北京にある紫禁城の建物と清朝の歴代皇帝とをからめて叙述したもので、これを読んでから紫禁城(もとい、故宮博物院)に行けたなら、もっと面白く見ることが出来ただろうと思いました。しかし、私は紫禁城の写真集を持っているのでそれを見ながらこの本を読んで、約20年前に行った紫禁城の記憶を呼び出していろいろ空想しました。
http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/1/13/Forbidden_City1.JPG
当時は仕事で短期間北京にいたのですが、休日にしっかり紫禁城を見てきました。4時間はいたと思います。なぜ4時間もいたかといいますと、私はベルナルド・ベルトルッチ監督の映画「ラストエンペラー」(1987年)にはまっていたからからです。紫禁城はとてもとても広いので、映画でのそれぞれのシーンを探し回っていたのでした。おお、ここはこのシーンの・・・、おお、ここはあのシーンか・・・とか。特に養心殿が印象に残りました。(それにしても当時は反日とかいう雰囲気はなかったなあ・・・)


私はこのようにラストエンペラーに関連付けて、つまりラストエンペラーである宣統帝溥儀に関連付けて紫禁城のさまざまな建物を見ていたのですが、それ以前にも皇帝は何代もいたわけで、それぞれの皇帝と建物のかかわりをこの本で知るとまた別の視野が広がっていくように思えます。
この本を読んで分かったことのひとつは、私が映画ラストエンペラーや、溥儀の自伝

わが半生―「満州国」皇帝の自伝〈上〉 (ちくま文庫)

わが半生―「満州国」皇帝の自伝〈上〉 (ちくま文庫)

わが半生―「満州国」皇帝の自伝〈下〉 (ちくま文庫)

わが半生―「満州国」皇帝の自伝〈下〉 (ちくま文庫)

や溥儀の家庭教師だったレジナルド・ジョンストンの
完訳 紫禁城の黄昏(上) (祥伝社黄金文庫)

完訳 紫禁城の黄昏(上) (祥伝社黄金文庫)

完訳 紫禁城の黄昏(下) (祥伝社黄金文庫)

完訳 紫禁城の黄昏(下) (祥伝社黄金文庫)

で知った紫禁城の魑魅魍魎的な雰囲気は、清朝末期のものであって、それ以前はそれぞれの建物がちゃんとその目的のために役立っていたのだなあ、ということです。皇帝の世系が衰えて、逆に建物のほうが皇帝より強くなったのか・・・。その衰えと魔の増大に大きく加担したのが西太后だったのでは・・・。


紫禁城は明朝からあったのですが、この本は清朝しか扱っておりませんが、それはこの本の欠点ではありません。明朝まで扱っていたら視点がぼけてしまったでしょう。
http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/7/70/Forbiddencityviewpic18.jpg
目次
序章 視覚化される権威
第1章 清朝の登場 順治帝康熙帝
第2章 隆盛期へ 雍正帝乾隆帝
第3章 内廷と外廷の接点 嘉慶帝・道光帝
第4章 「女帝」誕生の道 咸豊帝・同治帝・光緒帝
第5章 後宮という名の秘境 西太后・東太后
第6章 豪華絢爛な私的空間 乾隆上帝・西太后
第7章 黄昏の紫禁城 宣統帝溥儀
終章  地上の天宮から人民の博物院へ