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Codex 40000 Redux建設予定現場

2004-12-25

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当初このブログでは翻訳版のコミックスはあんまり扱わないつもりでいた。ひねくれ者の自分としてはやはり海外のコミックスを重点的に扱っていきたいと思っていたからである。とはいえ今回紹介するアメリカン・スプレンダーには大きく心を動かされてしまったのである。

アメリカン・スプレンダー

主人公であり作者であるハービーはシケた日々を繰り返している。お世辞にも社会的地位が高いとは言えない仕事、孤独な週末、ただただ物思いにふける生活。普通の労働者と違うのは、彼は自分の日常をコミックにして出版していること。

つまらない日曜日を過ごして迎えた憂鬱な月曜の朝、起きたときは自分の人生にウンザリしてた割に、職場の同僚達と話しているうちに気分の晴れて来るハービー。

若い頃はファッションなんて馬鹿にしてたのに、古雑貨屋で買った流行遅れの靴に青春時代を思い出して、ついついその靴で歩き回るハービー。

売れっ子作家になったときの心配を振り捨て、街頭で買ったパンの香りにリアルな満足を感じるハービー。

社会に出て数年、一番恐ろしいのは、自分の生活はもしかしてずっとこのまま、働いて年をとっていくだけではないかという不安だ。このまま彼女も出来ない、出世もしない、結婚もせず、子供も出来ず、金持ちにもなれず、孫の顔を見る事も無しに、孤独な死に向かう日々が続くのではないか…。そんな事を考えている身には、ハービーの姿を見ていると明日に立ち向かう勇気と共感をもらえる気がする。

ハービーは労働者でありながらクリエイターだ。この立ち位置の居心地の悪さには既視感を覚える。自分に限らず、多くのオタクが自分の持つ文化的素養や趣味への指向性に反して、自分の趣味に特に関係の無い仕事につき、非オタクの人々に混じりながら仕事をしているはずだ。自分の中にある、周りの人々への軽蔑心がいかに浅はかなものであるか、ハービーが気づかされる場面に痛い思いをする読者も多いだろう。

もし、昔みたいに虚構に酔えない自分を見つけたら、口直しに苦いリアルを一つキメてみるのもいいかもしれない。オススメである。

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