ある書店にて

その書店では、客に、買った本にカバーをかけるかどうかを訊ねる。大抵の客は「かけてくれ」というが、すぐに読みたい、過剰包装がうっとうしい、というような人はそれを断る。
すると、今度は買った本をビニールや紙の手提げ袋に入れるかどうかを訊ねる。客が持ちやすいかどうかの利便性を考えて、ということももちろんあるが、手提げ袋といいカバーといい、要は「ちゃんと買って会計を済ませた商品か否か」ということを店側がはっきりさせたいためにやるわけである。つまり、買った本を裸で持ち歩いていたら、万引きと区別がつきにくくて困るのだ(コンビニのように、商品に直接シールを貼るわけにもいかないし)。
さて、その書店でレジに並んだ私の隣に、ちょっと清楚っぽくてメガネなんかかけちゃって理知的な感じの、OLとおぼしき美女が立っていた。レジコーナーは3ヶ所ほどあるので、私のすぐ隣で彼女は自分の買った商品の会計をしていたのである。
「うわぁ、なんかきれいな人だなぁ」とほんのちょっと見とれてしまったが、彼女は文庫本を数冊買っていたようだ。店員が、カバーをかけるかどうかを訊ねると、彼女は「いや、そのままでいいです」と答えた。続けて手提げ袋に入れるか、と訊ねると、彼女はちょっと考えてから「はい、お願いします」と言った。
それを受けた店員が、買った文庫本数冊に輪ゴムをかけてひとつにまとめ、袋に入れようとしたそのときだった。彼女は、本を輪ゴムでとめなくてもよい、ということを告げるため、こんな言葉を発した。
「あ、(輪)ゴムつけないで(袋に)入れちゃっていいですよ
もし私が店員の立場だったら、間違いなく確実にお客様のリクエストに答えるね、全力で。だってそれが客商売ってものだもの。そうじゃありませんこと? 




「え、いま会ったばかりなのにいいんですか?」とか言ってみたり。人気blogランキング