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Chikirinの日記 RSSフィード

2006-01-30 退屈な時間を楽しもう

なぜそんなに忙しい生活が嬉しいんだろう?

やたらと忙しい休日を過ごしている人を見ると、そんな疑問がでてきます。


「常に他の人と積極的に関わりをもち、アクティブに行動する」ということに、むやみにポジティブな価値を感じている人っていますよね。

「朝から運動して一汗ながし、午後から映画を見に行って、夕食は○○会で大いに飲み大いに笑って、夜はベストセラーに目を通して・・」という日曜日が、「昼頃に起きてラーメン食ってボーッとしてる間に暗くなり、夕方からテレビを見ながらビールを飲んでいたら、また眠くなって寝てしまった」という日曜日より、「充実した日曜日である」と感じる人は、みんな何かに洗脳されてます。


そもそも「充実した休日」って、言葉として矛盾してますよね。なぜ休日が「充実」している必要があるんでしょう?休日は“休む日”なんだから、一日ゴロゴロしていて疲れがとれたらそれで十分です。


平日も休日もですが、「予定が入っていることがいいことだ」という考えは、下品です。時間に追いまくられることが、あるべき姿だとは思ってでもいるのでしょうか。

旅行も同じです。あそこ行って、ここ行って、あれを見て、これを食べて・・・。「旅行は疲れる」という人はそういう旅行をしているのでしょう。せっかく個人で旅行しているのに、まるでパッケージ旅行のように何から何まで予定を立てて予約を入れて、時間に追いまくられて旅行する。

予定がないと不安になるから、事細かに予定を立てる一方で、予定通りに進まないことがでてくると焦ったり怒ったり、罪悪歓を感じたりする・・・。これではいったい何のために旅行しているのかわかりません。


仕事に関しては予定を立てて効率的に進めるのは当然でしょうが、実はちきりんは休日の予定を立てるのは大嫌いです。基本的に一日に複数の予定は絶対入れたくないと思っています。「土日にひとつずつ予定がある」のも鬱陶しいです。たまーに「ああ、この日は予定がある」くらいでいいです。


退屈すること、予定が入ってないことが怖くなると一種の現代病です。ちきりんは時間さえあれば3日くらいボーッとして、「何一つ有意義なことをしなかった3日間」を過ごすこともできます。時々少しだけ「私、こんなんでいいんだろうか?」と思う瞬間もありますが、そんな時は血中アルコール濃度をほんのちょっとあげれば「これでいいのだ」と思えます。


ニートをやたらと問題視する考えもどうかと思います。誰にも迷惑をかけていないなら、全く有意義なことをしない人生も選択肢として認められるべきでしょう。

「有意義に生きたい人」は、自分だけ有意義に生きてください。他人にそれを押しつける必要はありません。他の人に、「有意義に生きていない人は存在意義がない、社会的に無駄である」とか言うのはやめてください。

ニートの元々の意味は、「仕事も勉強も職業訓練もしていない状態」という意味ですが、その前提には「仕事と勉強と訓練にしか価値がない」という考えがあります。でもそれこそ問題でしょ。世界の全員がたった3つのことにしか価値を認めないなんて、ちょっと怖いです。


本日はちきりん休日。唯一の「何か」はこのブログを書いたことだけ。


それでいーのだ!!


また明日

2006-01-27 足りないのはどっち?

日経新聞の経済教室っていうコラムで、少し前にふたつの相反するような文章を読みました。

ひとつは、誰だったかノーベル賞受賞学者が書いた「日本は理科教育を復興させなければならない」的な意見。そしてもう一つは、「日本が今必要なのは、文系高等教育の充実だ」という意見でした。

これらを読んだ時、意見は全く反対ながら、どちらもおもしろいなと思ったのだけど、今日、ソニーが犬型ロボット、アイボ(ミス変換では「愛慕」!)の新規開発を停止したという記事を読んで、ふたつの論文について思い出しました。

「結局、足りないのはどっちなんだろう?」って。


★★★


よく、日本はロボット開発では世界の先端を言ってると聞きます。「日本には手塚治虫がいたから」と言う人もいる。幼い頃アトムに熱狂した人たちが、今、企業でロボット開発の最先端にいると。

ロボットを開発するというのは、企業に三つの余裕があることを示しています。

資金力、技術力、そして組織のゆとり、の三つ。


なぜなら、ロボットはまだ単独で儲かるビジネスじゃないからね。ホンダもトヨタもソニーも、金、技術、組織に余裕があるからロボット開発をやってきたわけです。


今回ソニーが愛慕(アイボです・・)の開発を止めるのは「んなことやってる場合ではない」という決断を象徴的に表すためでしょう。「人の首を切りたくないなら、儲からないビジネスは切るぞ」と。

初の米国人新CEOは、ソニーの日本的体質に阻まれ、思い切ったリストラができていない、と欧米経済誌から叩かれてきました。だから今回の決断はひとつの決意を表したものと言えます。

ロボットに特別な感情を持たない米国人的な視点からみれば、そして今流行のROEだったり時価総額だったりの数字を見れば、ソニーがアイボを作り続ける合理性は見つけられないのでしょう。

まあ、そうかもねって思います。


ちきりんは、ロボット開発って、技術に置ける茶道だとよく思っています。お茶は、着物・陶器・掛け軸(書)から着物まで、様々なことを理解しないと楽しめない総合芸術だと言われてるんだけど、ロボット開発もそういうところがあるなと。

視覚、味覚、聴覚、嗅覚、触感を代替するための様々なセンサー、細かい動作を実現する機械工学的な緻密さ、その駆動を超小型の機器で支える高度なエネルギー効率利用システム、そして人工知能を実現する高性能な半導体に、洗練されたプログラム、そして生物学的な人の脳の機能のリプリケーション。総ての技術がそこに凝縮しています。

だからソニーがそれを止めるってニュースは、かなり残念な感じに思います。


★★★


今回のソニー経営危機の最大の原因は、テレビでの主導権を失ったことでしょう。

テレビは家電はいろんな意味で、「家電の王様」で、ブラウン管テレビの世界では、ソニーは長らく世界のトップ企業でした。ソニーのトリニトロン技術が(何が凄いのか知りませんが)、ソニーを世界一にした。


でも、いろいろ見誤り、ソニーのテレビに「サムソン製」の液晶を搭載したあたりから、完全に間違えた。

消費者は「ソニー製品」という“ブランド”を買っていたのに、サムソンの液晶を搭載した液晶テレビでは、お話しにならないよね。


一方、シャープは液晶を日本の工場で作ると決めました。

日本の技術がすばらしいという理由ではなく、海外の工場で作ると技術流出が起こるからでしょう。あとは、「地元に大企業が欲しい」自治体が、めちゃくちゃな好条件を提示してくれたからかな。


とはいえ、日本で生産すればコスト競争力は失われる。だから「亀山工場製です」と命名して売り始めた。「工場のブランド化」ってやつですね。

たしかに今までも、アジアや中東に於いては、同じソニー製品でも「made in Japan」製品は「made in Taiwan」製品より何割も高く売られていました。

アジアや中東では「どこで生産されたか」までプレミアムの元になってたわけです。(洋服のダナキャランも当初、すべての高級品を中国で生産し、失敗しました。その後、高級服は made in Italyでなくてはならないと気が付いて方向転換しました)


これまでソニーブランドは、海外でも圧倒的にブランド価値が高かった。パナソニックやシャープとも一線を画すくらいにね。

そのブランドを、こんなに大事にしなくていーんだろうか。

アイボの開発停止でソニーが失うものは、最先端技術開発力なの? それとも、「利益は生まないが夢を生むタイプのロボットを創る会社」というイメージなの?


必要なのは、最先端技術を支える理系教育なのか? それとも経営を支える文系高等教育なのか?


とってもおもしろい小論文を読んだと思う。


おわりです。

2006-01-25 雑感〜出張の地より〜

東証の西室社長。前は東芝の社長だった方です。御年66才くらいかな。元気だね〜。しっかりされてますね〜。東証は相変わらず笑えるけど。(取引を個別銘柄で一日1時間に制限するって、何さ??証券取引所の体をなしてないです。)

この西室さん、ちきりん一度会ったことあります。といっても面識があるわけではなく、西室さんが出られていた会議に(テーブルではなく、事務方控え椅子みたいな場所に)座ってたことが一度あるんです。経団連の会議だったと思う。大きな楕円形のテーブルに、経団連の主要企業であるメーカーのトップと、反対側にはずらりと大手銀行のトップが座り、いろいろ話し合うような会議だった。

まあいろんな話が出ていて、大半は「儲かりまっか」「ぼちぼちでんな」的などーでもいい話だったのだが、最後の方で、西室さんが発言した内容をちきりんははっきり覚えている。というか、この会議で覚えているのは、この西室氏の発言だけだ。

当時、理系の学生が銀行に就職し始めていた時だった。所謂“文系就職”ってやつね。今まで理系学生を教授推薦の形で確実に確保していたメーカーは、人材採用に苦労していた。今でもだが、メーカーの給与と銀行の給与はものすごく格差があった。(今は銀行が下がったから、少しましになっているかも。)

西室氏の発言は「おかしいではないですか。あなた達の業界には競争がない。これが金利ですといって規制で守られた金利を要求する。その金利で、我々の倍の給与を払って、我々の競争力の源泉である優秀な理系の学生を横取りしていく。あなた達が高い給与を餌に学生をもっていけるのは、あなた達の仕事にそれだけの価値があるからなのか。」って。

これは、この手の会議では、相当の発言です。普通、こういう激しい言い方はしない。エライ人が、ある種公的な会議で。だから、ちきりんはこの発言をすごく印象深く覚えている。西室氏はすごく怒っていたと思う。それはビビッドに伝わった。とてもシンシアな発言だった。素直な正直な怒りだった。


ちきりんは二つのことを感じました。

「メーカーって、銀行に怒ってるんだ・・」

「西室さんてエライ人だ・・」


西室さんの口調からは、人材採用だけではなく、他の面でも根強い銀行への怒りがあることがよくわかった。

なんの公からの庇護も受けず、爪に火をともすようにコスト削減して国際競争に揉まれ、中国やらに追い上げられて給与もあげられず、そのあげくに学生から「かっこわるい安月給の仕事」と逃げられる。当時、大蔵省の護送船団の元で甘アマした仕事をして余剰利益をむさぼっていた銀行。

「なんかおかしいだろ?」という根本的な疑問が、そこにあったと思います。「なんか、おかしいんだ!」ちきりんが最初にそう感じたのは、あの発言からだったと思う。

そしてその「なんかおかしい」ことは、その後、金融ビッグバンとバブル崩壊によって顕在化する。でも、その「なんかおかしい」事へのクンクン感が、当時の西室氏をはじめメーカーの方には当時からビビッドに存在していたのだと思う。そう、「なんかおかしい」ことというのは、何らか臭っているものなのだ、と思う。


ああいう会議で、歯に衣着せぬものいいをする、ってのは大物だと思いました。もちろん他の出席者も名だたる大企業の経営者なんですけどね。毒にも薬にもならないことしか言わないトップとはひと味もふた味も違いました。民間から東証の社長になった時(昔は東証の社長というかトップは大蔵省事務次官の独占ポストだった。)、「ああ、この人が」と思いました。

活躍して欲しいです。でも一方で、こんな年の人が未だに意気軒昂では・・・若い人はニートにでもなるしかないか、って感じでしょうか。お年の方で元気な方多い・・・


ではまた明日。


とある古都のホテルにて

2006-01-22 多チャンネル化+大量保存

スカパー!とHDDレコーダーを導入(購入)したのは、1年くらい前かなあ。圧倒的によく映画を観るようになりました。それまでは、ケーブルテレビ+ビデオレコーダーという組み合わせだったんだけど、ビデオが壊れたのを機に今の組み合わせにしました。

これが、結構「画期的」なことだと、最近ようやく認識しました。

「大量保存できる」ということが、何を意味するのか、使ってみないとなかなかわからないものです。冷凍庫+電子レンジの組み合わせもそうでした。「便利になる」という程度ではなく、生活そのものを変えてしまうインパクトがありました。多チャンネル+大量保存可能レコーダーというのも同じ。便利になるというレベルではない。人の考え方を変えてしまえるくらい大きなインパクトがあると思います。

この組み合わせが日本の家での標準になれば、私たちの考え方も相当変わるんじゃないかな。もちろん保存する機械はHDDレコーダーでもパソコンでもよく、たぶん将来は、家庭用サーバー的なものになるんだと思いますけど。

★★★

数週間前に「月はどっちにでている」、昨日は「パッチギ」という映画を観ました。どちらも「小学校の総合学習の時間にでも全員に見せるべき」と思えるくらいよい映画でした。パッチギは数年前の映画、月は・・の方はかなり古いです。月・・の方は、なんどか観ていたけど、全部きちんと観たのは今回が初めてでした。んで、どちらも感動しちゃった。ほんといい映画だ。

社会にはいろんな問題があって、その解決って本当に難しい。よく「問題解決力」とか言いますが、算数とかテクニカルなものとか、ビジネスのちょっとした問題(マーケティングとか海外戦略どーすんの?とか)に比べて、社会的な問題を解決するのは本当に難しい。圧倒的に複雑。圧倒的にパラメーターも影響を受ける側面も多い。私たちはまだ確立された「社会問題の解決方法」というのを持っていない、と思います。

★★★

統合された「社会問題解決の方法論」は確立されていないと思うけど、でも、いくつか「ああ、これは有効かもね」と思う方法は、バラバラだけれど、あります。

その一つが、「芸術作品を使った方法」です。映画や小説、絵でもいい。ピカソのゲルニカも、オーソンウエールズの小説もそうですし、スピルバーグの映画や上のふたつの映画もそうです。押しつけがましくなく、見る人の想像力を利用して多面的に訴えかけることができる。映像のインパクトは特に大きい。大量伝達が可能というのも大きい。

その他にちきりんが「これは使えるでしょ」と思っているのは、統計学と議論の方法です。統計学は、もうひとがんばりが必要。意味のない数字の統計値を計算することしか教えないから全然皆関心を持たないし、一部の人の「数値操縦」に容易にひっかかってしまう。まだかなりリスクを含んでおり、かつ、未熟だと思う。社会問題の解決には。

それでも、数字のもつパワーというのは確かにあって、もう少し進歩すればパワフルなツールになると思う。たぶん問題は、「社会問題に関心を持っている」研究者の大半が文系的な人で、統計学が苦手、統計が得意な人の大半が理系で、社会問題に関心がなく、むしろサイエンスに関心がある、というのが、この分野「社会学の統計的分析」になかなか進歩がないことの背景だと思う。

★★★

議論の方法も、パワフルだと思うのだけど、これもあまり訓練を受ける機会がないよね。大学のクラブとかで英語のディベートをやっているところが、ある程度こういう訓練を提供している。だけど、別に英語でやる必要はないのだ。日本語での議論の方法を学校できちんと教えるべきだ(前にも書いたな〜)と思う。「事実に基づいて論理的に議論する」という方法は、すべての根底に位置する基本的なスキルだと思う。

★★★

で、話戻しますと、その方法論のひとつである「芸術を使ったアプローチ」ってのが、「多チャンネル+大量保存機器」によって大きく変わる、というのが、ちきりんの実感です。

この組み合わせがなければ、ちきりんは今回の二つの映画を観ることはなかったと思う。まず映画館なんて行き気にならないでしょう。時間とるし、混んでるし、高いし、そんな苦労して見に行っても「当たりはずれ」がある。合理的に考えてあんなシステムは、家庭に大画面テレビがない時代でないと持たない。(デート以外で映画館行く人って、本当少ないと思うよ。あれは、「デート」が目的で「映画」はおまけです。「映画」が主役で「それを観る機会がたまたま恋人とであった」というわけではない。)

★★★

地上波テレビでも映画やってますが、これも限界がある。大都市圏でもたかだか7,8チャンネルしかないでしょ。しかもCMに依存している。全国にほぼ一斉に同じモノを流さなくてはならない。これらの条件のために「万人受けする、問題視されない」ものばっかり流さなくてはならない。社会問題の議論のネタになるようなものは避けなければならないという宿命にある。


これが変わる。

★★★

(1)多チャンネル化によって、万人受けしない、議論を喚起するかもしれないものを大量に流すことができる。しかも、反対意見も賛成意見も両方流すだけの容量がある。多面的な見方を、全部、フィルター掛けずに流すことができる。選択肢が視聴者である個人に委ねられる。しかも視聴料を取るから、スポンサーを気にしなくていい。

(2)大量保存によって、「とりあえず保存しておいて、観たいときに観て、かつ、見始めてつまんなかったらすぐ削除できる」というようになった。ビデオだったら、「見たいモノを厳選して録画」していたと思う。HDDなら、とりあえず適当に録画して、暇な日に適当に見始める。おもしろくなければ15分でやめて削除する。んで他のを見始める。つまり「お試し視聴」が可能になった。

★★★

というわけで、昔に比べて圧倒的に「勉強できる」環境が整った、と思う。小さい頃からこういう環境であったなら、ちきりんの考え方も今とは違ったモノになったかもしれない。

★★★

そして、今後はもっとこれが変わってくると思う。

(1)の多チャンネル化の方は、視聴者が増えればどんどん料金が安くなり、多くの人にとって利用可能になる。それに、今の公職選挙法とかが改正されれば、政治家一人一人がチャンネルをもつこともできるだろう。(ブログのように、個々人でもいい。)

政府官庁もひとつづつ番組を持てばいい。防衛庁チャンネルは、日本の軍備や世界の情勢やらをずっと流していればよいし、国税庁は日本の財政状況、税金の内訳や使われ方の現場の様子をずっと流していればいい。右翼も左翼も自分のチャンネル持てばいい。情報はすべて利用可能で、個々人が考えることができるというのが理想的だ。

少子化とか年金とか、議論になりそうなトピックにしぼったチャンネルがあってもいい。道州制とかも、ちきりんは絶対必要!と思っているのだが、それが何を意味するのか、知っている人はとても少ない。限られた人だけで議論していても話は進まない。社会問題の大半は、その基本的な仕組みさえ学校が教えない。これを誰が教えるべきなのか、という議論さえない。ちょっと問題でしょう。

★★★

ブロードバンドがもっとぶっとくなれば、保存した映像を他の人に「これいいよ〜」とかいって送ることもできるようになるし、気になる画面に自分のコメントを保存することもできるようになるだろう。議論自体を映像にかぶせながらできるかもしれない。保存機器は家庭に一個でも、視聴端末は、家族一人一人が自分のニーズに合わせて、テレビとかPCとかモバイルとかで選んで使うことで、それぞれ「個人として」選択ができ、かつ、見やすくなると思う。

そのインパクトははかりしれない。


★★★


というわけで、久々にお休みだったので、ちょっと考えてみたりした。



んではね〜

2006-01-21 おとくなナイト

2018年現在、このプランは存在していません。類似プランについては各電力会社のウェブサイトをご覧ください。

みなさん、「おとくなナイト」って知ってます?

東京電力がやっている「夜型人間用・電気料金体系」です。いや、本当は夜型人間用ではなく、オール電化住宅で蓄熱機を使ってる人向けなんだけど。

ちきりん家は(オール電化ではないけど)この「おとくなナイト」で契約をしています。

これだと、朝の 7時〜夜 11時までの 16時間は、電気代が 3割増し。一方で、夜の 11時から朝の 7時までの 8時間はなんと! 7割引きです。

一日中同じ量の電気を使い続ければ、普通の料金体系と同じになる計算ですが、夜にたくさん使う人には、とてもお得だとわかりますよね。

夜なんてめいっぱい使っても、7割引きだとタダみたいなもんです。夜の間ずっと冷房を付けていても電気代は格安だってこと。

ちきりんはこれを申し込んでから、年間の電気代が半分になりました。我が家には昼間は誰も家にいないんで、高い時間の使用量が非常に少ないからです。


ただ、もちろん工夫もしています。大量の電気を使うことは、できる限り夜の 11時以降に集中させます。

お風呂は 11時までに入りますが、お風呂の乾燥機能は 11時になってからオン。

同時に洗濯機を回し始め、洗濯が終われば乾燥機にうつして寝ている間に乾かします。夜なら乾燥機も全くコストがかかりません。


昼間から家にいる休日で夏の暑い日は、昼間は涼しいところに出かけます。用がなくてもデパートに行ったり。

照明も 11時までは電気をこまめに消すけど、夜は超適当。家中明るくしてます。ちきりん家は夜輝く!


もうひとつこの料金体系がすばらしいのは、お得なナイトでは 60アンペアまで基本料金が同じだということ。だから当然皆が 60Aに変更します。

これだと容量はたっぷりなので、いろいろ一緒に使ってもブレーカーが落ちることはまずありません。これも非常に便利なところです。


まあ、電気代が安くなったのはいいけど、時々虚しくなったりもしますけどね。 11時の時報と共に、あちこちのスイッチ入れてる時とか、「なんなの」って思います。かなり貧乏くさい。

でも、1.3と 0.3は 4倍以上違う。だから毎日 11時前になると、数分ごとに時計を見ているちきりんです。「 11時? 11時? 後1分? 暖房つけて良い??」って。

ああ・・・貧乏くさい・・


とはいえ、昼間に家にいない人には超お得な料金体系です。年間数万円の経費が浮いたちきりんなのでした。


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ではでは〜


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あと35分で11時。洗濯しなくちゃ!

2006-01-17 ES細胞論文捏造事件

韓国の黄教授によるES細胞論文の捏造。

大事件ではあるけれど、博士論文の数字の捏造自体は、何処の国でも、どこの大学でも、さらに、自然科学にかかわらず社会科学系でも存在するはずです。

日本でも自然科学系での捏造発覚は今までにも例があるし、古墳に自分で土器を埋めて自分で発掘した人もいましたよね。こういうことがあると、研究者という職業全体のモラルが問われてしまいます。


韓国は「自然科学系のノーベル賞を取る!」のが、国をあげての悲願です。韓国のノーベル賞は、金正日氏と握手した金大中大統領の「平和賞」のみで、物理学、化学、医学・生物・生命科学、の自然科学3分野では、まだ受賞がありません。


余談でちょっとノーベル賞について。ノーベル賞には、自然科学の3分野の他、経済学賞、文学賞と平和賞があります。経済学賞は、アメリカのために創成されたような賞です。平和賞は、かなり政治的です。

文学賞は、当たり前ですが英語で書く(か訳される)ことがないと受賞できません。実は、欧米系(アルファベット系)言語以外で、ノーベル文学賞を取っているのは日本だけです。

日本は、アルファベット系の国以外で唯一の先進国なので、欧米の文学者が関心を持ち、本を訳す人がいます。イラク文学に関心を持っている欧米文学者がほとんどいない状態では、イラク人作家は賞はとれないです。



ノーベル財団は、国別の受賞者数を発表していません。そういう競い方をしてほしくないのでしょう。でもデータは手に入ります。国別の受賞者というのは、かなり実質と離れた数字になります。なぜかというと、

・アメリカは圧倒的に受賞者が多いけど、移民や亡命者もたくさんいます。「ノーベル賞がとれるほどの科学者をアメリカ国民として迎え入れる」というのが、米国の移民戦略だからです。なお、この戦略の目的はノーベル賞を増やすことではなく、国防上の理由です。

・オーストリア、スイス、北欧などの、欧州の避難国(=内戦や民族迫害があったときに、研究者が逃げやすい国)もノーベル賞が多くなります。

・「民族別集計ではユダヤ人が一番多いのだ!」と、イスラエルはたびたび「非公式に」主張しています。

・また、旧ソビエトや中国など共産圏は、当時(今も?)画期的な発見があっても、国防上の理由から論文の国際発表を敢えてしない、という戦略をとっていました。だから受賞数が少ないです。


それをふまえた上で、敢えて国別の受賞者数をあげてみると、自然科学3賞の受賞者がいるのは、世界で29ヵ国です。

北米2ヵ国(アメリカ・カナダ)、欧州18ヵ国、南米1ヵ国(アルゼンチン)、アジア4ヵ国(日本、中国、インド、パキスタン)、アフリカ2ヵ国(エジプト、南アフリカ)、中東1ヵ国(イスラエル)とソビエトです。

アメリカは全体の 43%を一国で占めており、次のイギリス、ドイツ、フランスを加えた4ヵ国で受賞数の 76%を占めています。残りの 25%をその他の 25ヵ国で分け合っていて、自然科学 3賞の受賞数ランクでは、日本は世界で 11位で、アジアトップです。ちなみに、9人です。

1949 湯川秀樹 物理学

1965 朝永振一郎 物理学

(1968 川端康成 文学)

1973 江崎玲於奈 物理学

(1974 佐藤栄作 平和)

1981 福井謙一 化学

1987 利根川進 医学生理学

(1994 大江健三郎 文学)

2000 白川英樹 化学

2001 野依良治 化学

2002 小柴昌俊 物理学

2002 田中耕一 化学


★★★


話もどします。韓国にとって、ノーベル賞の自然科学での受賞は、名実共に先進国入りし、科学技術立国であることを世界に示すための「国の悲願」です。


韓国の報道やドラマを見ていると、悲しいくらいに「日本への対抗意識」を感じます。

10年くらい前に、地震で韓国の橋が崩落しました。その時の報道・・「この橋は、我が民族が25年前に造った橋である。日本が植民地支配している時、すなわち70年前に建造した橋は、今回の地震でも崩落していないどころか、びくともしていない。これは何を意味するのか?」みたいな論調でした。

ドラマにでてくる「トレンディドラマ脚本家」は、監督から「日本で流行ってるドラマがあるんだ。そのビデオ見て、新作書いてみてよ」と言われ、「日本のドラマや映画のコピーばかりを書くことを求めないで!視聴率がそんなに大事なの!」と愛国心を発揮します。

最近の新聞の経済記事なんて・・・「トヨタ自動車の幹部が、北米市場での重要なライバルがヒュンダイ自動車であると発言!」ですよ。

トヨタ自動車にライバルと言ってもらえた!と、記事になるのです。きっと高度成長前の日本の新聞でも、「GMがトヨタの動向を注目してると発言!」みたいなことが記事になっていたのでしょう。


今回、最初に黄教授の疑惑(捏造ではなく、不適切な卵子提供について)を報道したマスコミは、「国益をなんと考えている!」という国民の批判を浴びました。日本も「プチナショナリズム」流行りだけれど、ここまで「国を守らなければ!」という感じはないですよね。

だから韓国にとって、サッカーW杯でのアジアトップの成績、韓国ドラマの日本や中国市場の席巻は、ものすごく重要なことであるのです。


そんな中で、黄教授の事件が起こりました。

多くの国民ががっかりしているでしょう。これで黄教授のノーベル賞受賞はありえませんが、韓国の研究者の論文が、今後色眼鏡で見られてしまうことは必至です。道はさらに遠くなったのです。

日本なんて、小柴教授はともかく、田中耕一さんなんて、「だーれも知らない人」でした。

一方の黄教授は、(まだ受賞前なのに!)教科書に顔写真が出て、大韓航空が「ファーストクラス無料乗り放題」を提供していました。そんな扱いは、日本の科学者で受けたことがある人はいないでしょう。彼への期待は、それほど高かったのです。


「とにかく必死だった」中で、事件は起きました。いや(正確には)、発覚しました。


大変でごじゃいます。


ではまた明日

2006-01-13 中高年を守り、ちきりんは泣く

総合旅行代理店(いわゆる大手の旅行代理店)の行く末が、真っ暗という話は昨日書きました。まとめると、

売上側=人口が減ることは確定で、旅行需要は既に頭打ちしており、海外勢を含めた競争激化で単価とマージンが落ち、ヘビーユーザーが代理店より旅の手配について詳しくなってしまっている、という状況の中で、売上が向上する可能性がほぼない。

コスト側=70年代以降に採用した大量の中高年社員と、駅前の高家賃立地に構えた支店が整理できない一方で、若手とネットを使った競合とのコスト競争力の格差は広がるばかり。(支店の整理は、支店長というポストの整理とイコールです。)

という状況下において、業界2位企業までは既に死んでしまった業界。一位のJTBが崩壊するのには、それでもまだ10年以上かかる。これは、旅館がチェーン化していないが故、サプライヤーとJTBの力関係の差がまだ大きく、仕入れコストの圧倒的な安さのため、という話でした。

★★★

(短く書けるなら、短く書けよ、という神の声が・・・)

★★★

さて、こんなことは、ちきりんが解説するまでもなく、当事者が一番よくわかっています。だから、いろいろ手を打っています。彼らは何をやっているか?

まずは採用を最低限まで絞ります。特に正社員ね。新卒採用は一定数続けても、退職者の補充は、バイト、契約、派遣などで補います。そして、中国語のできる日本人ではなく、日本語のできる中国人を雇います。人件費が半分ですむし、定年まで勤めるとは思えないからです。

下請けは、とことん叩きます。前に書きましたが、「添乗員」という商売は、家庭を持つ男性が食べていける給与を払ってもらえないために、大半が親の家に住んでいる女性か、(国内旅行では)奥様バイトです。正社員の給与を払えないのです。なお、添乗員の大半は個人事業者であり、旅行会社社員ではありません。

★★★

奥田さんが言っている「日本経営の神髄である雇用維持が正しかった」という「日本経営の神話」を守るため、大量に余っている中高年社員の雇用を守らなければならないのです。(実際には子会社に出して、ほーんのちょっとだけ給与の上がり方を抑制しています。)

リストラすると経営者は「経営責任をとって退職」しなければならないのが日本です。「自分が引責辞任をしたくない経営者は、リストラをやり渋る」という流れになります。

ちなみに欧米では、リストラをやると経営者の給与はたいていあがります。企業価値を改善したからです。だから経営者はやたらとリストラをやります。どっちがいいとか言う問題ではありません。

★★★

もうひとつ問題があります。これらの中高年社員は、「数が多すぎる」だけでなく「使えない」のです。

旅行業務は、この20年で、中身的にも大きく変わりました。70年代以降に大量採用されたJTBの社員の仕事は、全国津々浦々の旅館を回って、JTBを通して部屋を売るように営業をかけることでした。全国津々浦々の学校を回って修学旅行の、全国津々浦々の農協や郵便局やを回って団体旅行の注文をとることも重要な仕事でした。もちろん企業の社内旅行の営業もです。

学校の校長や教頭、農協の総務部長、旅館のだんなを接待し、よい関係を築くことが仕事、とも言えます。想像してみてください。具体的にどんな仕事か。営業をかける方も掛けられる方も、いずれも男性。そういう時代です。

★★★

ところが、今、旅行代理店で求められるのは、全然違うスキルに変わりつつあります。高度にIT化されたシステムを数年ごとに更新する飛行機会社や鉄道会社に対応しなければなりません。農協や社員旅行はどんどん減りつつあります。代わりにビジネスに忙しい企業が「接待なんかどーでもいいから、メールで旅行手配の受付を24時間やってくれ」と言ってきます。JRの切符は、JR分割により、超複雑化しました。おじさんには全くわからない割引制度がたくさんあります。


学校の修学旅行の行き先は、昔は、

「伊勢の旅館組合がJTB社員を接待→JTB社員が校長と教頭を接待」することにより、「去年も今年も来年も伊勢旅行」だったのです。でも今は、子供を集めるために「修学旅行はディズニーランド・上海・沖縄」と、ユーザーの意見を重視せざるを得なくなってきました。(それがいいかどうかは、よくわかりませんが)。そうなると、各旅行先の長所短所をまとめた資料を“パワーポイント”で作り、“プレゼンテーション”することが求められます。営業おじさんに、です。

旅慣れた個人客からの質問にだって、なかなか答えられません。自分が旅行したことがあるわけではないのです。自分より旅慣れた人がお客様になってしまっているのです。



そんな中で、支店長を含め、出世して重要なポジションに就いているのは、皆「その昔、一番たくさん農協に団体旅行を売った!」実績を誇るおじさんです。



どーすんの?

です。

★★★

しかたないので、今求められる仕事をする人は、賃金の安い人・形で雇わなければなりません。正社員ではない形で。時には日本人でさえありません。その人たちに、全面的に仕事が丸投げされます。教育も、会社に対する一定のコミットメントも育成されないうちに。

そして・・・前線で無責任なオペレーションが行われます。ミスが頻出します。客が怒ります。



そーです、営業おじさんの出番です!!!


なーんの仕事もしてないようなおじさんが、まさに俺の出番とばかり、菓子折持って謝りにきます。そしていいます。「頑張ります。努力します。誠意を持って!」




えーかげんにせーよ、です。


さようなら

2006-01-12 腹いせ(逆ギレ?)

「学生の就職人気ランキング(文系)一位は今年もJTB」とかいう調査結果が毎年出てきます。びっくりです。だって旅行業界っていうのは、基本的に「終わってる」業界です。既に業界2位の近畿ツーリストは潰れそうな状況です。数年前から日本旅行と統合だの、JR西日本に買ってもらうだの、統合中止だの、迷走しています。

業界トップのJTBでも、20年前のカネボウと同じ状況です。「だいたい20年後くらいに潰れるんじゃないの」と思われてます。もちろん、20年前にカネボウが潰れると思わなかった人もたくさんいるように、今、JTBが20年後に潰れると思わない人もいます。まあ、未来のことはわかりません。でも、業界常識的に言って、未来のある業界ではありません。


だって旅行業界っていうのは、「手配が必要な旅行費用総額×マージン」が収入です。これを分解してみましょう。


(1)マージン

ネットの旅行者がでてくれば、どんどん下がっていくでしょう。問題はコスト構造からの“下げ余地”です。

大手の旅行代理店は、70〜90年の20年間に相当数の社員を採用しました。70年にジャンボ機が導入され85年のプラザ合意(による円高)で、海外旅行者が急増し、それに対応した大量採用です。「これからは海外旅行の時代!」と思ったのです。

この時期に採用された新人は、今36才〜57才。年功序列で管理職適齢期、給与が高く、終身雇用で首にできない大量の社員です。辞めた後も企業年金を支払わねばなりません。この人たちを養うための「マージン」を稼がなくては、彼らはやっていけません。

同じ商売をHISという会社が始めました。社員の大半は20代。正社員でなくバイトや契約社員も多数います。ネットを利用して効率良く仕事をします。当然、大手旅行代理店より圧倒的に安いマージンで旅行手配をすることが可能です。

そしてネットが出てきました。楽天トラベルなどなどです。HISよりも安いコストで旅行の仲介が可能です。さらに言えば、ホテルや飛行機会社が自社のHPで商品を売り始めます。この場合、代理店マージンはゼロです。アメリカでは既にこういった方法が主流になりつつあります。


もうひとつ。個人旅行が増えて、団体旅行が減っています。「社員旅行」が無くなっちゃった会社多いでしょう。昔は「町内会の旅行」だの「農協の旅行」だのもたくさんありました。

団体旅行は、個人旅行より儲かります。飛行機を手配する手間は一人分でも40人分でも同じです。でも売上は40倍。圧倒的に効率がいいのです。飛行機会社も40人分なら「より安く」飛行機のチケットを売ってくれます。だから利益率もいい。

だけど、これも将来また団体旅行が増えると思っている人は日本にはいないでしょう。というわけで、旅行代理店の収入であるマージンが、これから上昇することは「ありえません」。



(2)手配旅行の総額は?

一時期8兆円を超えていた取扱総額は、昨年6兆円を切っています。だいたい毎年5%、この額が下がっているのです。毎年5%ずつ市場が縮小するビジネスに未来はありません。なんで旅行取扱額が下がっているのか?旅行をする人は増えているようにも思えますよね。


A)まずは、単価が下がっています。大きいのは海外との競争です。沖縄に行くよりハワイの方が安い、金沢に行くより韓国に行く方が安いような状況です。海外との競争が始まると、格安航空券を売りまくる海外航空会社、海外ホテルにひっぱられ、日本の旅館も航空会社も単価を高くできなくなっています。

B)旅行者の数も、平均宿泊日数も、過去5年以上、海外・国内旅行とも、横ばい〜減少傾向です。全く増えてません。しかも、これから日本の人口は減ります。

C)旅行が大好きというヘビーユーザーは、旅行会社をどんどん使わなくなっています。自分でネットを見て手配してしまいます。しかも、あちこちの価格を比較して、格安のところを使います。

ちきりんは、昨年アテネに行った時、ロンドン〜アテネ間の飛行機を、英語の旅行サイトで購入しました。電子チケットです。今までは、こういう「発着地の両方が自分の国ではない」という飛行機チケットを自分で手配する方法はありませんでした。今は英語さえできれば簡単です。

キューバ旅行もネット上でのみ営業している海外の旅行会社で手配しました。日本の会社の半額に近い値段でした。ちきりんは、未だにこの会社がメキシコにあるのか、キューバにあるのか、スペインにあるのかさえ知りません。(どこかスペイン語圏にあるようには思えますが。)

ちきりんのように「やたらと旅行している」人から、JTBなどは一円も稼ぐことができません。

★★★

それでも今まだJTBが残れているのは、「手配コストが他より安い」ことにつきます。同じ旅行を企画しても、その仕入れ代金が圧倒的に安いのです。

地方の旅館が個人には1万円で売っている部屋を、JTBは時に3000円くらいで押さえることができます。なぜなら「JTBは大量に予約を入れてくれるから」です。旅館にとっては「泣く子も黙るJTB様」であり、そのシェアの高さが仕入れコストの安さに直結しています。

この傾向はずっと続くのでしょうか?

大半の旅館は、個別経営だから、自分でサイトを作って、そこからお客さんを呼んで・・というのは難しいです。旅館の人が皆ネットに詳しいわけではありません。それにそんなサイト作っても誰もきません。一年を通して部屋を埋めるためには、JTBが組んでくれるパック旅行の販売力が不可欠なのです。団体旅行の多い頃には特にこれらの旅行代理店の販売力はすさまじいものがありました。


でも、同じような立場だった地方の小売店は、昔はスーパーや百貨店が「仕入れて売ってくれる」ということがない限り、「ご近所」にしかモノが売れなかったのに、楽天がでてきて大きく変わりました。

HPの作り方、ネットでのアピールの仕方なども楽天が丁寧に教えてくれます。そして今までは“神様”だったスーパーやデパートという販売仲介者が自社商品を売ってくれなくても、商品が良ければ全国に直接売ることができるようになったのです。


で?

一昨年、旅の窓口という会社を買収し、楽天トラベルが誕生しました。

まだまだ、旅館はJTBが怖くて楽天に(および、似たようなネット旅行社に)完全には協力できないです。有形無形の圧力があります。「あっそう、おたくは楽天さんを通してお部屋を埋めたいわけね」とJTBに言われて震え上がらない地方旅館はないでしょう。でもね、そんなの時間の問題だと思いません?


お先真っ暗の旅行会社が頼るのが、海外からの旅行客の増加です。しかし、海外からの旅行客が増えても、彼らは既存の旅行会社を使うでしょうか??

海外から手配しようと思えば、ネットが一番便利です。JTBが70年代以降に大量採用したおじさまがたは、ネットや英語がお得意かしら?

海外からの客は2種類に分かれます。欧米から来る人と、中国・韓国から来る人です。欧米から日本なんかにやってくるのは「相当の変わり者」です。あちこち旅行したあげくにアジアや日本に来ています。バスであちこち連れ回される団体旅行が好きな人ではありません。

中国・韓国の人は、一時期の日本人みたいな、JTBが得意とする団体旅行をするでしょう。でも、そういう旅行の手配なら「中国や韓国の旅行会社」の方が、日本の旅行会社より圧倒的に有利でしょう。

旅行するのは日本人ではないのです。そして彼らの中で日本語を流暢に話せる人は、JTBで中国語や韓国語が話せる人より圧倒的に多い。人件費も圧倒的に安い。事務所の家賃も半額以下です。


もう一つの「日本で唯一残された有望市場」は定年退職者の海外旅行です。でも、これもせいぜい5年です。団塊世代が終わったら日本は人口が減るんです。来年からの3年間が団塊世代の定年ピークですが・・・彼らをクルーズにという市場はワンショット市場であって、継続的な市場成長の要因にはならないでしょう。

人口問題は追い打ちとして深刻な問題です。人口が減るだけでなく、JTBなどが得意としていた「中流家庭」は、より早いスピードで少なくなるからです。ニート、無年金者など、海外旅行なんて全くいかない層と、ネットで英語で自ら手配をする旅慣れた旅行者層が増えます。

「新婚旅行と定年後の旅行しか海外にいかない中流のボリュームゾーン」を主要顧客にしていた代理店には厳しい環境です。

というわけで、「大手旅行代理店」なんてのは、今から10年〜15年かけて、ゆっくり消滅していく、破綻していく会社です。今23才でこんなところに就職したら、40才くらいの時に失業するかもです。


ではでは

2006-01-09 移住者のお仕事ヒエラルキー

アメリカに来ると、どこの国の人がどんな職業についているか、というのが、かなり偏っているなあ、と思います。

もちろん、いわゆる「大学でて就職」というなら、(一応)民族的ルーツにかかわらず、学歴とか能力によって分布する“はず”で、そうではなくて、ここでは、「アメリカで通用するアカデミック、プロフェッショナルなクレジットを全く持たずに、アメリカに移住してきた人」の職業分布です。←ううむ、カタカナ多いな。

ええっと「米国社会で通用する学歴、職歴、資格を全く持たずに、米国に移住してきた人」ですね。

★★★

(1)タクシードライバー(NYなど大都市ね)

アジア人っていないですね。南米の人もあまり会わない。多いのは、ロシア系、その周辺の国、東欧の小国、中東系などの人が多いと思います。英語ネイティブの人なんて、まず会わない。


(2)ホテルの掃除

一番多いのが、南米だと思います。次が中国人。英語ネイティブの人も、地方にいくと増えます。


(3)洗濯屋

独占?っていうくらい韓国語の人が多いです。


(4)デリ、タバコ屋

韓国の人が多いですね。あと中国系もあります。ネイティブではアフリカン・アメリカンの方になります。


(5)アパートの大家、レストラン経営者

この辺でようやく日本語の人、登場です。もちろん、規模が大きくなれば、移住者系でない人の仕事です。このあたりからがボーダーなんだと思う。アメリカ市民として教育された人の職業と。


★★★

いずれも、まともなリサーチを経ていない(not fact base)、超ちきりん個人経験値的なお話です。念のため。

★★★

さて、(1)〜(5)の発展段階説。


(1)は、常用雇用ではないんですよね。NYのイエローキャブ。歩合です。一日幾らでイエローキャブを借りる。んで、その日の料金は、その賃料を除いてすべて収入です。やっぱり雇用されるってのは、それなりに壁が高いんだと思う。だからまずはここからスタート。


(2)は、一応、常用雇用です。ホテルに雇われています。ちきりんが定宿にしているNYのあるホテルは、ホテル自体のオーナーがコロコロ替わるんですが、そのたびに、掃除の方の言葉が“スペイン語”→“中国語”→“スペイン語”とか変わって非常におもしろい。たぶん、支配人も替わり、House keeping managerも替わり、一気に雇われる人も替わるんだと思う。


(3)これは、一応、不動産の賃貸をすることが必要です。もしくは、洗濯屋の設備全体を借りて、運営しているのかもしれない。雇用されるということより、壁が高いです。それなりの信用を築いてないと貸してもらえないから。

誰かが言っていたのは、「韓国人の洗濯屋がすごい洗濯がうまいので、他の民族がやってる洗濯屋が生き残れないのだ」と言っていた。本当かどうか不明。でも、異常に比率高いと思います、アンニョンハセヨの洗濯屋さん。やっぱ、基本的に細かい仕事の得意なのは、日本人と韓国人で、んで、日本人は洗濯屋をやらないから、こうなってるってことかなと思ってます。


(4)これも不動産の賃貸か、デリの中でイチコーナーを借り上げることが必要。これはねえ、韓国人は(日本人、中国人と違って)、中華も韓国料理も、日本料理もカバーする、ってのが大きい気がする。日本人がデリやると、なぜか日本料理ばっかやる。中国人もキムチ食べないあるよ、と。(ほんとかい??)

韓国人はカバレッジを広くやるので流行るのよね。そのうち寿司も餃子も韓国料理だ、みたいな感じになるのではないかしら。彼らのこだわりのなさが効いているのかもしれない。


(5)このあたりになると、かなりの「上流階級 of 移住者」です。不動産を保有する人もいるし、借りるにしても、かなり大きなスペースを借りる。それなりの貯蓄がないとできないビジネスです。あと、アジア料理の中で、日本料理だけが「ブランド・プレミアム」がついているんですよね。寿司、神戸ビーフ、Japanese cuisineは、フレンチと対抗する高級料理なんで、中華料理、韓国料理とは一線を画すのに成功してます。「日本は高い国である」というアメリカ人のパーセプション(=思いこみ)を逆手にとったマーケティングですね。



というわけで、不動産が借りられないうちは、歩合系の仕事をするしかないんだと思う。タクシードライバーの他に、前に書いた「露店」もあります。あれもタクシーと同じ仕組みの商売です。商材一切を一日幾らで借りて、セントラルパークの前に一日たってて、売れた分の利益だけを持ち帰れる。最近、アジアの顔の人も出てきました。

他にも一部、工場で働く人もいます。これは(2)のバリエーション。一応、雇用されてる。ホテルの清掃と同様、社会保険とかはカバーされてないと思いますが。

★★★

話変わりますが、日本でも夜になると商店街とか繁華街で、アクセサリーなどの露店を出している人がいますが、あれも同じ仕組みです。日本であれをやっている人は、大半が「ちょこちょこお小遣いを稼ぎながら、世界放浪」をしているバックパッカー達です。移住者ではないです。(日本では移住者は別の職業ですね・・)

アクセサリー露店やってる人は、国籍的には(これも、ちきりん経験的に)、イスラエルの人と北欧(スウェーデン等々)の人で7割とかじゃないかしら。フランス人だのイギリス人だのは余りいないと思うな。北欧とイスラエルの人はやたらと世界旅行が好きなのよね。しかも、日本みたいな辺境なところまでやってくる。

★★★

なんでか?


(1)北欧の人たち・・・基本的に北欧ってのは、つまんない国なんです。なんたって、お日様さえ出ないんだもんな、まともに。フィヨルドとかオーロラとか、若者が毎日見ててもしゃーない。

産業もなければエンターテイメントもない。すごい高額の税金をかけて高福祉国。元気な人、若い人に極めてつまらない国、一方で、困っている人、シニアな方に極めて住みやすい国、なんです。だから、「元気な」若者の多くが放浪か留学、他国で働くという選択肢を選びます。

多くは、欧州内の旅行をしているのだけど、一部はアジアまでやってきたりするのです。アジアの混沌としたエネルギーの興奮に引かれるんだと思う。自分の国のエネルギーレベルの低さと比べて。ちきりんは「混沌好き」なんで、北欧にいって、アジアに行くと「あ〜アジアに生まれてよかった!」と思います。


(2)イスラエルの方々・・・この国はねえ・・・すごい抑圧されてるわけです。女性も含め全員に兵役があり、基本的に「常時、緊張状態」にあります。そして極めて民族主義的な思想を持たざるを得ない。あの国は、すべての家に「地下・核シェルターがある」んです。

そういう生活の抑圧感から逃れるように、若者は「兵役後」で「結婚&ちゃんとした就職前」に、数年の旅に出る。あそこで一生ってのは、考えられない。だけど、あの土地に住むこと自体が国民の義務である。(パレスチナとの領土問題に勝つためには、陣地の椅子取り合戦が必要で、「あそこに住む」ってのがイスラエル国民の大事な責務。)んで、せめて人生の一時期だけでも、広い世界を見たい!ということになるんだと思う。

★★★

ちきりんが一番最初に、民族と職業の問題に気が付いたのは、十代の終わりにイギリスやヨーロッパを放浪した時です。イギリスでファーストフードばっかり食べていて気が付いた。「なんで白人がいないの?」って。そして、フランスでゴミ収集車を見て驚いた。「誰もフランス人に見えないよ」って。

「すべての職業を日本人がやっている国、ニッポン」っていうのが、普通ではなく特殊なのだと知ったのでありました。


おもしろいと思うのは、上に書いた(1)〜(5)のヒエラルキーが、それぞれの人の「元の国」の経済力格差を反映しているということです。アメリカは世界中から移住者がやってくるから、こういう「レイヤー」が見える。ヨーロッパだと、ドイツはトルコ人とか、偏っているから、ここまで違いが鮮明にならない。

★★★

アメリカのホテルに泊まっていて「こんにちは」という掃除の人がいない理由はいくつかあって、

A)今はもう日本から「経済的な理由で」移住者としてアメリカにわたるという人がいない。

B)日本で受けた教育がそのままアメリカで通用する。

C)日本語が話せる、ということ自体が、売れるスキルとして認められる。

D)日本のカルチャー自体が、プレミアムカルチャーとして認識されている。

などがあると思います。



だから、タクシードライバーになる必要がない。寿司職人とか空手の先生とか、うまく行けば日本語教えるとか、日系企業や日本と取引したい企業に雇ってもらえる。

こうやって、元の国の経済力→移住者の経済力、という影響力が働いているように思います。


ということでした。

ではでは

2006-01-06 フラッシング・メドー

現在、アメリカ出張中。

店員が「アンニョンハセヨー」と言っている店で"UDON"(うどん)を食べた。味は推して知るべし。

なんだけど、店員が「いらっしゃいませ!」って言う店で同じモン食べると値段が3倍。だから、たいてい「ニーハオ」か「アンニョンハセヨ」のお店で食べる。

ブロッコリーを入れるのは許す。一応葱も入っていたし。

レタスと人参を入れるのも許す。お揚げは、単なる味無し油揚げだったけど、それも許す。

だけど・・・おつゆにキムチソース入れるのはやめてくれ!!と言いたかった。最初にわかってたら言ったのに・・・

次回は気を付けよう。人間は成長するのだ。


★★★


NYのラガーディア空港の近くに、通称フラッシング・メドーと呼ばれるエリアがある。メドーってのは草原だから、「光る草原」。なんか詩的な感じの呼び方。

以前は住宅地でも商業地でもなく、草原がそこにあった、というような場所。日の光を受けて、草が光ってたのかな。何もない場所だったのでしょう。


その草原地帯に、昔は日本人が住み着いた。NYの中心街から1時間弱。草原ってくらいだから開発もされていない土地。アメリカで日本の製品を売りたい!とやってきた、様々な企業の戦士達。

1ドル360円の時代。日本で貰っている給料が倍にして支払われていても、アメリカで裕福に暮らすには全く足りない。

黒人が白人と一緒にご飯を食べることが周囲の目をしかめさせていた時代に、タオルとトランジスタを売りに来たfar Eastの国の小さなアジア人たちが、不思議な言葉で騒がしく会話する。

下手くそな英語で、何を言われてもニコニコしながら、何度も頭をさげていく。この奇妙な人たちの中に SONY や HONDA の人もいたのだ。


その後、お金持ちになった日本人はこのエリアから出て行く。

もっと治安がよく、設備が整ったエリアに移り住んでいく。その後を埋めるように、韓国のビジネスマン達がここに住み始める。そして今は、完全なチャイナタウンになっている。


ここで「ニーハオ」で食べるUDONは、なかなか美味。

2月の旧正月には、獅子舞が街を練り歩く。

寂れたビル。壊れかけた家。走っているのはほこりだらけの超中古車ばかり。誰もここで人生を終えたいとは思っていない。夢のフラッシング・メドー。


★★★


ちきりんは行ったことないけど、中南米系の人ばかりが集まるエリアもある。ロシア系の人ばかりが集まるエリアもある。

成功してお金持ちになった人は、そのエリアから出て行く。日本人街みたいに、民族全員でいなくなっちゃう場合もあるけど、それは希。

だって、チャイナタウンからいくら成功者が出て行っても、新たに入ってくる中国人は尽きないから。


そういうエリアが、大都市の周辺に点在していて、そこではすべてが元の国のまま。食べ物、話される言葉、祝われるお祭り。そして、元の国の貧しさも同時にそのまま持ち込まれる。

ここで生まれる子供達もたくさんいる。国の制度によるけど、日本人のように「帰る国がある」場合は、せいぜい二重国籍で、一定の年齢になるといずれかの国籍をチョイスできる。

だけど、帰る国を持たない人もたくさんいる。彼らの子供は、アメリカ市民として生き始める。親の国がそのままに再現された町並みの中で。


★★★


規模は小さいけど、東京にもそういう街はある。

日系ブラジル人が集まる街は近郊の工場街に。大久保あたりには、韓国人街やフィリピンエリア。

「韓流」などと言われ、ヨン様グッズを買いに日本人のおばさまが押しかける前は、それは、日本人にとって近しい場所ではなかった。

日本の高度成長を象徴する新宿高層ビル街から、歩いていけるような距離にあったとしても。


中国メインランドからの留学生が怪しげな日本語学校に行くために訪日し、最初に住み始めるエリアがこのあたり。

昔は早稲田や東大に通う貧乏学生が下宿していたと思われるアパートだ。大半がせいぜい2階建て、全体で10部屋くらいの木造。

築50年がスタンダードのこれらのアパートには、庭に誰かが拾ってきた樹脂製の壊れたバスタブが置いてあり、庭用の水道蛇口からホースで水をひいて、住人達がシャワー代わりに使っている。

一部屋に一人というのは贅沢な方かもしれない。時には数人が、不特定多数の住人達が、一部屋を共有する。

家賃は2万円程度。それでも一人で払うには高すぎる。そういう人たちが住んでいる。今の話ですよ、昔じゃなくてね。


夜から明け方になると、フィリピン女性達が次々と戻ってくる。

朝になると、入れ替わりに昼間の仕事をする労働者や学生が部屋を出て行く。

時々酔っぱらいが迷い込み、立ちんぼのお姉さんに声をかけられる。


疲れた顔に長時間の化粧をのせ、安っぽいケバイ洋服に千鳥足。仲間から買った偽造国際電話のプリペイドカードで、真夜中に懐かしい祖国の家族に電話する。

自分が送る幾ばくかのお金に、生活の総てを頼っている家族の声が聞こえる。公衆電話ボックスで泣いている女性、男性。


★★★


小泉改革なんて何の関係もない。彼らの大半は選挙権を持たない。

それどころか、適法な在住許可さえ「有り難い」。日本人は年金破綻を心配するが、彼らの多くは病気になっても病院にいくための健康保険証を手に入れられない。

★★★


豊かな国アメリカにやってきた人たちは、フラッシング・メドーの生活に戸惑いが隠せない。

豊かな国ニッポンにやってきた人たちは、トラックが通るたびに振動するアパートで驚愕する。これが日本なのか、と。

豊かな国とは、豊かな人が住む国であり、誰もがそこにゆけば豊かになれる国ではない。

★★★

ホテルに戻る。部屋の掃除に来る人たちは、誰もネイティブの英語を話さない。多い言語は、オラ!(スペイン語)かニーハオ!だ。

国際空港を降りた後に乗るイエローキャブの運転手達に至っては、国の名前を聞いても場所が浮かばないことも多い。


朝早く着くと、観光客が集まるメインストリートに路上店を組み立てている多くの人たちが見える。

アジア人の顔もある。リヤカーに山ほどの商品と簡易組み立て式の陳列棚を載せている。

極めて秩序だって、もくもくと、機材をおろし、歩道の上に店を作っていく。最初にアルミの台をたてて、布をかぶせて、商品を並べる。


大都市の摩天楼を撮影した写真、大金持ちのスターたちがほほえむ似顔絵、どこかの国で作られた大げさなロゴ入りのTシャツ、一目でわかるブランドコピーの鞄や手袋。炭酸飲料とサンドイッチやごま付きプレッツェル。

気温2度。皆言葉も交わさず、もくもくと自分の「店」を組み立てる。


商品は借り物だ。一日幾らで機材と商品一式を借り受ける。売れた商品の利益分だけが彼らの一日の稼ぎだ。

彼らが店を並べる道の向こうには、一泊6万円からの高級ホテルと、武装したガードマンが入り口に構えるブランド品の路面店。二極化というのは、こういうこと。


★★★


ロシアの近くのなんとかっていう国から来たのだ、というタクシードライバーが言う。

「中国人はチップを払わないからキライだ」と。

そうね。中国人はまだ知らない人も多いのだろう。日本人だって、添乗員が口をすっぱくして「今日は枕の下に1ドル置いてください!!」などと言い始める前は、どんな時に、どうやって、どれくらいチップを払うべきなのか、知らなかっただろう。

「日本人は気前がいいから好きだ」とドライバーは言う。そうではない。気前の問題ではないのだよ。


ドライバーがタバコに火をつける。タクシーの中だ。客が私ではなくアメリカ人で、かつ、ご機嫌がちょっと悪ければ、彼は2日ほど豚箱に入った後、職をなくすだろう。

知らないということは、そういうことだ。



「アンニョンハセヨ」と言われたら、「No kimchi, please.」と言えばいい。

ホテルの部屋に掃除に来る人が、「こんにちは」と言わない。それは、とても幸せな国に生まれたということだ。


また明日。


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