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Chikirinの日記 RSSフィード

2007-11-29 30年に一度、富はアラブへ!

ものすごいおもしろいことになっています。



(1)NYセントラルパークのすぐ隣、時代に翻弄されるひとつの超高級ホテルがあります。その名をEssex House。

山崎豊子の沈まぬ太陽を読まれた方。JALが日本のバブル時期、このホテルを買収しました。投資として大損をだしたばかりか、購入価格に上乗せする形で巨額の裏資金が捻出され、政界工作に使われました。歴代のJALを私物化した大物経営者による業務上横領の隠れ蓑としても使われたと噂されています。

日本のバブルがはじけ、経営が行き詰まったJALはこのホテルを手放し、米国人の手に戻っていたのですが、昨年からこのホテルは、

「ジャメイラ・エセックス・ハウス」

になりました。ジャメイラはアラブ首長国連邦の財閥ですかね。



(2)ボストンで一番高級と言われていたリッツカールトン。このホテル、今年から

「タージホテル」

という名前になりました。インド系の大財閥のホテルになった、ということです。



(3)サブプライム問題でゆれる米国を代表する金融コングロマリット、シティグループ。

サブプライムの損失で揺らいだ経営基盤を強化するため、アブダビ投資庁が一兆円近い資金を資本投入に投入することになりました。

アブダビという国の政府が、アメリカの銀行の5%もの株を持つ主要株主(持ち主)になるんです。

「おやおや、アメリカの銀行さん、大変そうですね。じゃあまあ、いっちょ、助けてあげましょう!」ってわけです。



何が起こっているかって?



サブプライムのバブルがはじけ、あぶく銭が世界中で何百兆円も(もっと?)泡と消えてなくなりました。

その一方、石油価格はいつしか5倍以上の100ドルにもなり、中東辺りであぶく銭が何百兆円も(もっと?)生まれました。新たな泡が生まれたのです。


サブプライムの泡が消えて欧米にあいた大きな損失を、オイルマネーが埋めているわけです。とあるバブルの損失を、別のバブルの利益が埋めているという構造ですね。

そして、米国を初めとする西側諸国の一流ホテル、一流企業、一流ブランドの名前が、いつのまにか皆、アラブっぽく、インドっぽく、ロシアっぽい名前に・・・



そのうち、みずほ・アビラビ・フィナンシャルグループとかになったりする日も来ますかね。


でも彼ら、日本では余り会社は買わないです。競馬馬とかは買ってるみたいですけど。



西側諸国は、必死で、必死で、必死で働いて、目を覆うような惨状の格差にも“必要悪”と目をつぶり、3人に一人が精神科医のカウンセリングをうけながら働いて(アメリカ)、家庭も自分の人生も犠牲にして働いて(日本)、

やっとこさためた富を、


30年に一回くらい、ごっそりアラブに寄付をする。って感じですね。



前回は1974年〜79年くらいに一度大きな寄付をしました。今回は、2007年だから約30年周期です。


汗水垂らして、精神のバランスが崩れるまで働いて、働いて、働いて、30年に一回はアラブの石油王にお金を送りましょう!



エネルギーを持つものは、かくも強いのだというお話

アメリカがアラブにやたらと爆弾落とすのは、この構造への報復だよね。



じゃね!

2007-11-28 ちきりんの食卓

日曜日

カレーです。ご飯もカレーも以前に作っていたモノをチンしただけなんで、本日の調理準備時間は約10分。今日は日曜日ですが仕事だったんで、帰宅後すぐに用意できるものに。

ちきりんはカレーには卵派。ほんとはラッキョウも好きだが、ないので仕方ない。福神漬けは嫌い。

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ちなみにこのカレー、豚汁と中身が同じです。豚汁を作る時、大量に野菜と豚肉を煮込み、ミソを入れる前に材料の半分を他の鍋にとりわけます。で、ひとつの鍋にカレールー(市販)、もうひとつの鍋の方には味噌を入れて、両方同時に作っちゃいます。で冷凍する。

というわけで、ジャガイモは入ってません。レンコンやゴボウ、こんにゃくは結構カレーにも合います。その他、にんじん、タマネギ、あともちろん豚肉が入ってます。

★★★

月曜日

チキンのカレー風味エスニックソテーです。昨日のカレーが少し残ったので、それをまぶして鶏肉を炒めてみました。ナンプラーを入れてちょっとエスニックな味付けにしてみた。左のスープは、その3日前の蟹鍋の野菜が残ってたので、こちらもナンプラーやネギ油でちょっとエスニックな感じに。

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ご飯はチンですが、スープとチキンは調理したので30分くらいかかった。でも一番時間かかったのは鶏肉を切るという作業かも。包丁が切れ味悪すぎ。

美味しかったけど、カレーが残り物で量が少なく、ご飯に掛けて食べるにはちょっと足りなかったかも。

みかんは、こーゆーのアメリカに無いのよね。このミカン、日本の冬の象徴ですよね。すごくなつかしいです。

★★★

火曜日

帰宅前に駅前のスーパーに寄りました。夜中の1時まで開いててとても便利。お刺身は10時以降だととにかく安い。出張すると食べられないのでね。たっぷり買ってみた。あと、赤いお皿に載っている和風惣菜もできあいのものを買って盛りつけただけ。

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奧にあるのは豚汁。これは以前に作って冷凍していたものをチンしただけ。中身は一昨日のカレーと同じだが、味はもちろん違います。自分で作っておいて言うのもなんだが、すごくおいしい!!

★★★

水曜日

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残りモンばっかり・・・

左上が納豆。これは出張前に食べとかないと。その下が豚汁の残り。白菜のおつけモノ、ご飯、ハムにマヨネーズ、コップに入ってるのは韓国焼酎、その上はシラス(ちりめんんじゃこ?)、真ん中上は、昨日赤いお皿に入っていた惣菜の残りです。このお皿は最近お気に入り。

調理(準備)時間15分くらい?料理したモノは何もないです。


いろいろ食べたけど、組み合わせ的にはイマイチでしたね。納豆が癖が強すぎて他のおかずが何食べても「納豆味」なんだよな。やっぱこれは朝ご飯のおかずだな〜と確認。

シラスは美味しいよねえ。大好きです。簡単だし。(つーか、盛りつけてるだけ)

★★★

本日

美味しかったけど写真で見るとわけわかんないですね。名前は・・“白菜と合い挽き肉の中華煮”って感じかな。まあ適当な料理です。白菜、しいたけ、ほうれん草、合い挽き肉(下味付けました)を鍋に放り込んで、中華スープで煮るだけ。金華ハムエキスをちょっと入れてみた。あとちょこっと“とろみ”もつけてみた。調理時間約30分。

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まあ、「家にあった材料で、八宝菜諷の味付け」ってことかね。

以上

★★★

ここまで全部見てみて思ったのは・・・ちきりんって白いご飯よく食べてるよね!ってこと。農協から褒めてもらえそうだ。(実際にはちょっとだけ雑穀入り)

あと、器がきれいだと買ってきたり、盛りつけただだけのお惣菜も、そこそこに見えるでしょ?ってこと。

あとは・・・まあまあのバランスかなあ。生野菜は全然ないですね。使い切らないとダメになるから。根菜類だと余っても調理して冷凍できますからね。ちきりんにとって「生野菜食べる」というのはある種の贅沢でもあります。

そんじゃまた!

2007-11-27 パキスタンの憂鬱

最近、世界で今一番おもしろいのはパキスタンだと思う。めちゃんこおもしろい。

ちきりんはムシャラフさん、けっこう好きです。スーツ来て丸の内にいたら、普通のサラリーマンみたいじゃない?

彼の「現実主義的なところ」が好きなんだよね。原理原則や理想ではなくて、現実に即してものを考える。そういうリーダーだと思います。

だからこそ、これから彼がどうでるのか、とても興味深い。


ご存じのとおり、ムシャラフ政権は「軍事独裁政権」です。ビルマ(ミャンマー)と同じですね。ミャンマーと違うのは、親米政権であるということです。だから誰もそれを「軍事独裁政権」とは呼びません。

ちなみに、サウジアラビアは王家独裁・米軍傀儡政権だし、イスラエルは軍事国家ですが、いずれも親米国なので、そうは呼ばれません。軍事国家、独裁国家と呼ばれるのはミャンマーや北朝鮮など、反米の国だけです。


ちなみにムシャラフおじさんは、スーツと軍服を使い分けてメディアに露出します。「武力による政権の後ろ盾がある」と示す必要がある時は迷彩模様の軍服を着てるし、西側諸国に協力する親米国家であることをアピールしたい時はスーツでカメラの前に現れます。

このあたりの見え見えなワザが、ちきりんが「現実主義的リーダー」としてのムシャラフおじさんが好きなところです。


軍事政権ではありますが、国全体は全く掌握できていません。この「自国全土が掌握できていない」ということが、ムシャラフさんのまたラッキーなところです。

だって、全国掌握できてたら、パキスタン国内に潜伏しているビンラディンを捜してきてアメリカに差し出さなくてはなりません。そんなことしたら、すぐにムシャラフさんは過激派テロに暗殺されてしまいます。困ったことです。


そもそも親米国家とはいえ、そんなの「かっこだけ」です。ムシャラフさんももちろん心の中では親米でもなんでもないでしょう。親米な振りをしているだけです。

だから、まじでビンラディンの首なんて差し出すことはできません。そのためには、「意思はあるんだけど、差し出せない」という言い訳が必要です。

で、彼は言います。「全国を掌握できてないんですよ、私の政権は。いやあ、お恥ずかしい。」「だからビンラディンも見つけられなくて・・・申し訳ないっすね」ってな感じで、アメリカに言い訳してます。

パキスタンの全土を掌握する気なんて、彼には全くないです。そんなことしたら大変すぎ。

★★★


パキスタンはインドと仲が悪いです。犬猿の仲です。そもそもインドから独立した国ですから、インドに勝つこと(=インドから実質的・政治的独立を勝ち取ること)がパキスタンの存在目的である、と言ってもいいくらいです。

インドは非同盟中立という外交方針のある国です。ちなみに、現代において「非同盟」とは、「親米ではない」という意味です。


中国はインドと仲が悪いです。これは、どちらも「オレ様が一番」だと思っているからです。

ロシアは比較的インドと仲がいいです。アメリカの同盟国にならないインドに感謝しているし、中国を嫌いという共通点もあるからね。そうなると、ロシアとパキスタンは仲良くはありません。 ここでもパキスタン=親米傾向、というインセンティブがかかります。


パキスタンは山岳地帯に過激なイスラム教徒達を庇護する多くの部族長を抱えてるわけですが、このあたりは「軍事準備エリア」です。

ローカルテロ部隊を支援するソビエトKGBもこのあたりで暗躍しています。この「山深き軍事準備エリア」を中央の政権が「実効支配できてない」ということが、非常に重要です。 パキスタンが国際社会において、「政治的に生き残るために」

★★★


パキスタンは、ずうっと核が欲しかった。とにかく核が必要。なぜか。天敵のインドが核を持っているからです。こっちも核を持たないと話になりません。

しかし、大国インドならともかく、パキスタンのような国が核を持とうとしたら何が起こるか。自明です。アメリカが怒ります。イラク、北朝鮮、イラン。アメリカはこれらの国が核を持とうとすると、ものすごい感情的に反応します。

アメリカは「小国で親米じゃない国が核を持つことは許さん!」という主義だからね。


でも、インドへの対抗上、パキスタンはなんとしても核が欲しかった。で、カーン博士という天才さんに、北朝鮮と取引させ、なんとか裏で核を持とうとした。

しかし、それも米国に暴かれて挫折しかけ・・・あああ、どうしよう、やばい!!と思っていたところに、天からプレゼントが落ちてきた。

911と、その首謀者であるビンラディンのパキスタン潜伏です。


お〜!!!ありがたい。千載一遇のチャンスとはこのことだ!!!

とムシャラフおじさんは思いました。


「ビンラディンはパキスタン国内に隠れてるんだと思うんだよね。もちろん私が責任をもってテロを摘発するから安心してくださいね。

うちはほら、知ってるでしょ?、うちは親米国家だから。あっそうそう、親米国家なんだから、ついでにこの前作った核兵器も見逃してね」とブッシュさんに提案した。


で、成功

ブッシュ政権はこの案に合意し、パキスタンが核を持つことを“責めない”ことにした。



これは画期的でした。すごいよね。よくこんなこと許すよねって感じ。


でも、ぜんぜんビンラディンは見つからない。ようやくブッシュ氏も気がついた。「騙されただよ。ムシャラフのヤローに」

ムシャラフおじさんも、困惑した表情を作って答える。「あの山岳地帯は全く実効支配できてなくて・・・」「でも大丈夫。我が国軍は、断固たる態度で!」

「ついては、インドと向かい合ってるカシミール地方に、ミサイル配備するのも一応見逃してください」と。「インドの首相に“今回だけは黙って見逃してやれ”って一本電話入れといてくださいね」と。

★★★


アメリカが「ムシャラフに完全にだまされたぜ」と気がついたのが1年くらい前だと思う。

で、アメリカは作戦を変えました。ビンラディンは捕まえられなくても「イスラム過激派の神学校」は潰せるはずだろ?と。

それもできないなんて、ムシャラフ、おまえ一体どーゆーことよ?と。

「むむっ、あほなアメリカもさすがに気がついたか。まずいな。仕方ない、神学校をひとつだけ潰すか」ということで、昨年の10月にシンボリックな神学校をひとつ空爆、その後、地上でも国軍を送って大破させた。

これはムシャラフおじさんにとっても大きな賭けだった。親米の振りをするのは問題ない。しかし、本気で親米したりしたら、本気でテロをとりしまったりしたら、イスラム過激派が自分を放っておかない。いつ暗殺されてもおかしくない。

だ・か・ら・

今日の会見は軍服でやってた。


★★★

そして1年。ムシャラフさんは「神学校まで潰したんだから、もう大丈夫だろ」「アメリカも、イラクやアフガンに忙しいし、そもそもブッシュもあと一年だし」と思っていた。

しかし、ムシャラフおじさんは読み間違えていた。

「神学校ひとつでアメリカは満足だろう」と思ってた。けど実は全部で1万5千個もある神学校。ひとつくらい潰して意味あるのか?という目でアメリカは見てた。

そして、米国内で「ムシャラフ許せん」派が声を大きくしつつあった。



「あいつは親米の振りして、核兵器を保有したかっただけだ」

「ビンラディンを捕まえる気なんて全然ないぞ」

「神学校だって、うちがひつこくひつこく言ってようやくひとつ潰しただけだ。他の神学校も潰せよ、馬鹿モン!!」

「カシミールとかどーでもいいんだよ、ばっきゃろー」

「だいたい軍事独裁政権のくせにデカい顔をしてられるのは誰のおかげだと思ってんだ」

「だいたい核保有の国なのに責められないのは、誰のおかげだと思ってんだ?」

「しかも、これ以上やったらイスラム革命の可能性だって? 天下のアメリカ様を脅迫するつもりか??」


というわけで、できあがったのが「ムシャラフ追い出し作戦」 developed by CIA。


★★★

ステップ1: 反政府勢力としてブット女子を帰国させよ

ステップ2: 反政府勢力としてシャリフ元首相を帰国させよ

ステップ3: ブット女子とシャリフ氏に、「そもそも意見の違う二人であるが、ここは協力して動く」ことを条件に資金援助と警護を供給せよ

ステップ4: xxxxxxxx (伏せ字)


どーする、どーする、ムシャラフ氏!

現実路線リーダーの命運や如何に!!!!

終わり


じゃね。

2007-11-26 オーストラリアの不安

この前、注目している国として3つほど名前を挙げましたが、そのうちのひとつ。オーストラリアについて書きます。先日選挙が終わったばかりで、11年間首相の座にいたハワード首相が敗北。ラッド氏率いる労働党に政権を渡しました。

ちなみにハワード氏自身も落選。しかも人気キャスターに負けたんだって。次の選挙で、安倍元首相が田原総一郎に負けるような感じかな。オーストラリア人も極端ですね。

★★★

ちきりんはもともとオーストラリアには余り関心がありませんでした。行ったこともないし、行きたいとも思わない。多分一生行かないでしょう。あの国には、ちきりんの好きな古代遺跡も、ラテンのリズムも、圧倒的な美術コレクションも存在しません。カンガルーとかコアラとか、意味不明な巨大な台地??には興味ないんで。

そんなちきりんがオーストラリアを一番最初に意識したのは、カリフォルニアに留学中。当時やたらと「パックリム」という言葉を聞いたからです。これはパシフィックリム諸国を縮めたもので、日本語直訳だと「環太平洋諸国」ということ。

概念としては、“昔は世界は「環大西洋諸国」で成り立っていた”わけですね。イギリス、スペイン、ポルトガルに、アメリカの東側であるボストン。こういうところが大西洋を取り囲む国、都市なわけです。その昔、世界を支配していたのは「環大西洋諸国」なんです。

これに反発を強めたのが数十年前のカリフォルニアです。シリコンバレーという言葉が出始める頃です。ボストン、NYに対抗するために、アジアとの連携を強めようとするカリフォルニアは、「世界の中心は、環大西洋から環太平洋に移るのだ」というメッセージをこめて、この言葉を使い始めました。

なお、現在この言葉があまり使われない理由は、「既にカリフォルニアは、それだけで十分に求心力のある地域となり、別にアジアと一緒に売り出さなくてもいいから」ということです。

★★★

さて、このカリフォルニアが既存勢力(環大西洋勢力)への対抗軸として打ち出したパックリムという概念。環大西洋に較べるとかなり無理のある概念でもありました。なんたって大西洋より広いじゃん。(というか、大西洋の方は、アフリカとか南の方をカウントしない概念なんで。)

カリフォルニアから時計回りに、ペルー、チリ、ニュージーランドやオーストラリア、インドネシアに日本に朝鮮と韓国に中国にロシアシベリア地区、までを含みます。

ところがペルーやチリはこの概念に余り乗り気ではありません。当時南米は、南米一帯としてのアイデンティティを求めており、ロシアシベリア地区と一緒にされてもね〜って感じです。一般の南米の人達は朝鮮と韓国の違いどころか、日本と中国の違いも分かってないってレベルです。

ロシアシベリア地区も、まあ、地区であって国ではないし、インドネシアもそんな遠いとこと一緒になるよりは“東南アジア志向”が強い。

で、勢い「パックリム」とは、“カリフォルニアと日中韓のアジア、との蜜月を示す概念”として使われるようになるわけです。というか、そういうふうに使われていた。

で、当時はサンフランシスコ等でも頻繁にパックリムの将来とか、パックリムの経済提携とか、いろんなことが話し合われてました。カリフォルニアにはアジアからの移民が多く、実際、多くのカリフォルニア生まれのアメリカ人が「NYよりアジアの方が身近」と感じているように見えました。NYには行ったこと無いけどアジアは何度も訪れている、という人も多くいた。

★★★

ちきりんもこの「パックリム」という概念に興味を持っていたわけですが、当時不思議だったのが、この手の会議にやたらとオーストラリアが出てくる、ということだったのです。上記にも書いたように「パックリム」とは言いつつも、実際は、カリフォルニアとアジア(特に日中韓)のための概念。それなのになんでオーストラリアがこんなに積極的に出てくるの??こんなことに興味持つの??と、かなり不思議だった。

そして途中でわかったのが「オーストラリアの焦り」なわけです。

欧州の経済統合、南米全体の一体化、東アジアの結束・・・当時世界は、どんどんブロック化を始めていました。独立独歩でやっていけるのは、アメリカや日本、中国などの極めて経済規模、もしくは人口規模の大きな国だけで、それ以外の国は「どこかのグループに参加しないとやっていけない」という空気があったのです。

まあ飛行機会社のワンワールドとスターアライアンスみたいなもんです。

普通に考えれば、オーストラリアはニュージーランドやその回りのミクロネシア、ポリネシアの太平洋島国の多くと一緒に「南の島国連合」とかを作ればいいのですが、オーストラリアからしてみれば「それだけは勘弁してくれ」ということになります。

経済発展著しいアジア、人口爆発著しい南米、元々先進国の多い欧州に較べ、あまりに不利じゃん!!こんなとこで結束してもたいした力持てないじゃん!!飯の種がないじゃん!!

ということです。

で、カリフォルニアが提唱し始めた「パックリム概念」に飛びついた。「すげ〜、これ最高!!」と思ったでしょう。「オレも入れてくれ〜!!!」です。カリフォルニアもアジアも、ミクロネシアの島国に較べて余りに魅力的。

で、彼らはパックリムという概念に超積極的に投資を始めたわけなのでした。

★★★

長いな・・・今日のブログ。。。まだ書くこと山ほどあるのに・・・

★★★

「変な国だな」ちきりんはそう思っていました。英語を母国語としているだけですごい有利だし、資源も有るし国土も広い、気候もいい。なんでそんなに焦って「仲間に入れてくれ!!」と必死の形相なのか?全然理解できなかったのです。これがちきりんがオーストラリアに関心をもった唯一の機会であり、実はそれ以来オーストラリアのことなんてほとんど意識もしていませんでした。

ところが今回の選挙です。これは意外でした。最近のオーストラリアは、“資源と食糧”という世界が求めるふたつのリソースをふんだんに持つ国として経済もすごく調子いい。イケイケどんどんのはず。なのに、その経済黄金期を支えた首相が負ける。個人でも選挙に落ちる。えっ?って思いました。

そして「なんで?」とニュースを見ているうちに、ちきりんはまた、あの「オーストラリアの焦り」を感じたのです。いや“思い出した!”と言ってもいい。あの時と同じなのです。パックリムの会議に出てきて「俺たちも入れてくれよ。俺たちも仲間だよ、忘れないで!!無視しないで!!」と懇願するオーストラリアの必死さ。それと合い通じるモノを、今回の選挙戦を見ていてちきりんは感じたのでありました。

★★★

ハワード氏の保守党と、ラッド氏の労働党。大きな違いは何か?

ハワード氏は、超“アメリカ追随”です。べったり、です。マレーシアのマハティール元首相はイスラム国のトップとして、アメリカ完全追随の“イスラム=テロ”的視点を持つハワード氏に反発し、「オーストラリアは欧州の国。アジアの国ではない。」と突き放していました。

一方のラッド氏は、この選挙戦の中でアジア重視を明確に打ち出します。選挙戦の中で胡錦涛主席との会談と握手の写真を大量に露出させ、「アジアの一員として再デビューを果たしたい!」という意思を前面に出しました。オーストラリアのメディアは伝えました。「オーストラリアで初めて、中国と話ができるパイプをもつ政治家が現れた」と。

これね〜、この言葉が象徴的だと思うのです。今やヒラリークリントンが「最も大事な二国間関係は、米中関係」と言い出す時代です。米英でも米日でもなくてね。米中ですよ。次の大統領候補者が。

ところが、オーストラリアはこの「対中国との関係争奪戦」に完全に出遅れていた。人口が少ないことが経済的なハンディとなっているオーストラリアは中国からの移民も多いです。しかし、中国人に差別的発言をするハワード氏(ちなみに彼の選挙区にはアジア系移民が多く、それが彼が今回落選した要因でもあります。リベンジリベンジ)。しかもアメリカべったりでは、中国が仲良くしてくれるわけがありません。

ちきりんは思うのです。オーストラリア国民は、この「世界で最も大事な中国に、無視される国になるオーストラリア」という立場に、またもや例の「焦り」を感じたのだと。

★★★

そして大方の予想通り労働党が大勝した選挙の後、ふたりの指導者のスピーチを聞いていた時、ちきりんははっとしました。「そうか、この国はその成り立ちの最初から、アイデンティティ問題を抱えているんだ」と。

ラッド氏は、Todayを「ツダイ」と発音、ハワード氏はLabor partyを「ライバーパーティ」と発音。二人とも完全なるクイーンズイングリッシュです。(ほんとはLabour)

そう、オーストラリアは英国を宗主国とする英連邦の国。今でも国家元首は英国王室のエリザベス女王です。

しかしながら、英国のグループ国でありながら、したがって欧州の血を引く国でありながら、9割が白人という国ながら、彼らは「欧州の一員」としても、ずうっと大きな疎外感を感じていたでしょう。距離的な遠さ、国としての性格の違い(明らかにオーストラリアの文化はイギリス的でも欧州的でもないですよね。)、経済的構造の違い。



欧州生まれなのに欧州になりきれなかった出生のゆがみ。

日中韓&カリフォルニアに必死で近づこうとして疎外された青春時代。

結局、アメリカ追随というポジションで進もうとしたけど、

やっぱり、これじゃあ時代(中国)に見放されてしまうという焦燥。



“欧州との一体化の不可能性”というスタート地点から、常に時々の「時代の強者」に擦り寄り、自らの「帰属グループ」を探して逡巡する、カンガルーの国の政治史。

「国際政治上のアイデンティティ希求の歴史」それこそが、オーストラリアの歴史だということなのでしょう。


英語が母国語で、世界が求める資源と食糧が溢れる国。こんな有利な条件の国なのに、こんなに不安そうに見える国。

他人から見て、多くを持つ人が、必ずしも幸せではない、という、ごくごく当たり前のことだったりはするのですが。


というわけで、相変わらずこの国に旅行したいとは全く思わないちきりんですが、この国のアイデンティティ探し的政治情勢には、今後もちょっと注目してみようかな、などと思い始めたちきりんなのでありました。



終わりです。

長くてごめんです。

ではね、です。

ばい。

2007-11-25 蟹雑炊

f:id:Chikirin:20071125232035j:image:left蟹雑炊を食べるためには、まずは蟹が必要。ということで買ってきた。自分の手を一緒に撮ればよかった。大きさがわかりにくいですね。すごく巨大な蟹足なのですが。

で、f:id:Chikirin:20071125231732j:image:right

鍋ですね、鍋。鍋にしました。美味しいだよ。ポン酢と柚胡椒で食べるだよ。

★★★

ここまですこぶる順調だったのだが、ここで大いなる誤算発生。

最初に、ボイルした蟹足をたらふく蟹酢で食べて、次に鍋をたっぷり食べたら・・・満腹になってしまって、雑炊が食べられる感じでなくなった。おいおい蟹雑炊のために蟹鍋喰ってるってのに、これは本末転倒。いや蟹で満腹になるなんて幸せったらないのだが。

まあ満腹になっちゃったものはしゃーない。ということで、お食事会はここでお開き。蟹雑炊は、今日(翌日)ひとりで食べました。下記。

f:id:Chikirin:20091213121138j:image


お盆もお椀も超お気に入り。雑炊を入れてる古代朱のお椀は口広で、スープ、ご飯、おかずどれもよく映える。暖かみのあるいい色だ。左側は白菜のおつけモノね。ちきりんは雑炊を食べるときは白菜のおつけモノを欠かさない。

お盆は形が暖かく、かわいい。卵形かな。かなり厚手でぼってりしてる。一枚の木でできてます。これは夜のお酒を飲むときにもよく使います。(例:下記。これは今回とった写真ではないですが、ご参考まで。この日のおつまみ、何だろうね。残り物の何かだと思うが忘れました。右側下は暗くて分かりにくいですが、切り子のおちょこ。これもお気に。お酒は日本酒でしょう。大吟醸。)

f:id:Chikirin:20091213121308j:image



まあそんな感じ。

それにしても、お料理屋に食べに行ったら東京では一人1万円近くかかるかも、ですが、自宅でやれば蟹を山ほど買っても7千円(一人分だと3500円)だもんね。(その他の野菜代などは微々たる値段で無視できるレベル。)格安だよね〜。



というわけで、また明日。じゃね!

2007-11-23 最近の関心事

疲れて頭が動いてないので、適当なことを書いておくことにする。最近考えていることのリスト的な感じで。そのうちブログに書きたいと思っていることのリストでもある。でも、まだあんまり考えていないんだけど。

★★★


(1)ここから半世紀、世界を規定するものは何だと思っているか?

石油価格だと思ってます。



(2)ここから半世紀、日本を規定するものは何だと思っているか?

人口減少だと思っています。



(3)最近注目している国は?

パキスタンと韓国。それにオーストラリアも。(すべて政治面)



(4)人間について今一番関心のあることは?

長生きする人の生命力の源泉



(5)自分について今一番関心のあることは?

どこまで人付き合いのいい性格になれるか



(6)今一番、一緒にお酒を飲みたい人は?

プーチン大統領(前は、志位委員長だった。)



(7)説明したいのに、(自分でも)わからないことは?

なんで韓国ドラマにこんなにはまっているのか



(8)最近注目しているビジネス系の話題は?

最近あんましビジネスに関心がないのよね。敢えて言えば、「トヨタってなんで、批判されないのか」という点かな。あんなに儲けたら普通は「エグイ商売をやっている」とか「利益至上主義」とか言われるはず。ハゲタカファンドを批判する人がトヨタを批判しないのはなぜさ?



(9)最近注目している社会の話題は?

家族関係の変化



(10)尊敬する人は?

理屈をこねない人



★★★

おわり。次回、ちきりんと飲みに行くお約束のある皆さんへ:上記の質問に対する、皆さんの回答を考えておいてください。

お酒で適当にごまかしながら、いろいろ話すのは楽しい。


じゃね。

2007-11-20 巧妙な罠

とても眠いのだけど、社会派ちきりんとしてはこのニュースに何も書かずに眠るわけにはいかないだろうと。

ニュースの内容はこんな感じ。「大都市と地方の税収格差を埋めるために、東京都や愛知県の税金を、地方に回す案を検討する。」と。

ちなみに、「大都市と地方の格差」が語られる時、今や比較対象は「東京都」&「愛知県」と「その他の地方」なのね。ふむ。関西出身としては、「いよいよだなあ」という感じがします。が、それはまあ今日の本題ではないので置いときましょう。


ええっと「格差は問題!地方にも配慮しなくちゃ!」というお考えの方へ:まあ、それはそれでご自由に。

あと、「あっ、これってこの前ちきりんブログに書いてあった。都会から地方にお金を流すって話だよねえ?」と思われた方へ:毎度ご愛読ありがとうございます。でも違うんです、あれとは。コトの本質が違います。ちなみに“この前のブログ”はこちら→http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20071030



じゃあ、なんの話やねん、と。



これね〜


こんな巧妙な話、本当に、なかなか思いつかないですよ。相当頭よくないと思いつかない。東大法学部でも出て、頭の硬度が一定以上高い人でないと受からない試験に上位合格して、その上で、霞ヶ関で7年以上働かないと、多分思いつかないと、思います。


なんのこっちゃ。説明しろよと。はい、します。



これね、なんで東京都や愛知県が、その税金を地方に回す、という話になるんだと思います?確かに都道府県は都道府県税という住民税を徴収しているし、事業税的なビジネス側から入る税収もあります。そして、東京や愛知は突出して他の地域より地方税収入が多い。

でもね、それでもなんといっても、現在の税金の中心は国税である所得税だし、法人税だし、消費税なんです。なんで、国が地方にお金を出さずに、東京都や愛知県が出すという話になるの?いやもっと言えばですよ、そもそも国税を減らして地方に直接入る税金を増やせばいーじゃん。つまりね。



(1)個人や企業→東京都や愛知県→(その他の)地方

(2)個人や企業→(国に払っていた分の税金も直接)地方(に払う)

(3)個人や企業→国→地方



これ、どう違うの?


最初=お金の出し手が個人や企業で、最後=お金の受け手が地方でしょ。全部それは同じだよね。なぜ、現行方式である(3)ではなく(1)なのか?なぜ、地方分権で検討されている(2)ではなく(1)なのか?


何が違うのか?


大きく違うんですよ、これ。


誰にとって違うか?ここ一週間から数日の間に、国会で答弁されている方々にとって、これは全然違うんです。

中央官僚と自民党の政治家というのは、「徴税権を以て日本全国から集めた巨額のお金を自由に使える権限」を持っているからこそ、「業者が奥さんの分も含めてゴルフセットを届けてくれ、かつ何百回もゴルフにつれていってくれたり」「地方のゴルフに行くときは、高級旅館で温泉付で全部ただにしてくれたり」するんです。

国にいったん巨額の資金が入り、自由に使える分がたっぷり確保できていてこそ、「業者がパーティ券を買ってくれて、食事に同席させてくれる」んです。


(2)だと、国に入るお金が一気に少なくなります。こんなことしたらダメじゃん。ねえ。絶対だめ。だって、せっかく安月給で40年も我慢して次官まで上り詰めたってのに、だーれもゴルフにつれてってくれないじゃん。

(3)もだめです。いったんは国にお金が入るけど、その大半をごっそり地方に渡さなくちゃいけない。国が自分で、このミサイル買う!とか、この戦闘機買う!とか(別にダムでも箱モノビルヂングでもなんでもいいですが、)発注権限を持てる部分が少なくなっちゃ困るよ。

だって、そしたら、僕ちゃんの権限が少なくなって、だーれも接待してくれないし、もっと大事なことは、だーれも天下りで受け入れてくれないじゃん。

天下りを受け入れてくれる会社は、僕たちの持つ“税金による発注権限”で、自分トコの商品を買ってもらえると期待するからこそ、役所仕事しかできない、今まで一度も仕事で頭を下げたことのない僕たちを受け入れてくれて、お飾りの仕事に2千万円の年収と、4年勤めて4千万円の二度目の退職金を約束してくれてるのに。

だめだめ、(2)と(3)なんて絶対だめだよ。

(1)だと、国に入る税金の額にも、その使い方にも、一切今までと変更を加えなくてもいいからね!これこそ理想的な格差解消方策だ!!


なんで格差問題を無視できないかって?だって格差問題をなんとかしないと自民党政権が持たないからね。そうだな、自民党政権がもたないのは俺たち官僚にも困ることだからな。なんとか知恵を絞らなくてはな。ってな感じで考えてたんだと思う。んで、「あっ、そーだ、東京都と愛知県に出してもらおうぜ」

「おお、それは良い案だ」「石原は国に喧嘩ばっかり売って生意気だからやっつけちゃおうぜ」

「良い案だ良い案だ。トヨタも、最近、中高一貫校を作るだの、空港の経営に乗り出すだの、文部科学省や国土交通省を馬鹿にしすぎだからな。この際、俺たちの権限を見せてやろうぞ」

「そうしよう、そうしよう!」

「僕たちって本当に頭がよいね!!」

「そうさ、もちろんさ、僕たちは、この国で一番頭がエライのさ!なんたって僕たちは“エリート!”様なんだからね!!」


「でも最近の知事連中は、こういうトリッキーなやり方じゃなくて、三位一体改革の趣旨に則り、地方に回す税金を大幅に増加しろとか=(3)の案、道州制を導入して、国ではなく直接地方に税金徴収能力も持たせてしまおうという案=(2)の案、を主張してる奴が多いけど大丈夫かな?」

「大丈夫、大丈夫。知事は目先のことしか考えない。あいつらは選挙で生きてるからな。視点が短期的なんだよ。とりあえず金が手に入るなら、それが東京都からでも国からでも気にしないよ。今までは「地方分権」って主張していた知事だって、目の前に大金がぶら下がればすぐに「これは良い案だ!!」って言い出すさ。たとえその案が“国の地方に対する支配権を、今まで以上に強化する案”だとしてもね。」

「国の地方に対する支配権が強まるのか?」

「そりゃあそーだろ。東京都なんていう“うるさい地方”が持っていた税金の使い道に、国が関与する権限ができるんだからな。石原はともかく、日本で唯一国に頭を下げる必要のない東京都知事だって、石原の次の代の奴からは、霞ヶ関詣でをするようになるはずさ。」

「なるほど、自分たちの権益を守ることができるのはもちろん、霞ヶ関にとっての唯一の眼の上のコブである東京都を牛耳ることのできる妙案ってわけですね。」

「そうそう、その通り。ははは。オレ様は本当に頭が良いなあ!! あっ!もしかしてそこにいらっしゃるのは次官様、一体いつからそこで聞いていらっしゃったのですか?」

「おうおう、話は全部ちゃんと聞かしてもらったよ。いい案じゃないか。それにしても、越後屋、お前も悪よのお」

「ほーほほほほ、ほほほほ〜」


終わり

2007-11-17 私のことは忘れてね。

昨日、今のホテルにチェックインした時のこと。タクシーを降りて荷物をドアマンに渡す。で、自分だけフロントに向かって歩いていく。その距離、せいぜい5メートルくらい。フロントについたら、ホテルマン(ウーマンだったが)がにっこり微笑む。「ちきりん様、当ホテルへようこそ」って。

これ知ってます?ドアマンが無線機で、ちきりんの名前をフロントに連絡しているんです。荷物のタグをみて、名前を割り出し、フロントに連絡する。フロントはすぐさまその名前でロビーを歩いてきた顧客に呼びかける。

これを「すばらしいサービスである」と雑誌やテレビのホテル評価番組や特集は賞賛するのであるが・・・こんなの「やめてほしいな」と思うのはちきりんだけ?

今回も、そういうサービスを知ってはいたけど、それでもギクッとしますよね。いきなりフロントで名前呼ばれたら。「あんた、なんであたしのこと知ってんの??」って。まるで見張られているみたいです。すべてお見通し、みたいな。

これ、嬉しいんですかね、みんな。ホントに?


この前みた雑誌のホテル評価特集。とある「トラベルライター」が、「○○ホテルでは、顧客の名前だけでなく、前回宿泊した時のことまで覚えていてくれる」「たとえば、前回は鉄板焼きを召し上がりましたが、今回はフレンチはいかがですか?」みたいな感じなんだって。

これも嬉しいですか?

気持ち悪いだけだけどな、ちきりん的には。


だって覚えているのは鉄板焼きのことだけではないですよ。誰と一緒に来ていたか、洋服はどんなだったか。下手すると、化粧に力が入っていたかとか、そーゆーことまで覚えられているはず、だと思いません?

男性にしても、「前回は赤いワンピースの女性と一緒で、かなりでれでれだった」とか覚えてられるわけでしょ。勘弁してよね〜と思うんだけどな、ちきりん的には。

言わなくても「あっ、ちきりんさん、また同じ服着てる。」とか、「あっ、ちきりんさん、この前の連れの人にはぞんざいな口の利き方してたのに、今日の連れの人にはずいぶん下手に出てるなあ」とか、そーゆーこともわかってるわけでしょ。

悪いけど・・・「メモリーリセットしてくださいっ!」とか叫びたくなります。つーか、そんなホテル泊まりたくないです。


それにね、こういうの「頭で記憶してます」とテレビで取材を受けたホテルマンは口を揃えるが、それは嘘です。彼らは一日記憶したら、その場で必ず顧客カードにその情報を記入しています。次に予約が入った時は、それを見直してメモリーを呼び出しておくわけです。当然です。皆スーパーマンじゃありません。記憶だけで全部覚えられるわけはありません。

次の予約が入った時に、前回の記録がすぐ呼び出せる状態。つまりデータはデジタルで保存されています。リザベーションシステムとつながったシステム上に、「あなたがいつ、どこで、誰と、鉄板焼き食ったか!」が記録されるんです。


超やだ。


どこかでそれが外に流出しないなどという保証はありません。すべてのデジタルデータは無防備に外に流出する可能性がある。実際、そんな事件枚挙にいとまがない。


超超やだ。


一番きしょい、と思ったのは、その昔、ちきりんが超ハードワーカーだったころ、もう何ヶ月も続けてタクシーで深夜に帰宅していた時代がありました。毎日毎日、会社の前からタクシーに乗って、行き先だけ告げて5秒で熟睡。運転手さんには高速の出口に来たら起こしてくださいと頼んでから寝ます。

なんだけど、ある日「お客さん着きましたよ」と言われて目が覚めたら・・・そこはちきりんのマンションの前。しかもドライバーはこう言った。「ちきりんさん、着きましたよ」と。

タクシーチケットで、ちきりんの名前も覚えていたわけです。


気持ち悪すぎ!!!


タクシードライバーが、ちきりんの名前、家の所在、そして、毎日深夜まで帰宅しない事実を知っている。怖くないですか?別に具体的に何を疑うとか怖れるとかでなくても、十分気持ち悪いです。


同じパターンで気になるのが、エディやナナコなどの電子マネー。特に携帯で使い始めるとすごく気になる。

ご存じのようにコンビニは、レジを打つたびにふたつのボタンを押している。「男女」ボタンと、「年代ボタン」ね。チェーンによって異なるけど、子供、10代、20代、30〜40代、50代以上に分かれてる。

彼らは値段を入力するまえにまずこの二つのボタンを押す。これによりPOSデータは、「20代の男性が、何月何日、どのエリアで○○ビールと柿ピーを買った」というデータを手に入れる。それを分析して、仕入れや商品開発に利用しているわけです。

しかし、携帯電話での電子マネー利用では、そんなまどろこしいことをする必要はない。すべての個人情報は、(法的に利用可能かどうかは別として)タグを付けられる。

すなわち、何十代の女性が、ではなく、「ちきりんが」「どこで」「いつ」「何を買ったか」がすべて記録されるのだ。しかも、Edyで税金を払ったり光熱費を払えば、どういう家に住んでいる、どのような生活スタイルの人が何をいつ買うか、まで追うことができる。雑誌を買えば、本を買えば、思想や趣味嗜好まで追えるだろう。「ちきりんはSPA!を読んでる。」とかね。



どう??

Edyでサピオは買いたくないでしょ?



気持ち悪いのはちきりんだけか。

きっと星新一氏も気持ち悪いと思ってると思う。


こういうサービスを嬉しいと思う人は、アマゾンドットコムが、お節介にも「あなたはこういう本が好きなのでは?」みたいに言ってくるあれ、あれが嬉しい人だと思う。


あたしは厭だ。

メモリー消してくれ。

ホテルマンに名前なんて覚えて欲しくない。


そーゆーこと。

んじゃね。

2007-11-12 読み比べ

昨年の夏に書いたように↓、ちきりんは「雑誌好き」です。「特定セグメント」の理解のために最適なメディアが雑誌だからです。

http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20060826



特に出張の時は、成田で雑誌をいくつか買って読み込みます。出張中は日本語で読めるものが限られるので、やたらと深く読み込めます。

今回は、“SAPIO”と“週刊金曜日”を読み比べ。これがなかなかおもしろかった。

サピオの方は“右翼な人の雑誌”で、週刊金曜日は“左翼な人の雑誌”です。ふたつともちゃんと大手取次ルートにのっているごく普通の雑誌ですから過激ではありません。でも、一般の人から見ると「超片寄ってる」感じではあります。

で、この二つを比べて読むのも楽しいかな、ということで今回はまとめて買ってみました。


どっちに共感できるか?

どっちにも共感なんかできません。やっぱりかなり片寄ってます。自分が右でも左でもないなあ、と再認識することができました。

沖縄での集団自決に日本軍の指令があったと歴史教科書に書いてあったのが削除されようとしているのですが、その記述の復活を求める沖縄県民の声を、サピオは「沖縄全体主義」と批判します。

批判するのはいーとして「全体主義」とは言わないだろ?と思います。自分の意見にあわない人をすぐに全体主義者とかファシズムとか決めつけるのは、右翼的単細胞思考の典型。


その他、北朝鮮批判、弱腰外交批判(北朝鮮に今すぐ宣戦布告しろ、ミャンマに軍を送れ!くらいの勢いです。)にも、驚きます。

また、サピオ右翼的には、「ニートなんて筋肉を鍛えたら直る病気だ」くらいの考えのようで、格差問題にはあまり社会的な意義付けをしていないようです。むしろ大前研一氏の自由主義的な記事が載っていたりします。

これはちょっと意外だったです。右翼って社会格差の中で見捨てられた若者を洗脳して仲間に入れてると思ってたんで「へえ、自由経済主義なんだ」と思って。労組に反対するからこういう主張になるのかな?このあたりはもう少し調べてみたいところです。

★★★

週刊金曜日の方は、ご存じ朝日ジャーナルの廃刊とともに「本多勝一」という亡霊のような人を担いでスタートした雑誌なんですけど・・・これもかなりおもろいです。

軍需産業の元締め「三菱重工の正体」とかね。三菱ビル爆破事件を思い出します。東アジアの牙かなんかだっけ?ってそんな事件リアルタイムで知ってるわけではないですが。

慰安婦問題とか朝鮮人強制連行事件とか、「よくぞここまで!」と感嘆させてくれるほどのワンパターンぶりです。これで毎週出してるって、いったい全体毎週何を書いてるんだ?(毎週この話か??)と思うとついつい興味深く、来週も買ってしまいそうな気にさえなります。(思うつぼ?)

あと、小沢ご乱心についてはかなり取り乱した様子の後、「ほらね、だから自民党と民主党だけじゃだめだと思うわけですよ」という主張=だから社民党と共産党が必要なのだあ!!論、が展開されていて、かなりかわいい。いい感じです。


また、週刊金曜日には来年の手帳の広告が載ってました。その名も“週刊金曜日手帳08”

日本国憲法が手帳の冒頭に掲載されてるらしいです。また各日付のところに「過去の事件」などが書いてあって自然に歴史が学べます。たとえば、「1928年のこの日に治安維持法が改正され、最高刑が死刑になった」とか書いてあるらしい。そんな日を覚えてどーするよ・・しかも治安維持法!

(興奮しちゃったよ)


雑学手帳というセクションもあって、東大阪に回転寿司店第一号店が開いたのはいつ?とかいう雑学クイズが載っています。これ、左翼の皆さんが“団塊の世代”というか、すでに“穏やかに過去を懐かしむ茶飲み話世代”になっていることを象徴的に示す企画だなあと思いました。

いやあ昔はよかった、とかいってヘルメットを撫でてたりしながら、お茶をすする。穏やかな秋の日ですよ、秋の日。ヘルメットには既にかすれた“中核”の文字。いやあ、泣かせる。うう。


というわけで、この手帳買ってみようかなと考えてます。千円だって。場所もとらないし、これくらいなら買ってもいいかな?

というか本屋で売ってたら買いたいが、申し込んで買うのは躊躇する。こんなとこに自分の名前とか住所とか知られたくないです、ちきりんは保守的なんで。もうちょっと悩んでから決めます。


まっとにかく、この二つの雑誌は「読み比べがお勧め」です。是非みなさんも。

ではでは〜



追記:そうそう、サピオの方が圧倒的にお金がありそうな作りです。ページ数もカラーページも多いし紙質もいいです。右翼の方がお金は集まりやすいってことなんだろうか。じゃね。

2007-11-11 時代を創ろうとした男

小沢さんの辞任に関して「とほりすがり」さんから頂いたコメント、「自民党分割による二大政党」ってのは「自民党内の派閥」とどう違うのか?というご質問。忘れないうちに、ちきりんの考え方を書いておきます。


ちきりん的には・・・一言で言えば「同じです」。ただ「時代性」のために形を変えているのだと、思うのです。

戦後、軍事独裁が崩壊し、民主ニッポンが建設された後、ご存じのように世界は左と右の対立構造に入ります。日本はアメリカの保護の下、「左にならないように」努力を重ねるわけですが、この時に「保守大合同」が起こります。

自由党と民主党が合体して自由民主党ができ、他の小さな保守政党も全部そこに結集する、そして革新勢力である社会党・共産党と戦うという構図、よく言われる“55年体制”ができるわけですね。

この「保守大合同」自体が、そもそも不自然だったのです。資本主義と天皇制(実権の有無はともかく)を是とする複数の保守政党が存在するのはごく普通だし、実際そうだったのに、「保守が複数に分かれていると、革新勢力との戦いに勝てない!」という判断があり、多種多様な政党が「一応保守なんだったら、とりあえず全部一緒になろうぜ」という極めて現実的な選択が行われたのが1955年というわけです。

つまり「とにかく俺たちは革新勢力ではない。革命も天皇制廃止も求めてない!」という部分だけが共通点で、その他の考えは全然違った人たちが「寄せ集まった」のが自民党なのです。

★★★

これ中国も同じことがありました。中国共産党と、中国国民党(資本主義の中国を支持)と日本軍(中国を占領・支配)の3つが戦っていた時、中国人側はふたつのチョイスに迫られる。

まずは中国共産党と、中国国民党+日本という戦い。共産主義でいくのか資本主義でいくのか。ふたつめのチョイスが中国共産党+中国国民党と、日本という戦い。民族の自立をまずは獲得し、共産主義か資本主義かは、その後で決めようぜ、という考えですね。

後者が「国共合作」という考え方で、まずは中国人は一丸となって日本を打倒しよう!とか考えるわけで、でも中国側の中身は呉越同舟もいいところ、というわけです。

まあ、今の民主党も同じ。自民党をやっつけるために右翼も左翼も民主党、です。

★★★

そういうわけで長らく自民党は「革新勢力と戦うために」「唯一の保守政党」としてやってきたわけですが、日本が高度成長を成し遂げ、世界的にも共産国が力を失っていくにつれて、自民党の中に「派閥抗争」が顕在化してくるわけです。

これは自然な流れです。実質的に「外の敵」がいなくなる。そうすると、そもそも考えの違う人が集まっている団体なんだから、次は当然「中の敵」の間で権力争いが行われるようになるってことです。

それが派閥抗争。派閥が最も力を持っていたのは、田中派、福田派等々自民党の五大派閥と言われた時代ですが、この時代は派閥の長は全員、首相経験者であり、実質的には「自民党の中での政権交代」的な意味合いがあったと思います。つまり派閥は、それ自体が「疑似政党」的であったのです。

そしていよいよ1989年にベルリンの壁崩壊、その後の数年で革新勢力は名実ともに姿を消します。このタイミングで小沢さんは、「外の敵が消滅したのだから、違う考えの奴が同じ団体にいる必要はない。今度は保守の中での複数政党の時代」と決断したわけでしょう。その判断は歴史タイミング的に極めて妥当なものだったと思います。

★★★

さて、派閥ではなくなぜ政党を分離する必要があるか、という点なのですが、最大の違いは「キングメーカーは誰か?」ということです。これは、派閥が「疑似政党」の時代を経て、単なる人材派遣団体化したところから始まります。「派閥が争って総理総裁が決まる=疑似政権交代」という絵柄とは異なる状況になってきたのです。

5大派閥はそれぞれヘッドを総理総裁にしましたが、その後、派閥のドンがそれぞれ次世代に引き継がれた後は、派閥のドンも本来の意味でのドンではなく、単なる“グループ管理者”に堕していきます。そして自民党の総裁は必ずしも「一番エライ人」ではない時代がやってきます。

皆さん、何人も「かなり情けない感じの」総理総裁を知ってますよね?彼らは自力で総理総裁になったわけではなく、派閥力学の中で、いわゆる“キングメーカー“と言われる実力者が、「次の首相はあいつにしよう」みたいな感じで決めていたわけです。海部さんとか宇野さんとか小渕さんとかね。別に彼らに総理総裁の実力があったわけではありません。

つまり、この段階に入って、自民党の中の派閥は必ずしも疑似政党的な、総理総裁を擁する実力団体ではなく、単に「キングメーカーが仕事がやりやすいように、総理総裁を含む閣僚ポストをスムーズに提供するための、人材派遣会社」的なる組織になっていました。

キングメーカーから「次はおまえのところは通産大臣だ」と言われると、「はい、じゃあ○○君ね」みたいな感じ。イチイチ依頼があってから検討しなくても、派閥の中で人材リストを当選回数と資金集客力で整理してあるから、すぐに対応できる。

派閥の性格変化とともに、疑似でさえ、政権交代がなくなってしまったのです。

★★★

こうなると、実質的な権力抗争は派閥抗争ではなく、誰がキングメーカーなのか?ということになります。キングメーカーになれる条件は唯一、金、です。金があれば選挙支援ができ、派閥議員数を増やし、ひいてはポストが手に入ります。誰が金を握るのか?

さて思い出しましょう。現在は、政党には税金から活動費が支給されています。しかし、この法律は当時は存在しませんでした。じゃあ、政党はどこからお金を得ていたのか?

いわゆる献金ですね。これはもちろん公の、企業献金(経団連等がやっている)もありますが、大きいのは「癒着による裏献金」です。そう、土建会社から、防衛機器納入会社から、規制を維持して欲しい金融企業から、危ない薬を売り続けて欲しい製薬会社から・・・・の献金です。

こういう「裏の仕事」が巧い人がキングメーカーとなっていく、のです。たいていは「自民党の幹事長」という立場で。幹事長はこれらの金を一手に握り、派閥に資金を配分し、ひいてはポストも配分していく、まさに「新の実力者」です。

そして、ここがおもしろいところなのですが、小沢さんは「自民党の最若手の幹事長であり、キングメーカー」であった人なのです。

★★★

さて、整理しましょう。「呉越同舟状態の自民党の中で、実質的な権力者である幹事長、キングメーカーという立場にいた小沢さんが、なんでわざわざ“政党内政権交代”ではなく、“複数保守政党制”を目ざしたのか」というところが、この時点で残っている論点です。

ここからは諸説あるかなあと思います。ちきりんも確信があるわけではない。しかし敢えて推測してみればこんな感じ。


(1)より高い自由度を求めた。

派閥ではなく、複数政党の争いになれば、勝った人はより高い自由度、権限が手に入ります。党内抗争では、勝った派閥も(キングメーカーも)、党内にそれなりの配慮が必要です。バランスが常に必要で、閣僚を全部自分の部下、にするわけにはいきません。集めたお金も、自分の子分に厚く配分することは可能ですが、全部ぶんどるわけにはいきません。

よくいわれるように首相をだしたら、党三役は他派閥に譲るとかね、そういうことが必要です。極端に言えば、“さすがの小沢さんも幹事長をやりながら首相をやることはできない”とも言える。

一方で複数政党に分かれてこの戦いをやれば、勝った方は閣僚ポストも資金も丸取りです。勝てる自信があるなら、政党を分離した方が得かもしれない。これが考えられるひとつの動機です。


(2)抗争の外部化を求めた。

ご存じのようにキングメーカーの争い、その手の上での派閥の争いは、国民の審判を全く受けない「インナーサークル」での戦いです。一方で政党と政党の戦いなら選挙という形で、国民の支持を直接取り合う形での争いになります。

その方が、幹事長として、キングメーカーとしての地位を維持するよりも「やりやすい」と考えた可能性があります。たとえば、小泉さんなんかはこれにより政権を取りました。政党の中での勝負より、国民の前での勝負の方が有利な自分、を意識していたからです。

ちきりんは、小沢さんも、そういう自信があったのではないか?と思っています。非常に若くして幹事長に上り詰め、理論的にも政治先見性にも自信があった彼が、“実力も人気も兼ね備えた自分には”審判を国民にゆだねた方が得、と思った可能性は十分あるかな、と思います。


(3)次の時代を創ろうとした。

上記に書いてきたように、「複数保守政党が存在する世界」は、共産勢力が死滅した以降は「歴史の必然」です。考え方も性格も違う人たちが「資本主義支持です」だけで同じ政党の中にいる、というのは、正常な状態ではなかった。

政党の活動資金も同じです。法律で国からある程度支給されるようになった。国民に犠牲をしいてまで企業から裏献金を集めるという方法論が、時代的に終焉に向かう、ということも感じていたかもしれない。

また70才でようやく、ではなく、40代で幹事長という最高権限ポストを手に入れた小沢氏には、より高い目標が必要であり、そのひとつとして、次の時代の体制を自分が創ろうという野心もあったのではないか?とも思えます。

★★★

こうみるとね、(1)も(2)も(3)も同じ。その裏にあるのは、この若くして権力抗争のトップに上り詰めた男の、圧倒的な自信と傲りなんじゃないかな、と、ちきりんは思うです。

彼はこんな負け戦をするつもりは全然なかったと思う。65才になった時に、ボケた大勘違いおじさん(野球界と新聞界を崩壊させようとしている老害おじさん)にたきつけられて、こんなみっともないことをする自分になっていようとは、当時は全く想像していなかったと思う。

彼は、明日の日本の政治体制をリードする、歴史に名を残すリーダーであったはずなのに。


民主党は嫌いだけど、小沢さんにはそれなりの理解をする。そういう人が(ちきりん含め)一定数いるってのは、あのコロの小沢さんの、若さと、先見性を含めた能力と、リスクテークした行動に、一定のリスぺクトを感じるからじゃないかなと。そう思うです。


民主党も嫌いだけど、こうみれば、保守二大政党への歴史の道のりを、私たちは紆余曲折しつつも進んでいる、とも言える。私は傍観者にすぎないが、小沢さんは主役になろうとした。それはやっぱりすばらしい。政治家としてあるべき姿だろう。




と、そういうことで。


ではでは

2007-11-07 二大政党政治とは

たった数日の間に状況が二転三転してて追いつくのも大変ですが、時間ができたので小沢さんの件、ちきりん的考察を書いておくです。

★★★

まず最初にはっきりさせておかないといけないことがこれ。

彼のやりたいのは、「自民党を二つに割る形での二大政党」であり、「自民党と民主党の二大政党ではない」ということ。

ご存じの通り、二大政党論は彼の持論、そのために不可欠な小選挙区制の導入を多くの自民党議員の反対を押し切って実現させたし、自ら袂を割って自民党を離党した。

この「日本にも政権交代可能な二大政党が必要」という言葉は、選挙目的において極めて耳障りがよいので、最近はここだけが連呼されていたり、また、アメリカかぶれした自称知識層の中には、この理由で民主党を支持する方も多いのですが、この言葉からは、小沢さんが目標としていることを隠すために、「敢えて」必要な単語が抜いてある。

もう一度書いておきます。彼が実現したい「新しい日本の政治体制」とは「小沢自民党」と「その他自民党」の二大政党制です。最初からずうっと。今ももちろん。

★★★

というわけで、まさに自民党をふたつに割るつもりで自民党をでてきたのに、「自分の方の自民党」は長く政権から離れ、今や非常に小さな集団にすぎない。しかたないので最近は様々な他の政党と一緒になって、形だけ大きくしている。実際、それの集合体として参議院では第一党となった。しかし、そんな「水ぶくれ部分」は小沢さんにとって、最初から全く仲間でも政党でもなかった。小沢さんにとって彼らは「議席」にすぎない。

だから、今回、自民党に連立を提案したのは、そもそもの目標を達成するためだ。彼は大政翼賛的な、国会の8割を占める大政党を作りたいわけではない。その8割を2で割って2大政党にする。これが、彼が自民党を飛び出した時からの政治的悲願だ。 (実は福田さんの方も、この「自民党ふたつの二大政党制」を「検討価値のあるオプション」として支持している可能性があるでしょう。)

繰り返しになるけど、「二大政党制」は彼の政治的悲願だが、「自民党と民主党の二大政党」なんか彼は「ちゃんちゃらおかしい」と思っていると思う。彼に言わせれば、職業的政治政党は、日本には小沢派を含む“自民党”しか存在していない。

その他の「未熟な」「政権担当能力の疑わしい」「辻立ちのやり方さえ知らない」馬鹿なおこちゃまどもは、自分に「連立案を自民党に提案・交渉するための土台=参院での野党第一党という議席数、を与えてくれる手段」にすぎない。

★★★

自民党と袂を分かったとき、彼は“新自由経済”というのを主張していた。これ、中身は小泉改革、竹中経済路線に極めて近い。そして彼はこの考え方を、小泉さんや竹中さんよりずっと早く提唱していた。

ところが、二大政党を目指して自民党を出た後、誤算があった。残してきた方の自民党が小泉さんを先頭にしてこの思想を採用してしまった。この思想が国民の熱烈な支持をうけたことを振り返れば、実は小沢さんの先進性が浮かび上がる。

まあとにかく、その昔、小沢さんが歯牙にも掛けてなかったひ弱な都会っ子の後輩である小泉さんの登場により、自民党と小沢さんの主張する経済体制が同じになってしまった。

当時民主党の党首は(小沢さんではなく)岡田・前川さんだったと思うけど、彼らの国会答弁はまるで小泉さんの応援団みたいだった。共通の敵は抵抗勢力ですから、一緒に頑張りましょう!みたいなアホなコメントを小泉さんからもらってて苦笑せざるを得なかった。

で、小沢さんは決断した。選挙のためにこの思想は捨てる、と。「二大政党制を実現する」という大義のためにこの思想は自民党にくれてやる、と。そして先日書いたとおり、自民党の主張と最も対極に聞こえる、すなわち、自民党との選挙に最も有利となる、経済体制を持論として採用した。農家に、老人に、田舎に投資しろと。格差解消経済体制だ!と。


こんな話がわけがわからない論であることは、皆が知っている。自民党も、小沢さんも、民主党も。なんだけど、「すべては選挙に勝つため」だ。そのためなら、元全共闘運動家にも、労組幹部にも、右翼団体にも、農協や医師会の親分にも、オレは頭を下げられる。目的のためならなんでもする、それが男だっ!

って感じ。



そして選挙に勝つ目的は?

日本に二大政党を成立させなければならない。既存自民党だけではなく、“新生・小沢自民党”の方だって政権担当能力があると、国民に示さなくてはならない。

それが、小沢さんが、残りの人生をかけてなんとかやりとげたいと苦悩する、文字通りの悲願だ。

★★★

最初から彼の作戦は「参院で野党過半を実現して、自民党を揺さぶり連立政権に持ち込む」ことだったと思う。

ちきりんが思うに、彼はたったの一度も「次の衆院選で勝って政権をとろう」と本心で考えたことはないんじゃないかな。つーか、んなこと目標にもしてなかったと思う。

最初から小沢さんは“自民党に連立を組んでもらうための交渉カード”「としての」“参院選での勝利”が欲しかっただけなんだろう。

そしてそれが揃ったんだから、大人の福田さんがカウンターパートになったんだから、今がそのタイミングだろ?と。

★★★

今日は慰留されて復党、とか言ってますが(午後に記者会見があるらしい。楽しみ!)、民主党から「自民党との交渉一任権限」がもらえるなら、どんなにみっともなくてもここはいったん戻って、悲願に向けて最後の努力をしたいと考えているようだ。

今回の件を、「こんな騒ぎを起こすと、次の衆院選で民主党が国民から信任されることはあり得ない。なんて馬鹿なことをしたんだ」と言っている人がいる。こういう発言する人ってホントわかってないよね。衆院選なんて関係ないんだってば。そんなとこで勝とうなんて全然考えてないってば。交渉のためなら参院第一党だけで十分。それで審議はストップさせられるんだから。

まあこれだけの騒ぎになったのだから、さすがに即連立には持ち込まないだろう。しかし政策協力だけでもとりあえずOK。まずは自民党の“インナーサークル”に戻らないとね。一緒になって「8割」になり、次に彼についてくる人を再度集めて「4割」×2グループを目指すのだ。それが政党の枠でなくてもそれはそれでいい。

きっとまた彼はしゃあしゃあと言うだろう。「次の衆院選で政権を取る」「そのためには民主党の政権担当能力を証明することが必要だ」「だから政策協議をする」って。まだまだ一波乱二波乱ありそうだ。超おもぴろい。


ところで民主党の若手には小沢さんへの不信感が生まれているようだが、彼らの嗅覚は正しい。彼らの存在意義は、連立(なり政策協定なり)が成立すれば終わりだ。

★★★

小沢さんは今65才。狭心症の発作と、動脈硬化からくる脳梗塞の病歴がある。根強い健康不安説の消えない所以だ。

衆院選選挙が早くても来年の夏、しかも自民党はこの時期を2009年まで引き延ばすことも可能だ。民主党には衆院を解散する権限はない。

「次の選挙で勝って政権を奪取する」と息巻く40代、50代の若手民主党代議士を、彼はどのような目で眺めているのだろう。

自民党を離党したのは14年前。彼もまた50才だった。政治家として脂ののりきった、まさにこれから、という年齢だった。

自分の人生のコアとなる思想をはぐくんだ組織を、これからという年齢で離れるということ。それはかくも大きな覚悟を伴う決断だ。

小沢氏が後悔しているとは思わないけど。


んじゃ。