私のことは忘れてね。

昨日、今のホテルにチェックインした時のこと。タクシーを降りて荷物をドアマンに渡す。で、自分だけフロントに向かって歩いていく。その距離、せいぜい5メートルくらい。フロントについたら、ホテルマン(ウーマンだったが)がにっこり微笑む。「ちきりん様、当ホテルへようこそ」って。

これ知ってます?ドアマンが無線機で、ちきりんの名前をフロントに連絡しているんです。荷物のタグをみて、名前を割り出し、フロントに連絡する。フロントはすぐさまその名前でロビーを歩いてきた顧客に呼びかける。

これを「すばらしいサービスである」と雑誌やテレビのホテル評価番組や特集は賞賛するのであるが・・・こんなの「やめてほしいな」と思うのはちきりんだけ?

今回も、そういうサービスを知ってはいたけど、それでもギクッとしますよね。いきなりフロントで名前呼ばれたら。「あんた、なんであたしのこと知ってんの??」って。まるで見張られているみたいです。すべてお見通し、みたいな。

これ、嬉しいんですかね、みんな。ホントに?


この前みた雑誌のホテル評価特集。とある「トラベルライター」が、「○○ホテルでは、顧客の名前だけでなく、前回宿泊した時のことまで覚えていてくれる」「たとえば、前回は鉄板焼きを召し上がりましたが、今回はフレンチはいかがですか?」みたいな感じなんだって。

これも嬉しいですか?

気持ち悪いだけだけどな、ちきりん的には。


だって覚えているのは鉄板焼きのことだけではないですよ。誰と一緒に来ていたか、洋服はどんなだったか。下手すると、化粧に力が入っていたかとか、そーゆーことまで覚えられているはず、だと思いません?

男性にしても、「前回は赤いワンピースの女性と一緒で、かなりでれでれだった」とか覚えてられるわけでしょ。勘弁してよね〜と思うんだけどな、ちきりん的には。

言わなくても「あっ、ちきりんさん、また同じ服着てる。」とか、「あっ、ちきりんさん、この前の連れの人にはぞんざいな口の利き方してたのに、今日の連れの人にはずいぶん下手に出てるなあ」とか、そーゆーこともわかってるわけでしょ。

悪いけど・・・「メモリーリセットしてくださいっ!」とか叫びたくなります。つーか、そんなホテル泊まりたくないです。


それにね、こういうの「頭で記憶してます」とテレビで取材を受けたホテルマンは口を揃えるが、それは嘘です。彼らは一日記憶したら、その場で必ず顧客カードにその情報を記入しています。次に予約が入った時は、それを見直してメモリーを呼び出しておくわけです。当然です。皆スーパーマンじゃありません。記憶だけで全部覚えられるわけはありません。

次の予約が入った時に、前回の記録がすぐ呼び出せる状態。つまりデータはデジタルで保存されています。リザベーションシステムとつながったシステム上に、「あなたがいつ、どこで、誰と、鉄板焼き食ったか!」が記録されるんです。


超やだ。


どこかでそれが外に流出しないなどという保証はありません。すべてのデジタルデータは無防備に外に流出する可能性がある。実際、そんな事件枚挙にいとまがない。


超超やだ。


一番きしょい、と思ったのは、その昔、ちきりんが超ハードワーカーだったころ、もう何ヶ月も続けてタクシーで深夜に帰宅していた時代がありました。毎日毎日、会社の前からタクシーに乗って、行き先だけ告げて5秒で熟睡。運転手さんには高速の出口に来たら起こしてくださいと頼んでから寝ます。

なんだけど、ある日「お客さん着きましたよ」と言われて目が覚めたら・・・そこはちきりんのマンションの前。しかもドライバーはこう言った。「ちきりんさん、着きましたよ」と。

タクシーチケットで、ちきりんの名前も覚えていたわけです。


気持ち悪すぎ!!!


タクシードライバーが、ちきりんの名前、家の所在、そして、毎日深夜まで帰宅しない事実を知っている。怖くないですか?別に具体的に何を疑うとか怖れるとかでなくても、十分気持ち悪いです。


同じパターンで気になるのが、エディやナナコなどの電子マネー。特に携帯で使い始めるとすごく気になる。

ご存じのようにコンビニは、レジを打つたびにふたつのボタンを押している。「男女」ボタンと、「年代ボタン」ね。チェーンによって異なるけど、子供、10代、20代、30〜40代、50代以上に分かれてる。

彼らは値段を入力するまえにまずこの二つのボタンを押す。これによりPOSデータは、「20代の男性が、何月何日、どのエリアで○○ビールと柿ピーを買った」というデータを手に入れる。それを分析して、仕入れや商品開発に利用しているわけです。

しかし、携帯電話での電子マネー利用では、そんなまどろこしいことをする必要はない。すべての個人情報は、(法的に利用可能かどうかは別として)タグを付けられる。

すなわち、何十代の女性が、ではなく、「ちきりんが」「どこで」「いつ」「何を買ったか」がすべて記録されるのだ。しかも、Edyで税金を払ったり光熱費を払えば、どういう家に住んでいる、どのような生活スタイルの人が何をいつ買うか、まで追うことができる。雑誌を買えば、本を買えば、思想や趣味嗜好まで追えるだろう。「ちきりんはSPA!を読んでる。」とかね。



どう??

Edyでサピオは買いたくないでしょ?



気持ち悪いのはちきりんだけか。

きっと星新一氏も気持ち悪いと思ってると思う。


こういうサービスを嬉しいと思う人は、アマゾンドットコムが、お節介にも「あなたはこういう本が好きなのでは?」みたいに言ってくるあれ、あれが嬉しい人だと思う。


あたしは厭だ。

メモリー消してくれ。

ホテルマンに名前なんて覚えて欲しくない。


そーゆーこと。

んじゃね。