ブログトップ 記事一覧 ログイン 無料ブログ開設

Chikirinの日記 RSSフィード

2008-01-16 年金も消費税も5年後に考えるべきだよ

下記のグラフをご覧下さい。赤い棒グラフは、戦後すぐからの日本人の出生数を表しています。(縦軸の単位は“人”)

戦後直後の3年間は毎年250万人以上が生まれ、3年間で750万人を超えます。これが最近定年を始めている、いわゆる“団塊世代”です。

出生数はその後急激に減り、1966年の“丙午”に大きな落ち込みを見せたあと、二番目の出生数のピークに向かいます。彼らが団塊世代の子供達で、“団塊ジュニア”と呼ばれる層ですね。団塊ジュニアのピークは1973年です。


f:id:Chikirin:20100909163535j:image


そして団塊世代の出産ブーム収束後、ものすごい勢いで出生数は減りはじめ、赤い棒グラフは急激に短くなります。団塊ジュニアのピーク時出生数は209万人ですが、2007年の出生数は109万人。この35年で「一年に生まれる赤ちゃんの数」は半減したわけです。

★★★

さて、団塊ジュニアの後、急激に減少した出生数ですが、実はここ15年くらいは減り方がやや緩やかになってるのが、わかるでしょうか?

赤い棒グラフを見ると、直近の15年は減少幅がなだらかですよね。団塊ジュニアのピークからジェットコースターみたいに一気に減ってきたのに、ここ15年は“横ばい”にさえ見えます。少なくとも激減ではありません。

これは少子化が止まった、もしくは、少子化対策の効果がでてきた、ということでしょうか?未婚者、ディンクス、もしくは、一人しか子供を産まない夫婦が一定数に達したため、少子化も“底を打った”のでしょうか?

★★★

ここで青い折れ線を見てください。これは出生数を“25年分”だけ右にずらして書いた線です。つまり、赤い棒グラフのトップラインだけをつないで、25年分右にずらすと青い線グラフになります。

これにより、それぞれの年に生まれた人の数(赤い棒)と、その年に親になり始める年齢(25歳と仮定)に達した人の数(青い線)が対比できます。

親が増えれば当然子供の数が増えます。戦後すぐの1945年直後に生まれた大量の団塊世代は、1970年以降25歳となり親になり始めます。だから、そのあたりで二番目の山ができているわけです。


さて、ここで皆さんも気がつかれると思います。1973年には200万人以上の“団塊ジュニア”が生まれており、彼らは1998年には25歳です。実際、1993年から2002年くらいにかけて、青い線は大きな山型を描いています。

ところがその山の下の赤い棒グラフには山がありません。青い線で表される親は“団塊ジュニア世代”でかなり多いのに、子供の数が増えてないのです。


なぜでしょう?


グラフをよく見ればわかりますよね。「2000年あたりには出生数の山はないけれど・・・子供の数の減少ペースが、“急減”から“漸減”に変化している」でしょう?

最初にも書きましたが、直近15年くらいは“出生数の減り方がなだらか”になっています。この理由はまさに「団塊ジュニアが適齢期となり、親世代の人口が増えたから」です。

別の言い方をすれば、戦後すぐに生まれた団塊世代は団塊ジュニア世代という「第二の山」を作りましたが、その団塊ジュニア世代は、「第三の草原」を作ってくれたというわけです。「谷を草原にまで埋めてくれた」という意味ではちゃんと「山」はできていた、とも言えます。

★★★

さて、赤い棒グラフに戻りましょう。団塊ジュニアの後のジェットコースター的な出生数の下降ラインは1978年くらいから始まっています。

ということは、1978年+25年=2003年あたりから、もっと深刻な少子化が始まっていてもおかしくないのに、実際には赤い棒グラフの数字は2003年以降も「緩やかな減り方」です。

親の世代が急激に減り始めてるのに、なぜ子供は少しずつしか減ってないのでしょう?やはり少子化も底を打ったのでしょうか?


ここで次のグラフをみてください。


f:id:Chikirin:20100909163534j:image


今回追加した緑の点線は、赤い棒グラフのトップラインを「35年」右に動かして(一時期のみ)表示したものです。

ご存じの通り、戦後や30年前に比べて今は、親になる年齢が遅くなっています。結婚も遅くなっているし、それに伴い、第一子をもつ親の年齢も高くなっています。

前は「25年で親」になり始めていたのが、今は下手すると35歳で親になり始める。7年から10年程度、親世代を表す線を右にずらす必要があるわけです。このように、青い線が緑の点線に移行する過程は“晩婚化・親になる年齢の高齢化”を示しています。


こうすると、なぜ2003年頃から急激な少子化が起こるはずなのに、そうなっていないのか、わかります。結婚や出産を先延ばしにしてきた団塊ジュニアが、30代半ばでいわば“駆け込み出産”を始めたために、再度起るはずの急激な少子化傾向が先延ばしされているのです。

しかし団塊ジュニアもいつまでも出産できるわけではありません。医学が進んだとはいえ、女性が出産できる年齢には一定の限界があります。団塊ジュニア世代が出産年齢を超えれば、その後には「親となる年齢の人口自体が急激に減る時代」がやってきます。


では、ジェットコースターのような急激な少子化が再び始まるのはいつになるのでしょうか?


赤い棒グラフを見ると、団塊ジュニアの山の後の「ジェットコースター的急激な少子化」は、開始年が1979年、終了年が1989年くらいです。この人達が35歳になるのは、2014年〜2024年です。青い線や緑の点線が示すように、その頃になると親世代の人数は130万人未満にまで落ちてくるのです。

ちきりんは、その頃から、再び、驚くようなペースでの少子化が始まるのではないかと予想しています。


少子化傾向がここ15年ほど“少しだけゆるやか”になってきていたのは、一年に200万人もいる団塊ジュニア層が結婚出産の“駆け込み適齢期”になっていたからです。

しかし次の時代、つまり5年後から15年後にかけては、親の数自体が一年分の人数で130万人くらいまで下がってきます。親年齢の世代が200万人いても最近の出生数は110万人程度なのですから、親世代が130万人となれば、子供(出生数)は70万人というようなレベルになっても全く不思議ではありませんよね。


もしこの予想が正しければ、消費税の引き上げも、年金制度の抜本改正も、大事なことは、5年後以降に起る可能性のある“再度の出生数の急降下”を前提として検討すべきだということです。

現在のような「一時的に収まっている少子化傾向」を前提に試算しても、将来に備えることはできません。この赤い棒グラフは、いつまで“横ばい”を続けてくれるのか。それが大きな問題なのです。


そんじゃーね。