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Chikirinの日記 RSSフィード

2008-12-31 多謝そして、多幸を

みなさま、今年一年、もしくはもっと長く、もしくはつい先月から、かもしれないけれど、ちきりんブログのご愛読、どうもありがとうございました。

今年は年央から特に、非常に多くの方に読んでいただけるようになり、やや戸惑いながらも更新を続けてきました。自分で書く喜びがあるからこそ、一日のアクセス数が数十であった時からずっと書いてきているわけですが、多くの方に見ていただけたり楽しんでいただけることで、それ(=書く喜び)に加えてまた異なる新たな喜びを与えていただいています。

アクセスが増えたことで変わったこともいくつかあります。コメントのすべてにきちんと回答することは時間的にも内容的にも難しくなりました。そもそもコメントをはてなユーザーの方に限ったり、承認制にしないといけない状況になるということが想定外でもありました。

適当にお茶を濁した文章を書く日は、自分でも見えない読者の方に向けた“申し訳なさ”がつのります。トピックを選ぶ時に「こんなこと書くと、こういう反応がきちゃうよねえ・・」と逡巡することも多くなりました。

ごくごく普通のブログを書いている人が経験する、ごくごく当然の一般的な戸惑いや時々の判断を、ちきりんも経験している途上であるってことでしょう。

まあちょっとずついろいろ学びながら、これからも楽しく書いていければいいなあと思っています。そしてそれを楽しんでいただける見知らぬ方が画面の向こうにいくらかでもいらっしゃることは、とってもうれしいことだなあと思います。


★★★


年の瀬です。

幸せな、暖かい、ほっとする休日をお過ごしの方もあるでしょう。一方で新年を祝う気持ちになれないほどつらい状況にいらっしゃる方もあるでしょう。節目の日というのは残酷です。幸せと不幸を増幅する拡幅機のような効果をもっている、と思います。

別に自分に何ができるわけではないですが、それを少しでも感じ取れる人になることは、ちきりんの永らくの目標でもあります。

すべての人にとって、明日という日が生きる意味のある日でありますように。

たったひとつ笑えることがあっただけで、今日という日を迎えたことを肯定できたりすることもあると思うから。


よいお年を、の代わりに、「よい明日を」


そんじゃーね。

2008-12-30 かくも遠き真実

テレビタックルかなにかタケシの番組に例の元幕僚長のおじさんが出ていた。相変わらずくだらない親父ギャクを飛ばしまくっていた。この人の本当の問題はその思想性とかではなく、あの下らん駄洒落癖だと思うよね。言わずにはすませられないのよね、もう体質として・・


まあそれはそれとして。そのあたりの議論を聞いてて思ったのは、たかだか70年ほど前の話に過ぎないのに*1、結局のところ真実なんてわかんないんだよな、ってこと。特にこういう思想的に対立しがちなことって「実際んとこどーだったのよ?」ってのが本当わからない。

これは結構残念。近現代史好きなちきりんとしては是非知りたいところではある。けど、タイムマシンがあってもそれを知るのは相当大変だと思う。だって当時に生きていた人だって、また、相当政権の中心にいた人だって、何がどうなっているのかわかってなかったと思うから。

アメリカの思惑、ロシアの思惑、ドイツの思惑、それだって国にひとつの意見や流れしかないわけではない。そして日本の中にだって様々な有象無象の力の流れがあって、ああいうことが起こった。それをこう「鳥瞰図的に」見ることができる“神モード”とか、めっちゃほしいけど絶対手に入らない。

ちきりん的には「白人国家にしてみれば、劣等民族(非白人)国家が植民地支配側に回ろうとするなんて絶対に許せない」ってことだったんじゃないかなあ、と思うんだけどね。「おいおいニッポン、サルみたいなくせして調子にのるんじゃねーよ」ってことで、ああいうところに追い込まれて、あほな日本がアメリカに宣戦布告したと。

中国等への侵略もそれ自体正当化する気はないけど、いろいろ封鎖されて武力をもって外にでるしか選択肢がないところに追い込まれてもいたんだろうとも思う。

けど、わかりません。全然。どーなんだか。



だって“中立的なデータ・分析・見解”みたいなものがすんごい少ないじゃん。てか、ほぼ“ない”と言ってもいいくらいだと思う。こういうことに関してはwikiから小説から学者の論文から政府見解から、何からなにまで「偏ってる」と思ったほうがいい。もちろん上記のちきりん史観だって同様だ。

というわけで、あのあたりの“開戦に向かっていく日本”ってのの歴史は、もんのすごい先まで、この戦争をなんの感慨もなく語れる人たちが日本の人口の大半になる時代まで(そしてそんな時代は決してこないのだ。)客観的なデータも分析家もでてこないのだろう。


この時代の真実が(同じくらい昔に起こった他のことに比べても圧倒的に)データがでてこないもうひとつの理由は、天皇&天皇の戦争責任論が絡んでいるからだ。“だから語らない”という人がたくさんいる。

また、誰ひとり真実を鳥瞰図的に把握していた人はいない、というのはそうだと思うのだが、それでもキーになる登場人物というのはいて、昭和天皇はまさにその中心にいた人物だ。昭和天皇がなにらか語っておられれば、その当時の真実を知る大きな手がかりになっただろう。

でも今の天皇は昭和天皇のまだ“次の方”に過ぎず、私たちの国にとって“あの戦争における天皇の役割”なり“責任”を議論するのは、まだまだ百年早い、くらいの感じなんだろう。

ちきりんもこの件については自分の目が黒いうちに(自分にとっての)納得できる真実に到達できるとは思っていない。歴史とか実際に起こったことのおもしろみというのは、小説の謎解きのように簡単にわかったりは決してしない、という点にもある。簡単にわかるはずもないレベルのものなのだ。だから面白い、ということ。


最近よくサスペンス分野の小説を読むのだが、結局は最後の一章を読めばすべてはきれいに謎解きされてしまう。そのこと自体が、物語のどうでもよさ、というか、浅さというか、偽者的なところであると思うのだ。

あの戦争に限らず、実際の世の中には数多くの「何が起こっていたのかよくわからないまま」になっている事件、事象がたくさんある。今起こっていることでも全然よくわからないことだらけだ。

そしてその大半の事象に関して、ちきりんもそして世間の多くの人たちも最後まで真実を知らないままになる。それは人の無知さとか、権力の閉鎖性を表しているのではなくて、結局のところ神が創ったもの(人間の世の中)というのは、人間が作ったもの(小説の中の世界)などとは比べようもない複雑さと深遠さに満ちた世界であると。そういうことなんじゃないかと思う。

決して手の届かない真実に溢れた世界だからこそ、最後の一章ですべてがわかるほど単純ではないからこそ、世界はこんなにも苦しく、だけれどもまた反対に、予想もしない希望にも溢れているのだと思いたい。



昨日は「いいかげんにしろよ」と書いた。「なんでこんなことを」「本当にこれしか方法がないっていうんだろうか?」と暗澹たる気持ちになるけれど、彼らには彼らなりの理由があって、この年の瀬に爆弾を落としまくっているってことなのだろう。あれだけ多数の人の命を奪わなければならない理由と正当性が、彼ら側には明確にあるのだろう。それがいったい何を意味し、その決断がいったいどういう意味を持つのか、ちきりんにはわからない。

いやそもそもあの地域がいったいなんでもってこんなことになっているのか。それさえ結局はよくわからない。誰もわかってないと思う。そしてなんでこんなにも解くのが難しい問題になっているのか。いろいろ読み学んでもやっぱり理解できないよね。*2



真実はあまりに遠い。そして決して手に入らない。

私たちが住んでいるのは「最後の一章を読めばすべてが見えてしまうような世界」ではないってことなのだ。


そんじゃーね。


*1:いや70年って十分昔だぜ、って意見があるのはわかりますが

*2:現時点でのちきりん仮説は「アメリカがユダヤの影響が非常に強い国家となっており、アメリカにとってイスラエルは中東における唯一の足がかりにできる土地だからなんとしてもあそこに安心して操作できる安定した国家を作りたい」ってことなのかなあと思ってますが。この理解も、どうだかね。って感じ。

2008-12-29 年末の一言

いいかげんにしろよ、イスラエル!



2008-12-28 ちきりんの実像

好きなこと

(1)水の中を漂うこと

(2)文章を書くこと

(3)韓流ドラマを見ること

(4)美味しいものを食べること

(5)意味不明な妄想にひたること



得意なこと

(1)ひよこのオスメス瞬間判定

(2)仕事上のコミュニケーション

(3)創意工夫

(4)2割の作業で8割まで仕上げること

(5)おもしろおかしく語ること



嫌いなこと

(1)つまらない話を聞いていること

(2)ゆっくりなこと

(3)人が多すぎる場所にいる・行くこと

(4)怖いものを見ること、聞くこと

(5)決められたとおりにやること



苦手なこと

(1)細かい“詰め”、細かい作業

(2)考えすぎないこと、気にしないこと

(3)大人の判断、大胆さ

(4)女らしくなるために必要なことアレコレ

(5)瞬発力や運動神経の求められること全般



以上。





書いてて思った。書きやすいのと難しいのがある。

簡単なのは「好きなこと」で、さくさくっとすぐでてくる。

一方で「得意なこと」は難しい。

好きかどうかは“ちきりんの主観”で決めればよい。でも得意かどうかは客観基準に照らした判断が必要。「これって本当に得意といえるレベルかしら」「自分では自信ないけど、得意ですよねとよく言われるコレはどう?」とか考えないと書けない。

主観で決められる“好きなこと”と、客観基準の判断が必要な“得意なこと”は結構違うと気がついた。


もうひとつ。「好きなことと得意なこと」の区別はとても簡単。好きかどうか考える時に自分がそれを得意かどうかとか考えない。好きってのはそういう直感的な感情だ。

だけど、「嫌いなことの大半は苦手」だし、「苦手なことの大半は嫌い」だったりする。このふたつは「好き」&「得意」のように独立関係にはない。

とても意識的に「好きなのに苦手なことはなにか」とか「得意だけれども嫌いなことはなにか」と考えてようやく思いつくことができた。

なんで「好き」&「得意」と、「嫌い」&「苦手」の関係性に差があるのだろう?


と考えるためにはすでに脳のアルコール密度*1が高すぎる。


また明日。

そんじゃーね。



*1:それを言うなら“濃度”だろ、と。すみません・・

2008-12-27 立法へのヒントを得ておこう

昨日からまたショッキングな感じの数字がメディアに踊ってますねぇ・・雇用環境の悪化の件ですけど・・

この件、永田町と霞ヶ関にあまりに危機感がないのでどーするの?と思っていましたが(これ→*1)、地方団体が年末にかけてそれなりに機動的に動き始めているので少しは救われる人もいるかも。関係者のがんばりに期待です。

ところで、今回のことで“派遣法”等に関して多くの“立法へのヒント”が得られた気がするのでまとめておこーと思いました。派遣法に関しては是非そのものに関する議論がある一方で、必ずしも正社員との“同一労働・同一賃金”を叫ぶだけではなんの解決にもつながらないことは以前にも書きました。(これ→*2

また“日雇い派遣”に関しては全面廃止もありえると思うけど、有期契約や数ヶ月の派遣労働自体を全部禁止にするというのは需給両方のニーズから考えてもありえない、と思います。

であれば、この危機で起こったことをきちんと受け止めて、次の派遣法の改正に何を求めていくべきなのか、なにを修正していくべきなのか、という実務的かつ立法論的な視点から私たちが学べることはたくさんあるだろうと。ってか、そういう意味では今の状態はあまりにもすばらしいヒントをたくさん投げかけてくれているともいえるわけで。

で、ちょいまとめておこうかな、と。

★★★

まず第一に、2年間継続的に働かせたら“強制的に正社員とする”と決めたいところなんですが、それは無理だとしても“法的な立場としては正社員と同等とみなす”という規定を作るべきかなと思います。

9年間も定期的に契約を更新しながら有期雇用で働いてきた日系ブラジル人が解雇されて(会社側は“更新しなかっただけ”と言ってます・・)地位確認訴訟を起こしているけど、これは雇用側の企業、あまりに破廉恥でしょう。こんなあからさまな人権侵害を許してはいかんと思います。

この“2年継続”とかいうのを、雇うたびに工場を変えたり部署を変えたり1週間ほどの間をあけたりして“継続的な雇用ではない”とか主張するアホみたいな企業がでてくるのは目に見えているので、ちゃんと条文に“実質的に2年間以上の継続雇用があるとみとめられる場合は”って書いておいてくださいね、って感じです。

つまり“実際には正社員を雇う必要があるのに、(正社員の解雇が難しいからという理由だけで、解雇が容易い)有期契約で人を雇う”というのは一切許さない、と。そういう趣旨の立法が必要だと思いました。



二番目。有期契約の人を雇う場合に、地方行政団体に一定額のデポジットを納める、という制度を作るべきでは?請負で業務を委託する場合も同様に現金を預けさせる。

たとえば3ヶ月の有期雇用者を雇った場合、月に2万円程度、3ヶ月なら6万円を“預かり金”として近くの市町村に払わせる。この人が2年働くと48万円が預けられることになります。上限をこの2年分にすればいいと思うのですが、これだけの預かり金があれば、その人が契約未更新になった時にとりあえずこの48万円を渡すことができますよね。

テレビ見てると派遣で失業した人が昨日の段階で生活保護申請とか言ってたけど、生活保護ってそんなすぐに現金もらえません。兄弟の家まで確認したりするわけだから。また、海外から働きにきてるとか期間が細切れという理由で雇用保険も支払われない人も多い。でもこういう“契約打ち切り支援金”のデポジットがあれば“非正規雇用”の人全員に対応できるし素早い支払いができそう、それだけあれば数ヶ月は寝食はまかなえるし。

で、その非正規雇用の人を正社員化した際には市町村はこのお金を企業に戻せばよいと思います。それが正社員化のインセンティブにもなるし。月2万円のコスト上乗せって高いと思うけど、非正規社員のコストを少しずつ高くしていくことこそが、企業にプレッシャーをかけるいい方法だと思います。



三番目。工場にしろ会社にしろ、大規模なところに関しては正規雇用社員の比率を決めちゃったらどうよ?と思う。300人の工場で雇える非正規社員は30人まで、とかね。それ以上雇う場合は事業所税を追加で○%アップとかにしちゃえば?

もちろん、おじさんひとりでやってる町工場が3人の非正規雇用ってのは「もうこうしないともたない。しゃーない」っていう下請け企業の場合もあると思うんでとりあえず免除して、100人超えるような工場や会社だけ規制するとかでいいと思うのだけど。これも一定の歯止めを決めたほうがいいと思います。

ちょっと異常だよね。いくら大企業だからといって「数千人の非正規雇用」って変じゃない?非正規雇用の人の数だけでも“大企業”の規模になってんじゃん。なにそれ、って感じです。

そしてもし、そうでもしないと工場が日本に維持できないというなら、もはや工場ごと海外に移すのもやむなしではないかと思います。確かに雇用は失われる。だけどそのほうが皆が危機感を共有できるよね。沖縄の基地も同じですが、今のような一部の人だけに負の部分を押し付けるという方法ではいつまでも大多数の人は“他人事”にしか感じない。日本全体として“なんとかしないと”というようにならないと派遣問題の後ろに隠された本質的な問題である正社員問題であり生産性問題に手がつかないよね。

今問題にあふれているのは“日本全体”であり“日本のやり方全体”であるはずなのに、その咎めはごく一部の人だけが負担している。それはやっぱりちょっとフェアじゃないよね、と思います。


ちなみに大規模な一斉解雇が起こりにくいという意味では少し状況が違いますが、大規模なファーストフード店とかも24時間営業の店でも正社員は店長一人とかでしょ。これもいかがなもんかと思います。小さな店はともかくとして全国チェーンの大規模店には一店舗あたりの正社員数を規定するとかアリじゃない?あの人たち(正社員の人)も異常な働きぶりというか。働かせられぶりというか。ちょっとひどいよね。



最後、四つ目。非正規雇用社員を一定数以上(500人とか)抱えてる企業は「政治献金禁止」にすれば?献金してる金があるなら一人でも二人でも正社員化しなさい、って感じだ。ってか、この施策の目的は、政治献金がもらえなくなる政党、政治家側が企業にたいして「非正規雇用を減らしなさい」っていうプレッシャーをかける理由をつくること。これなら政治家も真剣に企業に要請する気になるでしょ。



まとめると、

一番目:“偽”の非正規雇用をなくすこと。

二番目:非正規雇用を利用する企業にセーフティネットのコストを払わせ、備えさせること。

三番目:非正規雇用の全体数を抑える方策を、大企業には義務付けること。

四番目:この問題に関する政治へのインセンティブを仕込むこと。


★★★

いずれも企業側、経団連側が簡単に合意する話ではないとは思います。ただ、今でている“余剰金を切り崩せ”という案は、これだけ短期流動性に不安がある時期に企業が合意するとは思えない。もらいすぎ中高年正社員の待遇も長期的には切り下げていく必要はあるけど、今の段階でそんなことしても国全体の不安感を増やすだけでしょ。つまり今のこの時期に進める策としてはなかなか難しい、と思うのです。

一方で今はどの企業も非正規社員を増やしたいとはまったく思ってない。そういう時期こそ“非正規社員を雇うとコストが高くなる、面倒な規制が増える”という方向の法律をつくるにはベストな時期なんじゃないかと思います。今は企業はどうせどんどん非正規雇用をきっているのだから、その底あたりの時期に「今後は非正規雇用を雇うなら預かり金を払ってね、政治献金は禁止ね」とか「工場内の非正規雇用の割合は1割以下ね」とか決められても当面は全然困らないわけで。

だからこそこの時期に仕込んでおくべきかも、と。実際に非正規雇用を増やす必要がでてきた時には企業はそのコストをあげるような法律には猛反対するでしょ。だから今考えて、今法案にしておけば?と思いました。


地方行政当局やNPO、契約社員向けの労組の方とかは、現時点では不当解雇と闘ったりセーフティネット確保に多忙で精一杯だと思う。でも民主党とか共産党とか政党レベルの人たちは今よく勉強して次の危機に備えた立法を考えるとか、そういう別の次元で役割を果たすのもありなんじゃないかと思う。立法府にいるってことはそういうこと=そういう役割を期待されているってこと、なんじゃないのかと思ったりもする。法律作れるのは立法府にいる人だけなんだからさ。

★★★

まあとにかく、自分に関係あるないは別として、何年も工場で働いてきてこの年末に家もないって、そんな人がたくさんいる国じゃあかんだろ?と思います。そして今、多くの人が同じように感じていると思います。なのだったらみんなが知恵をだしあって、ちょっとでも明日がよくなりますように。まじでそう願います。






あ〜ら、ちきりんったら超いい人。

なんだそれ?




そんじゃーね。



*1:2ヶ月前のエントリがこちら→“あまりに危機感のない人たち”http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20081202

*2:同一労働・同一賃金 http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20081213

2008-12-26 テロルの構造、ネットの可能性

ちょうど一ヶ月前の11月26日にインドのムンバイで起ったテロについて書いておくです。

捕まったテロリストの一人が「今回の実行犯の多くはパキスタンの施設で一緒に教育と訓練を受けた」と自白してた。それを聞いた時、


ああ、また同じ構造だと思いました。


自爆テロに典型的なのだけれど、過激派っていうのは“頭”=“かしら”がいて、彼等は「テロをする手下」を大量に集めて(洗脳し)育てるのだよね。んでテロの実行部隊として一斉に現場に送り込む。

テロの実行部隊となる人達=自分の命と引き替えに他人の命を奪う人達、には共通点がある。それは、貧しく、無知で、とてもいい人だということ。


パレスチナでは、ハマスという宗教団体が貧しい家庭の集まる地域に寄付をしたり、教育支援をしてる。貧しい家の子供達はハマスのおかげで学校に通え、飢えをしのぐことができる。でも同時にこのハマスという団体は、過激派組織への入り口でもある。

子供たちは勉強会や祈りの会に誘われ、それらに参加するうちに、極めて過激な教えを移植されてしまう。そしていつからか、民族の誇りを賭けた熱い志に人生を賭していこうと決めてしまう。


イスラエルで頻発する自爆テロも、911も今回のインドのテロも同じ。極貧の中に育ち、なんの人生設計も持ちえない彼ら実行犯達にとって、与えられたそのミッションは、彼等の人生において唯一の、意味ある、誰かの役にたつ、自分の誇りと情熱を捧げるのにふさわしい、使命だというわけです。


これはポルポト派の兵士達も、文化大革命の紅衛兵達も全く同じ。貧農の村に生まれ、なんの教育も受けなかった飢えた子供達は、10代の半ばという年齢で“兵士”となることで糊口をしのぎ、やがて崇高なる使命として与えられた虐殺犯としての人生を、奇跡的に巡り会えた貴重な運命として受け入れる。

彼等を操るのは、自らの過激思想を世界に知らしめるために「大量の、自分の命の重みも知らない手下」を必要とする、悪魔のような人たちだ。彼等は贅沢な生活をしているわけではないけれど、自分の過激思想を“自分の命を賭けて”実現しようとは考えてないし、自分の息子に自爆テロをやらせるつもりもない。


この構造ってホントやばいよね、と思うのです。


日本のような国でも、ここまでの(命を賭ける云々の)話ではないけれど、やっぱり似たような構造の問題が起る。

たとえば最近あったネット上での“国籍法反対”運動。


現行法の不条理を正した最高裁判決を受けて行われた法律改正を、「国籍バラマキ法案」であるとか「中国人がホームレスに金を渡して国籍を買う」などと煽りまくり、法律成立反対運動のチェーンメール(もしくは、チェーンブログ)活動を“仕掛けた”人達がいる。

この問題でも、“頭=かしら”には極めて過激な思想をもった人達が存在してる。国粋主義、排外主義的な思想を持ち、大和民族の絶対的な優越性を主張するマッチョな人達で、関東大震災の時に「朝鮮人が日本人を虐殺している!今こそ彼らを叩き潰せ」と煽ったのと同じ種類の人たちだ。

だけど、これらの“頭”に煽られて「国籍法改正反対!」とネット上で叫んだ多くの人達は、思想的にはなんの偏りもないごく普通の、善良な心の持ち主に過ぎません。

自らの良心から「日本のために今こそ自分が頑張らねば!」と意気に感じ、誰から頼まれたわけでもないのにせっせとネット上での宣伝活動に情熱を傾けた。(一部の有名人や政治家までがこれらの動きに同調した。彼らの影響力も絶大だった)


実行部隊として利用された多くの人は、先般の最高裁判決の背景を知らないし、認知という法的行為の意味も理解していない。

「知られないうちに、こっそりと決められた法案だ!」と叫ぶ人達は、最高裁が判決を出した時のニュースさえ読んでない。もちろん、この最高裁判決のずっと前から同じような問題が何度も報道され、改正前の国籍法に問題があったことも全く知らないはず。


「認知が生まれた後でも可能になります。つまり10歳の子供でも認知できるのです!!」と主張する人たちは、少なくとも11年前に親二名が同じ国にいたと出入国書類上で証明できなければ認知なんて受け付けてもらえないってことを知りはしない。ホームレスが金目当てに認知されるなんてことがどれくらい非現実的なことか、理解しえていない。

「最高裁の判決に問題があるのだ。だから法律の改正は阻止すべきだ」と書き込む人は、最高裁判決と法律の位置関係を理解していない。

一番笑えたのは「認知した子がもらう生活保護にはわれわれの税金が使われる。その防止策として、認知した親に扶養義務を求めるべきだ!」という意見。これじゃあ「私は認知が何であるか理解していません。」と言っているのと同じだよね。


この議論を意図的にふっかけた“かしら”の人達は、当然そんなことは十分に理解している。その上で、確信犯としてこの煽りをしかけてる。

彼らの目的は「中国人やイラン人が日本国籍を狙っている!」という「外国人に対する怖いイメージ」を広めること。農水省が「外米はまずいし危険」という印象を植え付けたがっているのと全く同じ。



ところが(ここからが本題なのですが)、今回の国籍法反対のネット言論テロに関しては、非常に早い段階から、冷静かつ専門的な「ちがいますよ、おかしいですよ、その主張」という人が現れました。

詳しい解説ブログやサイトが多数表れて、多くの人が途中から「ああ、そうなのね」と気がつき、いったん参加した「実行部隊」への参加をやめてしまった人もたくさんいた。

これがちきりんにはおもしろかった。


最初の言論テロ的な“仕掛け”は非常に巧くできていた。多くの善意の熱い心の人達がたかだか数日から1週間ほどの間に、宣伝ブログやまとめサイトやご丁寧に動画まで用意して「国籍法改正反対!」を叫んだ。どこまでが“かしら”の仕掛けで、どこからが“増殖する賛同者達のサイト“かわからないほどだった。

ところが、途中で「おかしな動き」に気がついた専門家も多かった。そして彼らの行動も非常に早かった。

名前を出された政治家も自らのサイトできちんとした解説をし、法律の専門家や、これまで長くこの問題の解決(国籍法の改正)のために頑張ってきた市民団体や活動家の方も、それぞれのサイトなどを利用して積極的に発言された。


そして急速に、正論が過激派の目論見を打ち砕いた。未だに検索では、極右の主張を展開したサイトが大量に上位に並ぶし、なかには弁護士であると自称している人のサイトもある。にもかかわらず議論がきちんと収束しつつある、ことに結構な意味がある。“市場”は何が正しいか見分ける嗅覚をもっている、ということ。




それをみてちきりんは思った。


最初に書いた本当の過激テロだって、ネットで一定レベルの防止が可能になるのだろうなって。



外界の情報と遮断された山奥の軍事施設で、過激な思想をまるで「国と民族を救うための、極めて重要な考え」であると教え込まれ、「自主的にあなたの人生をかけてその主張を広めて欲しい」と頼まれて心を熱くする若者達は、もしもネットで世界の情勢を知ることができたなら、きっと「ああ、これは違うかも。俺はのせられているかも」と気がつくことができたかもしれない。

ポルポトによる若者の動員や、文化大革命時の紅衛兵の動員は、今の中国くらいのネットの普及率があれば(たとえグーグルが思想統制に協力してたとしても)おそらく不可能なのではないかしら? 


もちろん第二次世界大戦の時のような「日本軍は快進撃を続けております!」と、国民をだまし続けるようなことも、今ではほぼ不可能でしょう。同じことが中東のテロでも起こりえるはず。

ちきりんは、これもネットが世界を変えうる新しい可能性のひとつだと思う。ビルゲイツが地球のあちこちにパソコンを寄付しまくっていることは大きな意味がある。はやくアフガニスタンとパキスタン国境あたりの山岳部とか、パレスチナとかに配りまくってほしい。

もちろん、ネット上にもテロは存在するし、サイバーテロ的な動きは情報化システムに極度に依存した現在社会にとって今までとは異なる脅威になるでしょう。

でもこのツールの特徴は、“狂気の独裁者”ではなく、“一般の多くの人達”により大きな力を与える点にある、とちきりんは思ってる。そう、ちきりんは“市場”を信じているわけ。



私は今まで、ああいったテロをなくすには世界から貧困をなくす必要がある、と考えてた。けど今は「なくすのは無知のほうでもいいのかも」と思い始めた。そしてそちらのほうはネットの力がまさに活きる分野じゃないかしらん。



などと考えたりする楽観的なちきりんなのでありました。

2008-12-24 誤解を呼ぶためのグラフ

下記をご覧ください。

NHKのHPに掲載されている受信契約数の年度ごとの推移を表したグラフです。*1


単位は万件で契約件数(個人の場合なら世帯数)なので、直近の契約数は3780万世帯です。*2

棒は色が2種類に分けてありますが、左側の紫っぽい色が“地上契約“を表し、右側の緑がかった水色が“衛星契約”を表しています。


f:id:Chikirin:20081224101508j:image


「へ〜!もう衛星契約の方が圧倒的に多いんだ!」

「ほとんどの人が衛星契約してるんだぁ〜」

って思いません??


なんだけど、NHKのページに表示されているオリジナルのグラフには数字が書いてあって*3、小さく見える紫の地上契約は2438万もあり、緑水色の衛星契約である1342万より圧倒的に大きいのです。いやもちろんそこまでしなくても、グラフの上に書いてある数字をよくみれば、面積的にはかなり小さく表示されている紫部分の方が圧倒的に多いのだということは計算できます。


が、


こんな教育上よろしくないグラフを表示するのはやめた方がいいと思わない?


グラフの書き方を習ったことのある人はひとりもおらんのか?


と思ったりする。




が・・世論を都合のいいように誘導するのがメディアの目的だとするなら、これでOKってことかも?




ん〜。*4

★★★

*1:オリジナルが掲載されているページはこちら→http://pid.nhk.or.jp/jushinryo/know/jyushinryo.html

*2:日本の世帯数は2005年で4906万世帯なので全世帯にテレビがあるとすると支払い率は77%です。ただし、母数には病院、ホテル、学校、会社の事業所なども含む必要があり、それらを含めて3780万契約しか払われていないとすると、いったい本当の支払い率は何%なんだろ??と思います。

*3:NHKのページにあるグラフにカーソルを合わせると数字が表示されます。このちきりんページでは表示されません。

*4:受信料の分析でもしようかな〜と思ってNHKのHPを見たんだけど、最初にみたこのグラフで目がとまってしまい、結局分析せず。これはまたそのうち。でも、不払い削減運動の成果は結構あがっているって感じのグラフですね〜

2008-12-20 “ドメでよかった”日本経済

他にもいろいろ書きたいことはあるのだが、でもやっぱり昨今の経済状況についてというか、今何が起こりつつあるのかについて書き留めておくことにする。

多くの人が背筋で感じているように、今回の経済危機はほとんどの人にとって過去に経験のない未曾有のできごとになるだろう。だからこそ後から振り返った時に「あの時ってどんな感じだったんだっけ」ってことを記録に残しておくことに意味があるかも、と思うから。



まず最初に感じること、それは「国際的な国、企業、人ほど大変」ってこと。これは今回の経済危機の大きな特徴だ。

今、この経済状態をどう感じるかということについて人によってすごく温度差がある。危機感の強さは“グローバル経済に近いところにいる人ほど深刻”という状況で、“ドメスティックなものほど、日本だけで完結しているものほど、痛みからも危機感からも(まだ)遠い”という状態だ。

たとえば企業。ソニーやIBMは大規模なリストラを発表した。いずれもグローバル規模でのビジネス展開という点で非常に進んだ企業だ。自動車産業も、日本で国際競争力のある数少ない産業であり、世界規模でビジネスをしている。そして各社とも状況は深刻だ。

中でも海外販売依存度の高いホンダの社長の記者会見での表情は、まだ外部には発表されていない日々計、週計の悲惨さをよく表していた。ここ数年急ピッチで海外展開を図ってきたトヨタも戦後何十年ぶりかの単体赤字だという。

工場労働者の有期契約期限内解雇を通知したキヤノンも海外売上比率が非常に高い国際企業だ。基本的に「海外で成功していた企業ほど、今は大変な状況」なのだ。一方で、“ドメドメ”な企業ほど今は“まだ”この世界同時経済危機の影響を大きく受けていない。

もちろん金融機関でもこの差は顕著だ。グローバルに活躍していた欧米系の会社は盤石と言われたゴールドマンサックスを含めて赤字になりつつある。一方で学生を採用する時だけは“国際的でございます”と言い張ってはいたが実はドメドメでした、というメガバンクの受けている傷は圧倒的に浅い。これは他業界でもほぼ同じ状況だ。


そして人にも同じように影響がでている。最初に影響を受けているのが、上記のような“グローバル企業”で働いていた非正規雇用の人達だ。今は非正規雇用の問題であるが、これらの会社では来年春以降、正規雇用の人達にもボーナス、雇用の面で大きな影響がでるだろう。

一方で海外との取引なんて全くない小さなパパママショップに勤めている人の受ける影響はまだまだ軽微だし、公務員なんていう“定義として海外と関係ありません”という範囲にいる人達も盤石の地盤に立っている。


サービス業でもグローバル企業に依存していた周辺産業はいち早く影響を受け始めている。たとえば飛行機会社の稼ぎ頭である北米へのビジネスクラスは予約が大幅に減少、名古屋と東京の間の新幹線の席も空き始めている。過去5年くらいの間に次々とオープンした一泊4万円を超える外資系ホテルも頭を抱えている。港区に多く存在する家具付きアパートや、高級マンションの空き加減にも加速がついてきた。高給取りの外国人が好んでつかっていたレストランもクリスマス時期だというのに予約が埋まっていない。


マスコミもグローバル企業が払ってくれていた広告費への依存度が非常に大きかったし、不動産会社に関しても、海外投資家やファンドがお金をいれていたところから順番にふっとんでいる。


今、六本木付近で働いていた“外国人”の帰国ラッシュが始まりつつある。リーマンのアジア中東部門を購入した野村は、一部の“日本語ができない外人社員”にたいして「香港に異動するなら仕事を維持する」などのオファーを始めている。それ以外の外資系企業でも外国人社員を帰国させる動きが顕著だ。英語が得意で外資系で働いていた日本人でも部門クローズ、リストラなどで転職活動を始める人が増え始めた。


国に関しても同じだ。つい最近テロに狙われたインドは、IT産業を中心に“グローバルエコノミー”への組み込まれ方のレベルが非常に高かった。また(こちらの場合、やばくなっている理由はそれだけではないが)韓国も日本よりも圧倒的に輸出依存度の高い経済体制であった。そのために予想を超える大きな影響を受けている。


つまり日本は、国際化が圧倒的に遅れていたために、圧倒的に傷が浅くて済んでいる、のである。


これはなかなかに皮肉で、おもしろい(今回の経済危機の)特徴だと思う。


★★★

ドメな企業が相対的に余裕があるのは別の理由もある。彼らには大きな“バッファ−”がある、のだ。

たとえば国内だけで儲けていたメーカーの多くには、過去数年の景気のよい時代に相当の“無駄な経費”が発生している。余分な脂肪をため込んでいる、と言ってもよい。オフィスで雑用や手間のかかる作業を担当してくれる派遣社員、簡単に許可のおりる必要性の疑わしい出張、効果の検証もないままに行われてきた広告プロモーションや採用関連のイベント、厳しく検討されることのなかった取引先との会食の費用、などなど。実は彼らはこれらを切るだけでも今年分くらいなら販売分の落ち込みをカバーするレベルの“経費削減”が可能だ。

また日本企業の多くは、外資系ならとっくに解雇されていたであろう“働きの好くない大量の社員”を内部で養ってあげている。これらの人に“退場”していただくだけで、売り側には全く影響を与えずにコスト削減できる。


また彼らにはもっと大きな“隠し財産”というか“溜め”がある。たとえば販売不振、広告不振が伝えられる大マスコミ。広告も購読料も大幅落ち込みで大変とか言っていても、彼らの一番の財力は大量に保有する簿価のめっちゃひくい都心の不動産にある。オイルショックや円高といった過去の危機や厳しい国際競争の間にそれらの“溜め財産”をすべてはき出して乗り切ってきたグローバル企業とは“隠し持っているものの大きさ”が違う。

ちょっと余談だが、この“日本企業がいかに巨額な隠し財産をもっているか”を象徴的に示した事件が1996年に起こっている。銅不正取引に絡んで社員が3000億円という巨額の損失を出した住友商事の事件だ。これだけの損失がでれば、欧米の企業ならそのことによって倒産してしまう。(欧米の金融機関では内部のトレーダーなどが不正取引で巨額損失を出すと銀行全体が潰れてしまうことが実際に起こっている。)ところが日本企業の場合は、簿価のとても低い、しかも全然使っていない運動場やら社員寮みたいな土地を売り払うことによって、数年分の利益額にも値する巨額損失を補填できてしまう。

これらの無駄な蓄えがずうっと許されてきた理由は、海外で全く通用しないビジネスをやっているために外国人株主が非常に少なく、資本なり資産を全く有効活用しないという無駄に溢れた経営を見逃してもらえてきたからだ。そしてそのことが、この経済危機の中で日本企業を大きく守る“バッファー”として機能しつつある、ということなのだ。


“ドメでよかった!”と感じている人達が今、この国にはたくさんいる。





なんだか皮肉な状況になっていて笑える。


暴風に煽られて飛んできた巨大看板で、

先頭集団を走ってたランナーは全員転ぶみたいな。



そんな感じ。




-----------------

追記)このエントリの解釈についてのエントリは下記。

http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20081223


また、業界別に壊滅度を整理し、国際競争力のある業界の壊滅度が高く、壊滅度の低い業界にはドメな業界が多いことを整理したリストはこちら

http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20090108

2008-12-18 “深読み”ちきりん

だから、こーなることはわかってたでしょ。↓

  これから世界で起こりそうなこと列挙


なのに、こーだからさ〜。↓

  あまりに危機感のない人たち


でも契約社員が大量に解雇されつつある大規模な工場のある自治体の一部では市町村が動き始めたようなので少しよい感じかも。

とてもおもしろいと思うのは、「国」ってあんまり動いている感じがしないでしょ。雇用対策とかいって“渋谷ロフトの見学”してるような総理に率いられてちゃ当然かもしれないが、国のやる政策って定額給付金にしろ、“6000万円以上の家を買う人のための住宅ローン減税”にしろ、“土日に自家用車で高速道路を走り回る人への優遇策”にしろ、この期に及んでピントはずれもいいとこじゃん。“なんやねん?”って感じでしょ。ところが、大規模な工場を抱える市町村は、とりあえず市役所で人を雇うとか、空いてる部屋を貸し出しにかかるとか、いろいろ始めてるわけです。

地方の方が圧倒的に危機感があり、具体的な手を打とうとしている、とちきりんは思うわけ。

なんでこうなるかっていうと、それはつまり「他人事じゃないから」ですよね。地方の街にとって千人近い人が働く大工場は、街のすべて、と言ってもいい存在になっている。そこで働く派遣社員のうち数百人が失業するというのは、“具体的に目に見える危機”なわけです。街のあちこちにホームレスの若者が溢れるかもしれない。寒くて凍死や餓死する人がでてきてもおかしくない。彼らに部屋を貸していたアパート経営のおじいちゃん、おばあちゃんも困窮するだろう。定食屋だってスーパーだって潰れてしまうかもしれない。犯罪が増えたらどうしよう。

地方の行政単位にとって、それは「テレビニュースの世界」ではなく、「おらが街の一大事」なわけです。だから“早く手を打たなくちゃ!”と思うし、本当にニーズのあることにフォーカスしていく。“正月明けに出社してみたら、道端で人間がうずくまったまま凍ってたり”したら、洒落になんないぜベイビー!って思うわけです。危機感が違う。


霞ヶ関から日本全国を見ていても、こういう手は打てないんです。それはあの人達がアホだとかやる気がないということとは別に、“無理”なんです。

だってまず第一に“見えない”でしょ。ニーズが。どこで具体的に何が必要なのか、中央で全部見るなんて誰にしたって無理です。そして危機感がもてないんですよ。遠い地方の街でホームレスが溢れることを想像するのは、その街を全く知らない人にはやっぱり難しい。*1

霞ヶ関の人達にとっては、これからの財政刺激策も含め超巨額になるであろう財政赤字の方がよほど危機感を感じる全く以て恐ろしいことなんです。そっちの方が“派遣切り”なんかよりよほど背筋の寒くなるリアルティのあることなんです、彼らには。だから「3年後に消費税増税」という文字をなんとしても提言書に入れさせることに血眼になり必死になる。悪気があるわけじゃないんだろうけど“いや今そんなことして何になるん??”ってなことを一生懸命にやっている。

地方のニーズは本当に様々に違ってきている。日本中どこもかしこも新幹線を欲しがり、高速道路を欲しがり、住宅と家電と車を欲しがっていた時代とは違う。

高齢者しかいないのに民間の介護企業が全く進出してこない超高齢化村落と、大規模工場で大リストラが行われつつある地方中堅都市と、社会保障に守られていない外国人が大量に居住している街と、東京都心のような大都市では、全く行政ニーズが違ってきているわけです。中央では効果ある政策がタイムリーに打てない時代になってるですよ、ということ。


だ・か・ら

地方分権が必要なわけ。


みんな今回よく見ておけばいいよね。一番頼りになったのは誰なのか。次の体制は「その人に予算と権限を与える体制」にする必要があるんだよ。ってことなのさわ。10年後に道州制の是非が議論になるから、よーく覚えておいてね!!という気がします。

★★★

もうひとつ気がついた興味深い点。契約社員の解雇について、「来年3月まで契約が残っているのに、いきなり解雇された」という例がよく報道されてるでしょ。一応30日前の通知はやってるところが多いようですが。

んでね、この“有期契約期間中の契約解除が違法なのか違法でないのか”が報道で全然言及されないのが不思議なのよね。本人のインタビューやナレーションでは“契約期間は残っているのに解雇通告をされた”と言うのだけど、コメンテーターやアナウンサーは「合理的な理由がない限りこれは許されないんです。」とか「断固戦ってほしい!」という言い方をほとんどしないんですよね。

新卒の内定取り消し問題の場合だと、「合理的な理由がない限り、内定取り消しは許されない。」「不当な扱いに泣き寝入りせず、断固戦って欲しい。」等の勇ましいコメントを連発してたのに、です。

なんで期間工や契約社員の人のほうの問題を報道する時は「可哀想ですね」とか「行政の迅速な対応が求められますね」的な報道に終始するわけ??なんで「不当だ」「戦え」と言わないの???戦ってる労組の人はカメラで映しまくるのに、アナウンサー自身が「不当です!」「戦うべきですよね!」となぜ言わない???法律的にはこれ、同じような問題のはずなんだけどな。



で、想像するにおそらく、内定取り消しをやってるのは不動産業者などで比較的小さな企業、せいぜい中堅企業まで、が多いんだよね。つまり“テレビでCMをたいして流していない”企業なんじゃない?もしくは(今でも既に潰れそうで)これからCMをしてくれるとは思えない会社ばっかり。

ところが一方、工場の契約社員や期間工を大規模に切っているのは、ごぞんじのとおり自動車産業や電気産業の、いわずとしれた超一流の大製造業様。一定の売り上げをあげるためには(少々は減らすでしょうが)まだまだCMの大口スポンサー様様、なわけ。*2



にゃるほどね〜。

って気がしたですよ。


だから「断固戦え」って言わないわけね?

だから「不当だ」「違法だ」と言わないワケね?

「可哀想ですね」「行政がなんとかしないと」みたいなことしか言わないのは、“だから”なわけね?




最初に紹介した以前のエントリに書いたように、実体経済の落ち込みはまだまだこれからが本番。相当悲惨なこと含めいろんなことが起こると思うけど、こういう時こそきちんと見ておきたい、と思う。何が起こるのか、誰が何をするのか、社会はどう動くのか。こういう時でないと見えないものがある、って思うから。



ん〜   じゃ。


★★★

本日のエントリは“ちきりんA”の執筆でお送りしました。*3

ただし青字部分は、“深読みちきりん”が監修いたしました。




*1:ちょっとずれるけど、舛添さんが公的な住宅のあいてる部屋を視察してて(あれはあれでいい案だと思いますが)、“収納棚もあっていいね”とか言ってて・・・吹き出しましたよ。収納棚??誰もんなこと気にしてないってば。

*2:舛添さんの態度も違う気がする。多額の与党献金をくれる経団連企業の方は仲間の狢だからか?

*3:“ちきりんA”って何?という方は、この日のコメント欄をご覧ください。→http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20081203

2008-12-17 帰ってきた・・・

とりあえず食べたものを書いていこう。


(1)家に到着の15分後

・おでん(セブンイレブン)・・卵、大根、ツブ貝、白滝、スープいっぱい

・ごはん(冷凍してあったものを)

・ザーサイ(セブンイレブン)


(2)その30分後

・札幌メルヘンの生キャラメル(一粒)

・森永アロエヨーグルト


テレビつけたら麻生さんが「3年後に消費税増税っていうのをなんかに明記したいと頑張ってる」というニュース。増税? 今がどんな時かわかってんのかね??

宇宙の国に帰ってきたみたいだす。この人ほんと大丈夫なんでしょうか。まっ、などということは“ちきりんA”に任せとけばいいか。


じゃ、また。




追記)11時半pm これから

・すき焼き風のもの

・ごはん


むっちゃ美味しいよね、なに食べても。


追記)12時半am

・ハートチョコレートプチ2個


これ以上だらだら食べ続けるとやばいので歯磨きすることにした。

2008-12-16 ちきりんの立ち位置について

最近、セーフティネットだの非経済的な豊かさだのについて書くことが多く、こんなことばっかり書いてると、つい最近このブログを読み始めたばかり、という方には、ちきりんの“立ち位置”について誤解する人もでるんじゃないかと思ったので、確認と整理のために一度書いておきます。



まず、ちきりんは「市場原理」=「マーケットメカニズム」を信奉している自由主義経済思想のサポーターです。小泉さんと竹中さんの政策を今でも正しかったと考えていますし、世の中がおかしくなっているのはポスト小泉の人達が皆して改革をストップし先祖返りしてしまっているからだ、と考えています。(竹中氏の考えと同じです。)

市場原理の結果として様々な格差ができるのは当然だと思っています。悪いこととも思いません。また、いずれにせよ今の日本の格差なんて問題になる範囲ではないと思っています。もっと言えば、本来もっと格差があるべきものが不自然な力によって糊塗されていることが大問題だと思ってます。

ただし貧困問題は日本にも存在すると考えており、解消する必要があると思っています。貧困により“機会平等”が崩れることは大きな問題と感じています。



ちきりんが市場原理を支持する最大の理由は「社会に新しい価値を生む源泉は、市場原理に基づく公正な競争である」と考えているからです。市場原理を妨害するものは各種ありますが、ひとつが公的な規制、もうひとつが私的な束縛、たとえば日本的道徳、世間の目、村社会的な規範など、です。

日本社会が新たな価値を生み続けたり、新たな成長軌道を実現したりすることができないでいるのは、これらの市場原理を妨害する公的、私的な縛りが多すぎるからだと考えています。

これらの規制や世間的常識の上に、非常に安逸な利益を貪る“既得権益層”は未だ増殖を続けており、これを打ち砕く“それ以外の層”の力は全く不十分な程度にしか発達していません。少しずつ力をつけつつあるとはいえ、おそらく内的な力だけではこのパラダイムの変革は不可能であり、なんらかの外的ショックを待たない限りこの国の状況は変わらないだろうと感じています。

なおちきりん自身は、ど真ん中ではないけれど、上記の“既得権益層内”にて生活しています。



世界に関して言えば、現在の経済の混乱は市場原理の運営におけるひとつの失敗であり、こういうことは100年に一度避けがたく起ることだと思っています。が、だからといって市場原理、自由主義的な経済体制を否定する必要はまったくない、と考えています。むしろ自由経済が継続的に存続していくために必要な定期的な力の発散(地震のようなもの)と考えています。

また、ちきりんは「社会を変えうるネットの力」も信じていますが、これは市場を信じることと同根の考え方からきています。市場原理を信じると言うことは「一人の優秀な独裁者よりも、衆愚を含む市場全体の力を信じる」ということです。これは管理者や固いルールのないネットの世界の可能性を、中央集権的な権力によって秩序立てられた既存の社会制度よりも高い可能性をもつものと信じることにつながっています。


ちきりんは、人間の生物学的な特徴、動物としての本能を、とても魅力的だと思っています。“人間の汚ならしさ”を愛しています。他者への妬みや、自分勝手な欲望や、怠惰や安逸に流れがちな傾向を持ち、狡猾で無知で孤独で気分屋な、自然な生身の人間をすばらしいと思っています。効率的な市場を形作ることができるのは、そういった“人間らしい人間”の集団だと思っています。

市場原理、民主主義(多数決)を唱えると、「日本は民度が低いから無理」とか「ポピュリズム批判」で返されることがあるのですが、ちきりんとしては、“民度”などという目盛り(概念)自体がナンセンスであると考えていますし、ポピュリズムを克服する方法こそが市場原理であると考えています。

★★★

上記のような考えと、ちきりんのもうひとつの基本的な信念(信仰?)である「多様性の並び立つ社会の実現を強く求める」という考え方は矛盾するものではありません。

誰も彼もが必死で働いたり、誰も彼もが必死で成長したり頑張ったりする必要は全くないと思っています。意思として頑張らない人、能力として頑張れない人、結果として成果のあがらない人が排除されず共生できる世の中を希求しています。

他の人と異なる考え、異なる経験、異なる感覚を排除することのない社会を豊かであると感じます。「世間と同じように生きられない人」が息苦しくない世界の実現を重要と考えています。


日本が日本人だけの国である必要も感じません。海外から労働者、学生、さまざまな人が日本にやってきて、永住したり、結婚や出産を通して混じり合い、また反対のこと(日本人が外にでてゆく)もどんどん起ればよいと思っています。

先日来の国籍法改正議論で猛威をふるった、排外主義的な国粋主義者を忌み嫌っています。多様な価値観が様々なコミュニティの中でぶつかり合い、併存すること(理解し合える必要はない)を期待しています。


自分の意見は比較的はっきりと持つ方ですが、他の人が異なる考え方を持つことに意義を唱える気はありませんし、意見が異なる時に「どちらかが正しく、どちらかが間違っている」とは考えません。

同じものは見る角度により色も形も違ってみえるし、見る人によっても異なるものに見えるかもしれません。それはそれでいいと思います。

したがって議論をふっかけられてもあまり議論にならないです。「あなたはそういう考えなのですね。ちきりんはこういう考えです。」というだけです。議論して歩み寄って「同じ考え」に行き着く必要性を感じません。*1



以上。


つまり、

ちきりんは“市場”の力を信じています。

そして、

“多様性の受容される社会”を望んでいます。




これがちきりんの立ち位置です。


んじゃね。

*1:何かを共同運営しているとかいうなら合意に到達することが必要なのでしょうがそれは別の話なので。

2008-12-15 海外出張中の体調管理法

あと数日で出張も終わり。

今日、最後の移動をしてちょっとほっとしてます。

一人で出張していると一番気になるのは体調。

特にインフルエンザなどになったら、海外で一人で寝込まないといけないわ、(代わりがいないので)すべての仕事をキャンセルする必要があるわ、あまりに悲惨なことになる。


3週間ものホテル暮らしや連日の飛行機での移動は、もともと「すごい頑丈!」というわけではない私にとってとても負担が大きいのです。

旅好きではあるのだけど、実は出張であれ遊びの旅行であれ 2週間以上家を離れるとたいてい一度は体調不良になります。

熱がでる場合もあるし、おなかをこわす場合もある。基本的には疲れからくる不調です。ので、出張中は疲れがたまらないよう、抵抗力をつけるよう常に気をつけています。

というわけで、ちきりん流 海外出張中の体調管理法!


ルールその1:時差を気にせずとにかく寝る!

細切れでも時差でぐちゃぐちゃでもいいから、とにかく寝ます。

仕事の合間に2時間休みがあって眠ければ、昼間でもパジャマに着替えて寝ます。「風邪は、寝て寝て寝て寝過ぎて寝られなくなった頃に直る」という信念というか経験則があります。

時差解消法として、「眠くても明るい間は眠らない」とか書いてあるのを読むことがあるのですが、米国から欧州を回って日本に、とかいう出張をする私にとってそんなことしてたら全然眠れないです。

ので、とにかく「隙を見つけて寝る」というのが第一原則。


ルールその2:ビタミンCをとる。

主に果物から。ちきりんは“錠剤”は飲まないんで。

米国では空港やデリで「カットフルーツ」を売っているので簡単。毎日少しでも必ず食べるようにしています。

レストランやルームサービスではガス入りのお水とそれに添えるレモンかライムを頼んで、水にこれらを絞って飲みます。

思い込みかもしれないけど「抵抗力回復にはビタミンC!」ってのがあるんで。


ルールその3:体を温める。

できるだけ暖かいものを食べ、飲むようにしています。

食べてて汗をかくような食事が大事。スパイシー系もいいよね。後はスープでしょうか。食べて体内を暖めた後は暖房を強くしてたくさん着込んで眠ります。

寝こんでしまった時も紅茶をルームサービスして、レモンとミルクを両方もってきてもらいます。

レモンは水に搾って飲み、紅茶は牛乳で。これでビタミンCと栄養(牛乳)が両方とれるし、暖かい紅茶で体がぽかぽかします。


ルール4:風にあたらない。

元気な欧米人はこのマイナス気温の中ランニングしてますが、あんなコトしたら私は一発で熱がでる。

部屋の中でストレッチするくらいが十分です。(ただし運動不足で太るけど・・)


風邪をひくきっかけは、

(1) 風にあたる。(長時間あたると必ず、という感じ)

(2) 人混みに何時間もいる。(お買い物とかもヤバイです。)

(3) 食事とお酒(長時間かけて脂っこいものを大量に食べて、遅くまで飲むのにつきあって・・。最初に胃腸の不調、それに伴い熱がでて、そのまま風邪に、というパターンです。)


の3つが多いのですが、ルール4で (1)だけをあげたのは、(2)と(3)は仕事で仕方ない場合もあり、ルール化しても守れないから。


という感じ。とりあえず、

1.時差を気にせずとにかく寝る!

2.ビタミンCをとる

3.体を温める

4.風にあたらない


あと数日、無事に仕事を終えて帰れますように。


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じゃね!


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2008-12-13 同一労働 同一賃金

同一労働・同一賃金に関して、「街頭インタビュー」を行いました。


レポーター:「同一労働・同一賃金について、どう思いますか?」

通行人A:「同一労働同一賃金が実現していないのは、日本の大きな問題です!

正社員と非正規の社員では、同じ仕事をしていても貰える給料が全く違います。

その上、片方はボーナスもあり雇用も守られていて、年金から保険まですべての福利厚生を享受できるのです。

一方で、非正規雇用の人は賃金も上がらないし保障もない。ひどすぎます。“同一労働・同一賃金”大賛成です!!」

レポーター「熱いご意見をありがとうございます!ところでAさんのご職業は?」

通行人A(ややムッとして)「僕ですか? 自動車工場で期間工やってます。

もう 7年もね。入ったばかりの正社員よりよほどスキルはありますよ。

でもそれもあと数週間だけの話です。なんせ契約は今月末までなんでね。(ためいき)」

レポーター「なるほど、お怒りはごもっともです・・」


★★★


レポーター、ややショックを受けつつ、次の通行人の方にマイクを向ける。


レポーター:「“同一労働・同一賃金”について、どう思いますか?」

通行人B:「とんでもありませんよ。同一労働・同一賃金のおかげで僕は職を失ったんです」

レポーター:「どういうことですか?」

通行人B:「僕が勤めていた電機メーカーの工場は3年前にベトナムに工場を造りました。

そこでの人件費は日本の 10分の 1以下です。つい先月、うちの会社は僕が働いている日本の工場の閉鎖を決めました。

その理由が“ベトナムで同じ製品を組み立てるワーカーの給与は月 2万円だ。

今は“同一労働同一賃金”が常識だから、同じ仕事をしてるおまえらにも月に 2万円しか払えない。

だけど、それじゃあこの国では最低賃金以下になっちゃうから日本じゃ操業できない。ということで日本の工場を閉めることに決めた”というんです。

“同一労働・同一賃金”なんておかしな理屈です。

労働者はそれぞれ自分の生活費に応じた給与を貰うべきであって、仕事の内容が同じだからといって世界一律に給与を同じにするのは間違っていますよ!」

レポーター:「なるほど・・・お怒りはごもっともです・・」


★★★


正反対の意見に戸惑いつつ、次の人にマイクを向けるレポーター。あっ、この人、日本人じゃない。。。日本語通じるかしら?


レポーター:「ええっと、what do you think of 同一労働・同一賃金?」

通行人C:「ワタシニホンゴハナセマース」

レポーター:「よかったですー。ご意見を教えてください!」

通行人C:「同一労働・同一賃金、ワンダフルです〜。

ワタシの国では、この原則にそってチンギンがすごくあがりました〜」

レポーター:「どこの国で何の仕事をされているのですか?」

通行人C:「インドでITのシゴトをしています〜。

今は自分のカイハツ会社をケーエーしています〜。昔は自分でプログラム書いてました〜。」

レポーター:「なぜ“同一労働・同一賃金”で賃金があがったんですか?」

通行人C:「アメリカの会社は仕事を発注する時、アメリカや日本やインドの会社や、いろんな国の会社に入札させます〜。

彼らのゲンソクは同一労働・同一賃金だから、同じクオリティの仕事すれば〜、インドの会社にも同じ額を払ってくれます〜。

そんな価格で仕事がジュチュゥできたら、いっぱいいっぱい利益でます〜」

レポーター:「お〜なるほど〜。インドでは皆同じような考えですか?」

通行人C:「そうです〜。インドでは、同一労働・同一賃金とグローバリゼーションはリンクしています〜。

グローバルに同一労働に同一賃金が払われるようになったから、僕たちもお金持ちになれるです〜。

センシンコクとトジョコクの格差がなくなるのは、同一労働・同一賃金のおかげですね〜」

レポーター:「なるほど。これからも頑張ってくださいね!!」


★★★


結構いいことあるんだな〜。やっぱり大事なのかな〜、同一労働・同一賃金、と思いつつ最後の一人にインタビュー。


レポーター:「“同一労働・同一賃金”について、どう思いますか?」

通行人D:「カメラをとめてくださいっ!」

レポーター:「えっ?すみません!(がちゃん)・・・ええっと、ご意見をいただくことは可能ですか?」

通行人D:「はい。ええっと。僕は反対です。大きな声では言えないけどね」

レポーター:「なぜですか?」

通行人D:僕は正社員です。会社には僕と同じ仕事をしている契約社員がたくさんいます。

同一労働・同一賃金って、僕の給与が彼らの給与と同じになるってことなんですよね?そんなの絶対に困ります」

レポーター:「大幅に給与が下がってしまうということですね?」


通行人D:「はい。でもそれだけではないんですよ。

一昨日、ちきりんさんもブログに書いていたじゃないですか。見解の相違ってエントリを。

同一労働・同一賃金というのは、あれでいえば意見A、つまり「給与は仕事の対価である」という思想に基づく意見なんです。

「同じ成果の仕事をしていたら、給与は同じであるべきだ」というのが同一労働・同一賃金の基本です。

それは「賃金と仕事内容に関係性を持たせろ」ってことです。


でもね、考えてみてくださいよ。

20才の若者と、僕みたいに妻と子と親とローンを抱えた50才では生活に必要なお金の額が全く違います。

同じ仕事だからって同じ給与にされたんじゃ、たまりません。

給与は生活に必要な分が払われるべきです。年功序列組織には同一労働同一賃金はなじまないんですよ」

レポーター:「なるほど・・」


通行人D:「同一労働・同一賃金っていうと聞こえがいいでしょ。まるで“差別がありませんよ”というように聞こえるでしょう? だから労働者はだまされそうになっています。

だけど実際には、そんな原則を飲んだら最後、先日のエントリの意見Aの奴らの思うツボです。

それに意見Aの人の主張が通っても非正規雇用の人の給与はあがりません。

非正規雇用の人のことを心から考えているのは“意見B”の人達なんですから!


とにかく、そんな原則が達成されたら正社員も中高年も全員が、今の非正規雇用の人の給与になるだけです。

しかも何年働いても給与は全然あがらなくなります。

そんなんで喜ぶのは誰ですか?考えてみてください。喜ぶのは株主や経営者だけですよ」


レポーター:「おお、懐かしの資本家と労働者の対立構造ですね!」

通行人D:「ふん。あとは自分で考えてください。僕はこれで」

レポーター:「あっ、Dさん! Dさん!!」

あああ、逃げていっちゃった。



ところで・・

皆さんは、同一労働・同一賃金に賛成ですか?それとも反対?

それとも、

「日本国内だけの同一労働・同一賃金」に賛成?

「世界レベルでの同一労働・同一賃金」には反対だけど?


f:id:Chikirin:20150810175729j:image:medium

そんじゃーね。


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2008-12-12 このキャラで仕事も

この前、会社の人4人と明け方までという長い時間飲んでいて、そのうちの一人がちきりんの部署の元上司で、彼が「ちきりんはすごい」と何度も言うので、「いったい何がすごいわけ?」と問い詰めたら、*1


「本質をずばりという。」「しかも、あからさまな言葉で」


と言われました。



これって、


「身も蓋もない奴だ」


って言われたのと同義だよね、多分。





リアルでもネットでも同じキャラだし。


てか、



「仕事」と「ブログ」が同じキャラでいいのか?*2




うー


んじゃ。


*1:実際にはもうちょっと丁寧な言葉で聞きました。

*2:てか、もしかしてみんな同じキャラで働いているんだろうか?実はちきりんはつい最近まで、自分が“身も蓋もない”性格だなんて意識してなかったんですけど。リアルでもネット上でもね。ふむ。

2008-12-11 見解の相違

若年失業者問題に絡んで

企業は、不当に高給を得ている中高年を解雇できないから、新卒採用を抑えて総人件費を下げ、足りない労働力は非正規雇用でまかなった。


したがって若者の正社員採用を増やすには、中高年をリストラしやすくする必要がある。

という意見があります。これを“意見A”としましょう。


それにたいして

「中高年は家族を養っている。彼らがリストラされたら、その子供である若者が大学に行けなくなるだけである」


「解雇を容易にすると一時的には若者の雇用が増えるかもしれないが、若者がいずれ中高年になった時に雇用の安定性を失う」

と反対する“意見B”もあります。

このふたつの意見の違いをみてみましょう。


<相違点1>

Aは、「労働者全体に回る資金は一定」という前提のもとで「労働者内での資金の分配方法」を問うています。

一方Bは「資本家のお金を、より多く労働者側に回すべき」という意見です。つまり、AとBには労働分配率に関する意見の相違があります。


<相違点2>

Aは「仕事の成果と報酬の関係」を重視しており、若者の失業問題とは別に「中高年の得ている対価が不当に高い」という問題を指摘しています。

しかしBでは「問題は若年者に仕事がないこと」のみであり、中高年の給与が成果以上であることは、なんら問題ではないと認識されています。

Bにとって、給与とは仕事の対価ではなく「生活の必要資金を社会機関が個人に分配する仕組み」なので、子供の教育費やローンを払う必要がある中高年の給与は、現在の額で妥当、もしくはまだ不足しているとなります。

労組は「賃上げ」を求める理由としてよく「過去一年で物価が○%上昇した」と言います。この言葉が、彼等が「給与」を何だと考えているか明確に示しています。

Aからみれば、仕事の成果の集大成である企業業績が落ちれば、賃下げもありえます。しかしBから見れば、企業業績が下がっても物価があがったなら、賃上げを要求するのが当然です。給与を何と考えるか、この点も全く違うのです。


<相違点3>

Aは若者に仕事がないことを、給与問題というより「人材育成」「将来の競争力」の面から憂慮しています。

「仕事のスキルを身につけ、様々な経験を積む機会」が、今後 20年でビジネス社会から引退する中高年に独占され、若者に与えられないことに危機感を持っているのです。

Aによれば「給与は仕事の成果に基づく報酬」であるため、スキルや経験を積まないと一切上昇しません。より高い報酬が必要な年代になるまでに、若者がスキルや経験を積むことが重要なのです。

だからこの問題は社会福祉で解決できるものではないのです。失業保険や生活保護では生活費は得られても、スキルも経験も得られません。


一方Bは、仕事のない若者は社会福祉で救われるべきと主張します、

自分たちの仕事の一部を若者にわけるワークシェアリングには反対です。

この問題を解決する義務があるのは、同じ労働者である自分達ではなく、国であり資本家だと考えているからです。


「社会福祉ではスキルと経験が得られない」という点も問題視されません。

「資本家達がより儲けるために、より仕事の早い労働者が必要だから、スキル向上などと煽っているだけ」と考えています。


また経営者は常に、できる奴とできない奴の給与に差をつけて労働者の分断を図ろうとしているが、そういう「むやみに競争を煽り、労働者内に格差を作って仲違いさせる作戦」にはまってはいけないというのがBの意見です。

こうなると、労働者の権利である休日を利用して自己研鑽するなどというのは、資本家の思うつぼということになります。

このようにAとBでは、労働者のスキルアップは誰を潤すのか?という点に関しての大きな意見の相違があります。


<相違点4>

AはBに対して、「資本家側のお金を労働者側にこれ以上回すのは無理である。そんなことをしたら企業は世界との競争に勝てない」「高福祉社会を実現するためにも、経済成長が必要なのだ」と言います。

Bは、「競争は際限のないものであり、それが理由で労働者にお金がまわせないというのは詭弁だ。」と考えているし、

福祉財源に関しても「国民が財源を云々する必要はない。財源とは優先順位の問題なので(=お金がないわけではないので)、国民側が高福祉実現のための方法論まで考える義務はない。」と言います。


ここで明確になるのは、Aは「権力者側」に近い発想であり、Bは「権力者と対峙する立場に自分をおいている」ということです。「A=権力者である」ということとは違います。あくまで「視点をどこにおくか」という問題です。

たとえば一般家庭でも子供は「あれ買って! これ買って! 学校でみんな持っている!」と言います。財源の話なんてしません。

が、夫が「パソコン買い換えたい」と言い、妻に「そんなお金どこにある?」と言われれば「わかった、タバコはやめる」くらいのことは言わざるを得ません。

この場合、夫は権力者ではありませんが「権力者側に近い発想」を求められる立場にあるため、「あれ欲しい。けど、財源は知らん」とは言えないのです。


この不況下で労組が賃上げを求めることに違和感を持つ人も多いと思いますが、Bに言わせれば「財源問題は自分の問題ではない」のです。


まとめておきましょう。

意見A

・給与は、仕事の成果の対価である。


・したがって、誰であれ仕事の対価に見合わない給与をもらうのは不当だ。


・労働者は「仕事を通して得られるスキルと経験」を積むことにより、仕事の対価である報酬を増やせる。


・追加的な支出を求める場合、財源をセットで考えるのは“責任ある立場の者として”当然である。


意見B

・給与は、生活必要資金の個人への分配である。


・仕事の対価に見合っていなくても、それがその人の生活に必要な額であるならそれは正当な額である。


(反対に、たとえ仕事の対価であっても生活費を大きく超える報酬を得るのは不当である=いくら仕事ができても、生活費の安い若者が高給をもらうのは不当である)


・労働者がより高いスキルや経験を得ても、得をするのは資本家だけだ。


・自分たちが要求することの財源を考える必要はない。それは経営者や権力者の仕事である。(彼らはそれだけの権限と富を独占している。)

ということでしょうか。


そして、BはAを「いたずらに世代対立を煽り、労働者の分断を図る卑劣な意見」と非難し、反対にAはBを「未だにマルクスの亡霊に取り憑かれている100年遅れた職業活動家」と見ています。

もしかすると両方とも若年者失業問題を“利用”して、自説を唱えているだけ、なのかもしれません。彼等が若年者失業問題を「解くべき課題」ではなく「利用できる課題」と考えている限り、若者が救われることはないでしょう。


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そんじゃね


http://d.hatena.ne.jp/Chikirin+personal/  http://d.hatena.ne.jp/Chikirin+shop/

2008-12-10 適当に返事すると危ないかもよ

現在ホテル住まいってほどでもないが、ホテル滞在中のちきりんなのですが、昨日の夕方に部屋に電話があり、「お掃除の人がお部屋に入ったら、あなたのお部屋で子供だけが映画を見ていた、って言うんだけど、本当かしら?」とのこと。


へっ?子供??


私は子供連れじゃないよ、と答えると「あらっ、ごめんなさい。部屋番号の間違いね!」と言って切れましたが。

これ結構驚いた。この国(アメリカ。全部の州かどうか不明)では小さなこどもを家やホテルの部屋に子供だけでおいておくと「犯罪」なので捕まっちゃいます。それは知っていたのだが、「お掃除のおばさんがそんなこといいつけるんだ!」ってのは想像してなかったです。

前にも書きましたがお掃除のおばさんってホテルの人とはちょっと違う層ですからね。そんな高い倫理観に燃えて仕事しているような感じではないです。だからわざわざそんなトラブルの元になるようなことを報告してるなんて思わなかった。

たとえばお掃除に部屋にはいってそこで人が倒れていたら当然報告するでしょ。部屋に行ってみたら「子供だけでテレビ見てた」ってことが、それと同様のこと、誰か倒れてるとかに相当する事態ってことなのね、とあらためて思いました。

一応マニュアルがあって「こういう場合は必ず報告しろ」となっているんだとは思うけど。あと一応、通報義務もあることも知ってたんだけど。だけどホントにやるんだ!?って今回初めて知りました。

アラブの国だと道ばたで男性が女性に話しかけたら犯罪だという国があると聞いた。話しかけたら、か、誘ったら、か忘れたけど。

国によって常識も違うから気をつけないとね。


んじゃ。

2008-12-08 清朝の王女に生まれて

昨日読み終えた「清朝の王女に生まれて」、著者は愛新覚羅顕。ラストエンペラー溥儀の親戚で、粛親王*1という清朝の皇族の末娘です。

清朝の王女に生れて―日中のはざまで (中公文庫BIBLIO)

清朝の王女に生れて―日中のはざまで (中公文庫BIBLIO)


この粛親王には 37人の子供がいます・・・。その一人は、東洋のマタハリと言われた女スパイ川島芳子で、この本の著者は芳子の妹にあたります。

ちきりんはこの「愛新覚羅家」が大好きで関係者が出している本を片っ端から読んでいます。ほぼすべてが実話、回想録で、歴史の流れがビビッドにわかって本当におもしろい。

今回の一冊も、なんともいえないインパクトのある読後感でした。

★★★


溥儀や溥傑と同じように、彼女も革命後(=中国が共産主義になった後)に逮捕され 15年服役、その後も 7年くらい農村で働かされています。この“革命中国”の徹底ぶりがすごい。

日本で言えば終戦直後に昭和天皇、その子供や家族、皇族を逮捕して一般囚人と全く同じ扱いで牢屋に入れ(死刑にはせず)何十年もかけて思想改造する。

すごくないですか? フランスみたいに殺してしまうならわかるのですが、中国共産党は「皇帝を思想改造する」、そのコンセプトがすごい。


そして溥儀、溥傑、この人も皆、当然と言えば当然ですが、20年も牢屋で暮らすと、いわゆる「人格改造」が起るんです。

洗脳とか転向というレベルではなくて、もう完全に違う人に生まれ変わってしまう。それが目的なわけですけど、実際にそれが起ってしまう。

その自然さというか、そのプロセスを本を読むことで全部文字で追える(追体験できる)。これがなんていうか、想像を超えたすごさです。

生まれてから二十歳まで暮らしてきた世界を全否定されて、20年牢屋で、全然違う思想世界に生まれ変わらせられる。人はどう変わるのか、文字の奥から押し出されて突きつけられるような、そういう本でした。


★★★


ちなみにこの一家は日本と親交が深く、彼女も学習院で学んだり、学生時代の多くを日本の友人と過ごしています。そして王女様なわけですから、当然にそれなりの生活をしています。

兄弟の多くは終戦後、中国が共産主義になるのを見越して日本や香港、台湾、欧米に亡命します。

当然だよね。自分たちは日本の皇室や軍部に支援(&利用)されたわけだから、中国に残っていては危ないわけです。

でも逃げ切れない人達もいる。男一人なら逃げられるけど、女子供多数だと難しい。あと、女子供なら残っていても殺されないだろうと思って、残ったのかもしれません。いずれにせよ、彼女は中国に残った。ここが運命の分かれ目

少しの間はそれなりに生活をやりくりし、没落貴族の見習い商売で成功したりもし、なのだけど文革が始まると“出自”が災いして捕まってしまいます。そこから一般囚人と同じ生活が始まる。


この辺りまでは本人も「昔の人格」なわけです。たとえばなりふり構わず商売している時に結婚するんだけど、その相手は「書画家」なんです。で、「彼の芸術を支援したかった」みたいな結婚。

これってまさに王族の考え方だよね。パトロンとして芸術の才のある人を支援する、作品と創作活動を通して心通わせる、みたいな。

間違っても商人と結婚しようとか考えない。生活にはすごく困っている。だけど、“芸術家”肌の男性と結婚する。


逮捕された後はその人と離婚して、20年の服役を終えた後、今度は晩年に農村で再婚します。

今回の相手は、学校もでていない口べたな農夫。誠実で、農業技術には秀でているいい人だけど、学もないし、芸術もわからない。


最初、彼女はこの人と結婚するという現実を受け入れられません。「全く話が合わない」と言って結婚を勧められても、それを避けようとします。

その後、周りの人の薦めや説得があって、ちょっとずつ受け入れていくのだけど、なんと最後にはすごく幸せに、その「昼食のために麺をゆでてくれる夫」との暮らしを語ります。

彼女の人格が王女から労働者に思想改造されたことにより、「学はないけれど、やさしく生活力のある夫」との生活こそが幸せだと気づいていく、わけです。


このように、彼女の人格が大きく変っていくその詳細なプロセスを、読者は文章を通じて体験できます。

20才くらいまで、彼女にとって価値あるものとは、芸術であり、思想であり、国家であり、誇りでした。何度もいいますが、王女だったんです。

それが20数年の思想教育を経て、「大事なものとは、日々の生活であり、毎日食べる麺であり、畑で汗を流して働くことである」と変っていく。


中国共産党の思う壺!


これって、革命中国の中心思想そのものです。インテリじゃなくて、生活者である労働者の生活こそが大事なのだ、と。

それを血肉として身につけていく過程を、彼女は体現しています。清朝の王女がいかにして“中国人民”に生まれ変わっていくか、という物語。


最初は、「まるで革命中国、共産中国の宣伝本みたいな本だな」と思いました。でも決してそうではありません。この人は単に自分の人生を、記録に残しているだけなんです。淡々と。それがそのまま「理論通りの思想改革」を表している。

溥儀に起ったことも全く同じなんだけど、「あー人間ってこうやって“作り替える”ことができるんだ」と感じられ、とても興味深かった。


牢屋にいる間、彼女はずっと、日本への留学時代、王女であり女学生として暮らした幼き日の優雅な生活を懐かしみながら生きています。

ところが、その彼女が人生の晩年に語る一節が下記です。それまでの彼女は「私には日本時代のお友達しかいない。中国にはお友達がいないのだ」と日本への郷愁ばかりを書いていたのに・・


私は自分が中国人でありながら、中国の普通一般の人達の生活をあまりにも知らないのに気がつきました。中国の一般家庭の生活、おつきあい、友情や義理人情は本当に暖かなものです。


彼の周りの朴実な人達の言葉少なく行動で表す友情のやさしさと誠実さに私は、心からの温もりを感じました。私にはたくさん、学ぶことがありました。


彼らは貧しくて、いろいろ見聞する機会もなかったのは、社会の問題です。お金がなくて学校にいけないだけではなく、家の労働力として子供のころから働くのです。女の子は7つくらいから、もうご飯炊きをさせられたりします。


こういう事実を、私はこの眼で見て、深く感動を覚えました。彼等と自分の感情の違和感は、私の方が「改造」すべきものなのだと思いました。


私は、高等教育をうけた恩恵は否定しません。ただ、中国人として、自分の祖国にたいする知識がなさすぎるのです。



こういうことを、元清朝の王女が自ら本に書くんですよ。

王女である自分と、中国人民と、その間には“感情の違和感”があったと。なんとなく話が通じない。こっちの言ってることを相手は理解しないし、相手のやろうとしていることが、どうもこちらはよくわからない。

でもようやく自分は気がつきました。間違っていたのは、間違った育てられ方をしていたのは、間違った思想教育を受けてきたのは、自分の方である、と。


終戦時に日本が天皇や皇族を逮捕、投獄していたとしましょう。元皇太子なり王女なりが牢屋で一般囚人と共に20年すごした後、地方の農村で10年農作業にいそしみ、そしてこういう文章を書いたとしたら・・・と想像してみてください。

中国の革命家達が、完全に意図したとおりの、もしくはそれ以上の記述だと思いませんか?


すごいなあ、と。



そんじゃーね。


清朝の王女に生れて―日中のはざまで (中公文庫BIBLIO)

清朝の王女に生れて―日中のはざまで (中公文庫BIBLIO)

2008-12-07 経済規模指標と“豊かさ実感”の乖離

下記は日本の実質GDPの時系列グラフです。単位は兆円。戦後すぐから2007年まで*1を時代ごとに色分けしています。

一番左の無色のところが戦後経済の混乱期。次のグレーが高度成長時代。その右の無色部分が1974年のオイルショックを機に経済成長の質が変った時代。そして薄緑のところが1986年からのバブル経済。最後の薄ピンク、1993年あたりからが“失われた10年”を含む停滞期です。


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このグラフを見ていると、ちょっと違和感を感じます。生活者としては少なくとも直近の15年、こんなに実質GDPが伸びている実感はもてないからです。

ひとつの理由はこのグラフが“実質”GDPだからでしょう。人の感覚は名目GDPに近くなるので、デフレが続いている昨今において“実質的な経済成長”を体感するのは難しいことです。

しかしそれにしても「デフレでモノがどんどん安くなり、実質的には過去15年もこれだけ経済成長したのですよ」といわれても、にわかには信じがたい気もします。なぜこんなにGDPと実感が異なっているのでしょう?

★★★

まずは左から2番目のグレーの部分、高度成長時代をみて見ましょう。この時代の経済成長とは、「炊飯器と冷蔵庫と洗濯機とテレビが我が家に来た」ということでした。人々は食べるに困らなくなり、家には毎年新しい家具や家電が増える。それは“とてもわかりやすい経済成長”だったのです。

その右側の白い部分、1974年のオイルショックを克服して成長を続けた日本。ここでも、クーラーに電子レンジと、“モノの豊かさ”は引き続き向上します。

加えてこの時期は機械系、電子系の日本製品が世界中で売れはじめた時期です。それまでの日本は“安い労働力”を売る国でした。しかしこの時期、日本製品は“高い技術力”によって売れるようになり、日本人は必ずしも働く時間で勝負をする必要がなくなります。

それにしたがって週休二日制が導入され給与や賞与もあがります。増えた余暇と資金は、“初めての家族旅行”に使われました。これもわかりやすいですよね。モノに加え、ソフト面で生活がとても豊かになる、そういう実感がもてる時期だったのです。


次がバ1986年から5年ほど続いたバブルです。この時期に豊かさを実感させてくれたのはプラザ合意によって引き起こされた“円高”です。これにより、ハワイや香港の免税店からパリのルイヴィトン本店までが日本人で埋め尽くされます。二十歳の若者がバックパッカーとして世界旅行を楽しむようになり、企業家は世界のオークションで名画を落札し、NYの著名ビルを次々と買取ります。

日本の通貨が“世界で通用する”ようになった結果、日本人はこの時期に「世界の富を手に入れる財力」を手にしたのです。これもわかりやすい“豊かさの向上”でした。

ただしバブル期には不動産価格が急騰し、一般の国民は巨額の借金なくしては家が買えなくなりました。これは、GDPの伸びと豊かさ実感の乖離が始まった最初の例といえるかもしれません。


最後に直近の15年ほど。この時期も実質GDPは伸びています。実はこの期間、多くの商品が日本製から「Made in China」に置き換わり、物価が下がりました。同じ機能のものが何割も安く買えるようになり、それにより私たちは“豊かになった”と感じるはず、なのですが・・・実際にはそう感じた人は多くありません。

なぜなら、中国からの輸入品に負けて立ちゆかなくなった産業や会社が急増したからです。世界に誇る日本の家電の大半がアジアで作られるようになり、日本では多くの人が職場を失いました。さらに企業は日本における新入社員を正社員として雇わなくなりました。

バブル崩壊で税収も急減したため、消費税の引き上げ、医療費の引き上げ、年金受給開始時期の延期、生活保護の抑制と、次々と国民に負担増と不安増を迫る施策が導入されました。公共事業も大幅に削減され、地方経済は息の根を止められます。これでは“豊かさ”を体感するのは不可能です。


もちろん、この時期に伸びたものもあります。

一つは医療、介護産業です。しかし高齢者が増えて病人が増え、家庭で介護されていた人がヘルパーさんに介護されても、それによって「経済的に豊かになった」と感じるのは困難です。介護職の給与水準は低く、医療現場も尋常ではない過重労働を強いられており、新産業の勃興で豊かになったと感じられる人は多くありません。

そもそも家庭内の貨幣価値化されない労働が外部化されると、経済価値が顕在化します。たとえばお母さんがご飯を作ってくれるとタダですが、お母さんがパートとして働くファミレスでご飯を食べればGDPは上昇します。家で家族に世話をされていたお年寄りが介護施設で暮らせば、経済的な付加価値につながります。しかしこういった“経済成長”は必ずしも感覚的な豊かさに結びつきません。


もうひとつ大きく伸びたのは情報産業や通信業です。企業だけでなく、消費者も“けーたい”や“ネット”により圧倒的な利便性を手に入れました。これについては「豊かになった実感」を持てる人も多いでしょう。

しかし一方で、IT化により旅行代理店や金融業、本屋などは、“中抜き”され始めています。雑誌や新聞などのメディア産業もネットに広告と購読者の双方を奪われつつあります。勃興する産業がある一方、IT化のために衰退する産業もまた大きいのです。これも全体的な“豊かさ”の実感をそいでしまう要因でしょう。

また、IT化の時代に新たな雇用機会として出現したSE、プログラマーという仕事は3Kといわれ、モバイル機器やブラックベリーが24時間働く人を追いかけ、世界の労働者と戦えと言われ始めたビジネス社会では精神を病む人も急増しています。

そんな時代に対応するため、親は子供が小さな頃から英語を習わせ、お受験をさせ、そして、自らは“自分をグーグル化”して荒波を乗り越えようと必死になっています。ここでもやはり高度成長期のような“単純な豊かさの増進”はとても感じにくくなっているのです。


★★★

これはつまり、日本においてGDPが目標指標としての役割を既に終えているということではないでしょうか。元々GDPは経済規模の指標であって“豊かさ”の指標ではありません。経済的に貧しい国にとって、たまたま「経済規模の拡大=豊かさであった」だけなのです。

過去15年も実質GDPのグラフは右肩あがりなのに、私たちの「豊かさ実感」がむしろ下がっているとしたら、「今の私たちの豊かさを表現する本当の指標」のグラフは右下がりになっているはずです。

問題は、私達はそれが何のグラフなのか理解できていない、ということです。それはつまり、豊かな生活のために今、何を変えればいいのか、何をすればいいのか、わかっていないということでもあります。

その“隠れたグラフの意味(式)”を突き詰めなければ、私たちはまたこれからもずっと「豊かさの実感とは乖離してしまった経済成長」を追い求め、心と体をすり減らして“頑張って”いくことになってしまうでしょう。


2008-12-06 内定取り消しの“正当な理由”ってなんだろ

テレビキャスターや舛添親分が怒っています。「正当な理由なき内定取り消しは決して許すまじ。断固として戦うべきだ!」と。で、内定取り消しを受けた学生さんからは下記のような相談が寄せられています。さて皆さんならどう回答されるでしょう。


各質問者はすべて、来年の4月に入社するはずだった会社から内定取り消しの連絡を受けた学生さんです。その他の個別の事情は下記にてそれぞれから直接お聞きください。


質問者1:「会社から内定取り消しの連絡があったのが先月の1日。そして今月の始めにこの会社は民事再生法の適用を申請しました。でも民事再生法って再生計画が認められれば会社は存続するんですよね?解散とは違うでしょう?だったら、僕はその再生企業に入社を認められるべきですよね?これは“正当な理由のない内定取り消し”ですよね?それともまさかこれは“正当な理由のある内定取り消し”なんですか?」



質問者2:「会社から内定取り消しの連絡があったのが先月の1日。そして今月のはじめにこの会社は大規模な早期退職者募集を始めると発表しています。40才以上の社員の2割の人に退職してもらうらしいです。でもだからといって内定取り消しはおかしいですよね?だって早期退職者は40才以上なんでしょ。僕は23才でこれから入社するんだから、その年齢に達してないわけで。

会社側は40才以上の早期退職者を3割に拡大してでも、内定の取り消しをせずに僕たちを入社させるべきですよね?」



質問者3:「会社から内定取り消しの連絡があったのが先月の1日。そして今月のはじめにこの会社は、派遣社員の7割について今の契約終了後は契約更新をしない、と発表しています。5年以上とかもっと長く働いていた契約社員の人もいるそうで、それはそれで問題だとは思うんですけど。

でも、だからといって僕の内定取り消しは変ですよね?だって僕は正社員として内定したんですよ。だから契約社員を3割残す余裕があるなら、その人達を全員契約解除して、代わりに僕たちを入社させるべきですよね?

企業は“内定取り消し”なんかやる際には、その前に打てる手を全部打たないとだめだ、って聞いたことがあるんですけど。だったらまずは派遣の人なんか全部切るべきであって、それもせずに内定取り消しなんてありえないですよね?」



質問者4:「会社から内定取り消しの連絡があったのが先月の1日。そして今月のはじめにこの会社は、経営者のボーナスは全額返還、管理職のボーナスも5割削減と発表しました。たしかにここまで大きな削減をするのには驚きました。

でもだからといって僕たちの内定取り消しは変ですよね?管理職のボーナスも5割じゃなくて全部なくすとか、もしくは一般社員のボーナスも5割削減して、僕たちの給与を払う余地を捻出すべきですよね?これは“正当な理由のない内定取り消し”ですよね。それともまさかこれは“正当な理由のある内定取り消し”なんですか?」



質問者5:「会社から内定取り消しの連絡があったのが先月の1日。そして今月のはじめにこの会社は、別の会社に吸収合併されることになりました。単独では銀行融資が受けられなくて資金繰りが行き詰まったみたいです。

でもだからといって僕たちの内定取り消しは変ですよね?会社は吸収されても、僕たちとの雇用契約は残りますよね!?救済したほうの会社は既存社員だけでなく、僕たち内定者も救済する“義務”がありますよね?

内定先を買収したその企業の方は今年も結構利益がでているらしくて、この冬のボーナスも例年通りだそうなんです。だったらそのボーナスをカットすれば僕たちの給与くらい払えるはず。もちろん救済してくれた会社の社員にボーナスカットしろっていうのは少し申し訳ない気もしますけど・・

これは“不当な内定取り消し”でしょ?それともまさかこれは“正当な理由のある内定取り消し”なんですか?」」



質問者6:「僕は薬学部の博士課程を出た研究者です。研究職として研究所への配属を前提に内定をもらっていました。会社から内定取り消しの連絡があったのが先月の1日。そして今月のはじめにこの会社は、研究所を閉めることを発表しました。今、研究所で働いている人は全員解雇されるそうです。会社はこれからは他社が開発した製品の製造と販売だけを行う会社になるそうです。

でもだからといって僕たちの内定取り消しは変ですよね?研究職といっても、研究所への配属が前提だったと言っても、内定書類には会社名だけが書いてあって、職種も配属先名も特定されてないんです。研究所はなくなるけど会社は残るわけだから、僕たちとの雇用契約は残りますよね!?これは“不当な内定取り消し”でしょ?それともまさかこれは“正当な内定取り消し”なんですか?」」




「正当な理由のない内定取り消しには断固として抗議すべきだ」とか「泣き寝入りするな」とか言うのは簡単なこと。でもみんな「何が正当な内定取り消し事由」で「何が正当でない内定取り消し事由なのか」ちゃんと理解しているのかしらん。というかそもそも、何が正当な理由か、について社会的な合意があるのかしらん。と思った。「どういう場合なら、内定取り消しもやむを得ない」という正当性が与えられるんだろう。

だって、どの会社も大枚はたいて新卒採用をやったわけです。中小企業や新興の不動産会社にとって学生を採用して内定してフォローするのって簡単なことじゃない。手間も経費もそれなりにかかっているはず。何の問題もないのに取り消しなんてしないです。

そういうことするには“それなり”の理由があるはずだよね。問題はその理由が「正当」と言えるか「不当」な範囲か、という点。その判断こそが難しいところなはず。


でも「正当な理由とは具体的になにか」について、テレビも新聞も報道しているのを見ないでしょ。なんでだろ?「報道する価値もないくらい自明、簡単なこと」だからだろうか。みんなわかってるから、なんだろうか。



★★★

実際には内定取り消しになった学生さんの多くが再度就職活動をやりなおし、そうするとおそらく2010年4月の入社で仕事を探すということになるのだと思う。今年の就職戦線は昨年よりは大変で苦労も多いと思う。でもまあ「一度は内定をもらえた」のだから、自信もってもう一度頑張ってほしいよね。

それと、そのことで生じた1年間の追加的な期間を是非有効に使ってほしいと思います。その一年をどう使うかで、今回の経験を奇貨とできるか悪夢として残すことになるか分かれると思う。

「正当な理由のない内定取り消しとは断固として戦え!」とアドバイス?するのもひとつの方法だろうが、「次の一年間、就職までの期間がのびて大学に残ることになるなら、その期間の学費は免除する。国がもつ。」くらいのことを大学とか文部省とかは言ったらどうさ、とも思う。シュプレヒコールより実務的な支援の方がありがたいだよ。


頑張ってほしいっす。

そんじゃーね。

2008-12-03 絵にしてみた

昨日の主張を絵にしてみた。




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これ“お絵かき機能”で書いたんだけど、“テキスト”をタイピングできるっていう機能をつけてほしいな。ちきりん、マウスで字を書くのが下手すぎて、「これをまじでアップロードするんだか?」ってかなり躊躇したですよ。


んじゃね




追記)絵があまりにひどいので追記です。

言いたかったことは、「積極的な景気刺激策=ニューディール政策が効果を発揮するためには、その前にセーフティネットを充実させておくことが前提である。」ということ。こういう状況になると、景気刺激策はたとえ財政赤字が拡大しても必要だと思います。しかしその前に“今、必要なこと”があるでしょう?と。

また、経済が回り始めれば公的パワーは速やかに縮小しマーケットメカニズムに任せるべきであるのに、日本の場合は経済が回り始めてからも(官僚の権限と予算維持のために)公的パワーを全く縮小しなかった。そのため規制に縛られた民間が世界に通用するレベルに育たないという大きな弊害を生んでしまったと考えています。

自律的な経済の動きをみながら「その時点その時点で今は何をすべきかを官が柔軟に変えながら市場を支援・補完する」これが理想的な官の役割であると思っています。

ではでは

2008-12-02 あまりに危機感のない人たち

政治家やそれを報道する人たちが「景気対策」という言葉を使うことにものがすごく違和感があるちきりんです。だって今必要なのは景気対策じゃない。セーフティネットの拡充なんです。しかもすごく急ぐ必要がある。次の3ヶ月、6ヶ月、本当に大変なことになるよ。


景気対策というのは、「需要を刺激してもっと買ってもらえるようにして、供給側が赤字にならないようにする。」ということです。これは“通常期”にはよいと思うのですが、“危機的状況”においてこんなことをしても「誰が消費を増やすねん、今?」って思うのです。あほちゃうか、と思います。

定額給付金もそうですが、今少々手元に入るお金が増えても「よっしゃ、じゃあ車買い換えよう!」とか「カシミアのコート買うことにした!」とか、いやそこまでいかなくても「じゃあ、今日は皆でぱあっと焼き肉にいこう!」とか思うような経済状況だと思ってるんだろうか、今が?

公共事業を増やしてゼネコンに再度お金を回したら建設会社の社員が「やった〜お金が入った〜」とかいってテレビを買い換えたりするんですかね??今。


ありえないでしょ。世界中の人が先行きに不安を感じ、これからどうなるか戦々恐々としているっていうのに“景気対策”なんかでお金がどんどん消費に回るなんてことは考えられない。ほんとに意味不明です。

11月の国内の自動車販売台数って、前年同期比で27%減少ですよ。ものすごい数字です。売り上げが3割おちたら、人件費は4割は削減しなくちゃいけなくなります。期間工どころか正社員だってリストラが必要な段階に入っています。(ちなみに軽自動車もごくわずかですが減少。またアメリカは10月にもっと下がってます。)

10月のスーパーマーケットの衣料品部門も10.8%減少(前年同期比)です。百貨店全体でも6.8%減ですがこの数字は11月は10%台にのってもおかしくないと思います。

家電もパナソニックが来年の営業利益が約3割減少(1600億円の利益減少)見通しを発表しました。こちらは連結ですので世界全体です。日本の家電は新興市場に弱く、欧米での人気が高いので非常に落ち込みが大きいです。ちなみにこの1600億円というのは、人件費コスト500万円の人を32000人解雇しないとひねり出せない額であり、それは連結パナソニックの社員数30万人の1割にあたります。


こういう“危機的状況”において“景気刺激”が可能だと思っていること自体がお笑い?って感じです。今必要なのは景気対策ではありません。“危機対応”なんです。それは経済・社会対策で言えば、“セーフティネットの拡充”です。

★★★

こういう“危機感”が社会に溢れはじめると、お金のない人はもちろん、当面のお金には問題のない人まで“将来に備えて”消費を抑制しはじめます。その結果が上のような状況に結びついているのです。脳天気に“2万円あげますからお金使ってくださいね”などと言われてもホイホイ消費しようなんて人はいないでしょう。ある人はある人なりに、ない人はそれこそ必死で節約し、少しでもお金を蓄えておこうと思うでしょう。経済は完全に冷え込んでしまいます。

こういう時に必要なのは少しでもその“不安感”を取り除くことなのです。使え使えとハッパをかけることではなく「いざと言う時には助けますから大丈夫ですよ!」と確固たる決意をもって宣言することなのです。


つまりね、

経済の停滞期なら→景気対策

だけど

経済の危機期には→セーフティネット拡充

が必要だと言っているのです。



セーフティネットってたとえば何を言っているか?

(1)最低限の“住”の提供・・・都市圏で格安で住めるアパートの提供が必要です。期間工の人は仕事を失えば住む場所を失う人もたくさんいます。どうせ彼らが住んでいたアパートの方だって次の入居者を見つけることはできません。これらを国が借り上げて、敷金礼金はなしで、週払いで、友達と共有でもOKという条件で貸し出すべきです。対象は期間工だけではなく、倒産した不動産会社や中小企業に勤めていて職と共にローンのある家を失った人なども同様です。

現存する公的アパートは、入居の優先順位がお年寄りや母子家庭などに厚く(それはそれでいいのですが)若い失業者には非常に厳しいです。また入居手続きも煩雑で機動性に欠けています。

ホームレスが街に急増したら国の行き先に不安を感じない人はいません。みんな「自分も明日はそうなるかも」と思えば、一切の必要最小限以上の消費をやめてしまうでしょう。まずは“路上の人はこれ以上絶対に増やさない”という強い意志を見せることが必要です。


(2)最低限の医療提供

医療はたとえ保険に入っていても3割負担ですが、慢性病があったり病気がちの家族がいる場合、これ自体が大変な人もいると思います。また生活保護を受給するとその間は医療費が無料になりますが、保護がうちきられると医療費も3割負担に戻ってしまいます。保険料を納められなければ10割負担です。

病気で生活保護になった人にとってはこのダブルパンチ(生活保護と医療費補助がセットになっていること)がとても厳しい。一定の条件の人(生活保護を打ち切られてから2年間の間とか、母子家庭とか、年金など年間収入が200万円以下で貯蓄のない人とか)は3割負担をゼロに近くするということが必要ではないかと思います。

麻生さんは党首討論で「世界第二位の経済大国の日本」という言葉を使っていました。ほんとに2位だっけ?というのはさておき、“お金のために病気の治療が受けられない人が多数発生する経済大国”というのは納税者としてものすごく情けない感じがします。


(3)フードスタンプ制度の導入拡充

食については、日本も“フードスタンプ”のような制度を検討すべきと思います。(福祉事務所が食べ物だけを購入できる金券を配る方式)たとえば生活保護でもらったお金は、それでお酒を購入したりパチンコをしたりするのにも使われています。孤独でやることもない生活の中、それが一概に不道徳なことと責めるつもりはありません。しかし効率的な資金の使い方という意味では、何でも買えるお金8万円を1名に渡すより、食べ物しか買えない金券1万円分を8人に渡す方法の方がいいのではないかと思います。

また田舎でずっと何代も住んできたボロ家でも、持ち家があれば生活保護は受けられませんが、困窮している人にはそういう場合でもフードスタンプだけは配るとか、そういうことができるでしょ。自治体の負担も少なくて住むのではないかと思うのですが。


いずれにせよ、とりあえず“あの2兆円”は(“そのお金で消費してください”という景気刺激ではなく、)こっちに使うべきでしょう?


★★★

先日のニュースは麻生首相が経団連の御手洗会長に会い、「賃上げを要請した」と報道されていました。御手洗氏もさぞかし(心の中で)苦笑されたことでしょう。「春闘についてはいろいろ検討中です。」と答えたそうですが、その意味は「春闘による一律の賃上げの時代は終わったと思っています」ということだよね。

麻生さん、正社員の、しかも経団連企業のような大企業の正社員の「賃上げ」って、いったい何人くらいの非正規雇用を切らないと実現できないかわかってますかね。っていうか、今のこのタイミングでそんな大企業の“賃上げ”がまじで必要と思ってます?それがあなたのいう“雇用対策”なの??

ほんと殿様だな、この人。


積極的にバイトを正社員化させているというロフトを見学したそうです。この「バイトや契約社員を正社員登用する」のは一年前に非常に労働市場が逼迫していて、どの企業も派遣社員やバイトの人の確保に四苦八苦していた時期にその流れが始まったもので、ロフトだけではなくユニクロやワールドなんかもやっていたと思います。イオンとかもやってたんじゃないかな。

でも、それは一年前の話です。あの時はホントに人手不足で、マクドナルドなども都会の店のバイト代の高騰に困って、大都市の店だけ値上げしたりしていたのです。

今とは状況が違うんですけど!!!!!


このあまりの世間とのずれ、世間知らず、世の中知らずなのは、麻生氏なんでしょうか?それとも彼の取り巻きの政策秘書とかが世間知らずなの??それとも厚生労働省の役人が余りに世の中を知らなくて「ロフト見に行きましょう!」とか提案してんのかしら。

余りの“アホ振り”にちょっと驚愕なんですけど・・

★★★

今日のニュースでは「赤字を垂れ流してきた厚生労働省所管の独立行政法人“しごと館”への雇用保険での赤字補填をやめる」と厚生労働省がようやく決めた、と報道していました。

07年の赤字が14億円強でこのうち13億円ちかくがサラリーマンが払っている“雇用保険料”から補填されています。なんで14億円も赤字になるかというと、全く不要な“しごと館”に厚生労働省OBを天下りで送り混んで高い給与と、2年あまりの任期の後には多額の退職金を払う必要があったからでしょう。“しごと館”で使う備品の購入や内装や運営を委託する会社の方にも多数の“厚生労働省OB”を受け入れてもらっていますから彼らの給与分の利益補填をしてあげる必要もあったんでしょう。

雇用保険って、失業者を助けるためにあるんでしょ?

自動車工場の期間工は既に1万人が契約非更新が決まってるんだよ!?その一万人が“しごと館”でどう支援されるの???13億円あれば1万人が2ヶ月、アパートを維持することができるっていうのに・・





公務員が日本を滅ぼすよね。






税金の使い道にはふたつあります。ひとつは、上に書いたように、医療費や食料代補助として、もしくは生活費などとして「現金、現物」を困っている人に支給する方法。もうひとつは、そういう困っている人を助ける、支援する、という大義名分の下「しごと館」みたいな意味不明な組織を作ること、です。

彼らは「現金、現物」支給を求められると「財政赤字だから無理」とか「大きい政府はおかしい」と言いますが、それでも世論が「困っている人を助けろ!!」と言い始めると、すぐに「わかりました。そこまでいうなら困っている人を支援します」と言って、後者の方法をはじめます。“しごと館”しかり、“ジョブカードシステム”しかりです。

「ジョブカード制度」って知ってます?

厚生労働省による厚生労働省のための厚生労働省の仕事です。税金使っての。信じられないくらい意味不明な政策です。


景気がいい時は税金つかって一生掛けてつまらん仕事してる人が霞ヶ関辺りに一定数集まって忙しそうに暮らしてるのも別にどうでもいいんですけど、今はちょっと世の中大変なんで、すみませんけどアホみたいなことばっかりやらんと、じっとしててもらえませんかね?って感じです。



小沢さんもね。党首討論で勝ったとかいって喜んでる場合かね?


ああ意味不明。


そんじゃね。