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Chikirinの日記 RSSフィード

2009-02-03 三菱と日興 愛と憎しみの物語

私の名前は日興証子。今日は皆さんが、私の激動の半生と、これから迎える新しい運命の人生について聞いてくださるということなので、恥ずかしながらやってまいりました。


まずは私の生い立ちから話を始めさせてください。

私は遠山の父の元に生まれました。昔から親戚の興銀おじさんにはかわいがってもらって・・その興銀おじさんの家から一文字もらって、うちの家は“日興”って改名したくらいです。そのおじさんの家も今はもう別の名前に変わってしまってるんですけどね。

あの頃は楽しかったです。うちの家と、野村さんち、大和さんち、それに山一君のおうちは“四大証家”とも言われて、そりゃあ羽振りもよくて。私もなんの苦労もなく育てられました。12月なんてほとんど毎日、銀座の高級店でご飯を食べてました。今から思うと信じられないかもしれませんが。


でも父が亡くなった頃からいろんなことが変わり始めて・・・そうそう、山一君ちが自己破産に追い込まれた時は本当びっくりしました。まさかそんなことが起るなんて思ってなくて。山一君のお父さん、男泣きに泣いてらしたわ。「家族は悪くないんです。全部この私が・・」って。私も思わず目頭が熱くなりました。


でも、他人ごとじゃなかったんです。私の家族からも何人も逮捕される人がでて、父もいなくなっちゃうし。私なんかが一人で生きていけるかどうか心もとなくて。不安で不安で。ちょうどその頃だったと思うんですけど、当時、元々ずうっとお友達だったご近所の三菱君が私を見る目が変わってきたんです。

初めはちょっと誘ってくるだけだったんだけど、どんどんエスカレートして。最後の方はもう「おまえなんか俺に頼らずに生きていけるわけがないんだから、おとなしく俺の言うことをきけよ。」って、まるで押し倒さんばかりの振る舞いになってきて。

あのエリートで紳士的な三菱君がこんなこと言うなんて・・・もちろん、「最終的には結婚も考えてるから」とは、ほのめかされてました。だけど別に正式に結婚が決まってたわけでもないし、それに彼の態度というか考え方はすごく古いんです。頭が固いというか、まじめではあるんだけど。

女は男に従って当たり前だって感じだし。銀行は証券なんかより圧倒的に偉いんだっていう態度が見え見え。友達から見ると「トップエリートの三菱君とつきあえるなんて超うらやまし〜」とも言われたけど、私自身はなんだか気乗りがしなくて・・ぐずぐず悩んでたんです。


その頃うちはNY帰りの兄が社長になってたんですけど、その兄がNY時代の友人のソロモンバーニー君っていうアメリカ人のお友達を紹介してくれたんです。それで最初はお食事だけ、と思ってたんだけど、でも、話してみると三菱君と違って、発想は柔軟だし、元気だし、自由な感じだし、お金も持ってるし。

うふふ。

結構仲良くなっちゃんたんです、私。


それで、ある日突然、結婚しちゃったんです、私たち。

もちろん兄は知っていて応援してくれてましたけど、親戚等には全然言わずにこっそり準備したんです。だって親戚は皆私は三菱君のおうちに嫁ぐと思っているし、三菱君のおうちもそう思い込んでるし、もしも話がばれたらきっと反対されちゃうと思って。国際結婚なんて当時はまだ珍しかったし。


私たち?

幸せでした。もちろん国際結婚だから、やってみて初めてわかったいろんなこともありました。慣習が違うというか考え方が違うというか。でも、私も努力したし、至らないことはずいぶん改善したつもりです。私、教会で洗礼も受けてミドルネームももらったんです。“コーデ”って。だから今の正式名は“日興コーデ証子”です。


三菱君はどうしたかって?

そりゃあずいぶん怒ってました。結婚すぐの頃は道であっても挨拶もしてくれないし、ちょっとしたお金も用立ててくれないし。ほんとに子供っぽいことされましたね。

それに三菱君、あれから荒れちゃって。すごくいろんな女の人とつきあったみたい。そんな貧しい家のお嬢さん、三菱家の長男がつきあうような人じゃないでしょ、みたいな方ともおつきあいされてたみたいです。最終的には野村さん家のご親戚筋だった国際家のお嬢さんを貰われました。ああ、正式に籍は入れられてないみたいですけど。

ただ、あんまり性格も合わないらしくて、うまくいってないみたい。実質的には仮面夫婦だって言われる方もあるくらい。噂では三菱君はやっぱりかなりの男尊女卑派で、国際ちゃんに自分のやり方を一方的に押しつけてるらしいです。

一方で国際ちゃんも野村家の血も入ってるんで結構気が強いんです。それに国際ちゃんは投信とかいう商品を売る内職がすごく巧くいっていたので、経済的にも三菱君に頼ってたわけではないですしね。まあよそ様のことだから実際のところはよくわからないんですけどね。

あらあら私ったら話がそれましたね。


それで、私の話なんですけど。ええっと、どこまで話しましたっけ。ああそうそう、国際結婚をしたところですよね。あれからまあいろいろありながら、それなりにやってきたんですけど。実は、私再婚してるんです。今の夫はソロモンバーニー君じゃなくて、シティ君っていうんです。

いえ浮気したとかそういうんじゃなくて。ソロモンバーニー君とは結婚後すぐに別居をしてるんです。彼の商売と私のもともとの商売は結構客層が違うからっていうことで、彼だけ赤坂に別邸を構えたりして。ええ、仕事上の形式的な別居というか、だったんですけど、結局・・。

で、私の方はその後もいろいろあって。2番目の兄が自分の成績をよく見せるために帳簿をごまかすっていう事件も起りましたし。で、商売がやっぱり巧くいかなくて、それで今度はシティ君のおうちに助けて貰ったんです。その、お世話になってるもんですから会う機会も増えるでしょう? それで、ある日求婚されて。

彼はその頃の借金も全部払ってくれるっていうし、実はうち“上場貴族所”の会員の立場を廃止されてしまうかもっていう危機的な状況だったりして、それでつらくて私もついシティ君に頼ってしまって・・。なので、今の夫はシティってことになってるんです。


それはともかく、私もふらふらしていた罰があたったのかもしれません。夫のシティは今回の金融危機に巻き込まれて、いくつかの事業でも大きな失敗をして。もう仕事の方がめちゃくちゃで。

ここ数ヶ月は何がどうなっているのか私もわからなかったんですけど。ようやく先週、夫とゆっくり話す機会があったんです。そしたら、言われたんです。


「別れよう」って。


ショックでした。いろいろあったけど、私、シティ君と添い遂げるつもりだったんです。共に白髪の生えるまで、って。私、案外古風なんです。

シティ君に捨てられないように彼の指示通り、家計も切り詰めたり、おなかに余分な脂肪もついてたんですけど、それもそぎ落としてスリムになってたのに。それなのに、


「僕にはもう君を支える力は残っていないんだ。君はきれいだ。まだまだ多くの男が君を欲しがってる。だから僕と別れる方が君のためでもあるんだ。」って。噂ではNYにいらっしゃるシティ君のお父様が「もう別れろ」っておっしゃってるって。彼はお父様の言うことには逆らえない人なんです。

それにしても彼は、机の上にお見合い写真を3つ並べたんです。

「住友君、瑞穂君、それに三菱君が、君に関心があるって言ってる。いや、関心があるどころか、是非君に来て欲しいって、みんなすごく熱心に言っていた。どう?」とまで言うんです。

私、もう目の前がくらくらして・・・そんなことまで勝手に考えていたなんて。私にとっては対等な結婚をしてパートナーとしての関係を築いてきたつもりだったけど、結局のところ私なんてシティ君にとっては「所有物のひとつ」に過ぎなかったみたい。仕方ないですよね。多額の資本金をだしてもらったんだもの。私なんて彼のいいなりになるしかないんです・・

すみません、ちょっと涙が。



えっ?でも、すごくモテるじゃないかって?

そうですね。それはありがたいと思ってます。でも私って結局「都合のいい女」にすぎないんだろうなと思うんです。

だって、たとえば野村さんちのお嬢さんは、頭もすごくいいけど気も強いし、バリバリのキャリアウーマンなんです。この業界では珍しく独身だけど、外国人のボーイフレンドにお金出してあげたりもするみたいな方ですから。どこの殿方も彼女と結婚したら、家を乗っ取られるかも、くらいの心配をされるんだと思います。

大和さんちのお嬢さんは保守的で、ずうっと昔から許嫁だった住友さんちの次男の方とそのまますんなり結婚されて。ご自身の意思もあんまりない、男に頼って生きていくタイプというか。すごくおきれいだから、男の方にとっては都合のいい方だと思います。でもまあ、いずれにせよもう住友家の人妻だし、他の方とは結婚できないでしょう?


それに比べると私は、野村さんみたいなバリバリでもないし、でも、外人の夫ともつきあったことがあるからそれなりに勝手もわかっているし、なにより夫のシティが離婚に賛成しているし。それにいろいろ傷ついてきた人生ではあるけれど、私ってほら実は“脱ぐとすごいタイプ”に思われてるみたい。うふふ。だからモテちゃうんだと思います。

あっ、でも、脱いだら本当にすごいのかっていうのは・・うふふ。秘密です。そう思わせておけばいいの。実際には「脱がせてみたらびっくり」みたいなことかもしれないんですけどね。今、私のほうからそんなこと言う必要もありませんし。ねえ。



私の気持ちは誰にあるのか、って?

難しいことを聞かれるのね。

ええっと、住友君のところなんて個人的にはありえないと思うんです。大和さんのお嬢さんが正妻にいらっしゃるのに私があの家に入ることになったら、どういう立場で入ることになるのか。住友さん、どういうつもりで私にお声なんてかけられるのかしら・・もちろん“大和ナデシコ”と“日興証子”を両方手に入れたら、まさに怖いモノはない、というのは私にも理解できるんですけど・・

三菱君は・・なんだかほろ苦い思いがいたしますわ。小さい頃から幼なじみとして仲良くしてきて一時は結婚も考えた仲ですもの。あの時もし彼と結婚していたらどうなっていたのかなって、今でも考えることはあるんですよ。

でも今、彼と結婚したら、当時結婚するよりもずっと亭主関白にされちゃうんだろうなって思います。だって私にはもうこの身体しかないんです。他にはなんにもないんです。だから三菱君の言うことはすべて聞いて従う人生になっちゃうんだろうな・・・

正直、そういう意味ではあまり気は進まないかな。三菱君との思い出は青春のアルバムに残しておきたい。一度あんな別れ方を経験した二人ですし。そんな感じです。

ただ、聞いた話では、三菱君は今回3人のなかでも一番必死になってるみたいなんです。「今度こそ日興証子は俺が手に入れる」ってあちこちで言い回ってるみたい。三菱君のところは親戚がすごくいろんな商売をやってるんだけど、親戚ぐるみで今回のことを応援するって言ってました。

なんだか私なんて運命に翻弄される大海の小枝みたいものですよね・・


あえて誰が一番いいかっていえば、瑞穂君かな、と思います。瑞穂君って女気がなかったというか。私の肌って「リテール証券肌」っていう肌タイプなんだけど、瑞穂君ってこういう肌タイプの女性とつきあったことがないみたいなの。だから、その、お互い持ってないものを提供しあう形で、巧くやっていけるかな、とか思ったりしてます。

住友君の奥さんの大和さんのお嬢さんや、三菱君とこの国際家のお嬢さんは、私と同じ「リテール証券肌」なんです。そういうところにいくよりは、「なんとしてもリテール証券肌が欲しい!絶対大事にします!」と思ってくれてる瑞穂君のところにいくのが、幸せかなって。

それに瑞穂君の家って、没落する前は興銀おじさんの家でもあったんです。私が小さい頃は父と興銀おじさんは結構うまくいっていたし。なんとなくそういう安心感もありますよね。住友さんのおうちの家風とかは結構、関西諷だって聞いてますし、味付けとかいろいろ違うかもしれない。そういうのも興銀おじさんの家からつながってる瑞穂君のところなら違和感が少ないかもって。


ああ、でも、他にもお話はあるんですよ!

実は野村さんのおうちでも“他に嫁がれるくらいならうちの一族の誰かのところに来て貰ったらどうか”というお話がでているみたいで、とてもありがたいと思います。

でも、野村さんのところは、先ほども申しましたように、大胆なお嬢様が最近外国人のボーイフレンドに入れ込んでしまって、かなりのお小遣いを出してあげたらしいんだけど、それがちょっと巨額すぎて台所事情が厳しいみたいなの。なので今、私を嫁として迎え入れるにはあんまりタイミングがよくないみたい。内部がちょっとごたごた混乱されているみたいなんで。


はあ〜。

でも、ほんとどうなるのかわかりません。三菱君は本気みたいだし。結局のところ三菱君と結婚するのが私の運命だったのかも。あの頃から20年。逃げ続けた男のもとで人生の最後を送ることになるのかもしれませんね・・ふふ。




あらあら、思わぬ間に長くなりましたね。私ったらつい長居してしまって。失礼いたしました。

ええっと、最後にお礼だけ。この場所を提供してくれたちきりんさんにはとても感謝しています。私の運命はどうなるかわからないけど、これからもたくましく生きていくつもり。だってこれが私の選んだ人生ですもの。あの時、私がまだ若くて本当に魅力的だったころ、ええ、あえて三菱君を選ばずに、ソロモンバーニー君を伴侶にを選んだことは今でもこれっぽちも後悔しておりませんわ。ほほほ。


それではみなさん、これで失礼させていただきます。

ちきりんさん、またお会いしましょう。



日興コーデ証子




★★★

Inspired by 本日の日経新聞の朝刊

このエントリに登場する人物や団体は架空の存在であり、実在する人物や団体とは一切の関係がございません。あらかじめご了承ください。


追記)続編です↓

http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20090910