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Chikirinの日記 RSSフィード

2009-02-22 かんぽの宿 5つの論点

この件、ちょっとねじ曲げられすぎです。5つの論点にわけてまとめておきます。


論点1 売却価格は本当に109億円なのか?

かんぽの宿の売却価格である 109億円が安すぎると騒いでるアホな人がいますが、これ、実質的には 109億円ではありません。

まず、この施設の年間の赤字額は約 50億円と言われてます。

いくらなんでも、来年から黒字になんてできません。買った人は、当面の赤字分も補填する覚悟があるんです。

また、70カ所もあるかんぽの宿を建て直すには、それなりの経費が必要です。改装も宣伝もせず、新しい支配人の採用もせずに、大幅赤字のビジネスを立て直すなんて無理です。

ひとつの施設に 1億円の投資をするとしても 70億円必要だから、これも 109億円に加えて負担する必要があります。また、一部の不採算施設を閉めるための経費も必要かもしれません。そういう経費と投資をする資金も(当面の赤字補填に加えて)必要なんです。

今回( 109億円が安すぎるから)売らないと決めれば、先日まで公務員だった郵便局の人(かんぽの宿がずっと赤字でも一生首にならないし降格にもならない人達)がこの施設を経営するわけでしょ? ホントに立て直せるの? 赤字が拡大したりしないの??

109億円は安すぎるから売らないとか言い出してる鳩山さんて、この 109億円の意味をわかってんのかな?



野村證券は、破綻したリーマン証券の欧州とアジア部門を買収しました。買収価格は 2ドルです。

これも同じように「 2ドルあればリーマンを買えるなんて安すぎる!」と思ってる人がいるのかな?

来月からのリーマン社員の給与総額、オフィス家賃等の経費総額なども全部(その期間内でのリーマンの売上げで足りない分は)野村證券が払うんだよ。


論点2 最大の無駄遣いはどれなのか?

メリルへの買収アドバイザリー料支払いが 6億円で、高すぎるとか問題にしてる人も意味不明。アドバイザリー料は対象となる資産価格への割合(率)として表されることが多いです。

たとえば 1000億円の M&A(もしくは株式絡みのファイナンス)をやれば 2%から 3%のフィーで20億円から30億円が手数料となります。債権などは非エクイティ(株式以外)だともっと料率は低くなります。

今回のメリルの手数料の 6億円は、2400億円の資産にたいして 0.25%にあたる額です。また最終の販売価格と比べると 109億円にたいしてとなり、5.5%にあたります。


ところで、簡保の宿の建設費総額は 2400億円らしいけど、これは、普通に民間企業が建設会社に発注をしていれば、どの程度安く建てられたのでしょう。

民間だった場合の建設費用が 2400億円より 10%安いだけでも、 240億円もの税金が無駄に使われたことになります。これはメリルに払われる手数料の 40倍です。

ゼネコン情報筋に言わせれば、「役所の発注は相場の 30%くらい高い」という人も。そうすると 2400億円のうちの 3割、720億円の税金が無駄に使われたわけです。(メリルへの手数料の 120倍です!)


検証すべきは本当に「メリルへの手数料が高すぎないか?」という点ですか? 「そもそも建設費の 2400億円って高すぎないか?」じゃなくて?

こんなスゴイ額の税金の無駄遣いした人って、いったいどこの誰なのってことじゃなくて?



論点3 利権はどこにあるのか?

上記の「無駄に使われた税金」はすべて、その割高な発注を受けて建設工事等を行った会社や備品を売った会社に“ぼろもうけの利益”として転がり込んでいます。

通常より何割も高い利益を税金からもぎとっていったこれらの会社群に、総務省(郵政省)の官僚が何人くらい天下っているのでしょう?

それらの企業において、「 2年働いて 1000万円以上の退職金」を貰っているなど、いわゆる“渡り”を繰り返している人達に流れた給与や退職金の総額はいくらなの?、というのも関心のあるところです。

あと、多くのかんぽの宿は、仕事も全くないようなローカルなエリアにあります。そこで働く正社員の皆様は、その地域の人の平均と比べてどの程度恵まれた年収を得てらっしゃるのでしょう?(←聞くところによると、平均年収 600万円だそうです。地方では相当いいレベルの収入ですよね。)また、そういう人達の採用は、どのように決められたのでしょ?

かんぽの宿があるような避暑地・保養地で、赤字でもリストラされず安定した給与を貰い続けられる正社員のうち、その地域の郵便局幹部関係の縁故採用で仕事を得た人はどれくらいいるんだろう?ってのも、知りたいところです。


今回非難されてるオリックスは、総務省(郵政省)の天下りを受け入れているのでしょうか? 今までに受け入れを打診され、断ったことがあるのかな?「絶対に天下りなど受け入れない」と宮内会長が決めたりしたことはあるのか? なども知りたいところです。

彼等もそれを受け入れてさえいれば、こんなことにならなかったのかなあ?という素朴な疑問がでてきますよね。

もしかすると「宮内さんもまだまだ青いね、払い下げ財産で一儲けしたければ、天下りの 20人やそこらは受け入れないと。世間知らずなんだから。」ってことなのかもしれません。



論点4 売れ残りをどうするつもり?そのコストは?

世田谷の物件は買いたい会社がある、とか、埼玉の物件は県や市が関心もってるとか報道されてますが・・・そりゃあ、売れる物件に関心ある人がいるのはあたりまえですよね。

今回の販売のポイントは「いかに不良債権化した物件を売りさばくか」ではなかったのでしょうか? 


ちきりんが関心あるのは、まずは

今の時点で(もしくは近い将来)オリックス以外に「すべてをまとめて購入したい」と言っている入札者は存在するのか?ということ。

もしもすべてをまとめて売ることができずに、売れる部分だけを売却した場合、売れ残るかんぽの宿の数はいくつあるのか?

それらの売れ残った宿は、いったいどうするつもりなのか?(大半の売れ残る物件は東京だの首都圏ではなく、とても山深い地域にあることでしょう)

それらもずうっと営業を続けるのか? 年に 50億円の赤字の大半はそういうところの施設から発生してますよね?

その場合、誰も買いたがらない場所にある、それらの売れ残った宿が毎年流し続ける赤字を補填するのに必要な税金はむこう 5年なり 10年分でいくら?

てのが知りたいよね。



論点5(おまけ) “成り上がり”が嫌いだよね。この国は

宮内さんも叩かれやすい人です。公務員もマスコミも規制産業だから、規制緩和派の人は余り好きではないってことなのかな。

一流大学から一流企業に入るというとても保守的なキャリア選択をしている人達にとって、リスクをとって大成功するなんていうキャリアは「ずるい」とでも思えるのかもしれません。

“嫉み?”と思うくらい、世論だかマスコミだかしらないけどこういうタイプの人を叩くよね。

自分の実力で成功して金持ちになった“成り上がり”の起業家ってのは「すごく欲深くて、ずるい人に違いない」と思われてるみたいに感じます。


先祖代々大物政治家という家に生まれ、先祖代々巨万の資産を(何代も続けて相続税を払っているはずなのに、なぜか全く目減りせず増え続ける資産を)生まれながらにして引き継いでいる鳩山氏を、自分で企業を大きくした宮内氏より尊敬してんの? 

「生まれながらの億万長者なんだからお金にはきれいなはず。今回だって金のためではなく義憤で怒っているのだな」って思えるから?

国全体として、「安定志向でリスクをとらず、大組織の中で生きていきたい人を多く育てたい」「昔ながらの大資産家はお金に汚くないから信頼しよう」ということであって、一代で成功した起業家的な人をバシバシ叩くのは国益に沿ってるってことなのかな?


ちきりんには、オリックスへの売却手続きに一切の瑕疵がなかったという気はありません。よく見知ったモノ同士、なれ合いや甘えがあったんじゃないかなと思います。

しかし、巨悪と闘うべきその時に、大きな議論をひんまげて、重箱の隅をつつくようないちゃもんをつけることをしていたら、得をするのはいったいだれなのかよく考えるべきではないか、とも思います。

すべてが無茶苦茶な時に、一歩でも前に進もうとするのではなく、「完璧に問題が解決されるのでないかぎり、一歩たりとも足を前には進めず、ひたすらに文句を言い続けるべきだ」と思っている人は本当にそれが生産的な考え方だと思っているのでしょうか。

今回、鳩山氏の大手柄のおかげで、いったいこれからいくらの税金が無駄になるのか、考えただけでくらくらしちゃう。


そんじゃーね。



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