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Chikirinの日記 RSSフィード

2009-03-31 韓国の皇室ドラマ

ちきりんの好きな韓国ドラマの中に、「もしも韓国に皇室が残っていたら?」という仮定で作られたものがあります。

今の韓国にはありませんが、昔は朝鮮半島にも王朝体制があったのは「チャングム」や「ファンジニ」などドラマを見ている方はよくご存じのとおり。てか、ドラマ見なくても知ってますよね、そんなの。

14世紀に李氏朝鮮王朝が中央集権体制を確立し君臨し始めたのですが、日本による韓国の併合(1910年)で一応“消滅”しています。ただし日本の占領下時代には、日本も皇室の国ということもあって李氏一族や王族達はそれなりの扱いを受けています。(傀儡の溥儀皇帝達と同じような感じだったのでしょう。)

反対にそれが韓国の一般の人の反感を呼び、「李氏王朝は日本の支配層に媚びまくった」という思いが残り、それもあって日本から解放された後にも皇帝や王族を復活、維持しようという話にはならなかったわけです。

この辺なかなか感慨深いですよね。その頃は中国の清朝に、李氏朝鮮、そして日本の皇室とこの3国はすべて皇室、王室があったのに、曲がりなりにも今それを残しているのは日本だけ。

歴史のちょっとしたことでこうなってしまうのか、なるべくしてそうなったのか。なかなかに興味深い点であります。


というわけで韓国には今は王家も皇室もないのですが、「それがもし続いていたら?」という前提でのドラマが作られてて、それがめっちゃおもしろい。なぜかというと、「明らかに日本の皇室を意識して作ってるでしょ、これ」と思えるからです。

当然ですよね。だって、既に無いものを再現してドラマにしようと思えば「隣の国に残っているもの」を参考にするのが一番自然です。清朝も無いし、欧米の王室を真似るよりはよく似てる日本の皇室を参考にしよう、ってことになってるんだと思います。



で、どんな内容のドラマなのか?


こんなドラマです。

・初めて民間から皇太子妃が迎えられる。

・皇室には山ほどの行事や公務やしきたりがある。

・皇太子妃は皇室に全然馴染めず、体調も壊したり、泣いたりして暮らしている。

・そのうちに彼女は離婚を考えたりもする。

・それが外にばれないよう皇太子は必死でなだめようとするが、精神的にいき詰まった皇太子妃は記者会見の場でつい“離婚”という言葉を口にしてしまう! 大騒ぎ勃発!!


また、

・皇太子(第一王位継承者)と従兄弟の関係にある王子(第二王位継承者)の間に、どっちが次の皇帝にふさわしいかという抗争がある。

・現皇帝は健康に不安があり、このふたりの皇位継承者が皇帝の公務を支えている。

・水面下で皇族達が、皇太子派と従兄弟の王子派に別れて対立し、どちらが次の皇帝にふさわしいかなどについて支援活動をしていたりする。


で、ドラマの結論は、

・皇太子が王室に馴染めない皇太子妃のために、王位継承権を捨てて二人で第三国に移住し、海外で静かに自由な生活をする、という道を選ぶ。


で、じゃあ、対立していた王子の方が次の皇帝になるのか、というと・・・


そうではなくて、

・今の皇帝の娘、すなわち王女が皇帝になる。つまり、

“女帝”が誕生する!




どう考えてもいろいろヒントを得ている感じでしょ。“inspired by the Japanese Emperor familly”って感じじゃないすか?しかも結論まで示唆してくれてるような・・


“皇室ネタ on 韓国ドラマ”、ちきりんの好物がダブルで乗ってる感じですね。“バナナチョコ”みたいな感じか。というわけで、過去のちきりんブログから皇室関係のと韓国ドラマ関係のをまとめときます。

みなさんもブログばっかり読んでないでたまには韓国ドラマも見た方がいいですよ!(冗談ですよ!)


じゃね。



↑上記で紹介したドラマはこちらです。






<皇室に関するエントリ>

雅子様キャリアウーマン説は変だよ

http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20050316


覆面座談会(皇室ミーハーの皆様)

http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20051116


秋篠宮の反撃??

http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20060208


「誰が」「なんで」嫌がってるの?

http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20080229


この方向は正しいのか?

http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20080304


単なる酔っぱらい

http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20080305



<韓国ドラマに関するエントリ>

直接的にドラマに関するもの、俳優に関するもの、また、韓国ドラマからヒントを得て考えたことを書いたエントリです。いっぱい書いてるなあ〜、驚いた。


輸出を想定せずに作られたもの

http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20090221


韓流スター結婚報道から

http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20080726


Tokyo is for...

http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20080213


ドラマと現実の交差点

http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20071220


“お気に”なドラマ

http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20070609


挺身隊

http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20070426


マンションの間取り

http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20061126


彼はやっぱり第一世代

http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20060902


韓国ドラマ〜

http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20050611

2009-03-30 分断された人々

ブラックベリーの“ブルブルッ”に即時反応する人達の国

その名は“ブラックベリー・ビジネス大国”



PCの画面を一日4時間以上、加えてゲーム機もしくはiPhoneの画面を一日2時間以上眺めている人達の国

その名は“ネット人民共和国”



けーたいを取り上げられると、命の危険を感じるほどに恐怖する若者達の国

その名は“けーたい学園公国”



固定電話以外の通信手段をもってない人の国

その名は“昭和帝国”





世界は分断してる。

2009-03-28 高齢者向けビジネスあれこれ

近い過去において「50才以上の保有金融資産を切り崩して消費に向かわせた」一番インパクトのあった例は、ちきりんが知る限り“ヨン様”です。

日本のゴールデンタイムのドラマがどれもこれも若者向きだった時期に、50才から70才の女性の心をがっちり掴んだドラマが冬ソナでした。

韓国ドラマのスペシャルDVDボックスは一作品2〜5万円、ファンミーティングに行くには地方から東京にでてきて交通費、宿泊費、参加費で10万円規模の出費です。韓国に冬ソナツアーにいって山ほどお土産グッズを購入すると20万円以上、加えて旅行前に数万円だして洋服を新調する人もいます。もしかしたらヨン様と写真を撮れるかもしれないからです。

先日、ヨン様の追っかけ費用を捻出するため顧客口座から億単位のお金を盗んでいた50代の女性郵便局員が捕まりましたが、そこまでいかなくても数百万円単位でヨン様にお金を投じたシニア女性はたくさんいるでしょう。それらが彼女らの「夫の収入」や「月々の年金」の範囲内で収まるはずはなく、「1500兆円の資産の一部」がヨン様のために支出化されたことは間違いありません。

「高齢者は将来が不安だから貯金を遣わない」という人は、男性タレントのためのこの消費をどう説明するのでしょう?

ヨン様の2005年の年収は45億円程度と報じられました。タレント本人の取り分が全体の2割とするとヨン様関係で動いたお金は一年で225億円となります。4-5年は続いたブームを考えると全体で800億円以上でしょう。

ヨン様はダントツとしても、いったい韓流ブーム全体でいくらのシニア支出が行われたのか想像するだけでクラクラします。日本のテレビがもっとまじめにこのセグメントに焦点を当てていれば、隣の国に流出しなかったであろう内需分が、それだけあったということなのです。

また、ヨン様にはまった人の一部は元々アクティブだった人も含まれますが、中には「今までは非アクティブだった=毎日ずうっとテレビを見ているだけだった」のに、ヨン様に関してだけアクティブになった人がたくさんいます。というか、非アクティブだったからこそ“はまった”とも言えるでしょう。

これは、インパクトのある商品を提供できれば、非アクティブシニア市場にこれだけのビジネスが興こせる、という象徴的な例だと思います。

★★★

日本の業界では、シニアの財布を巧く捉えているのは“孫ビジネス”です。この分野が大きくなったのは、若い人が市場の可能性を体感できたからでしょう。「うちの親、孫のためにすごいお金だしてくれるぜ」という体感を若い人が得て、そのことで「有望市場」に気がつき、ビジネス側の工夫につながったわけです。

これは希望がもてる事例です。ビジネス側の人が気がついて工夫を始めれば、あの巨大な貯金を消費(経済活動)に変換できるということですから。

ただ、孫ビジネスは若者も体感できたから気がついたけど、「毎日の仕事で、定年後の人には一人も会わない」みたいな仕事をしていると高齢者市場のニーズなどにはあまり気がつきません。なのでシニアの財布を開かせている業界には、元々高齢顧客が一定数いた業界が多いです。


たとえば、旅行業界。日本は「定年後に旅行を楽しみたい」人が多いので、60才以上の層は旅行業界にとって元々有望なセグメントでした。そして高齢者顧客とつきあう中で、彼等は様々なニーズに気がつき、一部がビジネスとして顕在化されつつあります。

高齢者旅行ビジネスにおいてキーワードとなるのは「健康」と「つれあい」です。これだけでも、高齢者ビジネスがいかに若者向けビジネスと異なるか、わかるでしょう。

高齢者の多くが不健康です。今すぐ命に関わらないにしても、「めっちゃ元気なおっさんやな!」と思うような人でも、なんらか悪いところがある。それが年をとるということです。

たとえば食事制限がかかる疾病というのがたくさんあります。高血圧で塩分が、糖尿病ではカロリーや糖質のコントロールが必要です。日常生活には他に別になんの問題もなくても、食事制限があるだけで、普通の海外パッケージツアーに気軽に参加できなくなります。

食事が不安だし、塩を減らしてくれと依頼する英語力もない。しかも持病があるというだけで海外旅行保険も加入できない。向こうで万が一のことがあったら・・・と思いますよね。

先日のWBCの決勝戦に王元監督が米国まで行かれていましたが、王さんも胃の全摘手術を受けてらっしゃるので、普通のパッケージツアーへの参加は無理でしょう。


もうひとつ大きいのは、歩くスピードが遅い、杖が必要、車いすを使用などの「足腰系」です。また「トイレが近い」という不安をもつ人も多く、長いバス移動があるツアーは敬遠されます。

でもそういう人の中にも「少しくらい高くてもいいから、是非あそこに旅行したい」という人はたくさんいます。そして、1日で回る観光地の数を大幅に減らし、自由時間の長さを延長すれば、ゆっくりしか歩けない人でも観光を楽しめます。そんな工夫にはコストは一円もかかりません。

すでに大手の旅行会社のパンフレットには「歩く距離が短い」とか「トイレ休憩を必ず2時間ごとに入れる」などと明記し始めたツアーがあります。まだ見たことはありませんが、「すべての食事を糖尿病&高血圧対応にします」というツアーもありえるでしょう。さらに、大手旅行会社を独立した人で、車いすの人が参加できる特別なツアーを催行する会社もでてきました。

今はまだ小さな市場ですが、こういう「ニーズに気がつきはじめる」というのは大きな一歩です。若者は人口も減るし、ネットで直接予約する世代です。「若者の海外旅行離れ」を嘆いているヒマがあったら、高齢者ニーズを掘り起こすことに時間を使うべきでしょう。

しかもこういう市場はそれなりの利益も見込めます。高齢者はお金をもっているし、若者のようにネットで底値を調べてチケットを買ったりもしません。こういう市場に目をつけず、ぎりぎりの底値で旅行しようとする若者相手に商売をするから、働く方もワープアレベルの給与しか稼げないのです。


もうひとつの「つれあい」も高齢者ビジネスのキーワードです。特に「夫を亡くした後、20年元気な女性」が増えています。また、夫とは趣味が異なり一緒に旅行に行ってくれない、とか、夫だけに健康問題があり一緒に旅行できない、というケースもあります。

ところが、この人達は一人で旅行に参加したりしません。多くは長く専業主婦だった人で「ひとりで動く」こと自体にあまり慣れていません。また「ツアーに参加して、自分以外はみんな夫婦づれ、というのは寂しいからイヤだ」と思う人も多いです。

「ずっと二人以上で暮らしてきて、人生の最後で一人暮らしになる人」というのは、「ずうっと一人暮らしだった人」より圧倒的にひとりということに弱いのです。しかも、学校や会社という強制的なコミュニティもなくネットでつながることもない彼らは、若い人に比べて「つれあい」「仲間」作りが難しいです。

ここに目をつけて大成功しているのが「クラブツーリズム」という旅行会社です。「お一人様参加限定」のシニア向けツアーを企画したりしています。全員が一人で参加するから、寂しくも情けなくもないですよ!というツアーです。しかも「ひとり参加」の人達はそういうツアーで「旅仲間」を見つけて、次回から一緒に参加したりするわけです。

まあまだまだいろいろあるのですが、長くなるんでこの辺にしましょう。


ちなみに旅行会社以外ではコンビニを含む小売り業も「いろいろ」気がつき始めていると思います。私たちに一番目に見えるのは食事ビジネスです。なんだけど、実はこっちは(食事ビジネスだけでなく)相当巨大な“とある市場”につながっており、この市場がものにできれば小売り業は超有望とちきりんは思ってます。また、郵便局もなかなかにおもしろい“プレーヤー”です。

なのですが、もうこの話は今日でいったん打ち切りにします。同じテーマについて書き続けるのもいい加減、飽きてきました。次回からはまた別の話を書いていきましょう。

それではまたね〜



<参考図書>

  

2009-03-26 “若者的なる者が消費する”という概念

日本の高齢者がお金を貯蓄に塩漬けにして消費しない理由を、「将来が不安だからお金を使わない」という一点だけで説明しようとする人もいるのですが、ちきりんはそれがすべてだとは思っていません。

高齢者向けの消費プロモーションが医療・介護分野を除き盛り上がらないのは、モノを売る側、特に広告、マーケティング側の業界や人達に「消費をするのは若者である」という固定観念が強く残っているからです。高度成長期、人口増大期に形成されたこの感覚は、高齢社会を迎え、若者の所得が非常に低く抑えられている今でも根強く残っています。


「アクティブシニア」という言葉を聞いたことがある方も多いでしょう。これは、旅行や趣味、さらには恋愛にまでアクティブに行動する高齢者層を指す言葉です。

この概念は「若者=アクティブ、高齢者=非アクティブ」という前提から発し、「最近は高齢者の中にも若者のようにアクティブな生活を送る人がでてきた」ということを意味しています。

しかしこの言葉は、「若者のように行動するシニア」を消費者して認識する一方、「若者のようにアクティブに行動しない、ごく普通のシニア」については、消費者として認識しないという問題を含んでいます。現実的には「シニアらしいシニア」が大半なわけですから、これでは高齢者の大半は消費者と認識されないままになってしまいます。

★★★

実はこれは「ビジネス界における女性」の扱われ方と同じです。男性企業社会はずっと「男性と同じように働く女性だけを労働者仲間と認識する」という考えをもっていました。「生物学的には女だが、労働者としては(有給休暇も育児休暇もとらず、命じられるままに転勤する)男のように振る舞う者」だけを切り出して「ビジネス界で通用する人材」と位置づけてきたのです。

これは「生物学的には高齢者だが、消費者としては若者として振る舞う者」だけを「消費社会において意味のある存在」と位置づける考え方と全く同じです。

さらに「ちょい悪オヤジ」という言葉も「中高年ではあるが、若者的な消費行動をする人」という概念です。

一般的に、中高年になればローンと教育費負担に追われて若者的な消費を続けることは難しいです。けれど未婚率、離婚率が高まり、年功序列から離れた職場で高給を貰う人が現われ、“若者のように食べ歩いたり、ファッションや車にお金を注いだり、恋愛にも関心がある”中高年がでてきたので、“売る側”は彼らを消費者として意識し始めました。

しかしここでも「若者的な行動をしない、中高年らしい中高年」は消費市場から切り捨てられてしまっています。実際には大半の中高年はちょい悪オヤジなどではないにも関わらず、です。


このように、この国の消費市場を見る目はあまりにも若者偏重です。売ろうとする側に「消費をするのは若者的なる人である」という固定概念があるのです。

けれど実際には人数も減り、経済的余裕もなくなった若者が、昔のように派手に消費してくれるわけではありません。それを企業側は「若者が○○を買わなくなった」「若者の○○離れが深刻」と騒いでいるわけですが、消費を期待すべき対象はもはや若者ではないのです。

★★★

事業者が若者偏重から逃れられないひとつの理由は、そもそも働いている人が「昔は全員若者だったが、自ら高齢者になったことは誰もない」からでしょう。

国民の同一性が高い日本では、多くの人が自らの体験に基づき「こういうサービスや商品にはニーズがあるはず」と考え、それをビジネスにつなげてきました。

こういうやり方は、自分が生きてきたのと同じような時代が続いている限り有効です。しかし世の中が変わる時には「自分の過去の経験」は役立たなくなります。

過去と未来に断絶が起った時には、自分の経験値や固定観念を離れ、「事実や情報に基づいて論理で考える」必要があるのですが、これがなかなか難しいのです。


たとえば、

70才の女性。夫が亡くなり、中堅地方都市で広い持ち家にひとりで住んでいる。40代の2人の子供はそれぞれ家庭を持ち、3時間ほど離れた都市に住んでいて、正月だけ戻ってくる。

腰や膝が痛いが大病はない。月々の年金が10万円ある。貯金は郵便局の定額貯金と簡易保険が3000万円、銀行預金が1000万円と、夫の残した株や個人国債が併せて2000万円くらいある。パソコンは持っていない。

というような、“お金持ちの高齢者”が、いったいどんなサービスや財を求めているか、いやその前に、この人が毎日朝から晩までどういう生活をしているのか、想像できるでしょうか?


多くの人は自分が高齢者になってから様々なニーズを感じ、「もしこういうサービスがあったらとても助かる。少しくらい高くても対価を支払うのに。」と思うでしょう。しかしその人達は、その時点で既にビジネスの供給側で働いていません。

ビジネスサイドが積極的にニーズを探りに行かない限り、それらが事業化されることはないのです。かくして圧倒的に大きなポテンシャル市場が、供給側から注目されることなく取り残されています。

★★★

けれど、ちきりんは悲観的ではありません。ものごとが変わるには時間がかかります。「男性と同じように働けない女性は一人前の労働者とは認めない」社会も、「女性も働ける労働環境に」と変わりつつあります。同様に「若者のような行動をする人」だけを見てきたビジネス社会も、次第に、非アクティブな生活をしている、大多数の普通の高齢者を有望な消費者グループとして認識し始めています。

その昔、企業社会は今より男性社会でしたが、家庭の中で女性が購買権を握り始めたのに対応して、積極的に女性の声を集め始め、様々な商品開発につなげてきました。男性会社員は、自分の経験からだけでは、女性ニーズを理解できません。だから「調べて努力した」のです。この努力があって、初めて「自分達と違うセグメントにモノを売る」ことが可能になります。

今後は同様のことが高齢者市場に関して起るでしょう。大事なのは、そのスピードをもっとあげることです。昨日書いたように、今の雇用不足、内需不足のこの国に、「使いたいものがない」と放置される1500兆円という規模のお金は、あまりにももったいないですよね。


ということで、明日はこの“経済的な余裕のある高齢者”相手のビジネスに手を打ち始めている、もしくは、この市場の大きさに気がつき始めている、いくつかの事業や業界について書いてみたいと思います。


ではでは〜




<参考図書>

2009-03-25 1500兆円という規模の意味

先日から書いている「個人金融資産1500兆円」は、まさに日本の「内需拡大」の鍵となるものです。(1500兆円の内訳は*1

不況を抜けだし自律的に経済を復興させるためには、従来の輸出産業の復興に加えて内需拡大も必要です。「外需」とは他国にとっては「内需」ですから、世界同時不況の時は、どこの国も「自分の国の内需は自分の国の労働者の雇用維持のために使いたい」と考えます。日本企業が「中国やアメリカの内需」を彼等の国の企業より先に取り込んで立ち直るなんて、彼等からみたら「おいおい」です。

では、そもそも人口の減る日本で内需拡大をするというのは可能なのでしょうか?


可能です。その答えが「ここにある」と思うから、ちきりんは個人金融資産の話を書いているわけです。

★★★

まずはこの“規模感”を実感してください。1500兆円というのは、その利子1%分でも15兆円です。これは日本の一年間の個人消費総額である300兆円の5%にあたります。つまり、この資産をもつ人が、元本は全く使わず利子分だけ(現在より)使ってくれたら、日本の個人消費は5%増えるのです。

それはGDPが2%以上増えるということであり*2、しかも貯蓄の元本は全く減りません。つまり「お金を使ったら(元本が減って)老後が不安」などと思う必要さえないのです。

それくらい「個人金融資産」ってのは巨大なんです。たしか定額給付金の財源は2兆円くらいです。個人金融資産のたった1%が動くだけで、給付金の7倍以上の効果があるのです。


この低成長期に1%の利子なんてついてないだろ?とおっしゃる方もあるかもしれません。今の利子は確かに低いのですが、日本の個人貯蓄には保険や年金商品など超長期の商品が占める割合が高く、それらの中には2%から5%もの予定利率の商品も含まれています。また、長期の国債で運用されていて1%で10年くらいまわっているものもあります。

けれど、昔の保険は分配型ではないので、それがいくらで回っているのか誰も知りません。わかるのは本人が死亡した時で、えらいどっちゃり戻ってきて「ひえ〜、こんなため込んでたんだ、うちのオヤジ」といって55才の息子が驚きつつ、、、その財産を相続して自分の老後のためにまたもや貯金するんです。*3

これを放置していると、この1500兆円の大半は塩漬けされたまま日本経済に全く貢献しない資産になってしまいます。85才の親から55才の子供に相続されて引き続き貯金され、未来永劫誰もこのお金を使わないってことになるのです。これってあまりにも馬鹿げたことではないですか?


利子がいくらかという議論が面倒なら、別に利子はゼロだと仮定してもいいんです。だって1%毎年使うだけなら、「元本を減らして使っていっても、残高がゼロになるのに100年かかる」んですから。

50歳以上の人達が自分の資産の1%だけを切り崩して使ってくれれば、彼等が 150才以上になった時に残高がゼロになります。


“老後が不安”なんて幻想でしょ?少なくとも経済的な意味では。*4 150才以上になった時に貯金ゼロでもなにも問題ありませんよね。

★★★

現時点で高齢者向けのビジネスがないとはいいません。これだけ急激に高齢者が増えているのですから様々なビジネスがその人達向けに照準を合わせ始めています。しかし、彼等の資産は相変わらず増え続けています。

この額が1200兆円と言われていたのが10年ほど前です。この10年で資産は25%も増えたのです。*5

ということは、まだまだ“お金を使わせる側のビジネスが”全然足りてない、ということなんです。“一定の資産のある金持ち高齢者向けのビジネス市場”は、ある程度は存在しているとはいえ、まだ「黄金の可能性に溢れた市場」として残されています。

一方で若者向けのビジネスは、彼等が給与の範囲内では暮らせないと思うくらい(消費者金融で借りたくなるくらい)様々な“魅力的な”サービスやモノが開発されています。若者人口なんて急激に減るのだし、貯金は持ってないし、稼ぎもどうせ大きくあがるわけでもない。なのになんでそんな市場に焦点をあててビジネスする?

たとえばiPhoneならいいのです。世界で売れるから。

世界で売るなら若者はたくさんいます。なので若者向け消費を出すのもアリです。が、日本でしか商売しないのに「若者向け」の商売をやっていても限界がでてきます。一方で、資産の巨額さを見るに、「高齢者向けビジネスはまだまだ圧倒的にチャンスが大きい!」のです。


で、じゃあなぜそこに目をつける事業家がもっとでてこない?という話で、先日は「金融以外の会社は、消費にしか目をつけず、貯蓄側は金融機関に任せっきりだから」という話を書きました。

そして、最近「もうひとつ理由があるよね」と思い始めました。


それは“アクティブシニア”という言葉です。この言葉こそが、ちきりんはこの件に関する「ターゲッティングの過ちを象徴する言葉」だと考えています。こんな言葉を使ってるから高齢者市場が開拓できないのです。


続きはまた明日!


★★★

*1:2008年12月末の個人金融資産の内訳は、現預金774兆円、株・投信146兆円、債券43兆円、外貨預金4兆円、保険年金402兆円、その他66兆円、合計1435兆円。出典は一番下の注記に書いたサイトです。

*2:個人消費はGDPの55%にあたります。

*3:相続税を上げる案を主張する人もいますが、今50才の人は平均寿命まであと30年近く生きるわけで、余り即効性のある案ではないでしょう。

*4:高齢になるほど格差が大きいので貧乏な高齢者はたくさんいます。ここで話しているのは“1500兆円を持ってる側の人”の話です。

*5:今回の金融危機でこの資産は減少していますが、市場の動きからみると損害は非常に小さいです。市場商品の比率が少ない日本の資産の特徴がよく表れています。→http://business.nikkeibp.co.jp/article/money/20090130/184440/ 
それにしても株高の頃は1600兆円近くになってたんですね。

2009-03-24 ワールドベースボールクラッシックつれづれ

いや〜、すごい試合でしたね〜。

って見てないんだけど。

実は予約録画していたのに、あんなに長くなるとは思わず、9回表で録画が終わっており、一番いいところが録画されていませんでした。ショック。


NHKの9時のニュースとKBS(韓国のテレビニュース)のニュースを見比べてたんだけど、NHKの方が圧倒的にあっさりしてます。どちらもトップニュースはWBC。NHKはすぐに他のニュースに移ったけど、KBSの方は延々分析しています。



ところで、なんで“侍ジャパン”なの?

昔は、“長嶋ジャパン”とか“王ジャパン”とか言ってたのに。“星野ジャパン”も言ってたような気がする・・・なんで今回は“原ジャパン”じゃなくて、“侍ジャパン”なんだろ。不思議だ。


と思っていたらテレビで言ってました。原監督が「やだ」って言ったんだって。「僕はまだ長嶋さん、王さん、星野さんと並べるような立場じゃないから。何か別の呼称を考えて欲しい。」って。そうだったんだ!!

・・・「まだ並べるような立場じゃない」って、もう今から並ぶのは無理な気もするけど・・・



韓国と試合を5回もやるってどうなのよ、とは皆が思う通り。(16チームも参加してたなんて忘れてたでしょ)

でも案外この方がおもしろくない?次回からWBCじゃなくて「日韓頂上対決」みたいなのにしたらどうかな。10戦連続でやるとか。先に6勝した方が勝ち。5対5の場合は延長11戦目を行う。審判は大リーグから呼んでくる。トラブルが起るとやばいからね。で、同じ方式で“中南米頂上対決”も別途やって、その勝者が闘うってのはどうかな。


いずれにせよ本当の世界大会にしたいなら、アメリカ(大リーグ)がまじめにやる気にならないとどーしようもないのだが、これもねえ。たとえば相撲で考えると、各相撲部屋がある。なんだけど、3年に一回くらい


World SUMO Championship (WSC)


が行われると。で、優勝候補はもちろん朝青龍率いる“オール・モンゴリアンチーム!!!”そこに立ちはだかるのは、琴欧洲率いる“元東欧チーム!!”

決勝戦は両国国技館だけど、予選リーグはウランバートルで開催。決勝戦の日には両国あたりにモンゴル人やらブルガリア人やらがあふれかえって、日本人きょとん、みたいな。


それに、各相撲部屋とか日本相撲協会はあんましやる気をみせないでしょう。大リーグと同じです。「各回の相撲場所で優勝するのが、相撲の世界。そこでの番付がすべてであり、国別なんて邪道」とか言いそう。各部屋からいい選手を出させないとか、したり。


なんだけど、そういう時はいつもは手抜き練習の朝青龍もガシガシ朝練したりするわけ。「モンゴル相撲世界一っすよ」とか「日本なんてね、30年勝てないって思わせてやりますよ。ほっほ」とか言ったりして。イチロー化した朝青龍とか見たくない?(見たくないか・・)


ちなみに、チームの名前はもちろん“ふんどしジャパン!”





話を戻して、

まあとにかく、岩隈選手かっこいかった。

ダルちゃんも超かっこいい。

イチローは相変わらず、ちと妙だった。



数年ごとに、なんていうかこの漫画的な大会を見続けるのかと思うと、かなりおもしろい。



そんじゃーね!

2009-03-23 コストの方だけ発表する意味 (byちきお)

「子供を大学まで行かせると、ひとりあたり○○万円かかる」という調査レポートをよく見るでしょ。

なぜか?

「学資保険を売るため」だよね。



「子供がひとりいれば(増えれば)、老後資金は○○万円少なくてもいい」という調査レポートなんて見たことないでしょ?

実際には子供がいるかいないかで、「万が一」のために蓄えるべき額はかなり違うはず。天涯孤独の人は、子供がある人より当然ある程度は多く貯めないといけない、と思うよね。でもそういう数字は誰も調査しない。発表しない。

なぜか?

そんなことしたら「個人年金や変額年金が売れなくなるから」だよ。



ってことを、昨日ちきりんは長々と書いてたわけなんだけどさ。

あいつはホント文章が長いんだよね。

ちきりんブログも僕に任せてくれさえしたら、かなりの短文ブログに改変できるのに。



というわけで本日は“解説 by ちきお”でお送りしたお。


じゃな!

2009-03-22 市場としての“支出”と“貯蓄”

個人の収入は支出と貯蓄に分かれます。

収入=支出+貯蓄

昨日書いた個人金融資産とは、この貯蓄部分が蓄積したものです。金融機関各社はこの部分を、「預金してください」「保険に加入しませんか」「株を買いましょう」などと奪いあいます。

一方、家電メーカーも旅行会社も携帯電話会社も出版社もレストランも、つまり金融以外の一般企業は「支出」部分を奪いあいます。消費者は「携帯代が高いから外食費を減らす」とか、「食事代を切り詰めて服を買う」という行動をとるので、企業側から見ればまさに「消費支出の取り合い」です。


金融業は貯蓄側を取り合うビジネスですから、リテール金融、資産運用の世界では個人金融資産の年代別の保有比率はよく知られたデータです。一方「支出」側を取り合う一般企業は、「誰が一番資産を持っているか」より、「誰が一番多く支出するか」に関心を持っています。


総務省の家計消費状況調査2008年によると、年代別の月額支出額は、

20代・・・約20万円

30代・・・約27万円

40代・・・約36万円

50代・・・約37万円

60代・・・約32万円

と、金融資産ほど高齢者への偏りはありません。


また40代、50代世帯と20代、30代世帯の支出額の差は月に10万円程度に過ぎず、これでは、自由になるお金の額で比べれば若い人のほうが多くなります。

40代50代世帯は、子供の教育費や住宅ローンなど必要経費が多く、自由になるのは「お小遣い制で月数万円」だったりしますが、20代独身で親と同居、もしくは、子供のない30代で共働きともなれば自由になる額はそれよりかなり多くなります。このため、支出側をとりあう一般企業の多くは、これまでずっと若い人にターゲットしてきたわけです。

★★★

ところで金融業界は「貯蓄内での取り合い」に加え、「支出を貯蓄に取り込むための努力」にも熱心です。たとえば次のような“啓蒙活動”を多くの方がご存じでしょう。


例1)書店では個人向けマネー誌がたくさん売られており、そこに大量の金融機関の広告がでています。これらの雑誌は、金融業界が資金をだしあって発行しているようなものです。

その中の「30代の貯蓄平均額は何百万円!」という数字をみれば、「やばいっ、俺も貯金しないと」と思う30代の人が出てきます。こういった特集やマネー本は、「支出を貯蓄に移行させようという金融業界のマーケティング&プロモーションツール」なのです。


例2)金融機関系列の研究所やシンクタンクは、「子供を大学まで卒業させるのに何千万円かかる」とか「安心して老後をすごすために必要な資金は何千万円」といった調査を定期的に行って発表しています。

これも金融業界全体で、支出から貯蓄側に資金を取り込むためのプロモーションです。「将来こんなにお金が必要ですよ!」と不安を煽り、だから「今は無駄使いせずに貯金しましょう」と、お金を消費から貯蓄に呼び込むのです。


そもそも明治以来の日本では、お金を個人に自由に使わせるのではなく、金融機関に貯蓄させて(最終的には)国が吸い上げて特定分野に投資(配分)する、ということがずっと行われてきました。

明治の開国時には西洋から新しい道具や珍しい食べ物が一気に流入し、放っておけば庶民のお金は自然に支出に向かいます。しかし明治政府は「貯蓄は美徳」的なプロパガンダを通して個人に貯金を勧め、そのお金を集めて鉄道など社会インフラや重要産業に集中投資し、殖産興業に邁進しました。

昭和の戦争期には「欲しがりません、勝つまでは」などという禁欲的(非消費的)なスローガンまで打ち立てられ、多くの人達が国債を購入し(=貯蓄し)、それらのお金が戦費に回りました。

戦後も同じです。復興のために「とにかく貯蓄しろ」キャンペーンが行われました。貯金させるにはインフレを抑えることが不可欠で、これが日本銀行のDNAにまでしみこむ“低インフレこそ我が使命”という思想につながっているともいえますし、当時は「誰のお金かたどることのできない無記名の割引債」まで用意され、お金持ちの資金を銀行が吸い上げていました。


しかし高度成長を経て、日本は経済大国になります。本来であれば、貯蓄ではなく消費を謳歌する社会に移行するはずです。それなのに国と金融業界が一体となって繰り広げたマーケティングの効果か、日本人には「貯金がないと結婚できない」「貯金がないと子育てができない」「貯金がないと老後がのりきれない」などの意識が強く植え付けられています。


一方の、支出側を取り合っている一般企業は「貯蓄側から支出側にお金を取り込もう」という努力をほとんどせず、ひたすらに支出内の取り合いだけをしています。

本来なら「そんなにため込まなくても大丈夫ですよ」とか「こういう工夫をすれば子育てにはそんな(金融機関が発表するほどの)お金はかかりませんよ」「一人暮らしより二人暮らしのほうが生活費が割安です。お金がないから結婚できないなんて変ですよ」というキャンペーンを行い、貯蓄を消費に呼び込む努力をしてもいいはずです。

高齢者にも「お金は墓場にもって行けませんよ」「ほら、こんなすばらしい商品やサービスを開発しましたから、元気なうちに貯蓄をおろして使いましょう。人生を楽しみましょう!」と啓蒙&営業すべきなのですが、実際にはそういったメッセージ(貯蓄から消費へ)をみることはほとんどありません。


その上、日本の若者が過去ほどお金を使わなくなるという現状に直面すると、(それ自体は悪いことではありませんが)海外の若者に目を向け、国内で多額の貯金を貯め込んでいる高齢者についてはあまり関心を払っていないようにみえます。これでは日本の高齢者の貯蓄が消費に回ることはないでしょう。

これまで長期間にわたり、国や金融業界は「消費より貯蓄」を強く奨励してきたのです。高齢者はそんな環境の中で長らくすごしてきています。一般企業は(金融業界がやってきたように)業界で力を合わせ、大々的に「そんなにため込まなくても大丈夫」キャンペーンを実施しないと太刀打ちできません。

何よりも重要なことは、「お金は、支出額の中だけで奪いあうものではなく、貯蓄と支出の間でこそ奪いうものなのだ」ということに一般企業が気がつくことです。そうして初めて、「貯蓄をおろしてでも買ってもらえるもの」という視点での商品開発、サービス開発が始まるのです。


というわけで、貯蓄が消費に向かわない要因のひとつは、お金が「支出と貯蓄」の間で奪い合われている中で、貯蓄推進側の努力が圧倒的に勝っていることにあるというのが今回のポイントでした。

★★★


次回はもうひとつの、「一般企業が高齢者に積極的にターゲットしない理由」について書いてみます。


引っ張る引っ張る・・・


そんじゃーね。

2009-03-21 個人金融資産の年代分布

これは金融業界では昔から有名なグラフです。*1

個人金融資産とは「日本の個人が保有してる金融資産の合計」、簡単に言えば「日本人の貯金合計」で、総額 1500兆円と言われています。不動産は含んでいません。

借金も含まないので、純粋な資産総額はここから借金(住宅ローン、その他の借金)を引く必要があります。

1500兆円の大半は郵便貯金、銀行の預金、保険、個人年金、国債等であり、株式、投信などが少ないのが日本の特徴です。なので、リーマンショックとかの影響をあまり受けません。


で、この1500兆円の金融資産を誰がもっているかを世帯主の年代別に分けると下記のようになります。*2

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すごくないですか?? 60歳以上で 6割です!!



でも、こんなので驚いてはいけません。50歳以上で見てみると、グラフは下記に変わります。

f:id:Chikirin:20090321162438j:image:w400



ついでに 40歳以上と 39歳以下でわけてみましょうかね。日本の個人金融資産 1500兆円は誰が持っているのか?

f:id:Chikirin:20090321133659j:image:w400

パックマンみたいなグラフになっちゃいましたね。

それにしても若い人、びんぼーだな・・

たまにはご馳走してあげよう。


さて質問です。今みなさんが「起業しよう!」と思ったとします。その場合、

「若者向けの商売を始めるべきですか?

それとも中高年をターゲットにしたビジネスを始めますか?

それともシニア向けビジネスを始めますか?」


別の質問でもいいです。「魚のたくさんいるA池と、魚が少ないB池があります。あなたはどちらの池で釣りをしますか?」なお、釣り人の数はB池の方が多いです。どっちの池で釣りします?

★★★


最初に書いたように、このグラフの数字は「借金」を含んでいません。それを含めた「差し引き後の純資産額」だと、なんと 20代と 30代の資産額はマイナスです(住宅ローンのせいですね)。

一方 40代からは借金を差し引いてもプラスです。つまり、借金を合せて考えると、より 50代以上の人の豊かさが際だつのです。

加えてこのデータには、不動産も入っていませんが、不動産をいれたらもっと極端に高齢者に偏ったグラフになるでしょう。


“親が死んだら相続する”という人も居ますが、親の平均寿命は男性が 79歳、女性が 85歳くらいですから、相続する方の子供の年齢は 49歳〜 55歳くらいです。若い人にお金が回ることは一生ありません。

つまり「最も小さく見積もっても、資産の 8割は 50歳以上の人が持っている」というのが現実であり、不動山やローン残高を加味すると、富はもっと激しく高齢者に偏在しています。


あなたが起業家なら、

「若者向けのビジネスを始めますか?」

それとも

「中高年、シニア向けのビジネスを始めますか?」


というか、「こんなデータがあるのに、なんで高齢者向けのまともなビジネスがもっとでてこないのか?なんで違法なビジネスしか、この部分にターゲットして努力をしないのか?」というのが興味深い点なので、明日はそれについて書いてみます。


f:id:Chikirin:20150810175729j:image:medium

じゃね!


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*1http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20090320#c1237539626 
円グラフの元データはhttp://www.gamenews.ne.jp/archives/2009/01/post_4462.htmlのページ下部の方にある「 2007年度末における年齢階層別金融資産保有総額(兆円) 」のデータを使わせていただきました。

*2:2008年3月末のデータです。

2009-03-20 振り込み詐欺全盛社会の背景

これだけ警戒されているのにいっこうに減る兆しが見えない“振り込み詐欺”。

彼らは、

・最もお金を持っている層にターゲットを絞り、

・次々と効果のある創造的な話法を編み出しながら、

・手下達に高い動機付を与えて事業の推進力を高めています。


合法なビジネスの中には、

・完全にターゲティングを間違えているビジネスや

・ニーズに合わなくなった商品を売り続け、全く新しい商品やサービス開発をしない会社、

・従業員の動機付けに失敗し、有望な人材を雇えず、組織が荒廃している会社

も珍しくないのに、皮肉なことに詐欺集団のほうがよほど頭を使い、努力をしているようで、結局のところそれが、警察の意地と威信を注ぎ込んでもこの犯罪が全く下火にならない大きな理由なのでしょう。あまりにも“仕組みとしてよくできている”というわけです。

★★★

こういった犯罪が隆盛な背景としては、ATMなど振込みインフラの普及に加え、日本では多額の金融資産をもつ多くの高齢者が、

・社会から孤立した生活をしており、

・通常のビジネスが消費者としてターゲットせず、放置していること

が考えられます。


「日本人は死ぬ間際が人生の中で最も裕福」と揶揄されるように、この国の金融資産は高齢者に偏在しています。ところがなぜか、この裕福な層にターゲットしたまともなビジネスが少ないのです。

たとえばアメリカでは、お金のある高齢者の多くは引退後にはフロリダなど温暖な街に家を買って移住します。他にも、高級なものから普通のものまで、高齢者向けに開発されたコミュニティマンションが多くあります。

そういったところでは、配偶者のない高齢者向けの“出会いサービス”まであり、会費を払って老後の生活を共に楽しむパートナーを見つけることも一般的です。さらにパートナーが見つかれば、共に食事したり旅行をしたりとなんやかんやお金を使います。

欧州でも金銭的に余裕のある高齢者は、引退後、田舎の家(別荘)に移住する人がたくさんいます。気候のよい自然に恵まれたエリアで小さな心地よい家に住み、近所の人達を食事に招いたり招かれたりしながら暮らすのです。

もちろん欧米でも貧しい高齢者はたくさんおり、都会の賃貸アパートでひっそり暮らしていますが、ここでは“お金のある高齢者”の比較をしています。どの国でも貧乏な高齢者は多額の詐欺に狙われたりはしませんからね。

★★★

さてこのように、フロリダや南仏の退職者が多く集まるエリアでは、町中が「高齢者の生活」「高齢者向けビジネス」に特化した作りになっているから、彼らはそこで暮らしながらお金を使い、いろんな人とつながりができます。つまり、「友達ができる」のです。

すると、詐欺からの電話がかかってきた話をお茶を飲みながら共有したり、妙な勧誘葉書が家に届いた時に「ねえねえ、こんなのが来たの。どうすればいい?」相談できます。

これが犯罪防止に大きな意味を持ちます。日本でこのタイプの犯罪がここまで拡がることの背景には、「高齢者には、困った時にすぐに相談できる人が全くいない」ことがあるのです。


では日本で、数千万の貯金を持ちながらコミュニティから分断されて暮らす老人があまりにも多いのはなぜでしょう?貧乏な高齢者がそうなってしまうのは世界共通ですが、なぜ日本ではお金のある人までそういう生活になってしまうのでしょう?

理由は、このセグメントに目をつけているビジネスが余りに少ないからでしょう。お金があり、暇をもてあましていて、人生に退屈したり不安を感じている高齢者に、生活の楽しみを提供するサービス、生活や健康の不安や不便を解消するサービス、豊かな老後を送るためにサポートするサービスがあまりに少なすぎる、のです。お金を持っている層をここまで放置する資本主義国ってなんとも珍しいよね、という気がするほどです。


ちなみにちきりんが知る限り、この超有望セグメントに目をつけているまともなビジネスとしては、

・旅行業界:高額の海外旅行やクルーズ

・高級な車やオーディオ(テレビなど)、ゴルフセット

・健康食品業界:ロイヤルゼリー、青汁、養命酒、関節の痛みがとれる薬などの各種の健康サプリ

などがあります。


これらを見ていて思うのは、彼らが目をつけているのは「高額の退職金をもらう一流企業の退職者」なのだとわかります。参加費用数百万円の海外旅行や、高級車は誰でもが買える商品ではありません。そういう意味ではもっと「普通に買えるもの」というものでは、結局「健康」に関するサプリくらいしかありません。

なぜもっと「日常的にお金を使える、人生を楽しむための消費機会」が高齢者向けに用意されていないのでしょう?

よく聞くのは、このセグメント向けのビジネスにちょこっと進出して「全然儲からない」とすぐにあきらめる人の話です。消費性向の高い若者と異なり、たしかに高齢者に貯金を切り崩して使わせるのは簡単なことではありません。けれども、そんなすぐにあきらめていたら成功するはずもないですよね。

もう一度、振り込み詐欺集団がどれくらいきちんとマーケティングし、方法を選び、次々と新アイデアを生み出し高いコミットメントで詐欺をやっているか、思い起こしましょう。ちょっとやってうまくいかないからといって、彼らはすぐに詐欺を辞めてしまったりはしません。考え出したアイデアで引っかかる人が少なければ、すぐに別の工夫をして再度挑戦します。だからこそ成功しているのです。

今までみたいに「高齢者」を十把一絡げにしたビジネスモデルではなく、きちんとその中をまた細かくニーズでセグメント分けして、それぞれのニーズにファインチューニングして根気強くまじめにやれば、あの「(詐欺にあわないかぎり)死ぬまで貯金通帳に入っている」お金を流動化させることができるはずです。それだけのお金をあのセグメントはもっているのですから。


それを今のところ、一番理解していて一番まじめにやっているのが「振り込み詐欺系」の集団だってことなのかもしれません。だから彼らはこんなにも成功しているわけです。


困ったモンです。


そんじゃーね。



<参考図書>

 

2009-03-17 (元)漁民と闘う世界連合艦隊!

ソマリア沖の海賊退治に自衛隊の護衛艦を送るとかで、またもや憲法9条がどーした、自衛権がどーしたとニュースになってるけど。

この話、余りに滑稽で笑っちゃうちきりんですよ。




ソマリアってもう15年くらい内戦状態、無政府状態でむちゃくちゃなんだよね。軍事政権が「金払ってくれるなら、ソマリア沖合に何捨ててもいーぜ」みたいな契約を欧米企業と結んでて、その契約に基づき、ご立派な欧州企業が放射線物質を含む産業廃棄物をソマリア沖にポイポイ遺棄してたりとか、そういう話ばっか。


当然そんな滅茶苦茶な政府の下では、庶民は全く食べていけなくて、んで、元漁師だった人達が海賊をして生計を立ててるわけ。

元漁師だから海には慣れているし、内戦状態だから銃なんかも簡単に手に入る。なので一番身近な仕事が海賊だったってこと。それと自国政府が崩壊してるので生活には“ドル”が必要。そうなると外人さんから奪うしかない。

貧しい国や地域に行くと、外人を狙ったひったくりや追いはぎがたくさんでるじゃん。あれが海の上で行われてる状態。


欧州やアジアから見れば「エネルギーから食料、工業製品まで、すべての物資が通らざるを得ない超重要航路」なんだろうけど、元漁民の人はそんなん知らんと思うよ。

彼らは自分家の近くの海で“追いはぎ”やってるだけです。あの航路が全く重要な航路でなくてもあそこでやってる。彼らはたいした船を持ってるわけでもない。遠くからあそこを狙いに来ているわけではなく、近くでやってるだけです。


「こちとら生活に困ってる」

「近場には、金持ちの外人がうろうろしてる盛り場がある」

「あの辺、おれらの漁場やから勝手もようわかってるし」

「ほな、あそこから」

そういう感覚。


が、場所が悪かった。あそこは欧州から中東、アジアをつなぐ世界的な海運の要所のひとつ。そこで世界の大艦隊がソマリア沖に大集結して、アリ一匹殺すのに火焔砲を庭に持ち出す!みたいな騒ぎになってしまってる。



★★★


ソマリアの海賊は千人くらいらしい。誰も正確な人数はわからないのだけど、多目に見て一万人としてもね。

ソマリアの一人当たりGDPは500ドルくらいかな。統計がちゃんとしてないので正確な数字はなく、相場的な数字です。ちなみにケニアで1000ドルくらい。

いずれにせよこのあたりの国は貧富の差がでかいので、平均の額に意味があるわけではないです。下辺の人の所得は平均より相当下と思った方がいい。

が、こちらも大きめの数字を使って1000ドルで計算すると。

1万人の海賊(元漁民)が年に1000ドル必要だと、合計で1000万ドル=10億円です。この海賊やってる人達がみんな食べていくために必要な額が、一年10億円。


★★★


現在、ソマリア沖にフリゲート艦など軍艦を派遣している国は、ざっと調べたところで下記の国々。


アメリカ海軍

カナダ海軍

英国海軍

フランス海軍

ドイツ海軍

イタリア海軍

スペイン海軍

ポルトガル海軍

ギリシャ海軍

デンマーク海軍

トルコ海軍

中華人民共和国海軍

韓国海軍

日本自衛隊

インド海軍

パキスタン海軍

シンガポール海軍

マレーシア海軍

ロシア海軍

サウジアラビア海軍

バーレーン海軍

オーストラリア海軍

ニュージーランド海軍



まじ?

地球防衛軍かと思ったよ。


もしくは、リストの中にロシア海軍ってのがなかったら「いよいよロシアと世界が最終戦争っ?」とか思いそう。相手が漁民じゃなくてロシアでもイスラエルでも、こんだけの国が集結したら勝てるんじゃない?



話を戻すと、これだけの国が軍艦を一年間派遣するコストって合計どれくらいだと思います? もちろん軍人の給与はこういうところに派遣される場合、危険手当がついて平時よりかなり高くなります。今回、日本の自衛隊だけで400人くらいでしょ。年間300万円上乗せするとその分だけで12億円です。

軍艦一隻の建造費って規模によりますが数百億円規模かな。もちろん海賊のために造ったわけじゃないからそれは算入しないとしても、今回の海賊対策のために加えた改造費だけでも数十億円の費用では? プラス、当然、動力となる石油も必要です。行くだけでも数週間かかるんだよ。その間の食費等の経費もタダじゃない。

しかも日本だけじゃありません。上のリスト見てくださいな・・・これだけの艦隊を世界の先進国がみんなして派遣してるわけで、その合計の年間コストは一体・・・




ええっと。

ソマリアの海賊達、元漁民達が食べていくのに必要な額は一年いくらでしたっけ? 10億円でしたね。


世界の名だたる先進国全部が、それらの国の国民の税金を注ぎ込んで、大艦隊をアフリカ沖に送り込んでいます。そのコストは一年いくら?

アメリカなんて中東に送ってたイージス艦をこっちにまわしたりしてんだよ。1200億円くらいするらしいよ。イージス艦。これって一ヶ月任務に就くとどれくらいの経費がかかるんだろうね。




てか、元漁民にイージス艦だよ!




艦隊送るより、元漁民の人全員に生活費だしてあげるってのはどーかな?


もしくは“ぶっちゃけ”トークしてみるってのはどう?


「いや〜実はですね。あなたたちの追いはぎ行為を阻止するために、私たち世界艦隊は1000億円くらい使う予定なんですわ。わかります? 1000億円。いや〜、今までやったらそれもええんですけどね、ご存じないとは思いますが、今、私らの世界もちょっとした不況でして、結構これ痛い出費なんですわ。そんでですね、ここはひとつ、100億円くらい包ませてもらいますんで、海賊家業、廃業してもらえませんかね?」って。



元漁民の人もたまげてると思う。自分たちの漁場にいきなり巨大な軍艦が一斉にうろうろし始めちゃって。勝海舟の100倍くらい驚いてると思う。 

んで、自分たちのとは比べものにならないような巨大な武器でガガガガガガッとか撃ってきて。「アメリカとロシアの間でまた戦争が起ったんか?」とか思ってる人もいるかもだよ。

あの人達、自分たちの行為を止めるために世界が払おうとしているコストの総額を知ったら、それこそ腰が抜けるくらい驚くんじゃないかな。「まじかよ? そんな額払うんやったらはよ言うてくれたらよかったのに」って。


そんじゃーね。


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2009-03-16 温泉旅行に行っとりました

2泊3日で温泉旅行に行ってきました。この冬最後の温泉旅行かも〜です。

さてさて、ちきりんはどこにいったでしょう?

3日間の旅程を当ててみてね!


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↑お寺の入り口。木々の緑と石畳と仁王像。映画のシーンのような素敵さです。


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↑これを見るのにすんごい坂と階段を登りました。めっちゃ大変だった。ところでこういうの見ると、中国と近いんだな〜と実感します。


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↑最近よく神社巡りをするちきりん。朱がきれいですね。


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↑お料理がモダンな盛りつけで。でもこの後はきっちり和食で美味しかったです。


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↑お部屋についてる露天風呂。大浴場もすばらしかったですが朝風呂は部屋についてる方が便利ですよね。

のんびり〜


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↑早春らしいいい景色でしょ。


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↑これを観光だけのために作ったってのはすごいな。大成功らしいです。


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↑二件目の温泉宿の入り口。山深いところにあるお宿で、近くを散策するだけで「こんな素敵なところがあるのね、日本って」と感動できます。


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↑こちらのお食事は素朴系。でも馬刺しあり和牛炭火焼きありと盛りだくさん。焼酎もあれこれ。


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↑こちらも由緒ある神社です。お祓いしてもらったり。


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↑この方、あちこちに・・


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↑ボートで近くまで行きました。結構な迫力。


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↑季節感に溢れています。


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↑最後に神様が国をご覧になったという展望台で。


お天気もよくすばらしい旅行でした。

久しぶりにこの地域行きましたが、こんないいところだったのねと再認識。食べ物も美味しいですね〜。また是非行きたいです。


ではね〜。

2009-03-13 全光榮展

六本木ヒルズのアートギャラリーで全光榮さん(チョン・クァンヨン氏)の個展を見てきた。元は画家ですが、韓紙を使ったモダンアート作家としてブレークした方です。


どの作品もすさまじいパワーがあってすばらしかった。世界が絶賛ってのもよくわかる。


しかも入場料1000円は安いなあ。明らかに採算とれてないでしょ、って感じで。法人スポンサーがいるんだろうなと思って探したら、やっぱりそうでした。寄付の額の大きい順に「ダイヤモンド」「プラチナ」「ゴールド」「シルバー」という4段階の法人スポンサーシップがあるみたい。

ちなみに最も高額を寄付しているダイヤモンド企業の場合、そこの社員はこのギャラリーで行われるすべての展示会に無料で入場できるんだって。


いいなあ。

ちきりんもそんな企業に勤めていたかったなあ

と思った。


で、どんな企業なの?というと。


AIGエジソン生命保険株式会社

ブルームバーグ

ビー・エム・ダブリュー株式会社

ゴールドマン・サックス

日本航空

鹿島建設株式会社

株式会社 大林組

パナソニック電工株式会社

ソニー株式会社

大成建設株式会社

株式会社竹中工務店

トヨタ自動車株式会社

UBSグループ

八木通商株式会社*1




そして思った。

そんな企業に勤めてなくてよかったねえと。*2






来年からは展覧会の予算も半減ですね。展覧会って準備期間が1年以上とかなので、1年半前に企画されてる、つまり今開催されてる展覧会はなかなかのもんです。でも来年は・・・


まっ、アートしてる場合じゃないってわけで。

てか現代アートもブームだったからなあ。すごい多くの投資家が破綻してるっぽいなあ。


んじゃね。

*1:他のスポンサー企業はこちら http://www.mori.art.museum/jp/mamc/08.html

*2:こういうの5年後とかに読むと“何がおもしろいんだ?”ってのが全然わかんないんだろうなと思います。いや、そんなことがわからない5年後になっていることを心から望んでいますよ。

2009-03-12 西松建設問題について

この件については、秘書逮捕と政権交代とのタイミング、検察と政治の関係について多くの議論が行われている。ただ、ちきりん的には別の点にも大きなインパクトを感じたので、今日はそっちについて書いておく。


それは「未だにこういう状態なんだよね。」ってこと。


国の公共事業や公的機関の工事、建設は、普通の価格より3割程度は割高な値段で発注される。この“無駄に使われる3割の税金”の最終的な行き先は次の3つだ。(1)工事費を受け取ったゼネコンから政治家への献金として環流する。(2)工事の詳細発注をした官庁の監督業界企業に回され、天下り役人の給与や退職金を支払うのに使われる。(3)闇に消える。

ダムや地方の高速道路、治水事業等はもちろん、箱物行政の象徴である立派な県立の美術館、音楽堂、多目的ホール、“しごと館”などの役所直轄や特殊法人等の施設、それから“かんぽの宿”の建設費用にだって全く同じことが起こっている。

これは列島改造論の頃に、田中角栄氏が完成させた日本の政官財癒着の構造そのものであって、以来40年たった今でもこの構造は全く変わっていない。その「構造を改革」しようという動きさえ既に止まってしまって久しい。


しかも今回のお金の集め方を見ている限り、その無理矢理さかげんが限界まできていたのだろうなということが窺える。献金を受けた時に小沢氏はずっと野党である。日本の財政も逼迫を始め、東北地方の開発に大型発注を続けられる状況でもなかった。

にも関わらず彼に多額の献金をせざるをえないゼネコンの姿勢は、豊富な公共事業費があり、国中が大型開発&大建設のブームに沸いていた40年前とは全く異なる。

当時であれば「どんどん献金してどんどん工事を受注しよう!」ということだろうが、今回の小沢さんのケースではそんな“前向きな”献金ではないだろう。おそらく「あの人に睨まれると東北では工事はできん。とにかく割当て分の負担金を払ってくれ」と幹事ゼネコンに無理矢理割り当てられ、青息吐息の中小&零細地場ゼネコンが泣く泣くひねり出した裏金なのではあるまいか。

野党である小沢さんの“発注側への影響力”は限定的かもしれない。しかし“東北地方での大型工事については、小沢さんが首を縦に振らない限り決まらない”のだとしたら、ちきりんには今回の資金は「政治献金」というより「小沢陣営による恐喝」とさえ言えるようなものなのではないかと思える。それは、祭りの時に暗躍する闇の勢力の、夜店にたいする物言いとおそらく何も変わらない。「おいおまえ、誰の許可を得てここで商売やっとんのや?」ということだ。


昔のように企業側も裏金を簡単に隠したり利用したりできない。役員の誰かが逮捕されるリスクを負ってまで海外から不明金を持ち込まねばならない。余りにも危ない綱渡りが要求される。

政治家側だって、どんどん削減される公共事業や官の事業を民営化から守るのに血眼になっている。ITやエコなどの新しい言葉もすべてを“箱もの建設”に結びつけてこの難局を乗り切ろうとしている。どちらも死にものぐるいの様相で、まさに断末魔のごとく怒気迫るものがある。

関係者全員が古い利権の構造に捕らわれ、逃れられなくなって自壊しつつある。既にその構造が「もたなく」なっており「終わっている」ことに気がつきながら、誰もそこから逃れることはできない。当事者達は皆、40年前に高度成長が終わったことを受け入れられないでいる。


長く野党にいてもゼネコンからこれだけの献金を受けられる小沢さんは「あっぱれ」だと思うが、この理由のひとつはその出身地にもある。「東北」だから、なのだ。ちきりんも何度か「地方をどうするのか」というテーマでエントリを書いているけれど、未だに日本の地方には公共事業以外の解が何もない。

なぜなら「その地方の次の世代の生きていき方」を考える責務を負っている地方出身の政治家自身が公共事業で食べているのだから。彼等には「それ以外の次の方法」を考える動機が全くない。

万が一にも、東北がシリコンバレーなみのハイテクやらITやらの集積的立地になんてなってしまったら、そういう“企業献金”をしてくれない企業ばっかりになってしまったら、東北出身の政治家はおまんまの食い上げである。「未来永劫、公共事業でしか食えない地域」であってくれればこそ、たとえ野党の議員であっても「公共事業がほしいなら、うちに挨拶に来て貰わないとね。」と言える状況が維持できる。


小沢さんのことばかり書いているが、二階氏の和歌山県だって全く同じ状況だろう。ただ、今回は「野党でも影響力がもてる」ということの意味が大きいのだ。

なぜなら、与党でないと献金が受けられないなら、それは「発注側への影響力」問題として捉えられる。しかし、「与党か野党かは問題なく、その地域への影響力があるかどうかがポイントなのだ」と捉えれば、発注への影響力行使とはまた別の、「場所代」的利権が金の源になるということを意味するからだ。

それはまさに「地方のドン」の権益と言えるものなのだ。


今回の問題を「形式犯である」という人達がいる。彼等がわかっていてとぼけているのか、わからずに言っているのかちきりんは知らない。しかし、これは形式犯などではありえない。現行法の抜け道を利用して、従来の利権構造を維持しようとしていたという意味で、とても本質的な“構造問題”と言えるだろう。


小沢さんはよく民主党の若手政治家にたいして「政治を知らない」と言ってきた。「どぶ板選挙をやれ」と言ってきた。そりゃあそうだろう。自民党の多くの政治家や小沢氏のように「地元に密着した」議員は、民主党の若手の中には極めて少ない。

ワープロ打ちの紙をみて「大スキャンダルの証拠だ!」と息巻いたメール事件や、覚醒剤関係の逮捕、キャスターとの不倫問題を見る限り、彼等はそんな古い「土建屋を牛耳る地方のドン」などでは全くない。単なる“SPA!世代の合コン好きの男の子”って感じである。




認可保育園が足りないという理由で、キャリアか出産のいずれかをあきらめざるをえない人がいる。3月末で職と住居を同時に失う、なんの保証もなく違法な労働条件でずうっと働かされてきた人達がいる。どうしようもない状況になってから役所にやってきて、それなのに窓口で生活保護の申請書さえもらえずに門前払いをくらう人もたくさんいる。

介護の現場で、食べていけないような薄給で酷使されている人達がいる。医師不足のせいでたらい回しにされて命を失う救急患者がいる。重い障害があって収入の道がないにも関わらず「自己負担」を求められ、福祉サービスをあきらめなければならない人がたくさんいる。

リハビリの途中で規定の期間が来たからと退院させられる脳疾患の患者さんがいる。米国の何十分の1しか研究費用が補助されない一流の研究者もいる。親のリストラで授業料が払えないため、高校の卒業証書を取り上げられる子達さえいる。


なぜこんなことになっているのかと国民が問うと、政治家と官僚はこう答える。

「財政的に難しい」「国の予算が苦しいのだ」と。



しかし一方で、旧守派の政治家達は、未だに巨額の国の予算の一部をピンハネして懐に入れ、自分達の勢力を拡大するために使っている。

官僚達はそのピンハネを制度的に支援し、ついでに自分達の天下り先にも如才無く資金をネコババして分配している。

それらは紛れもなく私たち国民の税金であるはずだ。


この構造を根本的に変革するのに、私たちにはあと何十年が必要なのだろう?


2009-03-11 年収分布をみてあれこれ

先日は時間がなくてデータ転載だけだったので、今日は数字を見ながらちょっくら考えてみましょう。

ところでid:kohekoさんがデータをグラフにしてくださいました。男女の収入分布の違いがとてもわかりやすいです。→ chikirinさんのデータをグラフに どうもありがとうございました!


さて、あの数字をみた時の最初のちきりんの感想は、当日にも書いたように「男女差ってまだまだひどいんだな〜」ってことだったのですが、更に詳しくいえば男女の比較における注目点は下記の3つとなります。

(1) 全体の給与所得者が1000万人も女性の方が少ない。

(2) 200万円未満の収入の人が、男性264万人、女性768万人と女性の方が500万人も多い。

(3) 1000万円以上などの高所得層において、女性は圧倒的に少ない。


★★★


ひとつずつ考えていきましょう。まずは(1)について。予想以上に大きいなあと思いました。この1000万人の内訳は、

・全く働いていない人

・一年のうち数ヶ月のみ給与所得で働いている人

について「女性が男性より多い人数分」の合計と考えられます。


全く働いてない人、確かに男性よりかなり多そうですよね。この中には二つのパターンがあり、ひとつは子育て中の人達。子供二人、三人となると(同居の親世代の有無にもよりますが)継続的に働くのは困難になると思います。

また、実はシニアな夫婦も専業主婦が多いのではないかと思います。60才になって子供が独立しても、「男性は再就職して働き、女性側は家事担当」という分担の家庭は多そう。特に今のシニアは伝統的な役割分担の価値観が強そうだし。


二番目のも一定数ありそうですね。主婦は“世帯の手取り合計”を最大化するために収入調整をしますから、その方法として「一年ずっと働くけど週に2日しか働かない」という方法と、「集中して数ヶ月だけ働く」という方法がありえて、後者を選択すれば今回のデータの母集団からは除かれます。

なので、「家事労働専業の人」と「期間限定パート&アルバイト」の女性が、それらの男性より1000万人多いということかと思われます。ちきりん的には予想よりちょっと多いかなと思いましたが、こんなもんなんでしょうかね。

(自営業、公務員など民間企業での給与所得者以外の労働者が女性のが多いことも理由として論理的にはあり得ますが、数字として大きなインパクトにはならないと思います。)


★★★

(2) 200万円未満の収入の人が、男性264万人、女性768万人と女性の方が500万人も多い。

結構大きな差ですねえ。この理由はわりと明らかで、上記にも書いた“世帯の合算手取りの最大化“のために収入調整をしている主婦がいるから、でしょう。

ちなみに同じ資料に「配偶者控除を利用している人の数」が平成18年で1126万人と記載されています。この1126万人の配偶者は「働いてない、or 控除を受けられる収入であった」という人で、その大半が女性でしょう。この女性達が上記の(1)と(2)にわかれて、合計1126万人いるってことです。それぞれ500万人ずつくらいと考えればいいのかもしれません。


あと、いわゆる低所得になりがちな仕事の種類も、性差と結びつけられる格差があるかもしれません。たとえば、

・工事現場、建設現場の仕事

・物流系の仕事(引越し屋、トラック運転手、宅配業者など)

・自動車工場などの組み立てラインの仕事

・電機工場などの組み立てラインの仕事

・食品工場などの軽作業の仕事

・飲食店接客、スーパーのレジなどの仕事

・オフィスへの一般事務派遣の仕事

・歩合的な営業職

などの職種の中で比べた場合、明らかに時給が高そうなのは工事現場や建設現場、また自動車の組み立て工場などでしょう。そしてこれらの職場の男女比はほとんどが男性ですよね。一方で時給の低そうな飲食店接客、スーパーレジ、食品工場(というか、コンビニの弁当工場)などは女性比率が高そうです。

女性が多くて時給が高そうなのはオフィスでの一般事務だけですが、これはできる人が結構限られてますし。(大都市のみ、オフィスへの通勤可能者のみ、若い時のみなど)

というわけで、同じように「正社員になれなくてこの仕事についている」というグループにおいても、男性の方が稼げそうに思えます。これも年収で数十万から100万円くらいは男女の収入格差を産んでいるのではないかな。

★★★

最後にこれ

(3) 1000万円以上などの高所得層において、女性は圧倒的に少ない。

実はちきりんが一番驚いたのはこれでした。男性で1000万円以上の給料をもらっている人は216万人いるのに、女性では16万人と10分の1にもおよびません。給与所得者中の割合でも男性はその8%近くが1000万円以上なのに女性は1%にも達していないのです。

これってつまり、女性はサラリーマンになっても「一定以上より上には行けませんよ」ってことですよね。一時期よくいわれた「ガラスの天井がある」という話。ガラスは見えないモノとしての比喩ですが、こういう資料をみるに「見えてるじゃん」って感じです。

このデータ、社長とかは含んでないのだと思うのでほんとはもっと格差があるってことですよね。(だって役員以上になるのなんてもっと男性ばっかでしょ。)実際にちきりんの周りでも、日本企業で働く女性で、すごく楽しそうに重要な仕事を任されて働いていた女性が、30代半ばあたりから“次が見えない”という感じになるケースは結構あります。実務者、プレイングマネージャーとしては女性も今はOKなんだけど“組織の長”にしてもらえるか、というあたりからはまだまだ厳しいんだなあ、という気がします。

なお、この「年収1000万円以上の女性」16万人の中には多くの専門職(医師、弁護士など)や外資系企業勤務の人が入っていて、日本の会社だけでみたらもっとすごい格差なんだろうなという気がします。


ちなみに少し妥協して(?)年収800万円以上で見てみても

男性は428万人、サラリーマン全体の15%以上です。

女性は35万人、全体の2%未満。

このあたりでも愕然とするくらいの格差がありますね〜。人数で桁が違い、割合でも7倍。日本で雇用均等法ができた頃に就職した人が既に45-50歳くらいじゃないかと思いますし、その前から企業で働いていた女性ももちろん一定数います。それなのに未だにこの格差。女性ってのは民間企業に入っても全く部長とか以上にはなれてない、ってことですね。



反対に言うとですね、、、、男性って長く働いていたら結構簡単に年収800万円くらいもらえるんだな、と思いました。今のデータでみても男性給与所得者の15%は800万円以上もらってます。

でもこのデータは20代の人も含んでいます。働き始めたばっかりの人も含んで、全体の15%が800万円もらってるんですよ。もしも40代以上のみ、とか50代以上のみ、のデータにしてみたら、もしかして3割とか4割の人が800万円貰ってる可能性があるってことなんでしょうか。

1000万円超えてる人が若い人もいれて全体の8%というけど、これも一定の年齢以上なら「20%=5人に一人は1000万円もらってるよ」ってくらいのことなんだろうか、男性って?

と考えると、これがまさに巷の論客の方が主張されている「貰いすぎの中高年」って話なんじゃあるまいか、と思いました。てかこれからは「貰いすぎの男性中高年」って言いかえて欲しいな。

★★★

ところで、このデータでは1000万円以上もらってるのが20代なのか中高年なのかはわかりませんが、これが全部中高年だとして、「貰いすぎの中高年の給与を下げて、若い人を非正規から正社員にするなどの待遇改善を」と主張する人の意見を検証してみましょう。

1000万円以上もらっている人は232万人、反対に200万円以下の人は1032万人。このうち“収入調整をしている人数”を500万人とみて、「収入調整をしてないのに200万円以下の人」を532万人と考えると、その人数比は232:532で、1:2.3です。

ので、1000万円以上稼ぐ人に各自100万円ずつ我慢してもらえれば、200万円以下の人にひとり43万円ずつ年収を上乗せできます。200万円ずつ出して貰えば86万円配れます。年収200万円が286万円になるということ。


うーん。


なんかインパクトに欠ける解決方法の気がしますね。現在の高所得者には実際には若い人も多く含まれているはずなので、だとすると「貰いすぎの中高年」から絞り出せる原資はもっと小さくなるわけだし。こうやって計算してみると。やっぱこれだけじゃあ皆が求める収入を得るのは無理なんじゃないの?“経済成長“側も必要なのでは?と思います。

ただし公務員がめっちゃもらっているので、それを分けて貰えば計算上も大丈夫!とかになる可能性もある? ・・・わかりません。


といわけで、最後ちょっと話がずれましたが、なかなかおもしろいデータでした。

そんじゃーね!

2009-03-09 サラリーマンの年収分布

昨日のエントリに関連してるような、してないような、データのご紹介です。

国税庁の資料*1より、平成19年に一年を通して給与所得者であった、4543万人の年収分布を転記しました。公務員や自営業、経営者(役員含む)と、年間通して働いてない人(数ヶ月だけ給与所得者だった人)は含みません。男女ですごく違うので分離して書きました。男性は男性の表を、女性は女性の表をご覧ください。

ちなみに自営業&経営者の人は、下記分布よりももっと“格差”が大きいと思います。つまり上はもっと(桁違いに)多い額を得ていると思うし、一方で下の人も数もっと多いでしょう。反対に公務員だけで表を書けば、完全に年功序列なわけだからきちんと“年齢分布”と同じ分布の表になるんだと思われます。


自分のポジションが客観視できるよう下から数えて何%に入るか、と、上から数えて何%に入るか、を計算しておきました。自分がどこにいるのかを見て、喜んだり悔しがったり、怒ったり笑ったり、“目をこすってもう一度見たり”“じっと手を見たり”、また、家族や恋人に隠したり自慢したり、してみてください。

たとえば昨日のエントリにでてきたような人は、男性なら給与額において上から2%くらいのところに入る人達ってことです。なので、貧乏人があれこれ心配してあげる必要は全くありません。自分たちで適宜頑張ってもらいましょう。(ただし役員報酬&賞与をもらっている経営者が下記の表には入っていないので、実際には年収2000万円程度では必ずしも“上位2%”とは言えないのだと思いますが。)



男性

年収人数(万人)下からの% 上からの%
100万円以下 74 2.7% 100% 
100万円〜200万円 190 9.5% 97.3% 
200万円〜300万円 327 21.3% 90.6%
300万円〜400万円 485 38.4% 78.8%
400万円〜500万円 476 55.8% 61.4%
500万円〜600万円 361 68.8% 44.3%
600万円〜700万円 256 78.0% 31.3%%
700万円〜800万円 187 84.7% 22.1%
800万円〜900万円 128 89.3% 15.4%
900万円〜1000万円 84 92.3% 10.8%
1000万円〜1500万円 162 98.1% 7.8% 
1500万円〜2000万円 34 99.3% 2.0%
2000万円〜2500万円 10 99.7% 0.8%
2500万円超 10 100.0% 0.4%
合計 2782


女性はこちら

年収人数(万人)下からの% 上からの%
100万円以下 292 16.6% 100% 
100万円〜200万円 476 43.7% 83.3% 
200万円〜300万円 393 66.0% 56.2%
300万円〜400万円 274 81.6% 33.9%
400万円〜500万円 155 90.4% 18.3%
500万円〜600万円 78 94.8% 9.5%
600万円〜700万円 38 96.9% 5.1%
700万円〜800万円 19 98.0% 3.0%
800万円〜900万円 11 98.6% 1.9%
900万円〜1000万円 899.0% 1.3%
1000万円〜1500万円 11 99.6% 0.9% 
1500万円〜2000万円 3 99.8% 0.3%
2000万円〜2500万円 1 99.9% 0.1%
2500万円超 1 100.0% 0.0%
合計 1761


なんか、男女差ひどくない??

女ってサラリーマンやると不利ってことだね。公務員か、反対に起業とかのがいいってことだろか。



そんじゃね。



*1:元データ資料名:平成19年分 民間給与実態統計調査。国税庁の調査で標本調査です。数字はこの資料から上記の表に転記したんだけど、間違ってたらご指摘ください。&一部四捨五入したので数字が合いません。

2009-03-08 希望最低年収1200万円

派遣社員や期間工の人達が大量に職を失うという話が顕在化したのが昨年末。この3月末に向けても多くの人が失業の崖っぷちにおり、今や雇用問題は日本経済&政治上の最優先課題になっています。


が、それらの人達とは全く異なるグループで、結構な人数まとめて職を失おうとしている人達がいます。いわゆる外資系投資銀行、ヘッジファンドや投資ファンドの社員達です。

外資系投資銀行のリストラは昨年の夏前くらいから始まっているのですが、最初は儲かってない部門や会社がパフォーマンスの低い人を切るという感じでした。秋からはリストラ規模が拡大しリーマンショックからは一気に部門撤退、人数を半減するなどの大幅な事業縮小が行われるようになりました。

最初の主なターゲットは外国人社員だったと思います。年末から年始にかけて多くの外国人社員が自国に向けて出国していきました。六本木の飲み屋なんて目に見えるレベルで外人が減っています。

そして年があけて昨年の決算が終わった今年、先月くらいから、今後の見通しについて一定の結論を出した各金融機関が今度は日本人社員も含め組織全体の大リストラを次々と発表しはじめています。

部門撤退、グループ全員解雇、8割削減、職種変更、等々で、こちらでも3月末からゴールデンウイークのあたりに失職する人達は千人を超えるでしょう。(製造業の工場とはそもそもの人数が違うので“万人”の単位になる話ではありません。)


昨年の秋あたりにはまだ、日系の金融機関が比較的傷が浅く「外資の優秀な人材を受け入れたい」というところもあったのですが、ここにきて彼らも採用を続けられる状態にはありません。またその他の投資、金融関連の企業も規模の大小を問わず大半が雇用を絞り始めており、こういった人達の受け入れ先は急速に消失しています。

金融業界はもともと労働力の流動性の高い業界であり、多くの人材紹介会社が存在しています。当然多くの人がこれらの“エージェント”に駆け込んでいますが、エージェント側にも“はめ込み先”が全くない状態です。彼らは今までは見向きもしなかった“給与水準の低い”外資系メーカーや日本企業に「優秀な人がご紹介できますよ!」と営業をかけていますが、当然のことながらこのタイミングでそうそう色よい返事がもらえるわけがありません。(エージェントのコンサルタント自身もほとんどが歩合のような給与体系ですから、転職実績が作れなければ彼ら自身も大変です。)

またこの業界では実力のある社員が仲間を引き連れて転職したり、口コミでの転職情報も大きな役目を果たしていましたが、今や誰のところにいっても「こっちも大変なんだ」という話を聞くだけになってしまっています。


実は、現時点でも一定の雇用意欲のある企業は存在しています。それはベンチャーや伸び盛りの企業です。前に、“壊滅度レベル”を産業別に書きましたが、今回の景気の落ち込みによる影響が小さな業界や、寧ろ業績のよい企業も存在しています。ユニクロ、楽天(赤字なのはTBS株の下落のため)など調子よさげですよね。

また円高のこの機をとらえて海外進出を積極化しようというドメスティック企業にとっても、金融と英語の知識のある人材の必要性はそこそこあるでしょう。

今回金融業界で失職する人達の多くはいわゆる“ハイプロファイル”の人達で、労働市場での価値もそれなりに高い人です。ベンチャー企業や日本ドメなメーカーにとっては今まで採用が難しかったような人達であり、その意味では今回うまくマッチングできれば双方にとってよいことのはず、です。


ところがコトはそうは簡単ではありません。

最大の壁は「給与」です。


今回失職する人達の年収は、年齢や職種に寄りますが、ざっくりいって30代前半で1500万から2000万円です。ボーナス込み3000万円くらいの人もいます。学生から数年の実務経験しかない人でも800万円、というようなレベルです。

残念ながらベンチャーにしろ日本の伝統的事業会社にしろ、こんな額を払える企業はほとんどありません。そしてこれを読んでいる多くの方が感じるのは「失職するんだから、そんな贅沢言わずに日本人の平均給与で働けよ!」ということですよね。

これって今まで残業代込みで年間300万円はもらえていた期間工の人達が失職し、だからといって「年収が200万円になってしまう介護職や農業に転職しろと言われても・・」と躊躇するのと実は同じです。年収がいくらであっても、個人にとって影響が大きいのは「今の水準からどれくらい下がるか」であって、「絶対額として600万あれば十分だ。贅沢いうな」というわけにはいかないのが現実です。

まだ単身者は問題が少ないです。今まで高いバーで飲んでいたのを居酒屋なり家飲みに変える、合コンで格好つけるのをやめる、くらいの話です。忙しい仕事なのでお金を使う暇がなく、給与口座にそのまま残ってるなんて人もいます。

また共働きの場合もショックは少ないでしょう。金融機関内での夫婦もなくはないですが、「一人は安定した職業、一人は外資系金融」という組み合わせは結構あります。どちらかがきちんと稼いでいれば、少なくとも焦らずに求職活動ができます。子供が小さいなら“にわか主夫”を体験するのも悪くないかもしれません。

深刻なのは「子供2人、妻は専業主婦(もしくは趣味程度の収入)」という人です。今まで2000万円もらっていれば手取りが1500万円はあります。駐車場、管理費、光熱費等いろいろ込みで50万円くらいの住居費を払っていたり、億ションを買ってローンを払っていたりします。

子供を私立に通わせれば授業料や教材費で年間100万円を超えますから2人で200万円です。住居費と子供の経費だけで年間800万円になるわけで、とてもではないですが年収600万円やら800万円では生活が成り立たないです。

そんなもらってたなら貯金があるだろうって?まあある程度は蓄えもあるでしょう。でもですね、固定の生活費が高いので少々貯金があってもたいしてもちません。それに、これらの人達は元々自分の蓄えを「定期預金」とかにおいていたわけではありません。

大半の人が「市場商品」に自分の蓄えをつっこんでいたと思われます。そしてそれらの大半が現在の株安、円高でその価値が半額くらいになっています。一番悲惨なのはストックオプションや自社株で多くの資産を保有していた人です。リーマンの場合文字通り紙くずになっていますし、シティだって一株1ドルでもうすぐ国有化かもしれません。

つまり、特別な人、たとえば組織トップや役員の立場に長くいて億単位の資産を既に築いてしまった人とか、マーケット部門で相当の稼ぎ頭だった人を除いて、いわゆる「普通の投資銀行マン」ってのはそんなに余裕のある状況ではありません。



ちきりんは今回の経済危機に関して「日本の構造改革には結構よい影響もある」という話を何度となく書いてきていますが、今回の「業界を超えた人材流動化が起る可能性」もそのひとつだと思っています。

外資系金融にいる人の中にはもともと日本の伝統的企業にいた人もたくさんいます。いい大学をでてなんとなく就職活動をして日本の大企業に入り、その後、自由やフラットな環境を求めて外資に転職した人です。もしくは若い人では「敢えて外資系を選択して」直接入ってきた人達もたくさんいます。

こういう人達が、今までそういった人の採用に苦労していたベンチャー系の伸び盛りな企業に転職するのは、“人材の最適配分機能の正常化”という意味において千載一遇のチャンスです。そういう企業の成功や成長のボトルネックが、優秀な人材の確保が難しいという点にあるケースも決して稀な話ではないのですから。外資系の仕事のスピード、判断基準、成果主義やリスク管理の方法、そしてもちろん金融の知識や英語力も役に立つでしょう。


ですが・・・個別の事情を考えると“自分の給与が下がるために、子供を公立学校に転校させる”ってのはお父さんとして厳しい判断だというのは理解できます。簡単に思い切ることはできないでしょう。

なので、そういう人までとは言いませんが、単身とか共働きで「来年の給与は住民税のみで無くなってもなんとかなる!」という方には、是非、伸び盛り系ベンチャーの門を叩いてみてほしいなあと思っています。そもそもこういう時でもないとそういう決心もなかなかつけられないですよね。ある意味いいチャンスです!(?)



外資系金融業界で失職する人達が今、人材紹介会社に送っている資料には

「現在の年収2000万円。転職にあたっての希望年収は1800万円。ただし、仕事内容によっては1200万円程度以上であれば検討します。」

と書いてあります。


気持ちはわかる。わかるけど。とりあえず向こう3年くらい600〜800万円くらいで働いてみてはどうでしょう?そのかわり、すごく意味のある経験ができ、大企業や外資系金融では得られなかった貴重な経験を身につけるチャンスです。人生が全然違う方向に開けていくかもしれません。

「本当は年収1200万円なんだけど、その“実戦訓練”のために600万円の授業料を払うのだ」と思えばいいじゃん。ビジネススクールに行けば実際それくらいの授業料が毎年かかるのだから。しかも中身的にもBスクールなんかより圧倒的に価値ありますよ。



と煽ったりしてみる。






・・・



あっ、あと、エージェントではなくて個別に企業のホームページを見て応募した方がいいですよ。小さな企業にとっては人材エージェントに払う紹介料自体の負担が大きいので、自分で応募すればもらえるものもそっちを経由すると削られちゃいます!


そんじゃーね。

2009-03-06 時代に捨てられる男 小沢一郎

西松建設の献金の件、詳しいことはわからないのだけど、ひとつ思うことは、これで「民主党政権」はあり得ても、「小沢政権」は無くなっちゃうんだろうな、ということ。

1993年、今から16年前に自民党と袂を分かち、まさかこんな長く在野におかれるとは全く想像していなかったであろう小沢氏。何度も遠のいた“政権取り”が目前となったこのタイミングでの公設第一秘書の逮捕。なんとも無念だと思う。


「自民党をぶっ壊す!」と言えば小泉元総理のキャッチフレーズだけれども、実際には小泉氏は自民党をぶっ壊したりしていない。「ぶっ壊す!」と言うことにより自民党を最大限活用し、むしろ自民党の延命に貢献したとも言える。

一方の小沢さんは実際に自民党を離脱した。剛腕幹事長としてそのまま自民党にとどまれば総理になれる可能性は十分にあっただろうに、彼には彼なりの美学や理想があり、譲れないプライドもあった。最近は「選挙で勝つためなら何でも飲み込む」といったスタイルだけれど、当時の彼が唱えていた未来の日本の形は、小泉元首相が唱えたような新自由主義的な色合いも濃いものだったと思う。

しかしながら、彼が「古い自民党」との決別をした時代、あの時にはまだ世間は自民党以外を信じていなかった。それからずっと後になって小泉さんが「このままの古い自民党ではだめなのだ」と言い出した時に、世間は初めてその主張に耳を傾けた。

小沢さんが自民党を見限ったタイミングはいかにも早すぎた。



また、彼が剛腕と言われたのは、自民党において表に立つ首相よりも、永田町の闇で力を振るうキングメーカーの方が権力をもっていた時代だ。財界とべったりで、豊富な政治資金を集め、その資金を派閥の議員達の地盤である地方の選挙区にばらまかせて議席を確保する時代だった。

その方法に誰よりも長けていた小沢氏は、しかし、メディアや国民との直接的な対話や、「永田町の渡り方」とは異なる「世間の渡り方」がいかにも下手くそだった。その後にやってきた“メディア政治時代”には、シンプルでわかりやすく親しみやすい小泉さんの人気に圧倒的な差をつけられた。人前で話すことが苦手で、メディアと対立し、政治を裏で牛耳るスタイルの小沢氏には、致命的に不利な時代の到来だった。


時代に先んじていたはずの小沢氏が、完全に時代においていかれたのが小泉時代だった。そしてほとんどあきらめそうになりながらも、彼は踏みとどまった。必死で時代にすがりつこうとした。“格差”に注目し俄に“弱者の味方”を気取った作戦は一定の成功を収めた。それをうけて、“格差”に敏感になった“世間のトレンド”を利用して再浮上しようと考えた。

地方にバラマキ、労組に頭を下げる。憲法9条を後生大事にする議員達と党を一つにし、頭でっかちな官僚出身議員に根気よく“政治”を教えようとした。以前の小沢一郎からは想像もできないような変節をへて、信念を捨ててでも政権を取りにいこうとしていた。

しかし、おそらくそれが裏目にでた。“媚びる小沢一郎”をみる世間の目は懐疑的なものだったと思う。「この人が弱者の味方だったことなんて、過去に一度でもあっただろうか?」昔を知る人は皆そう思っていただろう。

それでも満身創痍の体にむち打ち(首に医療用マフラー、顔に大きなマスクの小沢氏は痛々しい限りだった。)、政権取りまで後一歩というところまでやっと辿り着いたこの時に、彼は倒れようとしている。


ちきりんは彼を見ていると、野村監督とその姿がかぶって見える。野村監督が一生ワールドベースボールクラッシックの日本代表監督になれないように、小沢氏もまた政界きっての辣腕者でありながら、陽のあたる道を行くことなくそのキャリアを終えることになるかもしれない。実力がありながら表舞台にたてない、主役になれない大物役者のような彼ら。

陽の光の下でトップに上り詰め、ひたすらに明るく笑顔を振りまくのは、長嶋茂雄氏であり、原監督であり、小泉元首相なのだ。


しかも小沢氏は、ゼネコンからの政治献金の処理問題という、いかにも“自民党的で昭和的な手法”の不手際によって倒れようとしている。民主党の党首として日本の総理大臣の座まであと一歩と迫りつつあるこの時点においても、“彼がいかに昔ながらの自民党的な政治家であるか”を象徴するようなできごとだ。


これを運命というのか、なんというのか。

政治家にはそれぞれ“固有の運”がある。そういう感じさえする。どこかにそういう“意思”がある。単純な陰謀論ということではなく、時代の力が怨念をもってそういう指示をしている、とでもいう感じ。

それはもしかすると彼が若き日に政治的薫陶を受けた田中角栄氏の魂なのかもしれない。「そのやり方はもう終わりや」とでも言われているような。



民主党政権はあっても小沢政権はないだろう。


小沢一郎 66歳


時代が彼を切り捨てようとしている。


2009-03-05 美術品の「在るべき場所」

六本木ミッドタウンのサントリー美術館で三井寺展を観てきました。

すばらしい展示でした。夕方割引で入ったので「たった700円でこんなの見せてもらえていーのかしらん」と申し訳なくなるほど。仏像その他の展示品の質はもちろん、展示方法もさすがです。サントリー美術館は以前に屏風展を観にいきましたがその時の展示手法も素敵でした。

今回の展示品のなかでは曼荼羅とか屏風もいいのですが、やっぱり迫力のあるのは不動明王立像、如意輪観音菩薩坐像、千手観音菩薩立像などのある程度の大きさのある像。今は色褪せていますが、それでも現実感溢れる表情(特に目)や筋肉の形、絶妙なラインの艶めかしさ、全体のバランスの美しさには今でもこれだけ迫り来るものがあるのに、原色が残っていた時に見たらどんな迫力であったろうと思います。


で、確かに展示物はすばらしいのですが、さてこれをお寺でみたらどうだろう?と思いました。そうです。ちきりんブログではよく取り上げている「美術品をどこで見せるか」という話がまた頭に浮かびました。

三井寺は天台寺門宗の総本山で琵琶湖を見下ろす長等山中腹に拡がるお寺です。秘仏の寺とも言われていて、山中に点在する多数の建物の中にいくつものすばらしい秘仏があります。

行かれたことのある方はご存じでしょうが、あの三井寺のロケーションは、それはそれですばらしいものです。気候のよいエリアですし、昔の琵琶湖やその空は今よりも更にきれいだったでしょう。お天気のよい日に山側からみる琵琶湖も、琵琶湖畔からみるお寺やお山もそれこそ“別世界”感を醸し出していたのではないかと思います。

そんな明るい風と光と緑の中にあるお寺の、でも一歩建物の中に入ればそこは昔の建物ですし、とてもひんやりとした薄暗い静かな空間で、そこに様々な表情をした秘密の仏様の像が・・・と考えると、そのコントラストにも神秘さにもドキドキするほどの誘惑を感じます。


なんだけど、三井寺に実際に出向いても、今回のような観賞の方法は不可能です。たとえば立像を周囲360度全部から観られるなんてありえませんし、屏風を照明のタイプを変えて観てみるとかもできません。というか、たいていのお部屋はとても暗く、今回のように角から角まで細かく鑑賞するというのはとても無理です。また時代を追いながら順番に観て時代の変遷をコンパクトに知る、というも美術館ならではの鑑賞法です。

というように、「美術館で観る」というのも「現地で観る」というのとはまた違う、それなりの意義のある観賞の仕方だよね、と思います。

それに、最初から三井寺まで行くのは結構大変ですが、オフィスに近いエリアで夜9時までやってもらえて700円なら、ちょっと足をのばしてみようという人もいるでしょう。そしてこの展覧会を観て実際の三井寺に一度行きたくなる人もたくさんいるんじゃないかなと思います。そういう導入としても秘仏を持ち出して都会で展覧会ってのも悪くないアイデアだと思います。

★★★

ところで先日、京都のお寺から仏像を盗み出していた仏像マニアの人が逮捕されていましたけど、あの人の場合、金目当ての泥棒というよりは「仏様に魅せられてしまって」の犯行のようです。

罰当たりな感じがするし、自宅にそんなもん集めてどーすんのよ、とは思いますが、一方でこういう展覧会に行くと、仏像って「そういう気持ちもわかる」と言いたくなるほどの美しさです。

1月にギメ美術館に行った話(http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20090127)を書きましたが、日本ってこれだけすばらしいものがあるのに、それを魅せる器とか見せ方が西欧的でないからもったいないなと思います。まあ仏像や曼荼羅が美術館にあるべきなのか、信仰の場である寺などにあるべきなのか、議論はあるでしょう。また昔であれば今回の泥棒のように「個人所有の美術品」もたくさんあったわけですし。(美術館の無い時代の芸術品はすべて貴族の個人所有ですよね。)


さて、泥棒さんの話に戻ると。今回は仏像マニアでしたが、ちきりんはやっぱりもう少しお寺等は防犯に力をいれた方がいいと思います。マニアではなく金目当てで、そして売り飛ばすことを前提に盗みに入る人もそのうち絶対増えると思うから。

盗まれた翌日にもう日本から運び出されてしまうことも起こりえると思います。相手が日本人なら「そんな罰当たりな」ということでもいいのでしょうが、古美術の世界には国際的な窃盗団だっているわけで、一切合切やられてから「ありゃ!」では済まないでしょ、と思います。京都や奈良のお寺とか、ほんとう無防備ですよね。


で、実際には世界の古美術品なんて大半が最初は「盗まれた」状態なわけで、それに絡んだもうひとつのおもしろい話が、パリでのクリスティーズの競売で、中国の団体がイブ・サンローラン氏遺品の清朝時代のブロンズ像を落札した一件です。

彼らは「もともと中国から略奪されたものであり、中国人として落札するのは当然。でも返してもらうのがあたりまえだからお金は払わない」と発表しました。一応「中国政府とは関係ない」らしいけど、こういった件については中国政府、結構うるさいですから「裏で手を引いてる」と思われてもしかたないでしょう。

彼らは商品を受け取る前に「金は払わない」と宣言したわけで、実際には商品も中国に渡るわけではなく売り主の手元に残ります。つまり中国の落札者も最初から商品を詐取して取り返そうとしていたわけではなく、この「古美術品はどこにあるべきものなのか」「誰の所有物なのか」を世界に問う!というのが目的であったわけです。

そしてその目的はまさに果たされたわけで、世界に数多く存在する略奪、もしくは密貿易された清朝の財産は今後はオークションで売買することがなかなか大変になるでしょう。(特に中国がこだわるであろう皇帝に直接関わるような由緒ある価値の高いものは公開オークションでの売買が難しくなるかも、ですね。)

ベストな解決方法は、だれか篤志家がこれらの財を正式に購入して、その上で中国の美術館に寄贈するという方法ですが、そういうことが起こるためには中国の企業や人に世界レベルの富豪が一定数でてこないと難しいかもしれません。


と、今回の件で一番「ひえぇ〜」とびびっているのが、台湾の故宮博物院でしょう。ご存じのように、北京の紫禁城(清王朝の皇帝の城)は故宮博物院と呼ばれ、それ自体すばらしい歴史的建造物ですが、台湾の故宮博物院の方には骨董や美術品のうち特に優れたモノが保存されています。

蒋介石の国民政府が故宮の宝物庫から選りすぐりのものだけを台湾に持ち去ったのだから当然でしょう。そしてその両方(台湾と北京)を訪ねたことのある美術ファン、歴史ファンなら誰しもが、そのふたつの距離を飛び越える空想をしたことがあるかと思います。

つい先日、台湾と北京はそれぞれの博物館の交流を今後推進すると発表していました。すばらしいニュースです。しかしながら台湾側にとっては、もしも一度でも台湾の所有品を北京に運んでしまったら、その時点で「返還しない」「なぜなら元々これは我々の所有物だ!」「だって俺たちは同じひとつの国なんだからどっちに置いといても同じだろう?」などと言われかねないという心配もあります。

それが今回のクリスティーズオークションの件で一層現実的になったことを台湾関係者は背筋に冷や汗をかきながら痛感していることと思います。

前に書いたこの話と同じです→http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20060525


美術品のあるべき場所は、そんなに簡単には決められない。



六本木で観る三井寺の秘仏も曼荼羅も、本当にすばらしいものでした。琵琶湖のそばの山のお寺で観るのとはまた全然違うものだったのだとは思うけど。


そんじゃーね。

2009-03-03 国立大学の統廃合私案

橋下府知事が「大阪府立大学は不要なのでは?」と言ったとか言わないとか、という報道を聞いて、「たしかに要らんよね」と思った。そしたら知人が言った。「府立大どころか、国立大学だって半分くらい要らないと思う」と。

で、ふたりで「国立大学って何校必要?」って勝手に考えた。そもそも現時点で何校あるのかも知らなかったので文部科学省のサイトで一覧リストを見ながら考えた。放送大学を含め88校あるらしい。


「確かに多すぎ」と思った。公立大学(都道府県や市立の大学まである)を除いて、国立大学が88校なんて直感的に多すぎ。明らかに民業圧迫。

18歳人口はもうすぐピーク時の半分以下になるんだから、普通に考えれば大学の半分は不要になるはず。国公立が税金を背景に「赤字でも倒産しない」特権を振り回せば、私立大学にその分のしわ寄せが行きます。国も地方も財政赤字なんだから、率先して撤退すればすべて丸く収まるはず。

というわけで、勝手に決めて見た。


以下、ご報告。

大学の地域分けは、文部科学省のリスト通りの分類を使いました。また、下記は“4年制大学、教育機関”としての統廃合案であり、研究機関としての大学院については別途検討で詳しい方に任せます。



<北海道と東北>

北海道大学=とりあえずここを中核大学として残す。

北海道教育大学=北大に統合

帯広畜産大学 =北大に統合(キャンパスは残す。畜産は北海道で研究する必要がありそう)

旭川医科大学 =北大に統合。北大の医学部と大きく違うなら抗弁してね。


室蘭工業大学 =廃校

小樽商科大学 =廃校

北見工業大学 =廃校


東北大学=とりあえずここを中核大学として残す。

宮城教育大学 =東北大に統合


岩手大学 =この手の「一県一国立大学」系は全部廃止

秋田大学 =この手の「一県一国立大学」系は全部廃止

山形大学 =この手の「一県一国立大学」系は全部廃止

福島大学 =この手の「一県一国立大学」系は全部廃止

弘前大学 =この手の「一県一国立大学」系は全部廃止


現在14大学あります。結論=2大学+1分校



<関東甲信越>

東京大学 =とりあえずここを中核大学として残す。

千葉大学 =関東甲信越は人口が多いので、ここも中核大学として残す。

横浜国立大学 =同上

人口分布を考えると、たぶんこの3校を残すのが地理的に一番バランスがいい。千葉の代わりに北関東の県のをひとつ残してもいいけど。


東京医科歯科大学 =専門系は一つずつ残す。

東京外国語大学 =専門系は一つずつ残す。

東京学芸大学 =専門系は一つずつ残す。

東京農工大学 =専門系は一つずつ残す。

東京芸術大学 =専門系は一つずつ残す。

東京工業大学 =専門系は一つずつ残す。

東京海洋大学 =専門系は一つずつ残す。

ただし専門系の大学がすべて東京にある必要はないので、ロケーションは地方に移転するのもいい。それと、この専門分野自体も時代遅れに見える。介護や観光やメディアといった、次の時代に必要なものに変えていくのもアリな気がします。


筑波大学 =理系の大学院だけ残す。

筑波技術大学 =上記の新生筑波大学と統合


お茶の水女子大学 =学部によって東大か筑波あたりに統合。

電気通信大学 =これって国立だったんだ。ええっと、東工大に統合。

一橋大学 =民営化(私大化)する。慶応に身売りするのも悪くない。


宇都宮大学 =この手の「一県一国立大学」系は全部廃止

群馬大学 =この手の「一県一国立大学」系は全部廃止

茨城大学 =この手の「一県一国立大学」系は全部廃止

埼玉大学 =この手の「一県一国立大学」系は全部廃止

山梨大学 =この手の「一県一国立大学」系は全部廃止



新潟大学 =とりあえずここを中核大学として残す。

上越教育大学 =新潟大学に統合

信州大学 =「一県一国立大学」系は全部廃止


長岡技術科学大学 =この3つを統合し、専門大学院大学にしちゃう。

政策研究大学院大学 =同上

総合研究大学院大学 =同上


現在26大学あります。結論=13大学



<東海・北陸・近畿地区>

名古屋大学 =とりあえずここを中核大学として残す。

愛知教育大学 =名古屋大学に統合。

名古屋工業大学 =名古屋大学に統合。

豊橋技術科学大学 =名古屋大学に統合。


富山大学 =この手の「一県一国立大学」系は全部廃止

金沢大学 =この手の「一県一国立大学」系は全部廃止

福井大学 =この手の「一県一国立大学」系は全部廃止

岐阜大学 =この手の「一県一国立大学」系は全部廃止

静岡大学 =この手の「一県一国立大学」系は全部廃止

三重大学 =この手の「一県一国立大学」系は全部廃止

滋賀大学 =この手の「一県一国立大学」系は全部廃止


浜松医科大学 =下記参照

滋賀医科大学 =下記参照

場所はどこでもいいけど、医科専門大学は東京以外にも必要な気がする。国全体で3-4カ所あってもいいのかも。

 

京都大学 =とりあえずここを中核大学として残す

京都教育大学 =京大の教育学部に統合

京都工芸繊維大学 =専門系は一つずつ残す。もっと特色だした方がいいかもだけど


大阪大学 =とりあえずここを中核大学として残す。

大阪外国語大学 =大阪大学に統合。もしくは東京外語大学との統合。

大阪教育大学 =大阪大学に統合。


神戸大学 =どうかな。大阪大学と近いから不要な気もする。阪大と“じゃんけん”して決めてください。

兵庫教育大学 =廃校

奈良教育大学 =廃校

奈良女子大学 =廃校

和歌山大学 =この手の「一県一国立大学」系は全部廃止


北陸先端科学技術大学院大学 =関東甲信越の方の大学院大学と統合。

奈良先端科学技術大学院大学 =同上


現在26大学あります。結論=5大学



<中国・四国地区>

岡山大学 =とりあえずここを中核大学として残す

広島大学 =岡山大学と統合してくださいませ。

山口大学 =この手の「一県一国立大学」系は全部廃止


鳥取大学 =日本海大学とか名前変えて、中核大学として残す

島根大学 =鳥取大学と統合してください。てか、県自体が合併するのもアリ。鳥島県か島鳥県かで、もめそう・・。


四国に関しては、下記の4つのうちどれかひとつ残す。名前は四国大学がいーんじゃない? どれを残すかは四国の人で決めてください。

徳島大学 =この手の「一県一国立大学」系は全部廃止

香川大学 =この手の「一県一国立大学」系は全部廃止

愛媛大学 =この手の「一県一国立大学」系は全部廃止

高知大学 =この手の「一県一国立大学」系は全部廃止


鳴門教育大学 =廃校


現在10大学あります。結論=3大学



<九州・沖縄地区>

九州大学(九州芸術工科大学)=とりあえずここを中核大学として残す。

鹿児島大学 =とりあえずここを中核大学として残す。喧嘩にならないよう「南九州大学」とかにしたらいいかも。「どげんかせんといかん大学」でもいいです。

琉球大学 =とりあえずここを中核大学として残す。


福岡教育大学 =九州大学に統合。

九州工業大学 =廃校

鹿屋体育大学 =廃校


佐賀大学 =この手の「一県一国立大学」系は全部廃止

長崎大学 =この手の「一県一国立大学」系は全部廃止

熊本大学 =この手の「一県一国立大学」系は全部廃止

大分大学 =この手の「一県一国立大学」系は全部廃止

宮崎大学 =この手の「一県一国立大学」系は全部廃止


現在11大学あります。結論=3大学



<その他>

放送大学学園(放送大学)・・・残す




これで88校が27校になります。こんな感じ?



f:id:Chikirin:20150810175729j:image:medium

そんじゃね!


文部省のサイトはこちら

http://www.mext.go.jp/b_menu/link/daigaku1.htm


http://d.hatena.ne.jp/Chikirin+personal/  http://d.hatena.ne.jp/Chikirin+shop/

2009-03-02 官から民へ 質問回答編

先日とその前の「官から民へ」のシリーズに多くのコメントをいただきました。ありがとうございます。コメント欄でお答えするのは余りにも長くなりますので、こちらでまとめてお返事したいと思います。


まずは全体的なことから。

(1)基本的な立ち位置について

ちきりんの基本的な立ち位置については下記をご覧ください。

http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20081216

人にはそれぞれの考え方があり、異なる立ち位置があると思います。正しい答えはひとつではありませんので、異なる意見をすり合わせてどちがら正しいかを決める必要はないと思っています。このブログは、ちきりんの立ち位置からのちきりんの意見を表明しているものです。当然、異なる意見もあるでしょう。それはそれぞれの方がそれぞれの場所で表明されればよいことです。


(2)表現が刺激的であることについて

公務員や郵便局の方、その他の方でも、ちきりんブログを読んで気分を害される方はあるでしょう。ちきりんブログは、意見をより明確に言うことで読み手の方の思考に刺激を与えようとするところもあり、ぼかさずに言い切り、言葉もとても刺激的です。

「いや、それぞれ現場の人はみな善意だし一生懸命働いている」というのは、それはそーなのでしょうが、そんなことを書いても、何がいいたいのかという主張がボケてしまうだけです。匿名ブログのメリットのひとつとしてこういった表現方法を採用しています。読まれる方はあらかじめこの点について覚悟して??お読みくださいませ。


(3)分割の意義について

昨日、JR各社のカードなどのサービスがばらばらなのは分社化のデメリットではないか、というコメントをいただきました。ちきりんは違う考えをもっています。なぜなら分社化していなければ、今あるようなカードや携帯を使ったサービスはまったく実施されていなかった可能性さえあると思うからです。

たとえばJR切符をクレジットカードで購入したいというニーズは、新幹線を多用する東京や大阪のビジネスマンには大昔からあったと思います。しかし東北や九州では、もしくはカードの普及率が低かった名古屋ではそういうニーズがでてくるのは東京と比べて相当遅かった(遅い)でしょう。

分社化していなければ、こういう制度が実現するのは「都会だけでなく、日本全体にそういうニーズがでてきてから」になっていたと思います。つまりかなり実現が遅れてしまっていたと思います。クレジットカードを使う人がほとんどいない地方のみどりの窓口までその投資をしなければならないわけですから。

スイカにつづきイコカが、そしてスゴカが、というように電子カードも都会から順にできていっていますが、分社化していなければ、これらの投資も「日本全体で機が熟してから実現」というようになっていたのではないかと思います。

今は確かに分社化のためにさまざまなシステムが重複したり齟齬があたっりしていますが、これは「窓口で一人が暇でも他の忙しい部門の人を手伝えない」というのと同じです。分社化にはデメリットもあるけれど、メリットの方が圧倒的に根本的な問題だとちきりんは思っています。


(4)地方について

これも昨日の質問です。ちきりんが「地方のありかた」についてどう考えているのか、という点。難しい問題だと思っています。過去に書いた下記あたりを一度ごらんいただければありがたいです。まだ考えはまとまっていませんが、ちきりんの考えの一片は表れていると思います。


震災が問う私たちの“地方ビジョン”

http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20080617


公共事業はなぜ必要か

http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20050323


長野県 田中県政について

http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20060913


ハワイ化する北海道

http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20090204


なお、地方によって解の方向性は異なるので、まずは道州制を実現させて地方が自律的に(国全体で一律ではない)方針を決められるようになることが重要と思っています。


(5)郵政公社の分割方法について

郵政公社の分割について、業態分割に加え、地域分割を行わなかった理由についてのご質問がありました。この点についてちきりんの考える理由は下記です。

前から何度も書いていますが、この国はごく一部の国際競争力のある産業に国全体が依存しています。こんないびつな状態ではいつまでも持たないです。


詳しくはこのあたりをどうぞ↓

http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20090103

http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20090129

http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20090201


現在強い産業材と製造業に加え、主な産業としては、金融、消費財製造業、製薬、小売、IT、教育、観光、エンターテイメントなどの国際競争力をつけていく必要があります。

そのうち金融に関して言えば(他の多くの産業も同じですが)会社が多すぎます。過去20年、だから金融はどんどん淘汰が進み、会社を統合してきました。海外に打ってでられる金融機関を育てることは日本の重要な産業政策のひとつです。

郵政公社は郵便事業を除くと、保険事業と銀行事業という金融機関です。まずはこれらを分離することが第一の優先事項です。さらにこれを地域に分けて力を削いでもいいのですが、それよりは、これらの金融機関が世界で(もしくはまずはアジアで)競争して勝っていける機関に育てるほうが産業政策としては重要という判断だと思います。

「国際競争が期待できないのでまずは国内競争を」というのがJRのパターン、NTTの分割は混ぜています。(コミニケーションズは国際競争を意識した分離、東と西は国内競争状態を作るための分離です。)

ゆうちょ銀行を地方ごとに分離して、それぞれを地方銀行と戦わせたほうがよいと考えるか、ゆうちょ銀行は日本でひとつの会社として残して、“アジアで一番強力な銀行”を目指させる方が日本の産業政策として有意義と考えるか、という選択肢だと思います。


(6)郵政公社と国鉄は違うのでは?

というご意見もいただきました。確かに天文学的な数字の累積赤字を積み上げた国鉄と、郵便でさえまあまあトントンでやってきた郵政公社の赤字の額、すなわち、国民に押し付けた負担の額は違いますよね。

ただ、郵政公社の事業には隠れた大きな問題があります。それは、郵便貯金の使われ方(貸し出し先)の問題です。

郵便貯金を通して集められた巨額の資金が、いわゆる天下り先や特殊法人など多くの非効率な官業組織の資金調達源として使われています。

郵政問題の本丸は本当はここにあります。というか、日本の財政問題の本丸は「特別会計」と「財政投融資」です。この二つの問題は、それこそあまりに巨大すぎる闇なので、一足飛びに解決するのは不可能であり、ちょっとずつ外堀を埋めていく必要があります。

この後者の「財政投融資」と郵便貯金はなかなかの腐れ縁がある仕組みです。郵政民営化の一番の意義は、将来、この部分を明るみにだしてくることにあるとちきりんは考えています。だから野田聖子氏が「たかが郵政の問題で・・」といった時に「余りに浅はかな政治家だな」と驚いたわけです。(こちら→http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20050815

これらの二つの巨大な闇の問題の解決に一歩でも近寄るためには、とにかくまずは郵政を民営化し、金融、保険、郵便等を分離して、それぞれの財務諸表を独立して作ることが何よりも重要です。


もちろん、郵便局で働いている人にこの巨大な闇の仕組みの責任があるとは言いません。しかし、大きな赤字を生み出した国鉄とはまた違う形で、巨額の闇資金の隠れ蓑として機能してきた郵政公社について「官業ではあるが、大きな問題はない組織」とはとてもいえません。

公社としていずれの害が大きいか、といわれたら、ちきりん的にはほぼ同じと思います。財政投融資を通じて無駄になったお金の額は、国鉄の赤字額とたいして変わらないか、もしかしたらもっと大きいかもしれません。

なお同様に、国鉄の赤字に関しても一生懸命働いていた現場の国鉄マンに責任があるとはちきりんはまったく考えてません。おかしいのは仕組みであり、だからこそ私たちは仕組みを変えようとしているのです。


(7)溶岩から逃げているという危機感とは?

まずはこちらをご覧ください↓

http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20080116


もしくはこっちでもいいかな↓

http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20080921


今の20代の人口は1533万人です。10年後の20代の人口は1243万人です。20年後の20代の人口は1143万人です。これの意味することはなんでしょう?


今1533億円税収があるとすれば、20年後には1143億円しかないということです。人数が減るんだから当然そうなるでしょ。それとも20年後、今よりすごく一人あたりが稼ぐようになっていると思います??

皆さんの会社の売り上げが、今1533万円あるとすれば、20年後には1143万円しかないということです。人口が減るんだから売れる住宅、車、テレビ、携帯電話、ビール、弁当、チョコの数も当然減るでしょ?

売り上げがそれだけ減るということは給与が同様に減るということです。だって企業の売り上げが減るのに、企業の経費(給与)が同率で減らないわけはないですよね。

それとも人口がこんなに減っても今より皆がすごく物を買うようになるので売り上げは減りませんか?20年後の給与が今と同じレベルを維持できたりする理由ってありますかね??


なお上記の人口の数字は「確定数字」です。今から少子化対策を打っても、それで変わるのはこの後の数字です。20年後の20代人口はもう変化しません。(それを変えたいなら移民政策しか解はありません。)

国の収入や支出が25%減るということは、医療費が25%増え、年金は25%減り、生活保護も25%減額され、国公立の小中学校を含む学校の授業料は25%高くなるってことです。生活レベルがそれだけ落ちる、ということです。また、給与が25%減れば、貧困家庭が相当増えるでしょう。


加えて上記は「国の産業の競争力が変わらない場合」の話です。なぜなら上で書いているのは「人口要因による変化」だけだからです。

でも、人口は減っても後の条件は保てるでしょうか?日本は次の20年も今までと同じ国際競争力が保てると思いますか?少なくとも国際比較において、日本人の学力はがた落ちです。世界の中での英語力のレベルも悲惨なレベルです。これでどうやって今までと同じレベルを保てるのでしょう??

もしも、人口減少に加えて、今は国際競争力のある企業の没落が始まれば、そして、円という通貨の没落(円安)が始まれば、もっともっと日本の生活は惨めなものになるでしょう。エネルギーのない日本では、円が安くなれば石油が必要なすべてのもの(輸送が必要なすべてのもの)は値上がりします。上記で書いたような、給与や福祉サービスが減ったとしても、そういったものの値段はあがるのです。


ホームレスが街に溢れ、通勤や通学の途中で何人もゴミ箱をあさっている人の隣を過ぎて歩く世の中になります。子供の物乞いも現れるかもしれません。あちこちで引ったくりや強盗が頻発し、孤独死や餓死する人が近所にも増えるかも。親とおじおばを含め7人くらいの介護を担当する「ひとりっこ」が介護疲れで逃げ出したり虐待を始めたり、ということが日常茶飯事になるかもしれません。病気でも治療を受けられるのは一部の金持ちだけ、かもしれません。

とか、考えればいくらでも悪いイメージは膨らませることができますが、暗くなるのでもうやめましょう。


この国の先行きをもうちょっと長期的に考えることができ、今何が必要なのかを理解し、現実的で根本的な手を打つ必要があると思う人が増えてくれることを祈ります。なお鳩山さんちは大金持ちですから、文化財や芸術のほうが大事なのはよくわかります。あの家はひ孫の代まで政治家であり、そのまた何代も先まで経済的には全く困らないでしょう。


それではね!

2009-03-01 官から民へ(後編)  組織の攻防

官業民営化、後編は組織を巡る攻防について。

ご存じのように、元官業組織の多くは民営化の際に「分社化」というプロセスを踏む。日本国有鉄道がJRになる時にJR東日本、JR西日本など6つの旅客鉄道会社と貨物鉄道会社等に分割され、NTTもNTT東日本、NTT西日本などの地域会社の他、NTTコミニケーションズなどに分けられた。道路公団も同様だ。

そして今問題になっている日本郵政公社も、日本郵政株式会社になると同時に郵便業務、銀行業務、保険業務(かんぽ)、窓口業務の4つに、事業分割されている。


なぜ官業は民営化される際に「分割される」ことが多いのか?

その理由がいくつかあるのでまとめておきましょう。


(1)都市から田舎への利益補填の停止

どの官業も長年の間に、ユニバーサルサービスの美名の下、「都市で儲けた利益を、次世代のための投資ではなく、地方の赤字埋めあわせに使う」という図式ができあがっている。国鉄も電電公社も郵政公社も皆同じだ。

巨大な公社とは「都市から地方への金脈ルート」ともいえるのだ。旧守派の政治家の政治基盤である日本の“地方”において、これらの公社は、極めて安定した良質な雇用の提供者であり、また公共事業に加え様々な投資を行う主体ともなる。

公社の地域分割がなされれば、地方では身の丈にあった投資しかできなくなるし、赤字も東京の利益を使って補填することができなくなる。それはそのまま地方に地盤を置く政治家の政治生命に響いてしまう。

しかし、そもそもニーズのない地方に投資を続けても回収できる見込みはない。巨額の赤字はいつかは税金で補填することを余儀なくされる。この赤字補填資金ルートを断ち切ることが「分社化」のひとつの目的だ。


(2)既得権益集団、労組の分断

これも重要な理由だ。官業で働く人達は極めて恵まれた労働条件で働いており、しかも自分の会社(公社)がどんなに赤字をだそうとも解雇される怖れも倒産する怖れも全くない。

そんな環境で、働くモチベーションを維持できるのかという点は今回は棚上げするとしても、それだけの既得権益をなんとしても死守したいと思うのは当然のことだろう。特に人数の多い官業では、労働組合の力も圧倒的に強い。

そこで民営化を機に分社化をし、その分断を図る。たとえば、全く儲かっていない「東北地方で働く職員の賃金を上げろ!」という労働闘争のために「朝の東京の山手線でストをするぞ!」という脅しは使えなくなる。また長期的には地域の収益力や平均賃金に合わせた給与水準の設定が可能になる。

ものすごい数の職員を抱える官業公社は、集票マシンとしても圧倒的な力をもち、○○族と呼ばれる政治家を何人も国会に送り込んでいる。郵政公社も以前は「100万票組織、100万票神話」と呼ばれていた。が、これも分社化によりその力を一定レベル抑えられる。

そもそも社会運動というのは、「母集団にいる人間の頭数」がパワーの源だ。大人一人はそのまま選挙の一票であり、月平均の労働組合費が数千円にもなるような組織では、人数の多さはそのまま政治家への献金パワーとなる。

まずは「組織を小さくする」ということが、巨大権力を誇る大規模公社を民営化(まとも化)するために非常に重要な一歩となるのだ。


(3)疑似競争環境の創出

大半の公社や国有企業というのは、民営化しても大半が独占企業か、よくて寡占企業だ。民営化する意義は「市場の中で生き残れる組織になること」であるのに、大半は民営化しても(自分たちがあまりに巨大すぎ、また特殊すぎるために)競争する相手さえいない。

これでは彼らのメンタリティの中に民間企業としての常識(たとえば“加入者ではなく、客なのだ”という意識を持つなど)を植え付けるのが難しい。また赤字が続いても「特殊な環境なのだから仕方ない」という言い訳がいつまでも通用してしまう。

そこで会社を分割する。そうすると「東日本ができたのになんで西日本は・・」とか「四国が黒字になってるのに九州が無理だという理屈は通用しないだろ」みたいな話ができる。グループ内に擬似的な競争状態を作り上げる。これが組織の意識変革に非常に役に立つのだ。

実際JRなど表面上は私鉄と競合してるとか言ってるが、心の中での最大のライバルは今でも他のJRであろう。相手が同じ条件であれば「負けることの言いわけ」が見つけられないからだ。

この「競争状態におかれる」ことが、公社の実質的な民営化を進する原動力となっている。


(4)管理可能単位への縮小

分割直前の国鉄の職員数は30万人弱。ピーク時には60万人を超えていた。電電公社も20万人程度(その少し前まで30万人)、郵政公社も分割前で30万人規模だろうか。

参考までに、鳥取県の赤ん坊までいれた人口が60万人弱、杉並区が54万人。行政単位なら人は一地域に集まって住んでいるが、公社では数十万もの職員は全国に散らばっている。こんなのまともに経営するのはほぼ不可能な規模だ。

特に経営をいちから見直す必要がある民営化の際に、30万人もの組織をそのまま温存するというのは、経営の舵取りの効率、効果という点からみてもあまりにも難しい。まずは管理が可能な規模にしよう、とすることも分社化の理由だろう。

★★★

このように「組織分割」は、巨大官業を民営化する際に多くのメリットがあるとしてよく使われる方法だ。反対にいえば「民営化を阻止したい勢力」にとって最も抵抗すべきコトがこの「分割案」であるとも言える。たとえ株式会社化や民営化が避けられないとしても、組織が分割されることだけは避けたいと彼らは考える。

日本郵政に関しても、なんとか4分割案を撤回させたいと思っている人達は多数存在する。彼らは「ある部門の人が忙しくても、他の暇な部門の社員が手伝えないのは顧客サービスの観点からおかしい」という、いかにも“正義感の強いお子ちゃま”が賛成しそうな理由を挙げているが、実際の理由は上記にかいたようにそんなに単純なものではない。


いったん分社化された組織は、「自らの事業価値、組織価値の向上」に自律的に邁進を始める。たとえば「かんぽ」と呼ばれる保険会社は、独立した保険会社としての自覚が次第にでてくれば、どうやって民間の保険会社と競って業績を伸ばし勝てる会社になるかと考え始めるであろう。

また将来的には海外の保険会社とも競い合い、アジアに進出したり、買収をしたりして世界有数の保険会社を目指そうと考えるかもしれない。

そういった目標を与えられる日本郵政の保険部門(いわゆる“かんぽ”)にとって、温泉地での保養所を経営する、というのは、全くお門違いの業務だ。


郵政解散の際、小泉元首相は「みなさん、郵便を配るという事業が公務員でなければ本当にできないと思われますか?」と有権者に問いかけた。

温泉地などの保養施設である“かんぽの宿”を、本当に日本郵政が、その保険部門が運営すべきだろうか?そうではなく、できるだけ早く切り離して本業に集中し、自分たちの専門分野で新たな価値を生める組織を作っていくのが新生日本郵政の使命とはいえないか。


しかし、この「組織の切り離し」を、抵抗勢力は簡単に許しはしない。いったん切り崩しが始まると、組織はとことん解体されてしまう。彼らもまたそのことの威力をよくよく理解している。彼らにとって、組織の規模こそがパワーであり、組織の分離や切り離しを阻止するのは組織防衛の基本中の基本だ。

旧守派の政治家が、今やほとんど言いがかりに近いような話まで持ち出して西川氏を退任に追い込もうと必死なのは、彼らがなんとしてもこの「組織の解体」を止めたいと考えているからだ。


「官から民へ」という動きは歴史の大きな流れであり、それが逆流することはないだろう。しかし残された時間は十分にあるとは決して言えない。今や日本経済は構造的にも危機的な状況にある。

このような中において、今だに時計を戻したいと考える人達、自分たちの既得権益を守るために改革を少しでも遅らせたいと考えている人達の罪は、あまりにも大きい。

そして「手続きに問題があったのだから一回立ち止まるのはあたりまえでは?」と主張する“正しいこと好きな人達”も、ちきりんからみればほとんど同罪に近い。

今この国の経済が、どういう問題を抱えているのかそれらの人達は理解しているのだろうか?後ろから溶岩が流れてきて逃げている時に、走り方がおかしいからいったん立ち止まり、フォームを直してから再度走りましょうと提案する人達は、あまりにも危機感がなさすぎる。


アメリカ発の恐慌で日本は傷が浅いとか、欧州、英国のほうが深刻だというが、昨年末のGDPの落ち込みを見ればいい。日本の経済が受けたダメージは米国の落ち込みの倍だ。欧州の落ち込みよりもはるかに大きい。

私たちが目標にしているのは、東京駅の対面に重要文化財の古いビルを持つ、経済破綻した国なのか?



そんじゃーね。