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Chikirinの日記 RSSフィード

2009-09-25 JALが潰れる理由&潰れない理由

“火を噴くJALの台湾便”というエントリを書いたのは4ヶ月ほど前のことですが、JALもいよいよ“本体全体から火を噴いている”ようですね。今回の旅行でも乗りましたが、行き帰りとも機内でもらった新聞の一面記事はJALの危機問題の記事でした。


というわけで、JALが潰れそうになってる理由をまとめとくです。


(1)政治路線コストが巨額

最大の理由はこれだよね。日本には97も空港があるんです。(日本の空港一覧はこちら) それにしても静岡県まで空港を作ったのには驚いたよ。静岡県から飛行機でどこに行くんだろう。


地方にむやみに空港が作られる理由は

・空港建設はダム建設と同様の巨額な公共工事なので、政治家が地元で(建設会社に)評価されて票につながるし、

・空港を作れば、「そこまでの高速道路が必要だ!」とか言えて、他の公共工事にもつながる。

・予算もいろんな形で政治家に環流して(政治家の)懐にもやさしい。

・それになんといっても“オラが県”に空港があるのも超嬉しいし!

ということなわけで、別に「航空需要があるから空港を作る」わけでは決してないのは皆様ご存じのとおり。

ただし、それらの政治家の多くは今回、落選しちゃったみたいですけど。


で、空港を作ると飛行機を飛ばす必要もあって(作っただけにはできない。そんなことしたら、航空需要もないのに空港を作ったことがばれちゃう。)、JALの一部である昔のJASって会社が日本国中くまなく全く儲からない飛行機を飛ばしているわけで、そりゃー儲からないだろうよ、と。そういうことです。

しかも、他の政治家や地域への対抗心から「オレのところにもジャンボを飛ばせ!」とか、「最低でも週に2便は飛ばせ!」とか、無茶言いますからね。“地元選出”の方々が。


今回JALは「神戸空港からの撤退」を検討している。便を減らすとかではなく、撤退です。つまりカウンターも事務所も神戸からなくすってことを検討しており、神戸(のような一定の規模のある都市)でさえ撤退したいくらいの状態なんだから、他は推して知るべし。


ちきりん的ざっくり推定では、97空港のうち、

・経済的に必要なのは15空港くらい

・社会的に必要(離島など)なのが25空港くらいで、

残りの全体の6割は“政治空港”であり、“地方への資金投入と、地方選出の政治家のために作られた空港”なんだと思う。


今までは一流企業や金融機関の役員や部長様が、バカ高い値段で欧米へのビジネスクラスやファーストクラスチケットを買ってくれていたから、これらの「地方への補助金」も払えたけど、今や彼らも“一律、海外出張禁止”的なる状況ですからね。もう「お金がないだすよ!」ってことで。


新聞は「JAL、新旧会社分離」とか書くけど、実際には「政治路線の分離」ですよね。それをやらないと(=政治空港へ飛ばしてる政治路線を分離してひとつの会社に集め、長期的には全部撤退する、ということをやらないと)もたないよ、ってことでしょう。これはJRがやった方法と同じよね。JRも不採算路線は全部、第三セクターやバスに振り替えて本体から切り離し、最終的には多くを廃線にした。


というわけで、長期的視野のある皆さんは、早めに今後使われなくなる地方空港の撤退後の用途、何に使うかを考えようよ!

駐車場?なんていらんよね。巨大イベント会場?も要らないな。レース場?うーん。地元の人で考えてくださいな。



(2)民間企業としてのガバナンスがない

JALが潰れそうな二番目の理由は、まあ、なんやかんやいっても未だに「国土交通省の会社」だってことだよね。最初から国民の税金で運営するつもりなんだと思う。

誰も“ビジネス的に採算を取ること”を“第一義的な目的”としておいてないし、経営者はそういう視点で選ばれているわけでもないし、それが最も大事だとも思ってない、でしょう。

それにね。JALは機内食から備品、サービスまで、相当数の取引先からモノやサービスを仕入れていると思うけど、それらの納入企業、関連企業に天下っている国土交通省の役人の数を数えるのはもう誰にも不可能、というくらい多い。

それらの会社は当然、天下りの人の給与(しかもバカ高い)を含めて価格設定し、納入費用をJALに請求している。JALはこれらの割高な取引先を切ることさえできない。だって、大事な大事な国交省のお役人のOBがお勤めですもの。


というわけで“民間企業の振り”はしてるけど、実際はまだまだ極めて政治的な組織だから、必ずしも採算をあげる“営利企業”としてのガバナンスがあったわけではない、ってこと。これがJALが潰れそうになってる二番目の理由。


ところで退職者の年金制度が改変できないことも含め、よくいわれる「労組問題」は、「まともなリストラができない理由」としては大きい。が、「赤字になる構造的な理由」はそれではなく上記のふたつです。


ってことで、こんな会社、よく今まで潰れてなかったな、って思う。むしろそっちの方に驚愕だ。


★★★

JALが潰れそうになってる理由がわかったところで、今日の二つ目の問い。


JALはなぜ今まで潰れてないのか。

理由は以下の二つ。


(1)政治家が守ってくれるので潰れない。

(2)国交省が守ってくれるので潰さない。



なぜ彼らがJALを潰さず守ってくれるのか?という点については、エントリの前半に戻る。(→無限ループ)



そんじゃーね。



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関連図書:「血税空港」