2009-11-29 街の風景が変わる 
2009年11月26日、日経新聞の一面トップ記事の見出しは「JTB、国内200店閉鎖」だった。200店という数は全体の2割にあたるらしい。流行り言葉を借りれば「販売チャネルの組み替え」であり、旅行は「店舗の窓口で売る商品」から、「ネットで売る商品」に変わっていく。
「何を今さら」という人もいるだろう。しかし、業界最大手の企業が、これだけの規模(既存店舗の2割)で、当然に人員削減を伴うであろう、チャネルの組み替えに踏み切ることの意味は決して小さくない。だからこそ「一面トップ記事」なのだ。
旅行業界に関して言えば、「有人店舗からネット」への本格的なシフトが起るかどうかは、楽天トラベルや一休ドットコムが決めるのではない。JTBの決断がそのレバーを引くのだ。
同じ日の33面には「ネット時代の報道拓く」という記事がある。日経新聞が来春に電子新聞を創刊する、ことの特集だ。まだ料金などの詳細は発表されていないが、構想としては、
・無料と有料のニュースの開示範囲を変える
・過去データのリンク付けなど、ニュース報道に新たな付加価値をつける
・紙の新聞の購読料とのセット販売を促進する
ということらしい。
ビジネスに関する膨大なデータベースを持つ日経新聞ならではの試みだが、果たして今後も「紙の新聞」が生き残ることができるかを決する“最後の試み”になるだろう。
毎日新聞は共同通信に参加し、地方の支局や記者を整理する方向のようだが、さすが朝日新聞と読売新聞は動きが遅い、と変なところで感心する。
最初の記事では「業界最大手のJTBが動くことの意味」を書いたが、ここでは「最も傷の浅い日経新聞が動くことの意味」がポイントだ。
上記のふたつは11月26日の記事だが、その前日の日経新聞12面には「米グーグルの電子書籍 来年、日本で有料サービス」という記事があった。書籍の電子化については世界中で著作権に絡む様々な駆け引きがあり、これからもまだ一悶着ありそうだが、それでも、この1年で相当大きな動きが起きているように思う。
さらに、11月28日号の週刊ダイヤモンドの特集は「ネット通販」だ。昨年、通販全体の売上が8兆円を超え、百貨店全体やコンビニ全体の売上げを抜いているのだが、その通販の中で驚異的に伸びているのが「ネット通販」だというものだ。
そりゃあそうだろう。今や何を探しても楽天市場に引っ張って行かれるし、アマゾンは本から鍋から家電からブーツまで売ろうとしている。生地のアップから様々な方向から撮った写真まで、ファッション雑貨、アパレル販売サイトの拡充振りもめざましい。
あまりに充実した家電の価格比較サイトなどを見ていると、そのうちビッグカメラなどの量販店は「サンプル展示用店舗」になるのではないか、と思える。
それにしても通販売上がコンビニや百貨店の売上げを超えているとはあらためて驚く。しかも5年後には、その二つの合計より大きくなっていてもおかしくない。
上から「旅行」「新聞」「書籍」「一般小売り商品」に関する記事を紹介してきたが、その背景はひとつだ。すべての消費が、街中に存在する既存チャネルからネットにシフトし始めている。そのうち車のような高額商品でさえネットで販売されるようになるだろう。
日本の個人消費は300兆円強だが、そのうちいわゆる「店舗で販売される商品」の合計を100%とすれば、いったい何%がネット販売に流れるのか?その影響は、世の中の光景を一変させるほど大きいだろう。
朝日新聞が潰れますよ、程度の話ではない。古くからの商店街がシャッター通りになったように、「百貨店を中核店舗とするターミナル駅近隣の商業圏」や、この10年で日本の隅々にまで増殖した大規模な「ショッピングモール」が、その姿を変えてしまうかもしれない。
めっちゃ、おもろいやん!
と思います。「マーケティング」ということの概念も大きくかわるだろう。ちきりんがずうっと前にビジネススクールに学んでいた時、マーケティングの基礎を学ぶこととは「コトラーのマーケティングの本を読む」ことだった。
しかし今や「ネット販売についてのマーケティング」を学ばずしてマーケティングを学んだとは言えないだろう。そして「ネット上でのマーケティング」とは、大量のアクセス・トラフィックを専用のソフトで分析することから始まるものであり、それらは今までの伝統的なマーケティング分析とはかなり異なったものとなる。
広告論や販売手法に関するノウハウも同じだ。5年前にそれらを学んだ人の知識は、これから一気に時代遅れになるだろう。
今、起っていることは「普通の人がネットでモノを買い始めた」ということだ。一部のネットやITに詳しい人ではなく、「マス」が動き始めたということだろう。そしてそれは「人の行動が変わった」のではなく、「世代交代」ということから起っている。
すなわち、若い頃からネットに触れてきた世代が、40代になりはじめ、消費の大層がそれ以降の世代によって担われるようになってきたのだ。
今はまだ、日本の貯蓄を独占する60代以上の人達はJTBの窓口で旅行を申し込んでいる。だから、JTBは残す店舗をそういう人向けにチューニングしていくだろう。「高級感のあるカウンターでベテラン社員が高額クルーズのご相談をさせていただくための店舗」だ。
しかし、そういう店舗の寿命も既に見えている。今の40代が60代になりかける15年後には、それらもネットを通して売れるようになっていくだろう。
(12/2追記:三越は社員の4分の1が早期退職すると発表した。“社員の4人に一人”が退職する事態は、まさに百貨店という“店舗”が直面している危機を象徴している。)
NOVAは一足早く潰れてしまったけれど、英会話学校なんて10年後に存続し得ると思えない。今やスカイプを使って、家でいつでもネイティブの講師(もちろん日本にいるわけではない)とチャットしながら英語が学べる。「英会話学校」という「店舗」など要らないのだ。当然、そんなものを地価の高い日本に維持するコストをのぞけば、その料金は今より圧倒的に安くなる。
ネットは「街の風景を変える」だろう。
というのが、今日の結論だ。販売という機能を失う店舗に求められる(新たな)機能とは何なのか。「販売」ではなく、なんらかの「販売に伴う付加価値を提供する場所としてのリアル店舗」はその存在意義を急速に先鋭化することになるだろう。「チャネルマネジメント」という言葉の意味も大きく変わるはずだ。
これはちょっとおもしろいじゃん。
と思う。

現場はかな〜り大変ですけどね…(汗)。
他店でも買える商品は価格消耗戦に巻き込まれちゃいますから
「メーカーから早く、安く仕入れられるコネがあるかどうか」
が命運を分けます。
(もちろん物流、人件、広告費等のコスパに優位性があれば
強いですけど、やっぱり最後は”商品”ですからねえ)
> そのうち車のような高額商品でさえネットで販売されるようになるだろう。
わたしは、そりゃないだろう、と数年前までは思ってましたが
「いや、案外売れるかも」
と最近は思い始めています(笑)。
ECの中でもアパレルのラグジュアリブランドは
(通販=安いというイメージ、物流面倒等々の理由から)
参入が遅かったですが、今は当たり前にありますしね…。
GILT(招待制の高級ブランド激安オンラインショップ)
が出てきたときは、もー個人的に大笑いしましたよ。
ハーバード出のインテリ女社長の肉食っぷりと
ブランドどうなっちゃうねん、という意味で。
> 若い頃からネットに触れてきた世代が、40代になりはじめ、
> 消費の大層がそれ以降の世代によって担われるようになってきたのだ。
に関しては電通の偉い人が書いてる
このエントリは面白いですよん♪
★デジタル・ネイティブ2G
http://www.satonao.com/archives/2009/11/post_2761.html
昨日、楽天トラベルの方の成功事例プレゼンを聞いてきましたけど
ビジネスモデル云々もさることながら、仕事の進め方やチームワークなど
アナログ的な部分で「うまくいってるなー」という印象を受けました。
JTBの動向に関わらず、まだまだ伸びるって思わせるお話でしたよ。
語学に関しては、スカイプで勉強するとかしないとかって以前に
語学能力のニーズは今後伸びないんじゃないかなーと思ってます。
翻訳ソフトのクオリティが上がって、ビジネスレベルだったら
ツールでカバーできる時代が来るんじゃないかと。
映画の細かいニュアンスまで理解したい、ってんならともかく
ほとんどの人は仕事で使えれば十分なわけで、
そのレベルであれば、わざわざ勉強して自分の英語力をあげるより
道具の進化を待ってればいいんじゃないかな、と(笑)。
(進化を待つ間に、日本語で発想力と表現力を磨く)
文芸翻訳は残るでしょうけど、ビジネス翻訳は厳しいだろうな、と思います。
色々と各社がネット化しようとしていますが、あまりネット化できていない業界の一つだと思います
なんで駅前にあんなに実店舗があるんでしょうか?不思議です。
特に都会の賃貸物件はある程度スペックで検索して探すということが可能だと思いますし、
あんなに人がいるんだからネット化したらコストダウンできそうなんですけどね。
実店舗行ってもいまだにFAXで図面取り寄せて…の世界ですし。
ところで街の風景を変える、という視点で考えると、
街中で見たくない景観上よくないものはどんどんネット化してほしいですね。
パチンコとかサラ金とか。
まあ、それやっちゃったらみんな即死するのが
わかってるからですよね。
全部ネットに情報がのっちゃったら、
管理物件以外の収入(仲介)は見込めなくなる。
物件情報は裏でネットワーク化されてるから
オンライン化なんてチョロいはずなんですが
そこにエンドユーザーをアクセスさせるわけには”絶対に”いかない。
仲介という不動産屋同士の持ちつ持たれつな関係が
破壊されますから。
わたしは大家と借主の出会い系サイトを
どっかのベンチャーが作ったら絶対儲かると思ってるんですが、
まあ、そんなこと始めたら成功する前に
怖い人や政治から横ヤリが入ってぽしゃっちゃうんだろうな
と思います。
「露出や契約の手間は不動産屋に頼らずとも
自分でできる。むしろネット使ったほうが効率的」
ということに気付いた大家さんが増えてくれば
業界も変わるんじゃないですかね。
>「リアル店舗」はその存在意義を急速に先鋭化することになるだろう。
世の中はいずれにしても跛行しながら進むのですから、また実物志向への揺り戻しはあるでしょうね。しかし大きなトレンドとしてのネット化は不可避だと思われます。「確信せよ!今すぐに。」
そう言えば、30年以上前に日経の円城寺次郎というオヤジが新聞の電子化と多メディア化を指向してたな。何処にでも先見の明の御仁はいるものですが、核心はそれを思い付くことではなくって、膨大な利権旧勢力(同じ社内にもいる)に抗して怯まずに信念を実現する意志と持続力ではないでしょうか。タハッ
私は40代ですがコンビニ以外はネットで買い物するほうが多いかも?
便利な時代です
http://bit.ly/7lJ56o
私の地元の店舗は、業種によってはもうとっくに店売りをあきらめています。
20年くらい前から卸に主力を移して、店舗はあくまでショールーム兼事務所です。家電ショップが工場のIT化を請け負っていたり、魚屋さんは旅館や料亭に卸していたり。地元の飲み屋だと、「この店はあそこの魚屋から仕入れているからうまい」ということがあります。
個人的には「店舗のメディア化」と呼んでいます。店売りだけで生きているのは生鮮品や飲食店などの一部ですね。このトレンドについていけなかった店舗は、経営者の年金に主収入をシフトしつつあるようです。商売が儲からなくなれば、店をたたんで年金暮らしです。こうして「シャッター通り一丁あがり」ってなもんです。
不便なのだ。
でもその度にいつも思う、「子供達には」見せてあげたい。
「リアル」で触れることが出来る機会がこれからの子供達にはどの位残るのかな?
魚は切り身の状態で泳いではいない。カブトムシはビルの壁に樹液を吸わない。
沢山のモノを同時に比較できる状態で見れる、触れられる場所、機会は無くなってしまうのかな?
友達と喜び、驚きをリアルに共有できるのかな?
頭では解るのだ、「その方が合理的」だと。でも、、、
これからの人の感覚、感情は変わってしまうのでしょうね。
atmarktvさん、EC関連のお仕事なんですね。市場が効率化すると基本的にはマージンが減るので皆、大変ですよね。
TomorrowIsAnotherDayさんへ 賃貸不動産市場のネット化が進まないのは、紙媒体の不動産広告誌で儲かりまくっているリクルートが既得権益を守ろうとしているからじゃないかな。“楽天アパート”の出現を待ちましょう!
tamamusiさん 30年前ってのはすごいですね・・
okyakusama072さんへ 私は読みが深いのではなく、どちらかというと妄想癖があるんです。いろいろ考えてると頭の中に未来があれこれ浮かんできて・・って感じです。
roadtoshangrilaさんへ アメリカはなんにせよ“個人to個人”市場が大きいですよね。恋人募集も、出会い系サイトじゃなくて個人で広告だしてますし。
Anytimeさんへ お〜、クールなビデオですねえ!ご紹介ありがとうございます。
schwartz0000さんへ 経営者の年金に主収入をシフトしてる店・・・地方だと8割くらいそうだったりしそうですね。
wareruSORAさんへ 私は“販売”がネットに移ることで、実店舗はより“リアルな体験の提供”という価値に先鋭化していくんじゃないかと思ってるんです。次の日のエントリに書いてみましたので是非ごらんください。
ではでは
でも、そんなに何でもかんでもオンラインの世界に移行するとは、あまり思えないんですよね。
ネット通販て、そんなに便利ですかね?
ボタンひとつでおうちまで商品が届くんですもの、なんて近未来的!という人もいる。
でも、買う側が普通ならかからない「送料」「代引手数料(あるいは、銀行振込代金)」
を負担して、店によっては「ご注文後のキャンセル、不良以外の返品は一切受け付けない」
とくるんですよ。たとえサーモンピンクの服がショッキングピンクだったとしても、
画面によりイメージが異なりますから、で終わりなんですよ。
怖い怖いクレジット決済にして、情報タレ流されても「お侘び文」でおわり。
おまけに今や、何万ものネットショップが軒を連ね、どこがいい店で、どれがいい商品かを
探すだけでも一苦労。
1ページ1ページ確かめるうちに時間もかかるし、目も疲れる。
新しい店は個人情報の登録も面倒くさいし。
で、やっとの思いで注文したと思ったら、今度は受取が大変。夜間は18時〜20時まで。
これもこの中で時間が選べるわけではなく、18時30分の不在伝票を受け取って
ドライバーに電話するといたく不機嫌な声で、今日はもう終わったといわれる。
フルタイムで働いてて、18時に家に帰れる人、何人います?
仕方がないから週末に受け取ると、今度は荷物を受け取るために午前中がつぶれる…。
そして買い物をするたびにそのお店からの「ご招待」とやらのメールが増える。
一時期はネットで買い物をするのは便利かと思い使っておりましたが、最近は
ストレスが増えるばかりなので、買い物はネットでなく普通にしています。
ウェブはバカと暇人のためのもの、っていう本がありましたけど
リアルで買い物するより時間も手間もかかると思います。
…ネット通販ってそんなに、便利ですかね?