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Chikirinの日記 このページをアンテナに追加

2009-12-19 終身雇用はなぜなくならないか

日本の大企業および公的組織における

(1)新卒採用

(2)年功序列

(3)終身雇用

の3点を特徴とするいわゆる日本型雇用について考えてみる。


この制度、いろいろ批判があるにも関わらず今のところ大きく揺らいではいない。この制度がなかなか崩壊しない理由を、判例法である解雇規制のせいにする意見がある。しかしちきりんは、民間大企業の日本的雇用が崩れない理由が解雇規制にあるとは思っていない。なぜなら大企業は法律があろうとなかろうと、やりたいことはやるし、やりたくないことはやらないからだ。

実際、残業代を払わない(サービス残業)、実質的に有給休暇を取得させない、偽装請負に近いような非正規社員の使い方をするなど、自社の利益のためならたとえ法律違反でも大企業は平気でやってのける。現実において、彼らが労働法規をそんな厳密に気にしているとは思えない。

大企業は、解雇規制があるからイヤイヤ“日本的雇用”を維持しているのではなく、それが自分達にとって得だと思える強固な理由があるからこそ、それを維持しているのだ

もちろん、そこで働く人達側にとってはこの制度はすばらしいお宝制度であり、決して手放したくないものだろう。したがって、大企業とそこに勤める人達は、お互いにその関係を維持したいという自由意思によって利害が一致している。他者がなんと言おうと両者には関係ない。


この制度に反対している人達は、「大企業に雇って欲しかったが、それをなしえなかった人」、すなわち、選ばれなかった人と、「かってはそういった組織の社員であったが、何らかの理由により袂を分かった人」の二種類だ。

構図としては、相思相愛の夫婦がいるのだが、その関係性に「昔、この夫婦のどちらかに振られた人」と、「昔、その夫婦のどちらかと結婚していたのだが、関係が破綻して離婚した人」が「あいつらの今の関係はおかしい。解消すべきだ」「離婚できないのは離婚規制のせいだろう。そんな規制は一刻も早く解消すべきだ」と息巻いているようなものだ。そりゃあ夫婦だからいろいろあるけど、基本的には相思相愛の夫婦本人達にとっては「大きなお世話」以外のなにものでもない。


では社員側はともかく、大企業側にとってのこの制度のメリットは何なのか、について考えてみよう。


(1)“仕事のやり方”ではなく、“我が社のやり方”を知っている社員が望ましい。

これが一番大きな理由だろう。

日本の大企業にはホワイトカラーの仕事を標準化しない、という信念、もしくは伝統がある。そこでは、業務用パッケージの導入が不可能なくらいに、柔軟、場当たり的、独自のやり方で業務をこなすのがその特徴であり、これが生産現場に比べて圧倒的に生産性が低いと言われる我が国のホワイトカラーの特徴だ。

そういう組織において必要とされるのは、営業、人事、法務、調達などの標準化された知識や機能スキルではなく、上司の癖や組織のあうんの呼吸をくみ上げてなんなりと対応してくれる超がつくほどフレキシブルで非生産的な(=長時間働く)人材だ。

なので、市場から「営業のプロ」とか「人事のプロ」とかを雇ってくるより、新卒から「なんでもやる社員」を育てた方がほよど“使い勝手の良い社員”に仕上がる。これが“日本的雇用”を大企業が好む最大の理由だと思う。


(2)長期間の貸し借りが可能

長期雇用を前提にすると、社員と企業の間で、複数年の貸し借りが可能になる。「若い時は我慢してもらって、部長になってから報いる」とか、「景気の悪い時は我慢してもらって、いい時には、その分、上乗せする」というものだ。

日本企業は分厚い皮下脂肪(バッファ−)を抱えることで危機対応している。そのバッファーとして社員が協力してくれると、経営者はとても楽ちんだ。自分の経営が失敗してもバッファーが吸収してくれる。しかし長期雇用じゃないと誰も組織のバッファーになんてならない。

また短期雇用が前提だと、その年の落とし前はその年に付ける必要がある。景気が悪ければボーナスも人員数もカットして、よければ多額に払う、という体制になる。

しかし日本企業は「今年の業績が良かったのは社員の働きもあるけど景気の影響も大きい」「今年赤字なのは社長の経営がまずかったのもあるけど、円高の影響も大きい」と思っている。組織の結果は、必ずしも社員や経営者の力ではなく、「他力」によってより大きく左右される。だから、短期の業績によって社員や経営者の単年度の報酬が大きくぶれる制度は、必ずしも公正な制度ではない、と思っている。

なので長期間の公正を期すためには「全体を長期間に均す」ことが望ましく、そのためには組織と構成員の間で長期間の貸し借りを可能とする制度、すなわち長期雇用が必要になるのだ。


(3)継続維持よりコストがかかる新規獲得を避けたため、市場を潰してしまった。

リピート客の維持は新規客の獲得より圧倒的にコストが安い。これは何のビジネスでも同じだ。だから皆、ポイント制度やら“プラチナ会員”制度を作って「リピート客」の獲得に血眼になる。労働市場でもそれは同じだ。同じ人をずっと雇っている方が“採用・研修費用”は圧倒的に低くてすむ。

一方で、リピート客ばかりひいきにしていて新規顧客の取込みを怠ると、長期的には顧客の高齢化が起こるし、新しい潮流に乗り遅れ、また、どこかで飽きられてしまう。

つまりリピート客主義は維持獲得コストが安いかわりに、長期的には革新性や新規性が犠牲にされ、若返りが行われなくなるというデメリットがある。だから、どんなビジネスでも新規客とリピート客のバランスをとろうとする。


ところが日本の大企業の場合、高度成長期においては毎年どんどん組織が拡大したため、たとえずっと同じ社員を雇っていても、それよりも圧倒的に多い数の新入社員が入ってくることによって、組織の活性化が実現できていた。そのためにわざわざ既存社員の入れ替えをする切実なニーズを感じなかったのであろう。

で、彼ら自身が長い間リピート客しか相手にしなかったことで、今や日本の労働市場では中途人材の新規獲得コストが異常に高くなり(=高品質人材の中途採用市場が整備されないままとなり)、企業は今更方針を変えられなくなってしまっている。

高度成長期と違い、今やどこも新入社員の数は多くないため、時代に合わせた人材の入れ替えができない日本の大企業は、思考の新規性、革新性を完全に失ってしまっており、その結果として高い付加価値のあるユニークな商品を生み出せなくなっている。そのことに既に彼らは気がついているのだが、自分達が市場を潰してしまったために、今更方法を変えられないのだ。



まあ、他にもありそうだが、つまりはこのように大企業側にも日本的雇用はいろいろメリットがあるわけで、だから簡単には崩れないのだと思った。



じゃあ、どうすればいいんだって?



残念ながらそんな難しいことを考えている暇はちきりんにはない。



なぜなら今から年末の大掃除をする必要があるからだ。

  

重曹を水で練って洗面ボールや蛇口、お風呂をこするとびっくりするくらい綺麗になりますよ!


そんじゃーね。



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