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Chikirinの日記 RSSフィード

2010-06-28 伊藤博文がお札から消えたわけ

日本のお札の図柄は、2004年に樋口一葉が登場したり、(みんな忘れてるでしょ的な)2千円札が発行されたり時々変更になってますが、特に注目すべきは 1984年の改定です。


額面1984年10月まで 1984年(昭和59年)11月〜 2004年11月〜
500円岩倉具視廃止 廃止
1000円伊藤博文 夏目漱石野口英世
5000円聖徳太子新渡戸稲造樋口一葉
10000円 聖徳太子福沢諭吉 福沢諭吉

上記でわかるように、1984年11月以降、日本のお札から「政治家が消えた」のです。

それまでのお札に載っていたのは多くが政治家でした。伊藤博文は明治の宰相、聖徳太子も政治家です。

当時使われていた 500円札の岩倉具視や、その少し前に最も普及していた 100円札の板垣退助も政治家でした。

けれど 1984年の改定以降、日本の政治家はお札から消えてしまいます。


新たに選ばれた夏目漱石は作家、新渡戸稲造は農学者、教育家、福沢諭吉も学者、教育家です。

その後も樋口一葉、野口英世など文学者、研究者が選ばれています。

今後とも日本のお札に「政治家」が復活することはないでしょう。

実は私、日本のお札から政治家が消えた背景には「アジアの時代」への配慮があると推測してるんです。下記をみてください。


1981年:1988年のオリンピック開催都市がソウルに決定

1984年:日本のお札から伊藤博文を含む政治家が消える

1988年:ソウルオリンピック


ソウルでのオリンピック開催が決まった時、韓国を訪問する日本人が急増すると予想されました。

また、この頃から韓国人の経済力も高まり、ビザ発給条件の緩和も伴って、訪日韓国人の増加も予想されていました。その時期に、日本のお札から一切の政治家が消えたのです。

伊藤博文は韓国統監府の初代統監であり、日本の韓国植民地化のシンボルとも言える人物です。

彼を中国のハルビン駅で暗殺した安重根(アン・ジュングン)は、韓国では今もたたえ続けられる民族の英雄なんです。

日本が韓国と人の往来と交流を通して新しい関係を作ろうとしている時に、日本で最もよく使われているお札が「伊藤博文の千円札」ってのはいかにも使い勝手が悪いでしょう。

だって韓国人が日本に来て両替をするたびに、日本人が韓国を訪れて両替をするたびに、彼らは“その顔”を目にすることになるんだから。

これでは「日本は韓国併合を今でも功績と考えているのではないか?」と疑われてもしまいます。


上記は推測であり真偽はわかりません。

しかし私は、1984年に日本のお札から政治家が消えた背景に、ソウルオリンピック開催決定を機に日本がつきあう相手国が西欧国だけからアジアに拡大していく、したがってそのための環境整備が必要、という考えがあったと思っています。

そう考えると、今後、政治家や元首(天皇)が日本のお札に使われることは一切ないでしょう。


★★★


さて、海外に行ってその国のお札をみると・・・やっぱり多いのは“その国の政治家や元首である皇族”です。

それを観るたびなんだか複雑な気持ちにもなります。

海外では元首をお札に載せられるのに日本は天皇を載せられない。海外では国を興した政治家をお札に載せられるのに、日本は明治の宰相をお札に載せられない。

・・・世界には日本以外にも、「政治家も元首もお札に載っていない」という国があるのかな?? 文学者や研究者、学者だけをお札に載せてる国って他にあるのかしら??


というわけで、各国のお札には誰が載っているの?というのを調べようと思いましたが、おそらく現在その国にいらっしゃる方、よくご存じの方に聞いた方が早そう(だし正確そう)なのでブランク表だけ載せることにしました。

情報をご存じの方、お知らせ頂けるとありがたいです。国名は適当にリストしてますが、表になくても追加します。


よろしくお願いします!


追記)情報をお送り頂いた皆さんありがとうございました。頂いた情報を下記にまとめました。

全体を見るととてもおもしろかったので、こちらに“まとめ”エントリを書いておきました。そちらも是非どうぞ!



<紙幣の肖像画>

現在流通している最新のお札のみ対象。ただしユーロ採用国については“ユーロ前の最後の紙幣”です。

下記以外に情報をおもちの方は、コメント、ブックマークコメント、Twitter、などの方法でお送りください。


紙幣額名前職業タイプ
日本1000円野口英世研究者
日本2000紫式部文学家
日本5000樋口一葉 文学家
日本10000円福沢諭吉教育家、学者
アメリカ1ドルジョージ・ワシントン 政治家(大統領)
アメリカ5エイブラハム・リンカーン政治家(大統領)
アメリカ10アレキサンダー・ハミルトン 政治家、陸軍少佐
アメリカ20アンドリュー・ジャクソン政治家(大統領)
アメリカ50ユリシーズ・S・グラント政治家(大統領)
アメリカ100ベンジャミン・フランクリン政治家、学者
イングランド表すべて エリザベス女王 元首
イングランド裏 5ポンド エリザベス・フライ、社会活動家
イングランド裏 10,チャールズ・ダーウィン学者
イングランド裏 20アダム・スミス経済学者
イングランド裏 50ポンド ジョン・フーブロンイングランド銀行創始者、初代総裁
フランス(ユーロ前)旧20フラン クロード・ドビュッシー作曲家 
フランス旧50 アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ 小説家
フランス旧100 ポール・セザンヌ 画家 
フランス旧200 ギュスターヴ・エッフェル  技師、構造家、建築業者 
フランス旧500 ピエール・キュリー、マリ・キュリー夫妻  科学者 
ドイツ(ユーロ前) 旧5マルクマルク ベッティーナ・フォン・アルニム 詩人 
ドイツ 旧10マルク カール・フリードリヒ・ガウス 数学者 
ドイツ 旧20 マルク アンネッテ・フォン・ドロステヒュルスホフ 詩人 
ドイツ旧50 バルタザール・ノイマン 建築家 
ドイツ 旧100 クララ・シューマン 音楽家 
ドイツ 旧200 パウル・エールリッヒ 細菌学者
ドイツ 旧500 マリア・シビラ・メリアン 画家 
ドイツ 旧1,000 グリム兄弟 言語学者・童話作 
イタリア(ユーロ前)旧1000リラ マリア モンテッソーリー 教育者 
イタリア旧2000 グリエルモ・マルコーニ 科学者 
イタリア旧5000 ヴィンチェンツォ・ベッリーニ 作曲家 
イタリア旧10,000 アレッサンドロ・ヴォルタ 物理学者 
イタリア旧50,000 ジャン・ロレンツォ・ベルニーニ 彫刻家、建築家 
イタリア旧100,000 ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオ 画家
イタリア旧500,000 ラファエロ・サンティ 画家、建築家 
スゥエーデン20Kr セルマ・ラーゲルレーヴ 小説家 
スゥエーデン50Kr ジェニー・リンド オペラ歌手 
スゥエーデン100Kr カール・フォン・リンネ 学者 
スゥエーデン500Kr カール11世元首 
スペイン(ユーロ前)1000ペセタ エルナン・コルテス、フランシスコ・ピサロ共に征服者 
スペイン2000 ホセ・セレスティーノ・ムティス 植物学者 
スペイン5000 クリストファーコロンブス 探検家 
スペイン10000 ファン・カルロス1世 元首(スペイン国王) 
ポストガル(ユーロ前)100エスクード フェルナンド・ペソア 詩人 
ポストガル500 ジョアン・デ・バロス 歴史家 
ポストガル1000 ペドロ・アルヴァレス・カブラル ポルトガル発見者(探検家) 
ポストガル2000 バーソロミュー・ディアス 探検家
カナダ5  ウィルフリッド・ローリエ  政治家  
カナダ10 ジョン・A・マクドナルド  政治家  
カナダ20 エリザベス2世女王  元首 
カナダ50ウィリアム・ライアン・マッケンジー・キング  政治家  
カナダ100 ロバート・ボーデン  政治家  
オーストラリア5  エリザベス2世 元首  
オーストラリア10  バンジョー・パターソン  詩人  
オーストラリア20  マリー・ライビー女性実業家  
オーストラリア50  デイビッド・ユナイポン  先住民アボリジニの作家  
オーストラリア100  ネリー・メルパ  オペラ歌手  
オーストリア(ユーロ前)20シリング  モリッツ・ダフィンガー  芸術家  
オーストリア50  ジークムント・フロイト  哲学者  
オーストリア100  オイゲン・フォン・ベーム=バヴェルク  経済学者  
オーストリア500  ローザ・マイレーダー  女権活動家 
オーストリア1000 エルヴィン・シュレーディンガー  学者
オーストリア5000 カール・ラントシュタイナー  学者
ロシア100 アポロンの像 神話の? 
ロシア500 ピョートル1世の像 元首(皇帝?) 
ロシア1000 ヤロスラヴ1世の像 古代キエフの大公
ロシア5000 ムラヴィヨフ・アムールスキィの像帝国時代の伯爵
中国100、50、20、10、5、1 毛沢東 政治家 
韓国5万ウォン 申師任堂 女流書画家 
韓国1万ウォン 世宗大王 元首(王) 
韓国5千ウォン 李珥 政治家、儒学者 
韓国1千ウォン 李滉 儒学者 
北朝鮮100ウォン 金日成首領様 
北朝鮮1ウォン洪英姫 女優(首領様の愛人? 後継者の母??=国母?? 
台湾100台湾ドル孫文政治家
台湾200(普及度4番目以下)蒋介石政治家
台湾500, 1000, 2000電波望遠鏡、小学生児童、野球チームなど肖像画以外 
香港香港ドル中央銀行ではなく、香港上海銀行、スタンダードチャータード銀行、中國銀行の3行が発行。香港ドル紙幣には通常3種類のデザインがある!?? http://twitpic.com/20pxpo ビーナス?? ライオン http://bit.ly/dm0bhk 
シンガポール10000、1000、100、50、10、5、2ドル ユソフ・ビン・イサーク 政治家(初代大統領)
マレーシア10ドルトゥアンク・アブドゥル・ラーマン 初代アゴン(国王)  
フィリピン100ペソ Manuel Roxas 政治家(大統領) 
フィリピン50 Sergio Osmeña 政治家(大統領) 
フィリピン20 Manuel L. Quezon 政治家(大統領) 
インドネシア2,000ルピア アンタサリ王子 カリマンタン島の王子 植民地時代にオランダと勇敢に戦った国民的英雄?
インドネシア1,000ルピア パティムラ 18世紀にオランダと戦った英雄
インドネシア2,000 アンタサリ王子 カリマンタン島の王子 植民地時代(19世紀)にオランダと勇敢に戦った英雄
インドネシア5,000 トゥアンク・イマム・ボンジョル 19世紀にオランダと戦ったイスラム聖職者
インドネシア10,000 マフムド・バダルディン2世 19世紀にオランダと戦った国王 
インドネシア20,000 オト・イスカンダル・ディ・ナタ 独立戦争の英雄 
インドネシア50,000 イ・グスティ・ングラ・ライ 独立戦争の英雄 
インドネシア100,000 スカルノ、モハマド・ハッタ独立戦争の英雄 初代大統領及び副大統領 
ベトナム100VND(ベトナムドン)、200、500、1,000、2,000、5,000、10,000、20,000、50,000、100,000、500,000 どんだけインフレ??ホーチミン 革命家、政治家 
タイランド20、50、100、500、1000バーツ表すべて プミポン国王元首
タイランド10、20、50、100、500バーツ裏ラーマ5世、ラーマ8世、ラーマ4世、ラーマ5&6世、ラーマ3世元首
インド10,100,500ルピー ガンジー 政治指導者
トルコ全部(表) ケマル・アタテュルク 政治家(建国の父)
トルコ(裏)5,10,20,50,100,200 アイドゥン・サユル,、ジャヒト・アルフ、ミーマール・ケマレッディン、ファトマ・アリイェ、ブフリザデ・ムスタファ・ウトリ、ユヌス・エムレ歴史学者、数学者、建築家、女性小説家・哲学家、音楽家、文学家
カタールリアル 建物、門など 雑学)1996年までインドルピーが使われていた??
エジプト モスク、神殿、スフィンクスなど歴史的遺物。肖像はない?昔はネフェルティティ(古代エジプト王妃)が載っていた?  
ケニア5、10、20、50、100シリング ジョモ・ケニヤッタ 初代大統領 
タンザニア1,000シリング ジュリウス・カンバラゲ・ニエレレ 初代大統領
タンザニア500、1,000、2,000、5,000シリング キリン?動物
アルジェリア1000DZD、500DZD、200DZD、100DZD200DZD=国内のlandmark、1000=遺跡壁画 
南アフリカ10 サイ(表)と羊(裏) 動物
南アフリカ20 動物 
南アフリカ50 動物 
キューバ1ペソ ホセ・フリアン・マルティ・ペレス文学者、革命家 
キューバ3ペソ チェ・ゲバラ 革命家 
キューバ5、10、20、50、100ペソ http://bit.ly/9Ak7tP に肖像画付きの紙幣画像あり。でも誰だかわかんない。が、カストロ議長はいないっぽい。 
メキシコ20ペソ ベニート・ファレス 大統領、政治家 
メキシコ50ペソ ホセ・マリア・モレロス 独立の英雄 
メキシコ100ペソ ネツァウアルコヨトル王 アステカ時代、テスココ王 
メキシコ200ペソ ソル・ファナ・イネス・デ・ラ・クルース 女流詩人 
メキシコ500ペソ イグナシオ・サラゴサ 将軍(軍人)
アルゼンチン$2 バルトロメ・ミトレ 大統領、ジャーナリスト 
アルゼンチン$5 ホセ・デ・サンマルティン 軍人、政治家、独立運動家 
アルゼンチン$10 マヌエル・ベルグラーノ 軍人・弁護士・政治家 
アルゼンチン$20 フアン・マヌエル・デ・ロサス 大牧場主、軍人、政治家 
アルゼンチン$50 ドミンゴ・ファウスティーノ・サルミエント 大統領、教育者・作家・軍人 
アルゼンチン$100 フリオ・アルヘンティーノ・ロカ 大統領、軍人 
ブラジルレアル表 女神の彫刻?  
ブラジルレアル裏 アマゾンの動物各種  
チリ500ペソ ペドロ・デ・バルディビア 探検家・征服者 
チリ1000 イグナシオ・カレラ・ピント 軍人、国民的英雄 
チリ2000 マヌエル・ロドリゲス 弁護士、革命家 
チリ5000 ガブリエラ・ミストラル 女流詩人 
チリ10,000 アルトゥロ・プラット 海軍軍人 
チリ20,000 アンドレス・ベジョ 詩人 
ペルー200ヌエボ・ソル サンタ・ロサ・デ・リマ カトリックの聖人  
ペルー100 ソル ホルヘ・バサドレ・グローマン 歴史学者  
ペルー50 アブラアム・バルデロマル・ピント 作家・詩人  
ペルー20 ラウル・ポラス・バレネチェア 歴史学者・外交官  
ペルー10 ソル ホセ・アベラルド・キニョネス・ゴンサレス 軍人  
ペルー1991年に100万分の1のデノミ実施前は“インティ”。その時期の50インティ NICOLAS DE PIEROLA 政治家(大統領)

(注意)上記はネット上で様々な方からお送り頂いた情報を表組みの中にリストしたものです。

私はその情報の正確さについて担保できません。

なんらかの用途で情報を使われる場合は、その点をあらかじめご了承いただき、自己責任でご使用ください。


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http://d.hatena.ne.jp/Chikirin+personal/  

2010-06-25 本の感想)人間交際術

久しぶりにナイスな本に出会ったのでご紹介

人間交際術 (智恵の贈り物)

人間交際術 (智恵の贈り物)


ドイツの貴族階級に生まれた作家、アドルフ・F・V・クニッゲさんが書いて 1788年 ( 222年前!)に初版がでてるんですが、上記は日本語への翻訳本です。

いわゆる“処世術”的なアドバイスがいくつかの大分類の下に列挙してあります。

見開きの右ページにひとこと、左ページにはそのちょっとした説明が掲載されているという体裁で、アドバイスは全体で 100項目以上あるかな。

字がでかくて読みやすいです。

翻訳なのでイマ一歩日本語がこなれてないところもありますが、アドバイスの内容がなかなかいい感じ。

森鴎外氏もこれを読んで感動して本を書いたんだって。その気持ちはよくわかります。

私はあまり「どうやって人と巧くつきあうか」みたいな本は読まないのですが、この本は(タイトルは“交際術”ですが)どちらかというと「我が身を振り返る」系の話が中心で、とてもツボにはまりました。


ひとつご紹介すると、

成功をみせびらかさない


順風満帆なときも、それをあまり声高に話してはいけません。成功、富、才能を見せびらかすのはやめましょう。自分より優位にたっている人を、文句も言わず、嫉みもせずに受けいられる人はまずいません。


同じ理由で、人にあまり親切にするのも考えものです。とうてい返せない借金をした相手からは逃げようとするのが人間の性なので、寛大すぎる支援者は避けられてしまいます。


また、仲間の目にはあまりよくできた人だと写らないよう気をつけなさい。彼らはあなたに多くを求めるようになり、たった一度要求を断ったなら、たちまちそれまでに受けた数え切れない恩を忘れてしまうでしょう。


ちきりんのツボにはまったのは、この“ぶっちゃけ感”です。

前にも書きましたが、ちきりんは“人間のエゴにまみれた汚さ”が大好きなんです。

聖人君子みたいな人を信じてないし、「あなたが相手のことを親身になって考えれば、必ず相手も・・・」みたいなきれい事系の処世術には全く心動かされません。

この本の内容がおもしろいのは、「所詮、人間なんてこんなもんなんだから」というぶっちゃけ感をベースにアドバイスが組み立てられていること。上記の例でいえば、

「自分より優位にたっている人を、文句も言わず、嫉みもせずに受けいられる人はまずいません」というのもそうだし、「ものすごくお世話になった人、ものすごく助けてもらった人」って、(失礼な話ではあるのだけど)確かになんだか近寄り難くなりますよね。


最後の、ずうっと助けてきたのにたった一回断ったら、というのもまさに真実だと思います。

人間ってのは世話になったことはすぐに忘れるが、何かを断られたことは一生覚えてますから。。

そういう人間の身勝手さを理解した上で、こう振る舞うべきよ、ってのが展開されてて、読んでて笑えるし(恋愛、結婚、離婚についてのアドバイスもかなり笑える)、日頃の我が身を振り返えって反省するきっかけになりました。


ほかにも、

何よりも、たとえば相手があなたに恩義があるとか、何らかの世話になっているとかで、あなたの頼み事を断れない立場にいて、しぶしぶ頼みを聞き入れるしかないとわかっている場合は、どんな頼み事をしてもいけません。

っていうのも、ほんとその通り。それに続く次の文章も笑える。


しかしながら、人は相手が望んでいない親切や、自分が与えることができない奉仕なら大安売りするものです。浪費家は金銭を、能なしは助言を与えたがります。


私も気をつけねば・・。それにしても 200年以上も前に書かれた処世術が参考にできるなんて、人間ってなんて進歩しない生き物なんでしょう。

寝る前にベッド脇で読むとか、トイレで毎日ひとつ読むとか(!?)、身近に置いて定期的に読むとよいかもです。

ただし人にプレゼントするのは、とても嫌みになるので全くお勧めできません。あくまで“自分のために”読む本です。


f:id:Chikirin:20150810175729j:image:medium

そんじゃーね


http://d.hatena.ne.jp/Chikirin+personal/  

2010-06-22 “所有”という時代遅れ

資本主義経済の特徴のひとつが「私有財産制」にあるように、これまでの経済発展の中では、「より豊かになる」とは「より多くを所有すること」でした。

食料から始まって、衣服、家電、車、家、不動産、(一夫多妻制においては)妻、お金、会社(生産手段)と、何でもより多くを所有している人が“豊かな人”“豊かな生活を送っている人”であると認識されてきました。

ところが、世の中は今、より所有しない時代へ向かっています。

より所有しない生活こそが、より豊かで高度に発達した生活スタイルなんだと。そういう時代に向かっている気がします。


最近は個人が自分の蔵書をデジタル化するのが流行ってると聞きますけど、それ以外でも、基本的にすべてのものが「非所有(非保有)」の方向に動いているんじゃないかな。

・持ち家より、賃貸を住み替える。

・マイカーを持つより、レンタカーやタクシーを利用する。

・本を持つより、必要に応じて図書館などで借りるか、ダウンロードする。

・音楽CDや映像DVDを所有せず、借りてきたり、必要に応じてDLする。

・冠婚葬祭用の衣服(ウエディングドレス、式服、パーティドレス)やブランド品のバッグも買わずにレンタルする。

・家具のレンタルも流行っていると聞いた。ソファやベッドから家電までなんでもレンタルできる。

・スーツケースなど旅行用品も買わずにレンタル。

・スキー、ゴルフなどのスポーツ用品も同様。

・自分のパソコンにアプリケーションやファイルをもたずに、すべてクラウドサービスを使う。

・企業も正社員を所有せずに、派遣で労働力を借りてくる。



よく考えれば、大学生の教科書なんか毎年新入学生が新しい本を買う必要はないよね。

大半の本はみんな授業が終われば処分するでしょ。

卒業後もずっと持っていたいと思うような教科書はせいぜい数冊では?だったら、デジタル化された教科書ファイルをiPad用に購入して所有する必要さえない。


学生が必要なのは「教科書の必要箇所を読む」という使用価値だけなんだから、その“使用料”を払えばいいのであって、紙だろうとデジタルファイルだろうと「自分用」として所有する必要はないんだよね。

大学だとまじめな人のノートを借りてコピーすることもあると思うけど、そういうのもノートをとるのが巧い人がそれをサーバーに保存して、見たい人が一定の使用料を払って利用する、というのもアリだと思う。

全員が全員、“自分のノート”を所有する意味とか別にないでしょ。


そもそも「なんで所有する必要があるのか」「所有することの合理性はなにか?」と言えば、所有することによって「いつでも使用できる」からですよね。

でも、デジタル化される情報は、ネット上に存在すればいつでも使用できる環境になるから所有の必要性がなくなっちゃう。

デジタル化されないものだって、上記にかいたように“レンタル”、“一時的に借りる”という仕組みさえできれば、所有する必要はない。

みんな、今、自分の身の回りにあるものをざっと見回してみて下さい。

目に入るものすべてを「貸してくれる」という商売がもし実際に存在してたら、それでも「いや、これは借りるのではなく、どうしても自分で所有したい」と思うものってなにかありますか?

テレビもパソコンも数年のレンタルでいいし、ソファや机やベッドも引越のたびに運ぶより、レンタルで揃えておいて、引越時には新しい部屋に合うサイズや雰囲気のものをあらためて借りる方が合理的。

そうなれば所有するものは、ごくごく身近な日用品(最低限の食器、下着、普段着、布団)など、衛生的に他人と共有はしたくないもの、非常に消耗が早いものに限定されるのじゃないかしら。

しかも家具や家電なら、新品のレンタル、二次使用品のレンタル、三次使用品のレンタルと、同じ商品でもレンタルされるたびに価格が落とせるから、数十万円のイームズのロングチェアを三次使用で格安レンタルみたいな市場も作れるし、初めて一人暮らしを始める人の初期コストもすごく安くできる。


実は「所有する」のは、伴うリスクやコストが非常に大きい。

都会では家賃など保管スペース確保費がバカ高いし、火事や盗難で消失するリスクもある。

子供を撮りためたビデオテープなんてメディアの世代交代がおこると観賞さえできなくなる。(もしくは多大な変換コストが必要。)大半のものは長く物理的に所有してると、ホコリがたまったりメンテが必要になるし、今や家具も家電も捨てるにもお金がかかる。

それに、多くの家具や家電はまだ使える段階でリサイクルされずに廃棄処分されてしまうから、エコの観点からも負担が大きい。

つまり“所有”ってのは、すごく不便で、原始的で、無駄の多い“使用価値の確保の手段”だと思うわけです。

結局のところ消費者、生活者としては“いつでもどこでもの使用価値”だけが確保できれば、それを確保する手段は“所有”以外の方法でもいいんだよね。

“所有”より合理的な使用価値の確保方法が普及すれば、そっちの方がよいでしょ。


なのでまずは、

(1)できる限りのものをデジタル化

(2)できる限りのものをクラウド化

(3)できる限りのものをレンタル可化


した方がよいよね。昔は「共産主義は私有財産を否定」みたいな話があったけど、「今こそ資本主義も所有の呪縛から解き放たれるのだぁ!」みたいな感じで。


子供の写真やビデオ、書いた絵やお習字などの作品なんかも、押し入れの半分以上を占拠するほど(しかも四半世紀にわたって)ため込んでる家は結構あると思いますが、あれもデジタル化して外部サーバーに保存しとけば、帰省した時に祖父母宅のテレビにこの前の運動会のビデオを呼び出して観賞することができる。

もっといえば、そんなビデオをすべての親が必死で撮影する必要さえない。

数人のプロのカメラマンが学校の各行事をくまなく撮影する。もちろん個々人の子供にもたっぷり時間をかけてね。

で、そういうビデオが全部どこかのサーバーに保存されている。その学校に子供が通う父兄はアクセス権をもらってて、自分の家でも祖父母の家でも、持ち歩いてる端末でも、いつでもそれらを見る、もしくは誰かに見せることができる。

サーバーにアクセスすれば、“運動会 2010、音楽会 2009、卒業式 2008”みたいな映像リストがイベント毎に整理されているんで、好きなモノを見て、料金は見た量に応じて払う、と。

いや、どうしても自分のカメラで自分の子供だけを撮影したいというなら、それも一緒に保存しておいてもいいけどね。

というわけで、所有というのが「実は非効率な方法だよね」ということになれば、「趣味としての所有という行為」が、所有の中心的な目的になるんじゃないかな。

いわゆる“コレクター”ですね。「俺にとっては、使用価値じゃなくて、所有価値にこそ意味があるのだ!」という人が一定数存在するんだろうな、ってことはわかります。

それはなくならない。でも、ごく普通の人にとっては「使用価値の確保手段として、所有という形態を選択する意義」はどんどん低下していくだろう。

そしてそのうち、「昔はみんな必死で働いて、より多くを所有しようと頑張っていたんだよ。

あの頃は借りるっていうシステムが整ってなかったから、使用するには所有するしかなくて、不便な時代だったんだ」みたいな。そんな話になるんじゃないかな。


もちろんお金だけは例外だという意見を否定するつもりはないけど、この国には田畑を売り払った多額のお金を「所有」はしているものの、全く「使用しない」という高齢者もたくさんいて、いったいみんなそういう状態をうらやましいと思っているのかどうか。

お金だって結局は「所有より使用できる人」をうらやましいと思うでしょ。


そういえばバブルの頃には「レンタル家族」みたいなサービスが報道されてたけど、ああいうのもおもしろいと思う。

敬老の日に孫をレンタルとか、バレンタインに彼氏レンタルとかね。

家族や友人をレンタルとかいうとまた人道的、人権的に云々みたいな話になるんでしょうけど、アルバイトとしてもおもしろいと思いません? 

「週末ヒマだったから、話し相手に、ちきりんを 2時間レンタルしてみた」みたいな。で、ちきりんはアルバイト料として時給 3000円頂きます、とか。

もっと有名な人を 2時間くらいレンタルして、自分とその人の対談番組を ustream で作っちゃうとかもありですよ。高そうだけど。


f:id:Chikirin:20150810175729j:image:medium

そんじゃーね。


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参考図書

新・片づけ術「断捨離」
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人生がときめく片づけの魔法
近藤麻理恵
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2010-06-20 補足)自殺率国際比較

先日「自殺の男女格差」というエントリ(こちら)を書きました。そこでわかったのは、日本において、


(1)男性の自殺率は、女性の2.5倍以上である。

(2)男性の自殺は1998年以降急増しているが、女性の自殺は過去30年大きくは増えていない。

(3)経済的な問題と仕事に関する理由で自殺する人は男性10人にたいして女性ひとりと男女差が極めて大きい。

という3点でした。


“縦と横”というエントリに書いたように、分析の基本は時系列変化と他者比較なので、自然な流れとして次のような疑問がでてきます。

・男性が女性より多く自殺するのは日本だけ? 経済的理由での自殺の男女比がこんなに大きいのは日本だけ?

・1998年に男性の自殺率が急増して、その後高止まり(もしくは“頭打ち”)なのはなぜ?1998年より前も、経済的理由での自殺にはこんなに男女差があったの?

このうち、海外の男女の自殺率についてはネット上のあちこちにデータがあったので今日はそれを載せておきます。


下記は、こちらのページのデータから、調査時期が2000年以降(10年以内)の国だけを選び、その中からちきりんが国のイメージがわかるところだけをリストにしてます。(自殺率は人口10万人あたりの人数、男女比は、男性の自殺率が女性の率の何倍か、という倍数です)

中国はデータが1999年のものしかなく(10年以上前の中国なんて余りに今と違うし、統計も信じられるやら不明なので)入っていません。

なお、

・日本を含みアジアの国は青系

・西側欧米国はオレンジ系

・ロシア、元共産国系はグレー

・南米ラテン国は緑系に色分けしてます。


まずは「自殺率の高い順」に並べたのが下記の表です。

ご存じのようにロシア(&ここでは省略されている元共産国の小国)に続き日本の自殺率は国際的にも非常に高い水準にあります。西側先進国ではぶっちぎりの一位です。


自殺率が高いのは、

・元共産国

・アジアの先進国


自殺率が低いのは、

・南米ラテン国(西側欧米国に分類されてるイタリア、スペインも低い)


欧米の中では北欧諸国の自殺率が高く、南欧の国は概して低いです。シンガポールが自殺率が低いのがアジアの先進国としては例外値なんですが、もしかして「罰金」があるのかな?(冗談です・・)イギリスも低いですね。


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なんやかんやおもしろいですね。

★★★

さて、次に「男女比率の格差が大きい順」に並べ替えてみました。すると、日本の自殺の男女比(2.6倍)は実はそんなに高くない、ということがわかります。しかも男性の方が多く女性より自殺するのは、他国もほぼ全部同じです。(男女比の数字は全部の国で1を超えています。)

というか、女性が男性より多く自殺する国は(統計の信憑性がイマイチな11年前の中国のデータ以外には)見つかりませんでした。ほー、そーなんだ。


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この二つ目の表を作ってみて驚いたのは、「アジアの国って自殺の男女比がみんな低いんだ!」ってことです。表の上の方には青い色がないでしょ。自殺率の高い日本や韓国も自殺率の低いインドやシンガポールもいずれも、男女の自殺比率格差は大きくありません。アジアよりも欧米、共産国、南米などの方がもっともっと「男性が女性より多く自殺する」のです。


しかも、自殺率自体は低かった南米ラテン国の多くで男女の自殺率格差がすごく大きい!(上の方にグレーの元共産国と並んで、南米、緑系の色が多くなってるでしょ。例外はペルーのみ)

なんでーーー?


おもしろーい!!!


けど、たかがブログのためにこれ以上時間使う気もないので、今日はここまで。後は学者の方にでも頑張ってもらいましょう。


そんじゃーねーー!

2010-06-16 自殺にみる男女格差

自殺に関するデータを見ていたら、自殺って男女差がすごく大きいんだと知って驚きました。

下記のグラフは、1978年から2009年まで、過去30年ほどの男女の自殺比率です。縦軸は「人口10万人当たりの自殺者数」で単位は“人”、青線が男性、赤線が女性です。一目で「男性は女性より圧倒的に自殺率が高い」とわかります。男性は女性の倍以上の比率で自殺するのです。


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  (2009年の自殺者実数では、男性23,472名、女性9,373名の合計32,845名)


しかも女性の自殺率は過去30年で、大きく変ってはいません。最近よく「自殺が異常なペースで増えている!」と聞きますが、実際には「日本では、男性の自殺が異常なペースで増えている」というべきなのです。男性の自殺率は過去30年で6割増であり、特に1998年くらいからは男性だけ急増しています。*1

「なぜ男性の自殺がこんなに増えているのか」、同じ資料に男女別の自殺理由もあったので見てみました。この資料によると、自殺者の74%以上について、遺書などで自殺原因がわかっています。その、自殺理由がわかっている人について、一人最大3個の理由を挙げて、その数を集計したデータがありました。それによると、大きく分けて自殺の理由は4つに分れます。


ひとつは経済状態や仕事が原因となるもの。倒産、生活苦、負債、失業、事業の不振、仕事疲れ、職場環境の変化や職場の人間関係によるものです。

2番目は人間関係によるもの。家庭問題(親子や夫婦の不和、家族の死亡や子育て・介護の悩みなど)と男女関係(結婚、失恋、不倫など)です。

3番目が健康問題。身体的な病気の他、うつ病による自殺も含みます。

4番目が学校問題とその他。


で、男女別にそれぞれの項目が自殺理由と考えられる人の数をみてみると下記のようになります。

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(上述のように複数要因での自殺があるため、合計は人数より多くなっています。)


よく「自殺の原因で一番多いのは健康問題」と言われます。確かに男女合計では健康問題での自殺が一番多いです。しかし、実は男性に限ってみれば健康問題より経済・仕事関係の理由での自殺の方が多いのです。上記棒グラフをご覧ください。

すぐにわかることは、経済的な理由で自殺する男女差の大きさです。全体に男性の方が自殺する人が多いので、すべての要因で男性(水色のバー)の方が高くなっています。しかし、他の理由では男女差はせいぜい倍程度ですが、経済的理由で自殺する人は、男性10人にたいして女性1人という割合で男性が圧倒的に多いのです。驚くべきデータですよね・・・

経済・仕事問題での自殺が、健康問題での自殺より(男女合計として)少ないのは、女性がお金や仕事のために死なないからです。また、経済的な理由での自殺男女比がここまで違わなければ、全体での男女の自殺比率格差もかなり縮小することでしょう。


男性の人生ににとって、経済力や仕事がどれだけの重みを持つものか、重要なことなのか、再認識させられます。“女性にとっては全く「死を選ぶ理由」とはならないお金や仕事のこと”で、これだけの男性が死を選んでいるという現実。


・・・


ちょっとびっくりしたです。



元データ:http://www8.cao.go.jp/jisatsutaisaku/link/keisatsutyo.html

*1:追記:男性の自殺が急増した1998年頃の状況:1997年に北海道拓殖銀行、三洋証券、山一証券などが倒産、98年にも日本長期信用銀行が国有化されるなど、1997-1998年は日本の金融破綻の年。多くの企業がリストラに踏み切り、中小、零細企業では倒産に追い込まれたところも多い。

2010-06-13 今を守ることの愚

今回の政権交代に伴い、またもや郵政の再国有化法案が政局絡みで注目されました。記憶にも新しいように、郵政の民営化はほとんどそれだけを問うた選挙において、圧倒的な国民の支持を得て決まったことです。それらの国民の声をバックにした類い希なるリーダーが、強大な抵抗勢力を押さえて実現しようとしました。

にも関わらず、政権が交代するやいなや郵政は再度、国有化されようとしています。なんという巨大で強力な抵抗勢力なのか。驚嘆するばかりです。

そこまでして郵政民営化に反対する人(=郵政関係者)の、抵抗理由はなにかといえば、自分達の雇用が不安だということです。日本全国津々浦々にある郵便局、特に特定郵便局といわれる個人経営みたいな郵便局の多くは、日本郵政が民間企業として効率的な経営を始めれば閉鎖の危機に晒されます。そうなれば自分達は失業するので、彼等はなんとかして日本全国の郵便局という物理的な拠点を維持したいと考えています。自分達の仕事がかかっているのだから真剣になるのも当然かもしれません。

彼らの雇用を守ってくれる「郵便局という物理的な拠点」を維持するには、郵政が行う事業のうち、どれでもいいというわけではありません。郵政は金融(郵便貯金)、保険(簡保)、郵便事業の3つを行っていますが、このうち、金融と保険では「日本全国津々浦々の拠点」は必ずしも必要ありません。金融なんてネットバンクが可能だし、保険だってそのうちネットで買うのが当然になります。金融と保険業にはあんな多くの拠点はいらないのです。

一方、郵便事業を維持するという話になればどうしても全国の拠点が必要になります。年賀状や紙の手紙、小包を全国に配送するには、地方も含め郵便局という拠点が不可欠です。

だから、「雇用を守りたい→そのためには拠点を守る必要がある→そのためには郵便事業を決して潰してはいけない」、という理屈になるのです。


ところがこの「郵便事業」に未来がないことはあまりに明らかです。いまや手紙を書くのは高齢者だけだし、ビジネス小包の多くが民間の宅配便で配られます。年賀状だって毎年大幅な減少傾向です。雇用維持のためには郵便事業を存続させねばならないのに、その郵便事業の行き先は風前の灯です。

そこで亀井さんらが(かしこい官僚と共に)郵便事業を助けるために考えたのが、

Step 1) 金融・保険を郵便事業と再合体し、郵便事業の赤字を埋めやすいようにする

Step 2) 金融事業と保険事業が、今より大きく儲かるようにし、その余剰利益で郵便事業を助けられるようにする。

という方法であり、Step2が郵便貯金や簡保の預け入れ(購入)上限を引き上げる、という話です。


まとめれば、「自分達の雇用を守るために必要な郵便事業がこのままではもたない。だから未来永劫、金融や保険業に助けてもらえるよう、郵政三事業を再統合し、かつ、郵政の金融や保険が民間企業より有利になる仕組みを作っておこう」という思考の流れになっています。


この思考の問題はなんでしょう?この考え方の“最も残念な点”はどこにあるでしょう?


公的部門が、民間企業を苦境に陥れてでも自分だけは助かりたいと画策するその醜さももちろん問題ではありますが、最も残念な点は、「未来のない郵便事業を存続させるには、他事業から補助金をもらうしかない」と彼らが考えた点にあります。この発想は、「自分が生きていくためには、生活保護をもらうしかない」とか「わが社が存続するには、政府から補助金をもらうしかない」という発想と同じです。


自分が今やっている事業が将来性がないと感じた時に、民間で商売をやっている人なら「何か別の事業で将来性のある事業を見つけよう」となるのが普通です。ところが彼らは、「郵便事業の将来性が暗い。オレは仕事を失うかも!」と思った時、「では、他になにかいいビジネスはないか?」ではなく「なんとか誰かに(税金で)助けてもらえないか?」と考えるのです。絵に描いたような“親方日の丸発想”です。


以前のエントリ、「ネット消費時代のインフラ:物流・決済・窓口」にも書いたように、ちきりんはこの「全国津々浦々の窓口拠点」は、ネット時代にそれなりの価値を持ちうるビジネス資産だと考えています。

今は窓口で「貯金、簡保、郵便」しか販売していませんが、民間企業の商品やサービスの販売業務を受託して何でもどんどん売ればいいのです。そして販売手数料で儲ければいい。郵便局の拠点を民間企業が利用できれば、どの企業も一切販売網を構築せずとも日本全国で商品を売ることができます。売上に応じてそれなりの手数料を払ってくれるでしょう。

家電の修理取次ぎやリサイクル品の集配、弁当の宅配、通販の返品窓口、行政サービスの取次ぎなど、様々なサービスや商品の取り次ぎ拠点としても十分に可能性があります。こんな数のネットワークを日本全国に持っている会社は他にないのです。(コンビニは地方には数も少ない上、ロードサイドが大半で自宅までの配送機能も持っていません。民間の宅配会社は配送網だけをもっていて“窓口”を持っていません。)


郵政民営化案は、郵政を、金融、保険、郵便の3事業に分割するのではなく、“窓口カンパニー”も分離独立させるという案でした。この案を作った人は“窓口カンパニー”の事業可能性に気が付いていたということなんです。“日本全国津々浦々に拠点をもつという窓口拠点事業の可能性”が理解されていたのです。

だから、自分達の雇用を維持するために拠点を維持したい、という人たちは心配せずに、「この窓口拠点機能を使ってどう儲けるか」ということを考えればよかったのです。

でも、地方の郵便局で働く人達とその支持者達には、そもそも「ネットの時代」もよくわからないし、そういう時代に自分達の窓口拠点ネットワークがどんな価値を持てるかということも想像できない。だから「もうだめだから、誰かに守ってもらおう」という発想になったわけです。


以前に「子供の将来のために、自分の子供の足を切るインドの親」という話を書きました。その話はこの件とよく似ています。今、一生、郵便事業が“養ってもらえる”体制を作ろうとしている人たちは、自分達の“頼りない子供”が実は将来、大きな可能性のあるビジネス資産をもっているのかもしれない、とは考えもしません。

既存ビジネスが衰退期に入った時に、自分達の強みは何かと考え、それを活かして新しい時代における新たな価値創造に前向きにチャレンジしていたら、コンビニや宅配会社と戦える新時代の窓口拠点ビジネスが展開できたかもしれない。でも「一生養ってもらえる仕組みを作ろうよ」という方向に走ってしまえば、そのチャンスはなくなってしまいます。

未来の大きな可能性を潰してしまうのは、いつだって“将来が現在と同じだと思っている人達”だということです。郵政事業だけではありません。「先行きが暗い。なんとかして守らねば」と思った人に、未来はありません。未来は“攻めてこそ”明るくなるのです。


そんじゃーね。

2010-06-10 儲け方講座 (おちゃらけ編)

世の中には様々なビジネスがあり、いろんな儲け方があります。今日はその中でも特に効果的と言われる“3種の儲け方”について解説します。


1.できるだけ返させない

まずは金融分野。住宅ローンを貸している銀行、消費者金融会社、カード会社などの儲け方です。ここで最も重要な原則は、客に「できるだけ借金を返済させない」ことです。

たとえば、住宅ローン3000万円を2%の金利で借りて貰う場合、35年ローンで借りて貰えれば、総額1173万円の利子を払わせることができます。ところが20年ローンだと、利子は642万円にしかなりません。銀行の収入はなんと半分です。

下記の“ローン期間別の利子総額”でわかるように、銀行の収入はローンの期間が5年長いだけで150万円多くなります。客は金利には敏感ですが返済期間には鈍感です。30年ローンか35年ローンかにこだわる客は多くありませんから、長めに設定させる(できるだけ長く返させない)ことは難しくありません。

だいたい「オレは3000万円のローンがある」と言う人は、それが元本の額であって利子が別だと認識さえしておらず、「で、利子は総額いくら?」と聞くと答えられない人がたくさんいるんです。


<金利 2%、ボーナス払いなし、元利均等で貸した場合>

ローンの年数 元本総額(万円)利子総額(万円)
35年 3000 1174
30年 3000 992
25年 3000 815
20年 3000 642
15年 3000 475
10年 3000 312

上記は、三井住友銀行のこちらのサイトで計算したものですが、もちろんこの“利子総額”は自動的には表示されません。


また、「35年ローンを組んだ客が、繰り上げ返済で結果として20年で返す場合」と「最初から20年ローンを組んだ場合」では、前者の方が、利子総額=銀行の収入は相当大きくできます。なので、「長めに組んでおいて、余裕があったら繰り上げして下さいね」と前者のパターンを勧めましょう。

「できるだけ返させない」は消費者金融でも同じです。12ヶ月より24ヶ月、それよりは36ヶ月と、できるだけ長く分割払い期間を設定させましょう。そうすれば利子総額が大きくできます。

カード会社の場合も、月に10万円の買い物をする客が一括払いであれば一円も利子が入りません。3回の分割払いであれば、3ヶ月は返して貰わなくて済みます。さらに月に1万円のリボ払いなら10ヶ月も返して貰わなくてすみます。(=10ヶ月分も利子が稼げます)

というわけで、まず「できるだけ借金を返させない」というのが、金融業の儲け方です。


2.できるだけ使わせない

次は、買った商品をできるだけ使わせない、という儲け方です。一番有名なのは切手です。各種の記念切手を発行し、コレクターアイテムとすることによって使わせないようにしましょう。

買った人が使わない場合、切手代のほぼすべてが利益となります。

インクジェットプリンターで印刷できる、“模様のかいてある小さな紙”を60円とか時には120円で売ることは、日本郵政だけに認められた国家特権です。

できるだけ使わせないようにするためには、「シート買いしてそのまま保存した方が価値が上がる」というような迷信を流布することも大事です。年賀状の当たり商品として発行し、“毎年集めたい気持ち”を利用するのも有効です。

最近では「お孫さんの写真を切手にできます」というサービスもありました。これなら、使わずに飾って置いておいてくれる可能性がぐっと高まります。最近は少なくなりましたが、テレホンカードも同じ方法で儲けようと頑張っていましたね。


もうひとつの“使わせない”売り方は、出来る限り“まとめ売り”をする方法です。英会話学校やエステショップなどに有効です。英会話クラスのチケットを50回分など大量に買わせます。

大幅ディスカウントをすれば、多回数のチケットを買う客はたくさんいます。なぜなら、最初だけは客もやる気があるので、飽きっぽい客ほど「最初にお金を払えば続くのではないか」などとアホなことを考えるからです。

しかし実際には30回くらいで辞めてしまう人はたくさんおり、英会話学校は残りの20回分の教師や教室の確保をしなくてもすみます。売上がすべて利益となるのです。

その他、スポーツジムや資格学校のコースも同じですね。資格学校などは、たとえば教室を借りる場合、ひとつの部屋は50名が学べる部屋、もうひとつの部屋は25名が定員の部屋を借ります。

ふたつの50人のクラスの生徒を募集する場合でも、時間差で募集すれば、一つ目のクラスは2ヶ月もたてば人が半分になっていますから、小さいお部屋で運営できます。こうすれば家賃も節約でき効率的です。大半の通信教育も数ヶ月後には添削課題を送ってくる人は半分に減っていますので、採点の手間は半分になると見積もっておけばよいです。

なお、大手の私立大学もこの方法を採用しています。教室は定員の7割くらいが収用できれば十分です。4月の最初の授業なんて立ち見がでてもいいのです。どうせみんなすぐにこなくなりますから。


3.使ってない時にも払わせる

3つめの儲け方は、“基本料金”で払わせることです。特に通信サービスなどの分野で有効です。基本料金で払わせれば、「使っていない人に払わせる」ことができるからです。

お金の支払い方には、使った分だけ払う“従量的な料金制”と、使っても使わなくても払う“定額料金制”があります。自分がヘビーユーザーの人は、定額制の方が圧倒的に有利に思うかもしれませんが、サービスが一般の人にも広く普及してくれば、実は使ってない、という人が増えてきます。すると、全体としては基本料金として毎月定額を払わせる方が儲かるようになります。

自社のサービスを使った人に料金を払わせるのは当然です。しかし儲けるためには、「サービスを使っていない人に、いかにして払わせるか」が大事なのです。


この方式が有利である理由はいくつかあります。

退会までに数ヶ月の不使用期間が生じる・・・以前使っていたサービスを使わなくなった場合、多くの人は解約するまでに数ヶ月のインターバルをあけてくれます。

たとえばジムの月会費、運動やダイエットが3日坊主で終わってしまい、来なくなってしまった人でも、「今月は忙しかったからな。来月から再開しよう」とか言ってずるずると2ヶ月くらいは払ってくれます。

ようやく3ヶ月目になって「全然行かないのにずっと払うのはもったいない」と気がつくのです。多くの人がこういう「解約までのためらい期間」をおいてくれます。業者から見ればこれは「丸儲けの数ヶ月」です。

また、多くの人は年に1ヶ月くらいサービスを使わないことがあっても、面倒なのでイチイチ解約しません。たとえば一ヶ月語学留学をする、1ヶ月仕事で出張をする、病気で数週間入院した、などの場合に、ケーブルテレビ視聴料、ネット接続料、携帯電話のオプション費用、固定電話の契約を停止する人は少ないです。

また、携帯電話も音声しか使っていない人はたくさんいて、それでも大半の人は月額300円のネット接続基本料の解約をしません。

「たかだか月に300円だし」と思うのでしょうが、年間3000円以上を、サービスを使わないのに払ってくれる客がたくさんいるので、これもめっちゃ儲かります。さらにいえば、この方法(見てない人に払わせる)で一番儲けているのはNHKですね。


というわけで、以上、3つの儲け方(おちゃらけ)を解説させていただきました。重要なので復唱しておきます。

1.金融の場合、お金はできるだけ返させない。

2.サービスについては、できるだけ使わせない。

3.通信料、受信料は、使っていない時にも払わせる。


大事なのでしっかり覚えておいてくださいね!

2010-06-09 「iPad脳の恐怖」の恐怖

6月8日、関西版の朝日新聞の声欄に下記のような読者からの投書が載っていました。投書したのは51歳の大学教員で京都在住とのこと。

タイトルは「iPad 高まる期待と懸念」で、前半はごく普通にiPadへの期待が書いてある文章。後半が「懸念」についてなのですが、何を懸念してるんだろうと思いつつ読んでみると下記のようなことでした。


その一方で教育に携わるものとしては、iPadなどの情報端末を教育分野に応用しようとする動きには複雑な心境だ。ワンタッチで解説、映像、音が現れる環境になれた子供は、文章の行間を読んだり、物事を深く考えたりする力を自ら養っていけるだろうか。思考を深める道具としての情報端末の使い方を、教える側も論議する必要があると思う。


サイバーの世界にどっぷりつかって育った子供の姿を想像すると、私は少々恐ろしさを感じるのである。


でた〜!


半年以内に「iPad脳の恐怖」とかいう本が発行され、iPadのせいで思考力が衰えた子供の例などが“教育に携わるものの意見”として日本全国から報告されるに違いない。テレビのワイドショーも大騒ぎ!



こわーーい!!

なにが?



なお、すべての社会事象を“おちゃらけ”視点でしか見られなくなる“おちゃらけ脳の恐怖”にも気をつけたい。


そんじゃー






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追記)“関連つぶやき”をご紹介。添付の画像(URL)がめちゃおもしろい。噴きだせますよ。


追記2)タイトルを「朝日新聞社脳の恐怖」とすればよかったかも?

「新聞の世界にどっぷりつかって育った子供の姿を想像すると、私は少々恐ろしさを感じるのである」みたいな。

2010-06-07 20年を彷徨う

ひとつ前のエントリで、自民党が税金(機密費)を使って、野党や新聞記者、評論家などを買収していたという話を書きましたけど、ちきりんは必ずしもこの件について誰かを糾弾したいわけではありません。

この話には、平野貞夫氏も話しているように、前提となる「近代史の背景」があります。1945年の終戦の後、すぐに世界は“アメリカの仲間である資本主義陣営”と“ソビエトの仲間である共産主義陣営”に分かれます。

1949年には中国が共産国家として成立し、翌年には朝鮮半島で両陣営が熾烈な戦いを始めました。続いてベルリンには着々と壁が築かれ、1960年からはベトナム戦争も始まっています。日本でも1970年あたりまでは学生の政治運動も盛んでした。アメリカやイギリスのような高度に発展した資本主義国ならともかく、日本を含め、戦争で焼け野原になり既存の価値感が崩壊した国、元々貧しい国では、いつどこが共産国家になっても不思議ではなかったわけです。

そんな中、1955年に保守大合同で生まれた自由民主党の最重要ミッションは、「資本主義国であり続けること、アメリカ陣営の一員であり続けること」でした。経済発展さえそのための手段に過ぎなかったとも解釈できます。日々の生活が改善すれば、多くの人が「資本主義の方がよい」「アメリカについていく方がよさそうだ」と思います。だからアメリカも日本を一生懸命支援してくれたわけです。

その大目的のために沖縄の土地を米軍に提供するのも当然だったし、核の持ち込みにぐちゃぐちゃいわないのもあたりまえでした。そして、野党や言論人を金の力で骨抜きにし、くだらない社会運動が盛り上がらないようにすることもまた、政権与党の大事な仕事だったのです。

経済成長期だったとはいえ、1960年、70年には今よりも貧しい人がたくさんいました。格差だって今より大きかった。それでも、貧困問題を真剣に追求し、大企業優遇策を本気で問題視する野党もマスコミも現れませんでした。自民党による巧妙であからさまな「野党、言論人、飼い慣らし策」が功を奏したのでしょう。

今の政権をみているとわかるように、日本には社会主義的な志向の人がたくさんいます。それでもこれまで日本がソビエトや中国の陣営に入ることなく、資本主義国家として(少なくとも昨年の9月まで)やってこれたのは、これらの裏の施策のおかげともいえるでしょう。機密費は国益を守るために使われたのです。

なので、そういう環境下でのああいった慣行を糾弾するのは先日のエントリの主旨ではありません。ちきりんはただ、世の中がどういう仕組みで動いているか、どう回っているのかが書きたいだけなんです。

★★★

さて、しかしながら客観的に見て、日本が共産国になる可能性は1980年代あたりでほぼ無くなりました。遅く見積もっても1991年のソビエト連邦崩壊後にはそんな可能性は皆無になった。だから1990年以降日本は、政治体制や国の運営の在り方を(戦後体制から)一新する必要があった。

ところが、1990年から20年たった今でもまだその変革が起こっていません。小沢さんらが自民党を離党したのは1993年、これが「今までとは違う体制が必要」と考えた人の最初の動きです。でもこの時は一般国民はまだその意味がよく分かりませんでした。だから彼らの動きも支持されなかった。“too early”ってやつです。次が2001年の小泉政権の誕生の時で、この時は国民も「今までのままじゃだめだ」と痛感していた。多くの人が「今までとは違う仕組みが必要」と思いました。

ところが結局この20年、“冷戦体制の次の仕組み”を日本は作れていません。旧体制は中央集権体制、土建政治、派閥制度、官僚依存政治など様々な形で深く日本社会に埋め込まれてしまっていて、「時代が変わったのはわかってるけど、やっぱり自分だけは変わりたくない」という人達の抵抗力も想像以上に大きい。しかも、ぐずぐずしているうちにリーマンショックが起って、いきなり日本は社会主義的な大きな政府に向かおうとしている。


戦後からの流れを図にするとこんな感じです↓

f:id:Chikirin:20100605232116j:image


本当は、1945年〜1991年の45年間の体制は、その終焉が見えてきていた最後の10年(1980年〜1990年)の間に打破してしまい、1990年からは新しい体制に入らなければならなかった。それなのに、1990年から既に20年、私たちは「次」を模索しながら彷徨っています。下手するとさらに10年以上も彷徨うのかもしれない。それとも45年間続いてきた体制を壊すのに45年間かけるつもりなんでしょうか。


大変なこった。

そんじゃーね

2010-06-04 機密費によるメディア・評論家買収について

今年の4月19日に野中広務さんがTBSのニュースで口火を切った官房機密費によるメディアと評論家の買収問題、今までも漏れ伝わっていましたが、野中発言の後、ジャーナリストの上杉隆さんが積極的に追っていらっしゃいます。しかし、問題の当事者が日本の新聞社であるため、新聞、および、新聞と仲のいい地上波テレビはほとんど掘り下げません。なので、そんじゃあ、ちきりんも一度書いておこうかなと。


まずは機密費自体の説明をwikiで見ておきましょう。

内閣官房報償費は、国政の運営上必要な場合、内閣官房長官の判断で支出される経費。内閣官房機密費とも呼ばれる。会計処理は内閣総務官が所掌する。支出には領収書が不要で、会計検査院による監査も免除されている。原則、使途が公開されることはない。1947年度から予算計上されるようになった。2002年度予算で前年を10%下回る14億6165万円になって以来、2009年現在まで同額が毎年計上されている。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A0%B1%E5%84%9F%E8%B2%BB

つまり、機密費とは「内閣が好き勝手に使えて、何に使ったかも報告する必要がない国民の税金である14億円」です。“国会の運営上必要な場合”とは、具体的には、「野党対策費とマスコミ対策費」ということのようです。国会で自民党が何か法案を通したい場合、反対する野党や、世間を煽るマスコミを懐柔するための費用ですね。

より具体的に言えば、与党が、野党の議員を赤坂や神楽坂の料亭で接待する時の費用、その後、銀座のバーで呑ませる費用、その後、銀座の女性に彼らと共に一晩“泊まってもらう”経費などに使われます。

また、社会党など野党が地方大会や研修会(温泉旅行?)を行う時の費用としても支出されますし、外遊にいく政治家にもお小遣いとして配られます。(ちきりんの知る限り、社会党はたっぷり受け取ってますが、共産党は受け取ってないんじゃないかな。)

また、記者クラブが懇親会や親睦旅行をする際の費用も分担するし、有力な記者であれば、個人で引越祝い、出産祝い、結婚記念日祝いなどとして数十万円がもらえたりもします。

この辺の具体的な話は、週刊ポストの記事に詳しいです。バックナンバーが手に入らなくても、今後も記事は連続掲載されると思いますので関心のある方はそちらをどうぞ。


ところで「機密性の高い外交活動などに使われる機密費」、たとえばスパイ活動費や、国際機関で日本に投票してもらうための根回し・接待費用は、この官房機密費ではなく、外務省の同様の予算である外交機密費が使われます。

こちらも「どう使っても誰にもばれないお金」なので諸処の問題が起っています。公になった事件としては、2001年に発覚した外務省の機密費横領事件があり、詳細は下記のwikiをご覧ください。当時は、松尾克俊というAの具体名も報道されていたと思います。

Aは1993年10月10日から1999年8月16日まで外務省の要人外国訪問支援室長に在任し、46回の首相外遊を担当。9億8800万円にのぼる官房機密費を受領していた。このうち約7億円を詐取。そこから競走馬(大井所属)14頭、サンデーサイレンスの種付け権、ゴルフ会員権、高級マンション、女性への現金に浪費していた。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%96%E5%8B%99%E7%9C%81%E6%A9%9F%E5%AF%86%E8%B2%BB%E6%B5%81%E7%94%A8%E4%BA%8B%E4%BB%B6

完全な私的流用ですね。

なお、官房機密費、外交機密費の他にも警察にも同じようなお金があり、これも内部流用などの問題が指摘されています。

また、額的に大きい外交機密費からその一部を官房機密費に“上納”するという慣習があり、官房機密費は実は14億円よりかなり多かったようですが、この外務省の事件発覚後、2001年以降は上納はなくなったとのこと。

★★★

この問題については、5月19日(火)に朝日ニュースターの“ニュースの深層”(司会は上杉隆さん)でゲストの元参議院議員、平野貞夫さんも話されていたのでご紹介します。

囲んだところは録画を観ながら文字におこしましたが、会話言葉そのままではわかりにくいので、趣旨を変えないよう気をつけながら、書き言葉に直し、順番を整えるなど編集しています。

上杉氏:野中さんは「評論をしておられる方々にも盆暮れにお届けしていた。額もすべて(引き継ぎ書に)書いてあった。テレビで正義の先頭を走っているような人が、こんなカネを平気で受けとるのかと驚きました。返してきたのは田原総一朗さんだけです。」「1000万円とか3000万円を要求した評論家の人もいた」と書いてありますが、これは間違いないですか?


平野氏:はい、そう思います。それが官邸の慣行になっていました。私が国会対策をやっている副議長秘書の時は、月300万を預かって、記者クラブの主要な社の人達への支払いに使いました。


平野氏:羽田政権になった時に、当時の官房長官と自分が、今も活躍中の評論家の人と食事をすることになった。官房長官が急にこれなくなったので、お金のはいった封筒を私が評論家に渡すことになった。厚みでだいたいの額はわかった。先方もすんなり受け取った。


(上杉氏:記者クラブの記者への接待の内容は?)


平野氏:ちょっとした料亭(一流ではなく中級の料亭)で7,8人でご飯を食べ、銀座のクラブにいって飲み、女性と話がついて(事前に決めてあるので)・・という。で、朝、一番町にその人達が集合する、一緒に朝ご飯を食べて、というのを一月に一度くらいやっていた。一回の費用は、(昭和40年代で?)少ない時で20万円、多い時で30万円くらいです。


多くの有力新聞の中でそういう遊びの誘いに応じなかったのは朝日新聞の記者だけだった。私の世代から10年〜15年の時代には、類似の行為はあったと思う。各派閥の番記者は同じことをやっていたと思う。


上杉氏:国会対策だから野党に渡すのはともかく、新聞記者や評論家がそれを受け取るのはどうなのか?

平野氏:高度成長時代、昭和30年代後半から、日本の巨大マスメディアの記者がまともなジャーナリスムの役割を果たしていたとは思わない。日本の新聞社の姿勢は、近代国家のジャーナリストの姿勢ではなかった。彼らは権力の一員です。だから、1960年以降の政治運営において野党対策と新聞社対策というのはある意味同じことです。評論有識者も、自民党からお金をもらうのは当然だった。これは日本の政治文化です。

平野氏:日本のメディアの大半は国から土地を払い下げてもらい、会社を構えているし、ずっと権力と一緒に日本の運営をやってきたんです。個人の記者にお金を渡したこと以上に、会社全体として権力と二人三脚でやってきたわけです。

米ソ冷戦終結までは、社会主義に指導される政権を日本に作ってはいけないという思いが強かった。だから自民党、野党やメディアを堕落させるための活動として、僕らはそうやってきたんです。

★★★

ところで、昨年の政権交代がおこった2009年の9月、自民党最後の河村建夫前官房長官(当時)は、選挙で負けた直後に(=政権交代が決まった後に)、2億5000万円の内閣官房報償費(官房機密費)を引き出しています。それが何に使われたのか、民主党もマスコミも“もちろん”追求しないし、誰にもわかりません。政権を降りることが決まってから2億5000万円引き出す・・・すごいですね。


長くなるので今日はここまでにしましょ。


<関連サイト>

・週刊ポスト掲載号(バックナンバーに関してはコメントを参照してね)

 http://www.zassi.net/mag_index.php?id=51&issue=27617


・野中さんの暴露内容が引用されてる上杉さん出演番組の一部(生々しいです)

 http://www.youtube.com/watch?v=TrSIHYr3zkI

 同記事:http://www.asahi.com/politics/update/0430/TKY201004300449.html


・平野貞夫氏のインタビューはこちらでも。http://news.livedoor.com/article/detail/4798056/


・2000年05月31日号にフォーカスという写真週刊誌が掲載した、「極秘メモ流出!内閣官房機密費をもらった政治評論家の名前」という記事には、下記のリストが掲載されたようです。この額が年に2回(盆暮れの付け届け)なので10年もらえば結構な額ですね。税金もかかりませんし。=脱税してるはず? ただし野中さんは「田原さんだけはつき返した」とおっしゃってます。

 竹村健一 200万円

 藤原弘達 200万円

 田原総一郎 100万円

 俵孝太郎 100万円

 細川隆一郎 200万円

 早坂茂三 100万円

 三宅久之 100万円


そんじゃね。

2010-06-03 混乱Loverから一言

鳩山由紀夫首相の辞任に関して


次は福島瑞穂氏に首相をやってもらったらどうかな。文句ばっかり言ってる人には、一回、自分でやってもらうに限る。とりあえず普天間の海外移転だけでいいから責任持ってやってくれ。


混乱ラバー的視点だと、次の首相として望ましいのは、3位 渡部恒三最高顧問 2位 亀井静香氏、1位 田中真紀子氏。番外は柔ちゃん。


上記の中で8ヶ月以上勤め上げる寿命と根性があるのは柔ちゃんだけ。

しかも「首相と競技生活は両立可能」とか言いそう。


施政演説ではもちろん「首相でも金!」

(“カネ”じゃないですよ、“キン”って読んでね)



郵政国有化法案と派遣改悪法案が今回の国会で成立しない可能性がでてきたことが、鳩山首相の最大の功績だと思うです。


次の首相の公約として望ましいのは、1.社会主義ではなく資本主義を目指します。2.最低でも1年は辞めません、かな。最初の条件を充たさないという点で、菅直人氏には反対です。


次の首相は、口蹄疫の本土感染後の対応が遅れて半年で辞任、2番目の首相は、北朝鮮が打ったミサイルが日本海に落ちて漁船が撃沈されたのに、外遊を辞めなかったという理由で半年で辞任、3番目の首相は、日本が次のギリシャとして目を付けられて国際的な円売りが始まったのに全く対応できず辞任・・・とかやってると、あと3年の間に6人の人が首相になれるんだから、岡田さんも前原さんも急がなくてもなれますよ!


鳩山氏が唯一守る可能性のある公約は、「首相を辞めたら政治家を辞める」ってやつなんだけど、でも実行は3年後だから本当に守るかどうか不明な感じ。3年もあったら“天の声”とか聞こえそうだ。


別に全然、首相とか続ける必要性もないんだよね、この人。大金持ちだし。人生は楽しく生きた方がいい。「やってみたら、あんまりおもしろい仕事じゃなかったんだよね」って感じなんだろうな。


小沢・原口ラインはなかなかおもしろい。そう言えばこの二人、最近、顔が似てきた。2人ともブルドック系。


原口さんって誰だって? 宝くじの存続を必死で主張してる人ですよ。すごいな、未だに、強固な既得権益擁護視点を持ち続けてる希有な政治家ですね。

http://mainichi.jp/select/seiji/news/20100525k0000e010044000c.html


この期に及んで何のプレゼンスも示せない“みんなの党”に期待できる人の脳天気さが、ちきりんも欲しいだよ。


舛添さんってのは、こういう時に何が得かを必死で考えたあげくに、もっとも貧乏くじを引くタイプのエリートだよね。


鳩山邦夫氏がまたもや「兄弟新党」を言い出してるのが、とても素敵で超期待!ブリヂストンの株価さえあがれば最強の財力だし。兄弟力を合わせて株価をあげてほしい。


鳩山由紀夫氏は、20年後“私の履歴書”に、「私の首相在任期の最大の功績は、小沢幹事長を辞職に追い込んだことだ」とか誇らしそうに書くんだろうとおもう。そんなこといばっててどーするよ、と今からつっこんでおこう。


あと、「最後に温家宝首相と会えて嬉しかった」とかも書くかもね。それはよかったですね、と言っておこう。




こうやってみると、小泉純一郎氏がどんだけすごい人だったのかが、ほんとよくわかる。



そんじゃーね

2010-06-01 革命=支配層の逆転

「革命」とは何でしょう? どういう条件があれば、私たちはそれを「革命」と呼ぶのでしょう?

「産業革命」や「IT革命」という言葉はよく聞きますが、火を使えるようになったことや、電話の発明について、「火革命」、「電話革命」とは言いません。

また、フランス革命、ロシア革命とはいいますが、明治革命ではなく明治維新だし、中国に関しても、ロシアと同じように共産革命を実現したはずなのに中国革命とはあまり言いません。「辛亥革命」や「文化大革命」の方がよほどよく聞きます。


こういう例を見ながら、「何を革命と呼び、どういう場合は革命とは呼ばないのか」と考えてみると、「権力の交代が起こった場合」のみ革命と呼んでいるように思えました。

今までの支配者層が没落し、それまで抑圧されていた層が権力を握る。支配者と被支配者のふたつの層が逆転したら革命と呼ばれるのです。


たとえばフランス革命、ロシア革命では、支配者層である王侯貴族層が没落し、一般市民や労働者が権力を掌握します。社会の支配者層の交代が起った。だから革命です。

明治維新は、英語で“restoration”、復帰とか復古というニュアンスの言葉が使われているように、「天皇に権力が戻った」と解されていて、権力層が逆転したわけではなく、「天皇→将軍→天皇」に戻っただけです。大政奉還ってまさにそういうことですよね。だから革命ではなく維新。別に庶民に権力が移行したわけではありません。


中国の場合も、共産党国家の樹立の際、中国共産党が戦って勝った相手である中国国民党は権力者ではありませんでした。第二次世界大戦後の混乱の中で、共産党と国民党が争ったわけですが、それまで権力の座にあったのは彼らのいずれでもなく日本であり欧米列強でした。なので国民党に勝ったことを「中国革命」と呼ぶのは馴染まないのでしょう。

その前の辛亥革命では、“清朝”という王朝・帝政が崩壊して共和国に移行したわけですから、まさに革命です。また文化大革命も、権力の座にいて社会を率いていたエリート、知識層を完全に排除して、貧農や社会の底辺の労働者層に権力を奪還しようという運動なので「革命」なわけです。


産業革命も、もし起こったことが技術革新だけであったなら「革命」とは呼ばれていなかったでしょう。あの時は、技術の大変革に伴って、社会の権力層も変化したのです。

端的に言えば、「不労所得で食べていた層=領主である王族・貴族」が没落し、「工場を作り、事業を興して食べていく層=企業家、資本家」が現れて、彼らから権力を奪いました。


「チャタレイ夫人の恋人」という有名な小説がありますが、あの小説の時代背景はまさに産業革命が起こりつつある時期です。

小説の中で貴族達の会話には、「最近、企業家どもの羽振りがよくて・・」とか、「なんと名門の○○家が破産したらしい」などという話題がでてきます。チャタレイ夫人が馬車の中から見る風景も、「最近は工場や労働者が増えてきて町の様子もすっかり変わってしまった」と描写されています。

この小説の中心テーマは、女性の、性を含む人間性の解放なんですが、その背景として“食わねど高楊枝的”な貴族文化と、“見栄や外聞にとらわれず、人間としての感情を取り戻していく女性”が対比されており、産業革命の勃興と共に様々な意味で崩壊していく貴族社会が描かれています。

結果として産業革命は、貴族層を社会の支配層から引きずり下ろし、爵位を持たない平民層の企業家達が権力をもつ時代の幕開けを演出しました。だから「革命」なのです。


実はちきりんは「IT革命」について、つい最近まで、なぜこれを「革命」と呼ぶのかがわかっていませんでした。火や電話と同様に画期的な技術、ツールであることは確かでしょう。でも、便利になっただけでは革命とは呼ばれないはずです。「火革命」という言葉がないのは、火が権力の移行(逆転)を起こしていないからです。

たとえば、ネットの普及によって旅行代理店や本屋など流通・仲介業の多くが廃れようとしています。でも、そんなのは「権力の移行」とは言い難いですよね。だって、そもそも今まで流通・仲介業者が権力者であったわけではありません。

ネットで起業が容易くなったので、資本家から起業家に権力が移行するのか?とも考えたけど、これもいまひとつです。

なぜなら起業家が今まで「抑圧されている層」であったか?というと、決してそんなことはないからです。日本は昔から松下幸之助氏や本田宗一郎氏などのすばらしい起業家が生まれている国であり、「IT革命前は起業家は抑圧されていて成功できなかったが、IT革命により権力をつかむことができた」わけではないです。

IT革命というからには、「今まで権力をもっていた層が崩壊し、反対に、抑圧されていた層が権力を握るはず」なのですが、「何から何に権力が移るのか」という点が上手く言葉にできずもやもやしていました。


でも最近それがようやく明確になってきました。ITもやはり「IT革命」と呼ばれる条件を備えています。それは確かに「権力の移行」を起こそうとしています。今まで権力を持っていた層が崩れて、今まで抑圧されていた層に権力を移すことになるでしょう。これはまさに「IT革命」と呼ぶべきなのです。


具体的に「何」から「何」に権力が移行するのか、という点については、それぞれの人が自分の言葉で表現してみてください。

興味深いのは、今は、自分はどちら側にいるのかさえ、わかりにくい時代だということです。チャタレイ夫人の時代なら、自分が貴族なのか、そうでないのかは明確でした。しかし今はこの革命で没落する人と、新たな支配層につく人は見た目では区別さえつきません。


当時の貴族達は、庶民が暴力をもって貴族制を打倒する革命については怖れていましたが、まさか新しい技術や産業の勃興が、権力を貴族層から奪っていくとは思っていなかったでしょう。

しかし現在は、権力側にある人の中にも「IT技術によって権力の移行(剥奪)が起るかもしれない」と恐れる人は少なくありません。だからこそ彼らは抵抗しています。私たちは今まだこの革命の渦中におり、IT革命はまだ完遂していないのです。

フランス革命、ロシア革命のような政治的で暴力的な革命の他に、産業革命やIT革命のような「技術が起こす権力層の移行」という革命が起りうるのは、とても興味深いことです。私もこの革命の先行きをとても楽しみにしています。


そんじゃーね