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Chikirinの日記 RSSフィード

2010-08-04 人生の有限感

堀江貴文さんの人生論を読みました。彼の生き方、考え方の基本がよくわかるおもしろい本でした。

特に最初の方に“小さい頃に突然、人はいつか死ぬんだと意識した”とあったのが印象的でした。起業家の人でコレを言う人、多いですよね。


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スティーブ・ジョブズも突然の重病で余命を宣言されてから神がかってきたし、ソフトバンクの孫正義さんも若い頃、起業した直後に大病で入院しています。

楽天創業者の三木谷さんは故郷の神戸で大震災があったことで、「人間、いつ死ぬかわからない」と感じ、大企業を退職して起業したとインタビューでおっしゃっていました。

堀江さんの場合は特にそういう経験はなく、突然“死”という概念が降りてきて・・ということらしく、珍しいケースです。


この“人生の有限感”を手に入れると、人は生き方が変わります。

尋常じゃないレベルの働き方をしている人、自分のやりたいことに迷いのない人、徹底的にしがらみから遠い人、の話を聞いてみると、人生の有限感をもってる人がとても多いのです。


逆説的な言い方だけれど、彼らは不安を持ちません。

普通の人は不安をあれこれ想定して、やたらと人生に保険をかけます。

たとえば、「こんなことやったら収入がなくなるのではないか」「こんなことやったら友達に嫌われるのではないか」みたいに。

そして、そういう不安のためにアクセルを全開にせず、つねにブレーキに足をかけて人生を運転する。

進みたい道があっても、よく分からない道、先人の地図に載っていない道には足を踏み入れない。危ないかもしれないから・・・。


でもね。普通の人がそういった不安に怯えるのは、本当の不安を知らないからでしょう。

本当の不安は、人生が終わるという瞬間が、明日にもやってくるかもしれない、ということです。

それにくらべれば、それ以外の不安など質的に全く及ばないところにあります。

だから“死の意識”、“人生の有限感”のある人は、それ以外の細かい不安に怯えなくなる。何が大事かがわかってくるんです。


世の中には小さな頃から命に関わる病気や障害を抱えて生きている人もいます。

そういう子供達は、風邪やねんざくらいしか知らずに育つ大半の子供に比べれば、極めて早い時期に“死”というものを意識するのではないでしょうか。

そして彼らの人生観は(彼らがそれを外に出すかどうかは別として)そうでない人に比べ、圧倒的に成熟してるんじゃないかと想像します。


人が人生の有限感を得るきっかけは様々です。

自分の大病、ごく身近な人の死、自分が巻き込まれても不思議ではなかった大惨事、加齢(親の死んだ年齢を超えるなど)・・・

ですが今回、上の本を読んで「そうなんだー」と思ったのは、そういうきっかけがなくても“死”を意識する人もいるんだ、しかも小さい頃に・・ということでした。

それって結構すごいことだと思ったのです。外的な理由が無くても、自分の中でそれを理解したということだから。


70才とか 80才になるまで死を意識せず生きていけることが、ひとつの幸せな人生のパターンであることは否定しません。

そういう人生が与えられていたら、それはそれで素直に喜ぶべきでしょう。

同時に、若いうちにこの“人生の有限感”を手に入れると、生き方が大きく変わる、というのもまたひとつの肯定的なイベントなんじゃないかと、ちきりんは思っています。


いつ死ぬか分からない、人生はいつまで続くか分からない。

そういう意識が人を生き急がせ、くだらない世の中の常識に汲々と従う生き方に立ち向かう原動力となるのです。

なんとなく過ぎていく日常は、あたかもいつまでも永久に続くかに思えます。でも実際には、“終わり”は突然(そして当然)やってきます。

あなたが今やっていることは、余命 6ヶ月だと宣言されても、やっぱりこれをやろうと思えることか、とジョブズ氏は問いました。

余命が 6ヶ月であっても、今の生活を続けるか? と。


フランスの女流作家、フランソワーズ・サガンは、若くして小説が大ヒットし、大金持ちになりました。

当然のように彼女の周りには様々な思惑の人が集まります。良識ある大人達は彼女に忠告しました。

「つきあう人を選ぶべきだ。あなたの名声とお金にしか興味のない人とつきあうべきではない。あなたは騙されている。そのうちきっとひどい目に遭うだろう」と。

彼女は答えます。

「たとえそういうことが起って、眠れないほどつらくて悲しい日が週に 3日あったとしても、嬉しくて楽しくて眠れない日が 1日でもあるなら、私はそういう人生の方を選ぶでしょう」


他の作家の、「人生の傍観者になるな。自分の人生の舞台を、観客席からぼーっと見ていてはいけない。舞台に上がれ、演じるのだ」という文章も記憶に残っています。*1


人生の有限感を早い時期に手に入れるのは決して悪いことではありません。

だけど、中途半端な時期に手に入れるくらいなら、いっそ最後までそんなものとは出会わない方が幸せなのかもしれない。


誰かの人生ではなく、自分の人生を生きること。

周りにどう見られるかではなく、自分がやってみたい人生を送ること。

それだけが重要なことなのです。


そんじゃーね。


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*1:リルケの著作の中の言葉だと思うのですが、探せていません。もしご存じの方があれば教えて頂けると大変ありがたいです。ドレスデンが舞台の小説かエッセイだった記憶があります。