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Chikirinの日記 RSSフィード

2011-01-29 アラブの政変で負けようとしているのは誰なのか?

あちこちで大変なことが起こりつつあると感じます。すごいことが起ってる。


まずは現在進行形のエジプト。ここのところ連日、数万人規模の反政府デモが起き、警察隊が催涙弾などで鎮圧にかかっています。デモ隊は30年近い独裁体制をひいてきたムバラク大統領(なんと82歳!)の退陣を求めてます。

大変なことが起っている、というのは、このデモの背景に、インターネット、そしてネット上のサービスであるツイッターとフェースブックが大きな役割を果たしているからです。

大規模デモはツイッターやフェースブックを通じて呼びかけられたもので、真偽のほどはわからないけど、エジプトでは現在インターネットへの接続が停止されたとの噂も流れています。


このエジプトの反政府デモに刺激を与えたのが、先日起ったチュニジアでの政変です。ここでも20数年独裁を続けてきたベンアリ前大統領(74)が実際に亡命に追い込まれました。この時の反政府デモでも、ツイッターとフェースブックを通じて長期独裁政権への不満感情が共有され、デモへの機運が高まりました。インターネットやSNS無しには起こりえなかった政変だと言われています。

チュニジアでの政変の成功に影響を受けて、エジプトだけでなく、ヨルダンやイエメンにも反政府デモが飛び火しています。どこも長く独裁的に政権を握っているトップのいる国です。

インターネットで、アラブ諸国に民主化革命が起りつつあるのです。アラブの盟主とも言える大国エジプトで政変が成功すれば、89年から90年にかけて起ったベルリンの壁崩壊、そしてソビエト連邦の消滅にも匹敵する、パラダイム変革といえるでしょう。


さて今、インターネットを活用したアラブでの反政府運動で、“倒されようとしている”のは誰でしょう?

ムバラク大統領やベンアリ前大統領などの独裁者でしょうか?


ちきりんは違うと思っています。

これらの独裁者が、民主的な手続き(選挙など)も踏まず、数十年も政権を維持できたのはなぜでしょう?それは欧米が彼らを後押ししてきたからです。そして、欧米が彼らをバックアップしてきたのは、彼らが欧米に従順な政権であったからです。

欧米は、その現地政権が自分達に従順である限り、たとえ民主的でなくても、宗教的でさえあり独裁的であっても、彼らを支援してきました。反対に自分達に従順でない政権にたいしては、遠慮無く反政府勢力を支援して政情を不安定化させ、もしくは、直接的に爆弾を落として独裁政権を倒してきたのです。

ムバラク大統領など親欧米政権は、「イスラエルに刃向かわない」「欧米と敵対するイラクやイランと仲良くしない」などの欧米からの要請をすべてのみ、素直に従ってきました。イラクやイランを攻撃するための米軍の駐留さえ許してきました。だから欧米は、この独裁政権を支持してきていたのです。

一言で言えば、ムバラク政権を支持していたのは、エジプト国民ではなく“アメリカの政権”でした。今、デモによって打ち砕かれようとしているのは、その“米国政府の意思”なのです。

(余談ですが、今回の動きを“政変”とか“反政府デモ”と呼び、決して“民主化デモ”とも“革命”とも呼ばない日本のマスコミも、日本政府の立場をきちんと踏まえて報道しているといえるでしょう。)



現在、これらの政権はインターネットを利用した民主化デモにより倒されようとしています。こうなると欧米もあからさまに独裁者側の支援はできません。あれだけ人権だの民主化だの言ってきた手前、反政府デモ側を支援せざるを得ません。

しかし反政府デモによる政変が成功し、新たに政権をとるリーダーが、今までと同様に欧米に従順だという保証はありません。そもそもアラブ地域に「親イスラエル政権」が数多く存在していること自体が不可思議なことだったのです。民主的な手続きでリーダーが選ばれれば、アラブ諸国では「反イスラエル」政権が樹立されるのがごく自然です。


欧米諸国はこれに先立ち、wikileaksの挑戦も受けています。彼らが明らかにしようとしているのは「大量破壊兵器がある」という眉唾な情報に基づいて、石油のために世界中からイラクに軍隊を派遣するような先進国の“帝国主義的・覇権主義的な横暴”の舞台裏です。

欧米は、アラブを始めとする世界諸国において、「欧米に従順な政権であれば、独裁政権でも支持」し、「欧米に刃向かう政権であれば、いちゃもんをつけて爆弾を落とす」という態度を貫いてきました。

それがいま、前者が「ツイッターとフェースブックを利用した反政府デモ」によって、後者が「ウィキリークスによる舞台裏情報の開示」によって脅かされようとしています。

問われているのは、ムバラク大統領らの独裁体制ではありません。世界を牛耳ってきた“欧米レジームの世界体制”そのものなのです。

★★★


さて、今回の動きを世界で最も深刻に見守っているのは間違いなく中国でしょう。彼らがYoutubeからFacebookまで幅広くネットのサービスを禁止・抑制しているのは、まさにこういったネットワークにそういう力が備わっていることを理解しているからです。

アルジャジーラは、中国が既にインターネット上での“エジプト”という言葉の検索に制限をかけたと報じています。(Thanks to @yoichi427 ) → “Egypt not trending in China, Aljageera


脇の甘いアラブ諸国とは警戒感が違います。さすが天安門事件の経験者。しかし、今回の騒動をみるかぎり、中国も安泰とはいえません。海外在住(経験)の中国人も急増している中、いつまでこんなことが続けられるのでしょう。

国が国民のネット接続を広範に規制し、見られる情報を国家の都合のいいように限定している・・・そんな国が、そんな体制が、本当にまだ10年も20年も維持できると私たちは信じられるでしょうか?


中国は、経済発展をテコに民主化勢力を押さえ込んできました。毎年、生活は豊かになるのだから、民主化はちょっと待ってくれ、ということでした。

しかし一旦何かが起れば、人口も都市部の知識層の数も半端ではない中国でも、極めて短期間の間に政権転覆が起るかもしれません。


もしそうなったら?


長期政権は、たとえ独裁的、非民主的であっても、それなりに安定しています。チュニジアで政変が起りエジプトでムバラク体制が崩壊して、今後のこれらの国の政情が少々不安定になっても、日本への影響は限定的でしょう。


しかし、中国で政変が起ったら?

共産党独裁政権が倒れたら?

スムーズにすぐに次の政権が樹立され、民主的な選挙が行われるのでしょうか???内戦が起ったり、独立運動が勃発して大量の難民が発生したりしない?一体誰が、どんな人が民主化中国の、新生中国のリーダーになるのでしょう?


万が一、一時的にでも中国のあちこちで無政府状態が発生したら、日本企業、日本への影響は恐るべきモノとなるでしょう。そこに進出している多くの日本企業はどうなるの?、中国に住む日本人の安否や財産は?毎日毎日、輸出・輸入されている大量の物資は滞りなく流れるでしょうか?、中国から人が押し寄せる可能性は?




・・・・なんだか大変なことが起っている。と思うのです。



まあ、とりあえず今夜はアジアカップ決勝。



そんじゃーね・・・