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Chikirinの日記 RSSフィード

2011-05-21 エアコン設計にみる昭和的発想

先日来ご紹介しているエアコンの取り外しクリーニング

あの日、エアコンについていろいろ教えてもらったんだけど、中でも興味深かったのが最近流行の「お掃除ロボ付きのエアコン」について。


そもそも「エアコン内部がかなり汚れてる」ってことには昔から消費者も気がついていて、だからこそ洗浄スプレーや高圧洗浄など、エアコン掃除グッズ&サービスが大人気なわけです。

そりゃあわかりますよね。だって明らかにカビ臭いもん。フィルター掃除だけではキレイになってない。

でもエアコンを作っているメーカーは、今までそのニーズに全く対応してきませんでした。

「高圧洗浄でも洗浄スプレーでも、消費者の方で勝手にやれば?」みたいな感じ。

だからエアコンは「分解して洗浄し、再組み立てすることを前提としない造り」になっているわけです。


何かを組み立てたことのある人ならわかると思うけど、「一回組み立てたら、あとは壊すまで分解しないもの」と

「分解して再度組み立てることを想定したもの」は、設計段階から全く違います。

そして今のエアコンは、前者の思想で作られています。

だから素人が「分解して掃除する」なんて不可能だし、私が頼んだようなプロのお掃除屋さんでさえ、試行錯誤しながらの作業になります。


今回、作業を見学していて思ったのは「これって、設計図のないプラモデルをやってるのと同じだ!」ってこと。

最初にできあがり品をよく見て組み立て構造を理解し、その後にパーツを少しずつ外し、洗い終わった後、どの順番でどこからはめていくか、すべて試行錯誤しながらの作業です。

もちろんメーカーが違えば構造も部品も違う。

エアコンは 10年を越えて使われる商品だから、昔と今のモノもすごく違う。基本、分解して掃除するなんて「考えないでください」というのがメーカーの立場なのでしょう。


でもね、「なんでエアコンメーカーは、最初から分解クリーニングがラクにできるような商品設計をしないの?」でしょう。

彼らはエレベーターメーカーとちがって、メンテで儲けているわけではありません。

だったら「分解して掃除しやすいですよ!」という商品を売り出せば、儲かるんじゃないの?

今はアトピーの子供も多いし、ペットがいる家も多い。「丸洗いできるエアコン!」を付加価値として訴求するのは難しくないと思うんです。

ところがそういう商品は出てこない。

そして今になって彼らが出してきたのは、それとは真逆の「おそうじロボ付きエアコン」・・・


「構造をできるだけシンプルにし、分解、再組み立てしやすいエアコンを設計する」のと

「構造はめっちゃ複雑になり、分解も再組み立てもむっちゃ難しくなる「おそうじロボ付きエアコン」を設計する」のは、

設計思想が 180度違います。


これ、なんで後者になるんだと思います?

ひとつは素人に分解なんてして欲しくない。危ないから、ということでしょう。

でももうひとつは、「付加価値をあげるとは、付加機能を増やすことである」という昭和的価値観から逃れられていないからじゃないかな。


日本の家電はすべてそうなんです。

毎年モデルチェンジして、たとえ少しでも去年より高く売りたい。そのためには「なにか新機能を付けなくては!」と思ってる。


「よりシンプルにすることで、付加価値があがる」

「よりシンプルにしたほうが、高く売れる」

「付加価値とは付加機能のことではない」という考えができないんです。

これは、物不足の時代に育った人の典型的な発想です。

機能は多いほうがいい。機能は多い方が高級・・・昭和ってそういう時代だった。


欧州の家電のデザインが素敵なのは、機能を絞り込むからです。

デロンギのオーブンにはレンジ機能はついてないし、ティファールのポットに保温機能がありません。だから売れているんです。

これらは「機能てんこ盛り」の日本製品より高く売れたりします。

日本でも消費者は、「機能が少ないシンプル商品という付加価値」を認めているからです。

欧州メーカーでは、そういったことを理解する世代が商品企画の決定権をもっているのでしょう。だからそういう商品が日の目を見るんです。


一方の日本のメーカーでは、まだまだ「昭和的価値観のおじさん」が最終的な意思決定をしています。

だから「誰でも 3ステップで分解でき、簡単におそうじできるシンプルエアコン」ではなく、「超複雑マシン・おそうじロボ付きエアコン」を開発したくなる。


昭和的発想には業界分業の考えもありません。なんでもかんでも自社内に取り込みたがる。

「掃除はエアコン専門の外部業者がやればいい。そういう外部の業者でも掃除しやすい商品を開発するのが本当の顧客目線である」という発想はありません。

むしろ「クリーニング機能も、自社内で商品に組み込むことこそ物作り大国の矜持だ!」とか思ってる。

そういえば昭和の人は未だに「総合○○企業」が一番エライと思っているっぽいですよね。


おそうじロボ付きエアコンは、従来のエアコンに比べても圧倒的に内部が複雑です。

当然、壊れやすいし、壊れた時の修理も大変になる。

そんな商品にするから、メンテ体制の整った日本でしか売れない(世界で売れない)商品になってしまう。


わかってます?


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そんじゃーね


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