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Chikirinの日記 RSSフィード

2011-06-28 とある講演会の感想

この前とある講演会を聞きにいって、「人生がヒマだとロクなことにならない」、「人生に必要なのは希望とコミュニケーションのふたつ。これがないと厳しいってことだ」と思った。

よく「お金がないから老後が不安」とか言ってる人がいるが、そうじゃないと思う。お金なんかよりコミュニケーションの方がよほど人を救う。忙しければ人は不幸を感じるヒマがない。


時々、“40才近いひきこもりの息子を、70才近い母親が保険の外交や清掃業務に従事して支えている”みたいな話を聞くけど、あれって母親の方も“自立していない息子”のおかげで救われている。毎日やることがあってヒマにならないし、「自分がいないとダメだ」と思える相手がいて、グチや叱責も含めてコミュニケーションが生まれる。

子供が独立し、結婚して孫もできたけど、仕事で海外にいてほとんど帰ってこない。母の日と正月など年2回電話があるだけ(花は届くけど)、という状態で毎日一人でひがな暮らしている70才の母親とどちらが幸せか?と言われたら、おそらく前者だろうとちきりんは思ってる。「よくできた息子」は必ずしも親孝行な息子とは言えない。


人に希望やコミュニケーションを与えるのは、仕事と家族と個人の趣味の3つしかない。人生はこの3つで成り立っている。全部揃う必要はない。(というか、全部揃うのはむしろマレだと思う。)最低ひとつあればいい。ふたつあったらとても幸せだ。


日本は経済が停滞し、まずは仕事が“壊れた”。

社会には、なんの工夫も必要なく、なんの変化もない単調な仕事が一定数存在する。そういう仕事なしに社会は廻らない。そしてそういう仕事の数は、学生や主婦・高齢者パートなど「仕事に生き甲斐を見つける必要はない」人の数とバランスしているのが理想だ。

その反対側として、なんらかの面でおもしろいと思える変化のある仕事の数と、おもしろい仕事をしたいと思っている人の数もバランスしている必要がある。


ところが日本は1990年以降、全体として新しい「おもしろい仕事」を増やせていない。昔だったら個人はなんの工夫もしなくても、どんどん新しい仕事が増えていた。単調な仕事も技術と世の中の変化により進化を余儀なくされ、ずっとやっていてもそれなりに楽しめた。

今は多くの人が(おそらく一生このまま何も変わらないと思える)なんの変化もない単調な仕事をやらざるを得なくなっている。そういう仕事に「希望」を見いだすのは困難だ。じゃあ、自分でそうではない仕事を見つければいいじゃないかというのは正論だけど、そうできない人は一定数、必ず存在する。


昔はそれでもよかった。なぜなら家族に生き甲斐を見いだすことが(今に比べれば)圧倒的に容易かったからだ。とりあえず誰かと結婚させられ、とりあえず子供が生まれた。結婚や親になることにそんなに積極的でなかった人も、いやおうなくコミュニケーションをとる必要が生まれ、日々成長する“希望の種”(子供)と暮らすことが可能になった。これなら仕事はつまらないしくだらなくても、それはそれでいいと思える。

仕事も家族も、自分の生きる支えとなるものを手に入れるのが昔より圧倒的に難しくなっている。じゃあ、個人の趣味が充実していて、それだけで幸せに生きられるかというと、そういうものを見つけるのもまた、仕事や家庭を手に入れることと同様に難しい。収入が伸びない現在においては、それを見つけることも、より難しくなっているかもしれない。



どれも手に入らない、どれも手に入る見込みがない状態で、希望とコミュニケーションを失い、ヒマをもてあます人を、多くの「依存性エンターテイメント産業」が待ち受ける。アルコールしかり、パチンコしかり、競輪・競馬などの各種ギャンブル、FX、ショッピング、そしてゲームを含めたネットサービスもその一端を担ってる。

ご丁寧にそれらへの依存を持続可能にする“消費者金融”という仕組みも存在し、そのボトムラインが“自殺統計”に現われる。


ちきりんは「もう十分豊かだ。無理して経済成長なんてしなくていい。」という意見には全く賛成できない。船の上半分に乗っている人はそれでいいだろう。しかし、社会が成長し変化しなければ、船は下の方から順に沈んでいく。(実際もうかなり沈んでいて、大変なことになっている人が増えている。) 「自分は今くらいでいいと思う」というのはあまりに無邪気すぎる。


自分で創意工夫して努力して考えたら道は開ける!というのは正論だと思うけど、何にも考えずに社会の波に流されているだけで幸せになれた時代こそがいい時代だったと振り返られる。努力が求められることはもちろん、才能やセンスまで問われ、それらがなければ幸せになれない時代なんて、大変すぎる。


そんじゃーね