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Chikirinの日記 RSSフィード

2011-11-24 ギリギリまで「まとめに入らない」能力

会社で働いていた頃、「すげっ!」と思う人にたくさん会いましたが、ちきりんが一番感心したのが、「超ギリギリのタイミングまで、まとめに入らない人たち」です。

なんでもそうですが、何かを作り上げる時には「作る」+「整える」という二段階の作業が必要です。

最初の「作る」は「中心的な価値」を生み出す作業で、後半の「整える」は、生み出した価値をお客様に売ったり、見せたりするため、細部をキレイにし、体裁を整えて、パッケージする、みたいな作業です。

この「作る」作業から「整える」作業に移行することを、「まとめに入る」と呼びます。


たとえば締め切りまで10日間ある場合、基本的には「デキない人」ほど早くから「まとめ」作業に入ろうとします。一方で、自信のある人ほどギリギリまでまとめには入らず、中心的な価値を高めることに集中します。

中心的な価値を高めようという努力をやめて「整える」という作業に入ったところで、その商品(サービス)価値の絶対値が確定してしまいます。「整える」ことによって本質的な価値が上がったりはしません。

それは「見栄えを良くし、店頭で映え、見やすくなる」だけです。


たとえば10日後の締め切りまでに企画書を仕上げる必要があるとしましょう。こういった場合、「最初の9日間は全く「まとめ」を意識せずに思考をどんどん発散させ、考えることに集中する」という人がいます。

もうひとつは凡人と呼ばれるタイプの人で、6日目くらいからは「まとめ」を意識して「落としどころ」を探りに入ります。

この 2種類の人が生み出せる価値の絶対値が大きく異なるのは当然です。

能力の差ではありません。その差は、価値を高めるためにかけた日数の差です。

最初の人は 9日と、後者の 5日間の倍近い期間を「価値を高める」ことにかけているのだから、その成果価値も倍高いのは当然なのです。(実際にはたいてい能力レベルも違うので、最終的な成果レベルにはより大きな差がつきます。)


一般的に、自信のない人ほど早めにまとめたがり、自信のある人ほどぎりぎりまで本質的な議論や検討を続けようとします。

自信というのは、「整えるのは、最後の1日でもできる!」という自信です。早めにまとめに入る人はこの自信がありません。まとまりきらずに締め切りが来てしまうのが怖いのです。

だから、遅いタイミングで(たとえば 7日目あたりに)いいアイデアがひらめいても「今頃こんな根本的に違う案をもち出したら、まとまらなくなってしまう」と自己規制して、口にするのをやめたり、その新しい案にこだわることを止めてしまいます。

周りの人も 8日目くらいに出て来た「画期的だが、今からそれは間に合わないだろ?」みたいな意見を、それとなーくボツにしてしまいます。

一旦「まとめ」モードに入ると、全員にこういったメンタリティが働くため、本質的な価値を上げることが難しくなるのです。


だからこそ、「まとめモードに入る」タイミングをどこまで引き延ばせるか、どこまで「まとめに入らず我慢できるか」ということが、最終的な仕事の価値を決めます。

仕事のデキ、仕事力、というのは、この「最後にこれだけの時間が確保されていたら、オレはまとめてみせる!」と思える期間を、どれだけ短縮できるか、ということです。

最初はこわくて 6日だけを「作る」ために使い、締め切りの4日前からはまとめに入っていた人でも、ある時、なにかのきっかけで7日間は作ることに集中し、3日だけしかまとめに使えないという経験をしたとします。

それでも「なんとかなった!」という経験を何度か繰り返せば、その人はその後「最初から 7日は考える!」という姿勢に代わります。「 3日あればまとめられる」という自信を得るからです。

こういう「経験値」を積み重ね、「最後の最後まで本質的な検討をしていても、最後の1日でキレイにまとめられる自信を得る」ことが、「仕事がデキルようになる」ということだとちきりんは理解しています。


スキルのない人から見ると、いつまでもマトメに入ろうとせず、あれこれ発散するアイデアをいつまでも議論している人、全く落としどころを意識しない議論を締め切り直前まで続ける人のやり方は、時に怖く見えます。

「今からそんなこと言い出したら、まとまらないじゃん!?」と不安になり、ハラハラします。

でも、こういう人ほど、最後の最後で“さくっ”っとキレイにまとめてしまう能力を持っています。というより、最初からそこに自信があるから、そんなにギリギリまで「考えて」いられるのです。


でも恐ろしいことに、この対極のような仕事のやり方をする人や組織もたくさんあります。

日本の大企業の中には、10日後に何かを仕上げろ!と言われたら、「初日からまとめに入ってる」ような人さえいます。そういう人は、最初のミーティングで、「で、落としどころは?」とか言い出します。

スタート時点からまとめに入ってたら、なんら新しい価値は生まれません。既にあるものをコネクリまわしてキレイに整えて終わりです。

そういう人達は多大な時間を「まとめ」に使うので、見栄え“だけ”はいいモノを作ります。

しかし本当に怖いのは、彼らの多くがそもそも「自分達で新しい価値を作りだそう!」という意欲さえ(最初から)失ってしまっている、ということです。無意識のうちに「早めにキレイにまとまったものが出せれば、それでいいんでしょ?」みたいになってしまっているのです。


そういう企業や組織でキャリアをスタートするのは、結構やばいことです。「価値を創り出す」というスキルが全くつかないどころか、「初日からまとめに入る」のが正しいやり方だと覚えてしまったりすると、マジでやばいです!


ということについて書いたのが、下記のエントリです。

若者の将来価値を毀損する大きなワナ



そんじゃーね!


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