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Chikirinの日記 RSSフィード

2011-11-28 今、私たちが読むべき本

ちきりんは大きな選挙がある日は夜の予定をいれません。余程のことがないかぎり、家で選挙特番をみるようにしています。昨日も早めの夕食を済ませて20時にテレビのスイッチをNHKに合せました。

そしたら大河ドラマをやっていてびっくりしました。驚いて他のチャンネルを見てみましたが、地上波はどこも選挙報道をやっていません。

国政選挙の場合、NHKはもちろん地上波の大半の局が投票締め切り直後から選挙特番を始めます。なぜ昨日は一切そういうことがなかったのでしょう?


テレビ局は「今回の選挙は地方首長選であり、国政選挙ほど重要ではない」と判断したのでしょうか?

これは、最もいい方に解釈した場合の理由です。実際には彼らは、「社内規定で、“国政選挙は特番”、“地方選挙は速報&ニュースでカバー”と決まってるんで」的に、なんの判断もせず「今回は地方選だから特番無し」と決めたのでしょう。


その後テレビを諦めてネットを探すと、MBS毎日放送とUstでネット配信が行われていると知り、さっそくそちらを視聴しました。NHKはそのうち特番を始めるかな?と思い、消音で画面だけだしておきました。

ネットでは平松市長の(なにそれ?)みたいな会見のあと、松井新知事と橋下新市長の挨拶、そして記者との質疑応答が始まりました。それは、なんと9時から12時まで3時間も続いたのです。


ちきりんもツイッターをしながらフォロアーの方と一緒にその記者会見を見ていました。最初に驚いたのは、橋下氏の挨拶に全く「嬉しそうな」「浮かれた」「達成感」の言葉や感情がなかったことです。それは彼が「これから起こること」をよくよく理解していることを示していました。

次に印象的だったのは、彼が「できるかぎり民主的になろうとしていた」ことです。ご存じのように反対陣営は今回の選挙を「独裁」と「反独裁」という対立にしようとしていました。橋下氏は「独裁といわれようとも強く出なければならない時がある。」という気持ちを滲ませながらも、慎重にそうならないよう気を配っていました。

ひとつは、「市議会の決議が必要なこと」に関しては、質問者がいくら煽っても一切、断言しなかったことです。これを断言してしまうと「選挙で選ばれた議員を無視するのか?独裁だ!」という話になり、議会はすぐさま「審議拒否!」と言い出します。

さらに彼は、3時間にわたって記者の質問を延々と受け続けました。選挙戦を終え、彼がどれほど疲れていたかは、想像に難くありません。1時間でも十分でしょう。しかもこの記者会見を生放送している地上波テレビは皆無なのです。

(NHK@東京は大河ドラマのあと、少しだけニュースで大阪の選挙結果を伝え、その後は、原発の特別番組を放映しはじめました。なんでわざわざ選挙の日にそんな特別番組を流しているのか、ちきりんには全然理解できません。)

それでも彼は3時間、回答を続けました。


途中、聞き慣れた関西弁の言葉が飛び込んできました。知らない人には酔っぱらいの乱入に思えたかもしれません。それはざこば師匠でした。

ざこば師匠は(ちきりんも大ファンで)すごくナイスなおじさんですが、その質問は一瞬、場違いな、乱暴なものに聞こえました。

でも、橋下知事の回答とそれに続く会話を聞いて、ちきりんは理解しました。こういうのを受け止められて初めて地方の政治家ってつとまるんだな、ってわかったからです。こういう質問にきちんと答えられなかったら、政治家なんかできないんです。


ざこば師匠は「あんじょうしてくれるんやな!?」と大声で叫びました。彼は「もちろんです!」とか「まかしてください!」という威勢の良い言葉を聞きたかったのです。師匠は「強いリーダーの決めぜりふ」を欲していました。

でも、橋下氏はそういう「威勢の良い断言」をしませんでした。彼は、そういう回答をしたら自分がどう見えるか、わかっていたのです。


★★★


記者との質問、回答は延々と続きました。「生の記者会見がそのまま流されること」のメリットは、「報道の曲解を防ぐ」ということだけではありません。昨日の記者会見でちきりんが一番、意味があったと思うのは、「質問をしている記者のレベルが手に取るようにわかったこと」でした。

また、この記者会見を流そうとする地上波テレビがひとつもなかったことについて(ツイッター情報では大阪NHKでさえ、記者会見の全体ではなく、情報分析など“スタジオからの放送”をしていたとのこと)最初ちきりんは「ありえない!」と思いました。でも途中で、「地上波テレビがこれを流さないのは仕方のないこと。いや、むしろ、当たり前」と考えが変わりました。

第一に、この記者会見の内容はあまりに高度すぎて、地上波テレビが想定している視聴者のレベルには合っていませんでした。加えて、テレビ(および、他の既存メディアはどこも)「伝達するコンテンツの作り込み」に強いこだわりを持っています。

「作り込む」ことにこそ価値があると思っているし、「作り込みのプロ」だと自認しているのです。「生の情報をそのまま伝えるだけでは自分達の存在価値がない」と言うのでしょう。これは紙媒体も同じで、あの会見をすべて文字おこししてくれたら、それだけでバカ売れすると思うのですが、紙メディアにしてみれば「それは屈辱的なこと」なのだと思います。


ちきりんも「作り込みの価値」はよくわかります。それはそれですばらしい。しかしだからといって「生のコンテンツのもつ力」を無視したらお話にならないです。「メディア」とは「中間体」という意味です。その付加価値は「作り込みの巧さ」にあるのではなく、「最もすごいものを消費者に伝える媒体であること」です。ここを無視したら、「作り込み」はそれを生業としている人の職を守るための言い訳に堕してしまいます。

まっ、いずれにせよ、テレビには向かない高度すぎるコンテンツではありました。


これも含め、以前から「テレビ、大丈夫か?」的な徴候はたくさんありました。小沢さんの件もそうだし、エジプトの政変が確定的になった時、アルジャジーラのツイートでそれを知ってから、NHKが速報を流すまで数時間も(ニュース報道はさらに後)かかった時にも「こりゃーお話にならない」と思いました。

そして昨日、この3時間におよぶ記者との応答を聴いたことで、ちきりんはさらに決定的に「メディアの交代」を感じることになりました。私は3時間の記者会見が終わった後、お風呂に入り、寝てしまったんです。


なにが言いたいかって?

私はその後、もうテレビをつけなかったんです。


過去の選挙でも選挙報道をテレビで見ながら、ツイッターをやったり、ネットの速報を見ていました。でも、「テレビを見ずに、ネットだけで選挙報道に満足できてしまった」のは昨日が初めてだったんです。・・・これはちょっと覚えておきたいと思っています。「それは、私にとっては2011年でした」、ということを。


★★★


さて、長くなってしまいましたが、今日のエントリのタイトルに戻りましょう。

前回、ちきりんは「TPPより11月27日」というエントリで、この本を薦めました。

体制維新――大阪都 (文春新書)

体制維新――大阪都 (文春新書)


もちろん、今からでもこの選挙が何を意味するのか知りたい方は上記の本を読んで頂ければと思います。しかしその上でという前提であれば、今、私たちが読むべき本は、こちらです。↓

政治家の殺し方

政治家の殺し方


中田さんの本の感想は後日きちんと書きたいと思っているので、今日は詳しい内容には触れません。ただ、この本を読めば、大阪の新体制についてこれからマスコミが報道するであろうこと、市議会がやるであろうこと、市役所の職員がやるであろうこと、が手に取るようにわかります。


ちなみに、橋下氏と堺屋氏の本は現在アマゾンでは売切れです。あの本を紹介した時にはいっぱい在庫があったのに、昨日の選挙結果を受け、今日はすでに売りきれです。そして中田さんの本は今でも「在庫あり」です。

この本を読んでおけば、私たちはこれから「報道されること」の意味を理解できるようになるでしょう。そしてそれは、とても大事なことなんです。

別の言い方でいえば、

多くの人がこの本を読んでおけば、私たちは、「橋下氏の顔写真がちょんぎられた表紙の本」を読まなくても済むだろう、ということなんです。


そんじゃーね。