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Chikirinの日記 RSSフィード

2012-04-04 大企業を辞めるという合理的な選択

高度成長期以来つい最近まで(大半の人にとっては今も?)、大企業(公務員含む)に入社し、ずっとそこにいるというのは「合理的に考えて一番トク」な道だったと思います。


・金銭的な報酬が圧倒的に高い。(給与も退職金も企業年金も)

・磐石に安定してる(大企業だという理由で政府や銀行が潰さない)

・雇用も守られているし(日本で解雇規制が存在するのは日系の大企業だけ)

・仕事もおもしろい(名刺力も抜群、資本力も大きい)

・加えて様々なチャンスがあり(海外勤務とか大きなプロジェクトなど)

・世間の評価も圧倒的に高く(合コン市場や親戚間において)

・成長機会も多いし(留学や研修などの制度が充実)

・福利厚生も充実してる


と、いいコト尽くめです。これじゃあ起業したりベンチャーや中小企業に行くより、大企業を目指すのが「合理的に正しい選択」だと、ちきりんでさえ思います。


しかしながら最近、そういった大企業にいったん入社しながら、20代、30代で退職する人も少なくありません。

彼らはいったいなぜこの船を降りるのでしょう?その選択は、彼らにとって合理的な選択なのでしょうか?それとも彼らは単に「変わった人」であり、非合理的な選択をしているのでしょうか?

ちきりんには、明らかに前者に思えます。20年前に大企業を辞めた人は単なる「変わった人」(=非合理的な選択をする人)だったけれど、今そうする人は「彼らなりの合理的な選択」をしている。だから増えてるんです。

では彼らは上記以外のどんな点に価値をおいてその選択をしているのでしょう? ちょっと考えてみました。


<大企業を辞める人が重視する価値>

・通勤や服装に求められる規律からの自由

・働く時間や、個人生活を優先する自由(恒常的な長時間労働や有給休暇の取得問題)

「間欠泉的キャリア」で書いたようなキャリアの柔軟性

・組織の序列からの自由(若い人には長い下積みが求められる)

・やりたい仕事を“今”やることの価値


といったところでしょうか。こういったことを重視する価値観をもっている人には、たとえ高給で安定していても、必ずしも大企業が「絶対、手放すべきではないお宝」に見えなくなりつつあるのでしょう。

加えて、大企業価値として最初に挙げたうち、いくつかは明らかに揺らぎ始めています。

高給の代名詞だった業界でさえ40代の年収はピーク時から相当程度下げられているし、部下のいる役職に就けないまま遊軍として何年もすごすバブル期入社の社員もいます。事実上のリストラが始まった企業も少なくありません。

条件はいいけれど、アジアや中東の国への赴任から10年単位で戻って来れない人もでているし、市場の成長が終わった中で生き残るため、既得権益を守るため、的なくだらない仕事をする人も増えています。「ここ数年、仕事はリストラとコスト削減のみ」みたいな人も多いでしょう。

こんな環境では「これは違うよね・・」と思う若い人が出てくるのは当然です。


そしてもうひとつ、ちきりんが「若い人が大企業を辞めはじめている理由」として感じるのは、彼らにとって今の大企業の40代、50代が「すごい」と思えなくなっているのだろうということです。

ちきりんが就職した頃は、なんだかんだいっても20代半ばの新入社員と40代、50代で働き盛りの会社員の間には、圧倒的な実力(仕事力)の差がありました。情報や知識も、判断力も胆力も、さらに様々な経験知も。少なくとも私は、当時のそれくらいの年令の先輩を尊敬していたし、すごいと思えていました。

でも今の20代の人って、会社に入って今のそういう年代の人を見て、必ずしもそう思えないのではないでしょうか?入社3年くらいまでは、自分が余りに何もできないので、それでもそれなりに学ぶことがあるし、上の人は「すごい!」と見えます。

しかし今や数年も働けば、「あの人たちどうなの?」という点があれこれ目に付き始めます。ネットで調べればすぐ済むようなことに長い時間をかけたり、バカ高いコストをかけていたり。「そんなことも知らないの?」的なことも多々あります。

なにより不可解と思えるくらい意思決定が遅かったり、中身より権威を重視するなど、組織内には意味不明な行動がまかり通っています。また、枠にはまった考え方しかできなかったり、何でも否定から入る癖がついてしまってる40代も多い。若い世代からみて「なにこれ?」みたいな40代、50代は急増しています。


そして彼らは考えます。「こんな人たちが上にいっぱいいる会社の将来性ってどうなの?」と。それこそ、自分のアタマで考え始めるわけです。「もしかして、ここにいたら自分もああなっちゃうの?」と不安に思いさえするでしょう。

そこに「人生は一度!」「若い時は一回しかない!」と煽られ(誰に??)、「辞めるってアリでしょ」と思い始める人が出てくるわけです。

もちろん、(大企業に入った後の人さえ辞め始めているのだから、)就職段階で「大企業に入ろうと思えば入れるけど、行く気がない」という人はその何倍もでてきています。



まとめれば、

過去)大企業に勤め続けることは圧倒的に正しい、合理的な選択だった。

変化)しかし最近は、

・若い人に、大企業では提供されていないことに「価値」を見出す人が増えてきた

・大企業が提供しているはずだった価値にも陰りが見え始めた

・大企業に長くいる人が、若い人からみて「スゴイ!」と思えなくなってきた

・実際に大企業を辞めて楽しくやっている人たちが増えてきた!

ことで、

今)“せっかく入った”大企業を30代そこそこで退職してしまう人が増えてきた。

かつ、“入ろうと思えば入れるけど”あえて大企業を選ばない人も増えている。


この流れはもう止まらないし、これからどんどん大きくなるでしょう。個々人にとっては既に「自分はいつ決めるのか」だけの問題なのです。


そんじゃーね。