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Chikirinの日記 RSSフィード

2012-07-31 夏休み向けエンタメ本のご紹介

いよいよ7月も今日で終わり。夏本番ですね。

いつもは社会派の本ばかり紹介しているちきりんですが、実はエンタメ系の本も大好きです。もうすぐ夏休みだし、気軽に読めておもしろい本をお探しの方、どうぞご参考にー。



剣客商売 (新潮文庫―剣客商売)

剣客商売 (新潮文庫―剣客商売)

これは一冊読むと、止まらなくなり、次々と続編を読みたくなるほどハマってしまいます。江戸時代の小粋な主人公の生き方のゆるやかさ、自由さ、かっこよさに魅了されます。エンタメの名作シリーズ。



検屍官 (講談社文庫)

検屍官 (講談社文庫)

これも、おもしろいですよね−。シリーズ最初の5冊くらいは一気に読みたくなります。美人の女性検屍局長ケイが、猟奇的な連続殺人の謎を解き明かしていくシリーズ。人間くさい仲間達も魅力的。アメリカの犯罪事情なんかも学べます。



百万ドルをとり返せ! (新潮文庫)

百万ドルをとり返せ! (新潮文庫)

株で大損をした5人がその金額ぴったりを取り戻そうと考える笑える大作戦。英国人らしい(超くだらない)こだわり設定が余計に笑いを誘います。まさに「イギリス」の本って感じ。



日本以外全部沈没―パニック短篇集 (角川文庫)

日本以外全部沈没―パニック短篇集 (角川文庫)

日本“以外”が全部沈没したらどうなる? 日本が沈没するんじゃないですよ。日本以外が全部、沈没するんです。めちゃめちゃおもしろいです。おちゃらけ社会派の極地みたいな、ありえない設定が素敵すぎる。コ難しいアジア関係を笑い飛ばそう!



恋 (新潮文庫)

恋 (新潮文庫)

典型的ではない不思議な男と女の関係。70年代という“時代と愛憎の機微”の絡まり具合が絶妙です。これは女性向きかな。



白夜行 (集英社文庫)

白夜行 (集英社文庫)

東野圭吾さんに関してはやっぱりコレが一番と思います。太陽の前に出られない男と女の物語。切なく、哀しく、そして怖いです。



古典的ですがアガサクリスティもおしゃれで大好きなシリーズ。ナイル川のクルーズ船の情景が頭に浮かび、その場にタイムトリップできます。エジプトに行きたくなりますよん。



黒革の手帖〈上〉 (新潮文庫)

黒革の手帖〈上〉 (新潮文庫)

黒革の手帖〈下〉 (新潮文庫)

黒革の手帖〈下〉 (新潮文庫)

何度も映像化されていますが、文章による“女”の繊細な描き方が秀逸だと思います。社会派としては、今と当時の時代の違い(銀行の仕組みとかね)にも注目しながら読めるかな。



新装版 人間の証明 (角川文庫)

新装版 人間の証明 (角川文庫)

軽い話ではありませんが、心をえぐられます。暑い夏にじっくり読んでほしい。読んでて喉が渇くような小説。ちょっと「ぴりっ」っとしてみたい方へお勧め。


上からざっと見て頂ければわかると思いますが、著者はどの方も超一流の大御所ばかり。やっぱり多くの人に読まれているものは、完成度が高いんだよね。いいモノは常に読者(市場)に支持される。


旅行の移動中やリラックスした休暇中にぜひどうぞ。


そんじゃーねー!


〜家具やキッチン用品、電動歯ブラシからカメラについてまで〜

ちきりんの愛用品はちきりんパーソナルブログでご紹介中だよん

2012-07-29 「一家二軒」の勧め

「暑いな−、夏は北海道か長野あたりの高原で過ごしたいなー」と考えていたら、同じようなことを考えている人は多いらしく、長期滞在客の増加により、スキーリゾート地のホテルが夏でも混み始めているらしい。

そりゃそーだよね。こんな暑いのに節電とか意味不明です。


そういえばここ数年、九州や紀伊半島は「大豪雨」も多いでしょ。特に大変なのが山間の川沿いにある集落。川が氾濫して家が流されたり、裏山の土砂が崩れて家が潰れたり、川沿いの一本道も土砂崩れで寸断されやすく、すぐに村落ごと孤立する。ああいう場所に住むのってホント命がけ。

加えて雪の多い地域では、冬になると必ずといっていいほど「雪かきをしていた80代の男性が屋根から転落して死亡」してる・・・。(死なないと報道されないからわかんないけど、骨折したりしてる人は何倍もいるはず)


こういうニュースを自分のアタマに放り込んでガラガラポンすると出てくるちきりんの結論は、「こんな過酷な環境に住み続けるのは、もう止めたほうがいいんじゃないの?」ってことです。

真夏に東京とか大阪に住む、2月に豪雪地方に住む、台風シーズンに「後ろは山、目の前は川」みたいな一軒家に住むとか・・・止めたほうがよくない?


じゃあ、どこに住むのかって?

夏は北海道か高原、冬は沖縄を中心に、九州、瀬戸内、四国など。台風シーズンは、山間の村やよく氾濫する川沿いの村の人は、近隣の街中にある高台マンションに住めばいいじゃん。そんなことは『自分のアタマで考えよう』よ。

日本の人口はこれからどんどん減るんだよ。家が足りないわけじゃない。これからは、「ひとり二軒の家を、1年の間に適宜棲み分ける」というスタイルに変えていくのはどうだろう?経済活性化にもよさそうじゃん。


仕事はどーすんだよ?とか言われそうだけど、日本は「働く年齢」の人は、今どんどん減っている。昨年から団塊世代が完全引退に入り始めたこともあり、これからは「働いてない人」の方が多い国になる。

加えて「働いてる人」だって、実は「絶対ここにいないとできない仕事」の人ばかりじゃない。夏の一ヶ月くらい長野の高原にいて、時々新幹線で東京に出張にくればそれで済む、という仕事だってあるでしょう。

小さなベンチャーで、しかも「ネットさえあればできる」事業なら、会社全体で「夏は北海道で働きましょう」みたいにしてしまえばいい。「全員で行っちゃえ!」作戦です。気分も一新されて仕事の効率もよくなるのでは?


家を二軒も買えないよ、ローンはどうするんだ?・・・どっちも借りればいいのよん。地震や洪水、液状化で“自分の家”がやられちゃうリスクも無くなるしね。災害が起こった時には「もうひとつの家」に避難すればいいだけで、避難所や仮設住宅に長く滞在する必要もなくなる。

「暴論だ!」って? そうです。暴論ですよ。だからやりたくない人はそれでいい。東京や大阪の全員が夏に北海道に住むのは実際には難しい。でも、できる人から、やりたい人から、そういうことも考えてみればいい。

ロシアのダーチャとか、スペインの人の「冬の家、夏の家」など、たいして豊かでない国だって、「一家で二軒」的な発想は昔からある。日本で絶対できないなんてわけはない。



こういうふうに↓、家族の家を利用しての季節移動、複数地居住もアリだと思う。



結局のところ、もうちょっと自由に考えてみればいいじゃん、ってことなんです。人口も減っていくし、地方はどんどん人が減って、街自体が縮小している。ひとりがふたつの地域に住むようになれば、活性化するエリアだって増えるはず。

なにより「災害大国」の日本においては、「一家二軒」は究極のリスクヘッジになるはず。昨年の311の後、水道水にまで放射性物質が・・と報道された時、東京に住む人でさえ「もうひとつ、住める地域が確保できていないとヤバイのかも」と考えたでしょう。

最近は原発事故が起こることも想定し、立地周辺都市では避難訓練(ぽいコト)も行われるようになったけど、現実になにか問題が起こったとき、30万人都市なんかに避難指示がでれば、政府がそれらの人の行き先を確保するなんてまず不可能です。そんなことを国に期待すること自体が間違ってる。

それぞれの人が(少なくとも、そういう希望があり、余裕がある人が)「一家二軒」を始めておくべきなんだよね。


こんな灼熱の都会にひしめき合って住み、毎年、命をかけて屋根の雪かきをし、大雨が降るたびに公民館に避難する。大災害が起これば、街が復活するまで何年も仮設住宅で待たなくちゃいけない。そうじゃなくて、なんかもうちょっと違う方式はないのか、ということ。

そんなことを思ったのは、たぶん暑すぎてアタマがぼーっとしてるせいだと思う。


そんじゃーね

2012-07-27 10代半ばから、勝負の世界で生きる人

第70期将棋名人戦で羽生善治二冠との防衛戦に勝利された、森内俊之名人の就位式&祝賀会に(こっそり)行ってきました。

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といっても、ちきりんは将棋に詳しいわけではありません。どれくらいわかってないかというと、同行者に「なんで“名人400年”なのに、“第70期名人”なんですか? 330年の誤差はなんですか?」とか聞いてたくらい、なんもわかってませんでした。(すみません・・)


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森内俊之名人@祝賀会 

こちらに名人の挨拶スピーチ文が載ってます。 いいお言葉でした。「未来は決まったものではなく、自分で切り開いていける」と。うーん、そうですよね。ちきりんも未来を切り開いていきたい!


ちなみに、なんでこんな晴れがましい場所にお邪魔していたかというと、実は私、森内俊之名人から前著『自分のアタマで考えよう』に推薦文を頂いていたんです。そのご縁でお話をさせていただく機会もあり、今回はお祝いに駆けつけたという次第。


これがその時の新聞広告なんですけど・・ちょっと字が小さくて見えにくいですかね。

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名人からいただいた推薦文はなんと・・

「自分で考えたことだけが、本当の力になる。

そのことを再認識させられた」



畏れ多くてビビりますよね。将棋の名人にこんなことを言ってもらえるなんて、平成まで生きのびた甲斐があったというもんです。

というわけで祝賀会でも、最初はこっそり人のいない場所でお面で記念写真を撮るなど、遠慮気味にしてたんですけど・・・

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この写真をとってたら直後に、「もしかして、ちきりんさんでは?」と声を掛けて下さる方があり・・・


えっ!


と驚いていたら、「会場には、ちきりんさんのツイッターをフォローされてる片上大輔六段もいらっしゃいますよ」とのこと。


まさか会場にちきりんのことを知ってる人がいるなんて思いもせず、お気楽にお面で記念写真を撮ってたのに、そんなことが・・・と、半信半疑で片上六段のところへ行き、


ちきりん「あの、、、こんにちは。ちきりんです」

片上六段「えっ! ウソでしょ!?」

ちきりん「えっ? ウソじゃないですよ。これが証拠です!(キリッ)」 (お面を見せる)

片上六段「こっ、これは“ドッキリ”とか、そういうんじゃなくて? えっ、ほんとに普通に存在してる人なんですか?」


・・・・はいっ?・・・・


とうわけで、記念写真も撮らせて頂きました。

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(後ろは一般の参加者の方も写ってらしたのでぼかしてます)


聞くと、片上六段は将棋界隈のあちこちで「ちきりんブログやツイッター」を宣伝してくださってるとのこと。御礼にちきりんも、片上六段が尽力されている将棋の普及活動をご紹介させていただきましょう。

こちら→ ねこまどブログ


ほらほら、そこのお母さん、お子さんを礼儀正しく論理的、アタマのいい子に育てたいなら、ちきりんブログなんて読ませないで、将棋を覚えさせた方が何百倍もいいですよ。

(ただし、おちゃらけ社会派に育てたい場合は、ちきりんブログを・・)



“六段”と写真を撮ったことでちょっと気が大きくなったちきりん。「やっぱり名人とも写真とりたい!」と思い直し、


ほら↓ (しかもお面は“お祝いの品”として無理矢理、置いてきました。大胆すぎる私です)

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名人と写真を撮りたい人は長い列になってたんだけど・・・さすがにお面で写真撮ってる人は他にいませんでしたね。(あたりまえ)

でも、実はこの写真を撮り始めたその瞬間、列の後ろの方から複数の女性の声が・・・


えっ、あれってもしかして“ちきりんさん”なの?? えっ? まじ?? 的な・・


そうです。マジです。あたしです。

「もしかして将棋界隈で知られはじめてるわけ? あたし??」と一瞬だけ思いましたが、周りの上品なおじさま方は皆さん「なんだアレ?」的な視線でしたので、全くそんなことはないとは思います。


というわけで、アレコレ大騒ぎしつつも、大変楽しいひとときを過ごさせて頂きました。


それにしても森内名人がプロになられたのは16才の時(もちろん将棋自体はもっと小さい頃からです)。それ以降のあれこれは、前回お会いさせて頂く前にこの本↓を読んで勉強したのですが、16才から「完全実力主義の世界」で生きてゆくってスゴイことですよね。

名人を夢みて 森内俊之小伝

名人を夢みて 森内俊之小伝


そういえば先日、キングカズこと、三浦知良さんの『やめないよ』を読んだばかりなんだけど、彼も15才でブラジルにサッカー留学し、その後プロになられています。

やめないよ (新潮新書)

やめないよ (新潮新書)


10代半ばで勝負の世界に入っていくって、想像もできないくらいスゴイことだと思うんだけど、本を読んだり話したりしていると、みんな達観しているように感じます。「人生、勝つこともあるし、負けることもあるよ」的な感じというか。

20代半ばまで一回も負けたことがなくて、就活で初めて失敗して「人生終わり」と言ってたり、40代半ばになってまだ一回も勝負したことなくて、「自分の力で勝負するって、なんか怖いんですよね」と言ってたり・・・そういう一般ピープルとは住んでる星が違う。


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ほんとかっこいいです。

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↑ホンモノですよ。米長会長のご挨拶もめっちゃおもしろかった。


そんじゃーね!

2012-07-25 学内の問題解決は京大方式で

先日、大津市の中学校における「いじめ自殺事件」について、問題整理のエントリを書きましたが、もうひとつ重要な論点を追加しておきます。

それは、「学校内の問題解決は誰が担当するべきか」という問題です。


一般的には、「学校内の問題を解決するのは校長をはじめとする教師の責務」と思われるかもしれません。

しかしよく考えれば、暴行、傷害、恐喝、窃盗など深刻な刑法犯罪が繰り返され、人が死亡するに至るような大事件において、警察でも検察でもない学校の先生が問題を解決できる、という前提を置く方が不自然です。

しかも、事件の捜査を学校側が行うことには、明かな利害対立が存在しています。


学校の先生には「いじめを防止する」、「いじめている学生を適切に指導する」義務があると考えられています。それなのに事件の捜査を行えば、「教師が適切な対応をしなかったことが、問題を深刻化させた」という結論がでてしまうかもしれません。

そんな調査を「真剣にやれ」という方が、無理とも言えます。これって、泥棒の容疑者に窃盗事件の調査を、殺人犯の容疑者に殺人事件の調査を担当させるようなものですよね。


今、いじめられていた生徒が自殺すると、被害者の親が加害者や学校を民事、刑事の両方で訴えることが多くなっています。

被害者側の親としては、賠償金が欲しいわけでも、加害者を牢屋にいれたいわけでもなく(少年法もあるので、どうせたいした罰は科せませんし)、「自分の子供はなぜ死んだのか、何をされていたのか」を知りたいのでしょう。

ところが今の制度では、まずは裁判に持ち込まないと、何一つ情報が明らかにされない、だから裁判に持ち込むのです。


けれど裁判はすべての人に負担を強います。被害者側の両親は多大な経済的、時間的負担を背負うことになるし、同じ学校の生徒達(いじめに荷担していなかった生徒達)にも長期間の精神的負担を追わせます。

だから、ちきりんは今まで「情報さえきちんと開示される方式が担保されれば、警察や検察を介入させないほうがいいのでは?」とも考えていました。

いじめ問題が起こったとき、教育委員会ではなく、もっと独立した第三者機関が調査を担当するような仕組みを作ってしまえばいいのではないかと思っていたのです。


でも、最近はちょっと考えが変わりつつあります。「もっと早い段階で、どんどん警察を呼ぶべきではないか?」と思い始めたのです。

いじめが深刻化すると、学校の中で暴行目撃をする生徒や、窃盗の被害に遭う生徒がでてきます。

その段階で、学校の先生が(中途半端に、「大丈夫か?」などと声を掛けるのではなく)、警察に通報し、「ある生徒の財布がなくなりました。窃盗事件として捜査してください」とか、「校内で暴行を目撃したと生徒が言っています。事情を聞いて下さい」と通報する方法がありえるよねと思い始めたのです。

そういう事件で警察が一回、学校に入ってくれば、加害者側が「やばっ!」と感じ、いじめを止める可能性は結構高いのではないでしょうか? 問題解決だけではなく、抑止力が(先生と警察では)全然違うでしょう。

また学校側が、「ある子供の体育着が破かれるという事件があったので、警察に通報しました」と、全員の親に連絡すれば、親の中には「まさかあんたがやったんじゃないよね?」と子供に確認する親だってでてくるでしょう。これも抑止力になるはずです。


2011年3月、京都大学は「入試でカンニングをした生徒がいる!」とすぐさま警察に被害届を出しました。あらゆる分野の専門家、しかも日本を代表する第一人者ばかりが集まっている京都大学が、カンニング問題を校内で解決しようとせず、警察に通報する時代なのです。

なんで、その辺の小さな中学校が、暴行や恐喝、窃盗を「校内で解決できるはず」などという前提が成り立つのでしょう?


ちなみに1960年、70年に学生運動が盛んだった頃、一部の大学や高校では、かなり大規模な器物損壊や公務執行妨害、時には暴行や傷害が校内で起こっていました。それでも大学側は「警察に問題解決を委ねる」ことを嫌い、学内で対応することにギリギリまでこだわりました。

なにかあったからと簡単に警察を呼ぶということは、「高度に自立した知的集積地としての大学組織が、問題解決責任を自ら放棄する極めて恥ずかしい行為」だと考えられていたからです。

だからこそちきりんは、京大がカンニングを見つけてすぐ通報!という行動に出たことにおっタマげたのです。


でも、今ならわかります。やっぱり我らが京都大学は時代の先端をいっている。彼らは正しかったのです。どんな小さな問題であれ、学内で問題解決を試みるなんてやめましょう。京大はそのことを身を以て教えてくれました。

(きっとこの時の京大の対応は、大学という場所の意味を変えてしまうほどの歴史的な転換点であったと、後々まで語り継がれることでしょう。)


そうです。校内でなにかあれば、スグに警察に電話するのです。これからは、そういう方式を京大方式と呼びましょう。いやマジで、その方がいいのかもしれません。


そんじゃーね!

2012-07-22 「ちょこっと稼ぐ」の復活

就職できないで自殺する人までいるらしいけど、そこまでいかなくても就職できるかどうかが大きなストレスになっている大学生はたくさんいるでしょう。

そもそも「雇ってもらえなければ、人生終わり」みたいなコンセプトはおかしいとは思うけど、そうなってきたのは、「何やっても食べていける」という感じがなくなってきたからかも。

昔は自分で何かやって「ちょこっと稼ぐ」というのが、もっと身近だったんじゃないかと思う。


たとえば弁当を作ってランチタイムのオフィス街で売るとか、手作りアクセサリーや、自分で書いたイラスト、写真なんかを観光客の多い街で道に拡げて売るとかね。

発展途上国にいけば、そういうのいろいろあるよね。

靴磨きの少年とか、交差点で止まった車に新聞やペットボトルを売る子供達。観光客の多い広場でパントマイムや蛇使いのショーを見せたり。

路地裏には屋台のうどん屋や丼屋がひしめき、寺院の周りには花や線香、お供えものを売ってる店が並んでる。

観光客向けの絵はがきやアクセサリー、子供向けのおもちゃや風船を持ち回って売ってる人もいるし、空港や駅で荷物を運ぶポーターにも“私設”の人がたくさんいる。

韓国ドラマでも貧乏な主人公が、個人の運転代行や自家製アクセサリーの夜店売り、イベント屋や、餅や海苔巻きを街で売るみたいな商売を始めて食べていく(そして御曹司と出会う)みたいな話がよくでてくる。


でも、今の日本はそういうことをやるのはスゴク難しい。

空港や駅でなにか始めたらすぐさま駅員がやってきて中止させるだろうし、夜店や屋台を街に出せばそっこーで警察がやってきそう。

(もしくはビルの管理員が止めさせにくる。)食べ物を売るなら、なんとか衛生法の許可をとれとか、いろいろうるさい。

ちょっと工夫して、ちょこっと稼ぐ。そんなには儲からないけど、なんとかなる。

成功すればそういう生活から逃げ出すための種銭くらいは稼げる、という食べて行き方が、日本はもっとも難しい国のひとつだと思う。


ところが最近はネットの出現で、ふたたびそれが可能になりつつある。

ブックオフで買った古本をアマゾンで高値で売る“せどり”や、まとめサイトやyoutubeを利用してアフィリエイトで稼ぐとか、不要品を集めてオークションで売る、文章や写真やイラストを売るなど。

さらに、なんちゃら電話相談(スカイプ相談)をやりますよとか、自分でサイトを作ってウェブサービスを提供し始める人もいる。

そんなに稼げるわけじゃないけど、月に数万円から、巧くやる人なら 10万円以上になる。成功した人は、ビジネスにできるくらいの規模にもできる。

このトレンドは世界で起こってるんだけど、日本でもそれが起こってきた理由は、ネットが基本的にグローバルで、規制のない世界だということにある。


さっきも書いたように、海外なら「家の前にテーブル置いて、うどん屋でも始めるか」ってのができても、日本ではできない。

だけどネットの中なら、海外で出来ることの大半は日本でも支障なく始められる。

リアル社会では日本の規制はすごく強いけど、ネットの中の規制は日本だけが突出して厳しい、というふうにはなってないからね。

しかもネット上で利用可能な主要インフラは、ほぼ全部、日本でも使える。

youtubeもアマゾンもグーグルもpaypalも世界中で展開してくれているから、「日本政府の対応が遅いために日本では発展できない」みたいなことにはならない。


というわけで、ここ数年、「雇ってもらうんじゃなくて、自分でネットを利用して、ちょこっと稼いで生きていこうぜ」的な人が急増してる。

戦後のぐちゃぐちゃの時代には、日本でもみんな自分でなんらか工夫して金を稼いでた。雇ってくれるところなんて限られてるからね。

ちきりんの実家もその頃はたいして広くもない庭で豚や鶏を飼って(育てて)売ってたと聞いてるし、闇市のうどん屋から始めて大きな店を構えるまでになったり、復興前に土地を買い占めて大富豪になるという目先の利く人もいた。

高度成長と共に、日本ではそういうのがどんどんなくなり「雇ってもらうこと」が働くことの基本になっていた。それがまた変化し始めてる。


「ちょこっと稼げれば十分だ」と思う人も増えている。

日本は社会インフラがものすごく整ってる。公園の水道から水を飲んでも死なないし、無料で利用できるトイレ、冷暖房完備のパブリックスペースも町中にある。東京なら無料で楽しめるイベントも満載だ。

「持ち家を買って専業主婦を養う」という壮大な夢をもたない人なら、そんなにたくさん稼ぐ必要もない。


ネットでちょこっと稼ぐ人が増えてるのはいいトレンドだと思うし、リアル社会でも、そういうのがドンドン可能になれば尚いいよね。

まだまだ世の中には稼ぐ機会はたくさんある。そして、それらを求めてる消費者もたくさんいる。

そういうのが大きくなり、また、そんな中から巨大に育つビジネスが出現する。これからの経済成長って、そういうことなんじゃないの?


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そんじゃーね。


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2012-07-19 収穫を始めるタイミング

事業戦略のひとつに「いつ、収穫を始めるか」というコンセプトがあります。ありていに言えば、「いつマネタイズを始めるか」ということで、「いつ、投資を回収し始めるか」、「いつ、仕込から販売に転じるか」などと言ってもいいでしょう。


たとえばグーグルが「グーグルマップに課金する」と言い出すタイミングをいつにするか、という話ですね。Gmailだって今は無料で使えますけど、どこかの段階で「月100円課金ね」と言われても、大半の人は「げっ、年間1200円かよっ!」と驚きながらも払い続けるでしょ。

でもこのタイミングが早すぎると、みんな他の無料メールサービスに移ってしまいます。最初は延々と種をまいて育てて・・・だんだん育ってきたのを見ながら、どの段階まで待ってから刈取りを始めるか、収穫を始めるか、というのは、すごく重要な判断なわけです。


最初は無料で会員を集め、途中から課金を始めるのは、ウエブサービスではおなじみのやり方ですが、この概念は、ウエブサービス以外にも同じように適用できます。

たとえば、20年間、新聞記者として働いてからフリーのジャーナリストになる人と、1年間、商社マンとして働いて(内定を取るのが難しい商社に就職したという実績を持って)「学生向けの就活アドバイザー」になる人は、刈取り時期が大きく異なります。

前者は20年間、種蒔いて、畑を耕して、花や実を育ててきて、相当遅くなってからの収穫開始、後者は「売れる実」がひとつ付いた段階で、すぐに収穫に乗り出す感じ。


ブログやツイッターも同じですね。一定数の読者やフォロアーがついた段階で、メルマガやフォーラムに移動し、コンテンツ課金を始めてもいいし、一方、延々と種だけ蒔いて「収穫をできるだけ遅らせる」のもひとつの方法。

ちなみにキャバクラの女の子に投資して、「いつ収穫しよう?」とか(妄想気味に)考えてるのは全然違う話。あれは一生、収穫できないゲームです。


収穫時期を大きく遅らせると、収穫に入ってからはすごく楽ができます。売り物はしっかり熟れているし、顧客もきちんと惹きつけ、誰も逃げなくなってから収穫を始めるわけだから儲かるし、蓄積も多いので左手で仕事ができる。売る物もたくさんあるので、ワンパターンにならずに次々と多彩な商品を提供できます。

ところがこの戦略には落とし穴もあって、「できるだけ大きく育ててから収穫しよう」と思ってたのに、いつの間にか世の中の流れが変わって、自分が育ててたものの価値がなくなってしまうこともあります。悲惨なパターンですね。

だから適当なところで収穫に移ったほうがいい。(収穫したいなら、ですが)


一方、早すぎる収穫をすると、すぐに売るものがなくなっちゃう。最初の果実を嬉々として売っていて、自分の畑にナンも無くなってることを忘れていると痛い目に遭います。「数年だけの人」とか「ワンパターンの人」になっちゃうのは、ほぼこのパターン。

というわけで、何をするにしろ「いつ収穫する?」ってことは、意識的に決めることが大事。



もうひとつ大事なのは、市場の需要の読み間違いをしないこと。周りから商品を「売ってくれ、売ってくれ」と言われると、「そんなにニーズがあるなら!」とすぐに収穫に入りたくなりますが、そう言ってきている人が、最終的な消費者ではなくて仲介業者だという場合もあるからです。

その場合、いくら「売ってくれ」という声が大きくても(多くても)、それは消費者のニーズが大きいわけではなく、「その仲介業者の棚に売り物が足りないから」です。

そんな時に収穫を始めたら、消費者からはアレレな反応しか返ってこなかったりします。また、早すぎる収穫は、畑を痛めてしまうこともあります。


というわけで、「収穫タイミングについて大事なこと」は次のふたつ。

(1) 「収穫を始めるタイミング」は大事なんで、適当に収穫を始めず、ちゃんと意識的にタイミングを決定すること

(2) 収穫すべきかどうかは、消費者の声で決めること。仲買業者の声じゃなくてね。



以上です。


そんじゃーねー。




<お知らせ>

「社会派の旅をするためのお勧め10冊」、ほぼすべてアマゾンの在庫が復活しました。

→「ガイドブック以外の一冊、それが大事

2012-07-17 原発廃止の前に公聴会廃止

将来の原発依存度について検討するための意見公聴会が開催され、いろいろ話題になっています。報道されているところでは、

・2030年に原発ゼロ、15%、20-25%という3択がそもそも誘導的

・原発ゼロ派の申し込みが圧倒的に多かったのに、各意見の人が3人ずつ選ばれて発言するのは変

・原発推進派として選ばれた人が、電力会社の社員だったりするのはいかがなものか

などの意見があるようです。


最後のについては、「電力会社の関係者など以外で、原発推進派として公聴会で話をしてもいい、という人を確保するのは難しそう」とも思いますけどね。

なんの関係もない会社員がテレビカメラの前でああいう発言をしたら、その人が勤めてる会社に電話攻撃する人が現れちゃうでしょ。その人の出身地の特産品の不買運動とかさえ起こりそう。リスクとって発言できるのは関係者くらいなんじゃないの?

ただ、この期に及んで「放射能では誰も死んでない」とか言ってるのはある意味スゴイ。「放射能で直接、死んだ人の数が論点である」と考えてる時点でアホすぎるよね。あたしが書いたらすぐさま「炎上マーケティング」だと言われ、ボコボコにされるところです。



さて話を戻すと、ちきりんとしては、原発をどーするかはともかく、公聴会システム自体は、今回のに限らず、これを機にぜんぶ廃止したらいいんじゃないかと思います。

そもそも公聴会って昔から全部、茶番というか、意見誘導会議だよね。「国民の意見も広く聞きました」という体裁を整えるためにやってるだけ。

今は注目されてるから、発言者がどこの会社の人だとか騒がれるけど、今までだったら“すべての発言が台本通り”だったことも少なくないはず。


しかもああいうのを開催するには、そこそこの額の税金がかかってるんですよね。イベント会社や広告代理店が間に入ってアレンジをして、その手数料に会場代に事務費にと・・・各省庁が年間にやってる公聴会の全リストをまとめて公開したら結構な数なんじゃない?

というわけで、今時、国民の意見を広く聞くのに、あんな方法がホントにいいのか?ってことを、まず最初に議論したほうが生産的だとは思う。


そんじゃーね



過去関連エントリ)

・「この国は“無駄”で食っている

・「原発か自然エネルギーかという議論の不毛



内閣府 原子力委員会が、下記にて、原子力発電に関するパブリックコメントを現在も募集中です。

http://www.aec.go.jp/jicst/NC/tyoki/tyoki_oubo.htm

2012-07-15 大津市の中学校 イジメそして自殺事件

大津市の中学校で、相当ひどいレベルの“いじめ”に遭っていたと思われる男子生徒が自殺した事件。自殺は昨年の10月なんだけど、警察が被害届を受け付けてこなかったり、学校や教育委員会がいじめの実態や、それを知っていたことを隠そうとしてる疑いが濃厚であったりで、ここのところ連日、報道が続いています。

この件についていろいろ考えてはいるのですが、あまりまとまって何か書けるわけではありません。ただ備忘録的に、ちきりんが今回の件に関して考えたことのリストだけ残しておこうと思います。


1.今回は、学校側がいじめを認識していなかったというのは、かなり不自然に思えます。でも、その実態を知っていたのだとしたら、学校の先生の立場で「いじめを見て放置する」動機はなんなんでしょうね?

加害側生徒の親が有力者だったとも報道されていますが、だからいじめを黙認した、というのは考えにくいです。たとえ親がえらい人でも、「これはマズイ」と思えばなんらかの対応をとったんじゃないかな。

むしろちきりんには、学校の先生もまた、「まさか自殺するとは思ってなかった」んじゃないか、という気がします。判断ミスというか、甘すぎるというか。

ところで学校の先生って、「いじめかも?と思うようなシーンを目撃したら、どう対処すべきか」について、ちゃんと教育を受けてるんでしょうか?

警察官なら「万引き犯かな?」と思ったら、こういう感じで職務質問する、ってのを訓練されてるでしょ。そういうの、あるんですかね? もしかして「いじめを見たら適正に対処する」とかしか教えられてなくて、どうしたらいいのか、教師自体、わかってないんじゃないの?って気もしました。

追記)学校の対応策の事例 → 森口朗公式ブログ 「このいじめ対策はすごい!」


2.いじめの加害側の中学生や、担任の先生などが今、こういう報道の中で相当に追い込まれている可能性もありますよね。二次被害につながらないとも限らない危うさを感じます。

あと、今回のように学校や教育委員会がすべてを隠そうとする場合、報道やネットで、加害側の少年のプライバシーをふくむ情報を公開したり、大津市への抗議電話を呼びかけたりするのは、問題を顕在化させ、事件の隠蔽を防ぐという目的のためには正当化されるべきなんでしょうか? それとも、それはやっぱりやってはいけないことなのかな?


3.これからこの事件の加害側の少年や、いじめを放置した学校教師が、なんらかの社会的な処分を受けると、それを見た(日本の他の学校で)いじめられている子供の中に、「自分が自殺すれば、あいつらに復讐できる」と思う子がでてこないか、気がかりです。


4.加害側の少年たちの行為は、先生や親が適切に指導していれば、エスカレートしなかったのか、どこかで止めていたでしょうか? 彼らも、教師が自分たちの行為を黙認していることを理解していたはず。それが、いじめをエスカレートさせたのかなあとも思う。どうなんでしょう?

(反対からいえば、教師は、自分たちがいじめを黙認した場合、その行為が加害側少年にどういうメッセージを送ることになるのか、よく理解しておくべきだよね。「教師の黙認」は間違いなく「容認」と解釈されるのだから。)


5.いじめを見ていた子供がたくさんいるということがアンケートでわかってきています。彼らもまた心に傷を負ったはず。そういう子供たちへのケアとか、どうなってるんだろう? 警察まで介入してきて中学生のレベルでは相当なショックですよね。勉強が手につく状態とは思えない。でも今、あの学校の先生がそこまで気が回せる状態とも思えないし。


6.この中学校の子供たちは、今、すごい「リアルな社会」を学びつつある。特に、保身に走る先生たちの態度を見ていて、大人の世界ってこうなんだ、と(普通の子供より数年早く)学びつつある。それがこの子たちの世界観にどう影響を与えるのだろうね。さすがに「将来は学校の先生になりたい」と思う子はいなくなりそうだけど。。


7.この学校や教育委員会の隠ぺい体質というか、“子供の命の問題より自分たちの保身”という態度は、大津市が特にひどいの? それとも全国どこでもおんなじようなもんなの? ってのも知りたいところです。どうなんだろ?

中学生である生徒たちの中にさえ「今までは黙ってたけど、今はちゃんと証言しなくちゃ」的な子供が出てきてるのに、先生側にそういう人がひとりも現れないってすごいよね。そこまでして何を守ろうとしてるんだろう?


8.加害側の少年たちは、今の状況をどう思ってるんだろう? なんだかんだいっても中学生なわけで、相当にきついプレッシャーを受けている気がする。これからこの子たちはどうなるんだろう?


9.この学校の先生たち、どーするの? これからもまだ、今年も、来年も、再来年もこの学校で教え続けるんだろうか? なんだか信じがたいのだけど・・


10.そして最後に結局のところ、自殺を防ぐ方法は何だったんだろ? 被害少年のお父さんは自殺前からいろいろアクションをとっていたように報道されているので、無関心だったわけでも放置していたわけでもない。それでも状況が改善されない場合、(もしも自分が)いじめられている子供の親だったら、何をすべきなんだろう??


とか、考えたりしてます。ほんとに難しいよね。

自殺されたお子さんのご冥福を心よりお祈りします。。。




追記)こういうご意見もいただきました。たしかに、集団暴行、恐喝などと呼ぶべきかも? これも考えるべき課題ですね。「親子無理心中」について、「殺人」と呼ぶべきという意見があるのと同じですね。

2012-07-12 「赤ちゃんが欲しい人の本」を読んでみた

不妊治療について、なんか一冊読んでみようと思って、これを買ってみました。不妊治療クリニックを経営されている女性医師が書かれた本です。

赤ちゃんが欲しい人の本

赤ちゃんが欲しい人の本


目次は、

1.やっぱり心配 ひょっとして不妊症!?

2.妊娠力アップ 赤ちゃんができる生活

3.赤ちゃんが欲しい! 病院へ行こう!

4.チャートで分かる不妊症の原因と治療

5.いろいろ大変だから、納得して治療を受けるために

「不妊治療問題」についての本ではなく、「赤ちゃんが欲しいんだけど、なかなかできない・・・」という人のための本です。イラストが多くて、大きな文字で、イイ紙で、ずっと手元において何度も見るための本、みたいな作りです。



以下、いくつか内容からご紹介

「WHO(世界保健機構)による7273カップルの不妊症の原因調査」によると、不妊の原因は・・・

女性のみにある=41%

男性のみにある=24%

男女双方にある=24%

原因不明=11%

重なりを併せて計算すると、女性に原因がある場合が65%、男性にある場合が48%ってことですね。

(誤解のないように。これは不妊治療(検査)を受けている人が母集団です。)



「赤ちゃんができないなー」と思った時、いつのタイミングで病院に行くべきかについて

赤ちゃんができないからといって、不妊症とは限りません。セックスのタイミングがずれているのかもしれませんし、単にふたりの体調がちょっとよくないだけかもしれません。ですから、ふつうは1年ぐらいは様子をみます。(中略)


ただし、妊娠を妨げる病気などがありそうなときは、1年待たずにすぐにでも病院へ行くべきです。(中略)


女性の年齢が30代半ば以降(34才以上)なら、一年もようすをみないで、すぐに病院へ行くことをおすすめします。


以上、太字にしたのは、ちきりんです。

病院にいくタイミングは、こういうのを先に読んでいるかどうかでかなり違いそう。女性の年齢が高くても、仕事が忙しかったりすると2,3年は病院に行かないカップルも多そうな気がします。

なおこの本の第一章には、男女別の「気がかりチェック表」がついていて、質問に答えていくだけで、今すぐ病院にいくべきか、1年は様子をみてもよいか、わかるようになってます。



こちらは基本的なタイミング療法ですね。これで巧くいったら幸運という感じでしょうか。

妊娠しやすいセックスの回数は?


基礎体温でわかる排卵日は、あくまでもおおよその排卵日なので、日にちの幅があります。一方で、精子は卵管の中で二日から数日は生きることができます。ですから、セックスは一回ではなく、何回かを排卵日に集中させると、受精の可能性が高まります。


具体的には、体温がガクンと下がる前日に一回、その後は一日おきに2回というようにセックスをするとよいでしょう。



全体の治療のステップはこんな感じ。

<不妊治療はこうして進む>


ステップ1(約3ヶ月)各種の検査を行って、不妊原因を明らかにするための期間

  初診、検査、カウンセリング、基本的なタイミング指導など


ステップ2(約一年)ステップ1を踏まえ、治療を行う期間

  超音波で排卵日を割り出し、より正確なタイミング指導など

  排卵障害の場合は、作用が緩やかな飲み薬を使うなど


ステップ3(半年〜1年)ステップ2を踏まえ、より高度な治療を行う期間

  人工授精

  排卵障害がある場合は、飲み薬よりも強力な注射による治療など


ステップ4(2〜3年)一般治療では結果がでなかったことを踏まえ、高度医療を行う期間

  体外受精、場合によって顕微授精、ギフト法など


ステップ1〜3が一般治療、4が高度医療と分けられているようです。治療の妊娠率は、

・一般治療で妊娠する人が4割

・高度医療に進んだ後に妊娠する人が4割

併せると、8割が妊娠に成功、とのこと。

反対にいえば、治療を受けている人の5人に一人は高度医療を受けても妊娠できていないし、6割の人は一般治療だけでは妊娠できない、ということです。(かつ、妊娠しても出産までに何らかの問題が起こり、出産できない場合もあります。)

それにしても、治療期間がすごく長いですね。もちろんスグに成功する人は短いわけですが、5人に一人は3年、4年と治療を続けて、それでも妊娠にまでも至らないとなると、経済的、身体的、精神的、時間的な負担はかなり大きそう。



検査の種類や内容も、それぞれ内容や目的の説明が載ってるのですが、それを読むと、女性の検査が、超音波検査、子宮卵管造影検査、通水・通気検査、子宮鏡検査、頸管粘液検査、ヒューナーテスト、ホルモン検査、腹腔鏡検査と多岐にわたるのに、男性については、精液検査と精巣検査のみ・・。目次を見るだけでも女性の負担が大きいことがわかります。


男性の精液検査はこんな感じ。

精液検査とは、精液を採取して元気な精子がどれくらいいるかを調べる検査です。(中略)

なるべく状態のよい濃い精液で検査をするのがよいので、数日間禁欲してから行います。専用の容器を渡されるので、病院の採精室(もしくはトイレ)でマスターベーションによって精液を採取します。

→採取された精子は、すぐに検査に回されます。


治療費は、体外受精になると跳ね上がるようで、

体外受精 20万円から45万円

・排卵誘発のための薬代や検査代は別

・顕微授精の場合は、上記に5万円から10万円プラス

健康保険はきかないので全額自己負担なのですが、これを数回やったら・・・すごい額ですね。ちなみに30代後半の治療経験者は、総額400万円くらいかかったと言ってました。


この本に、今、体外受精で生まれる赤ちゃんは日本では一年に1万5千人と書いてありました。去年の日本の出生数は105万人なので、1.4%の赤ちゃんが、体外受精で生まれていることになります。

また上記に「一般不妊治療で4割が妊娠、高度医療(体外受精など)で4割が妊娠する」と書いてあったので、(やや不正確ですが)体外受精で生まれる赤ちゃんと同じ数の赤ちゃんが一般不妊治療を経て生まれているとすると、日本で生まれる105万人のうち、2.9%の3万人程度が不妊治療の結果、生まれていると推定できます。

経済的な理由で不妊治療ができていない人も相当数いるはずなので、不妊治療が保険適用になれば体外受精で生まれる子供はもっと増えるでしょう。


それと、日本で不妊治療を受けている人の数は28万強と書いてありました。昨年、赤ちゃんを産んだお母さんの数が約105万人ですから、この数字はかなり大きな数字なんじゃないでしょうか。

28万人が希望どおり子供を産めていたら、出生数は105万から133万人へと26%も増えるんですよ。少子化対策としてこれほどインパクトのある施策は他にはなさそうに感じます。(出生数を10%増やすだけでも相当大変なことです。)


赤ちゃんが欲しい人の本

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というわけで、とりあえず超基本的なことだけ理解したのですが、この本に載ってるレベルのことを大学で参考授業として全大学生に教えるだけで、出産年齢の高齢化に歯止めがかかるんじゃないかなと思えました。

あと、「仕事が落ち着いたら、子供も作りたい」と思ってる若いカップルの方も先に一度、読んでおくのもありだと思います。仕事って一生“落ち着いたり”しないから・・


それにしても、不妊治療における女性への負担の重さは(けっしてそれが強調されているわけでもないのに)ヒシヒシと伝わります。当事者の方は本当に大変な経験をされているのだと思いました。

・・・


ずっと続けて書く気はありませんが、この問題については、引き続き、考えていきたいと思います。


そんじゃーね。



前回のエントリ)「不妊治療問題の整理

2012-07-10 不妊治療関連問題の整理

先日は不妊治療に関して、思いつくままに課題を列挙しましたが(→「不妊治療に関する課題出しエントリ」)、今日はそれを整理してみましたよん。


まず、不妊治療はとても負担の大きな治療ですが、その負担には 2種類あります。

ひとつが、不妊治療そのものの負担、もうひとつが、不妊治療を始める年齢が高くなることにより、そこに追加される負担です。

図1

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不妊治療そのものは(たとえ若い人が受ける場合でも)、半端でないお金がかかるし、時間もかかります。

それに、精神的にも消耗します。(受精は成功しながら何度も妊娠に失敗するとか + 治療に関して家族との意識のズレがでてきたり・・など)もちろん医療行為一般に伴う副作用のリスクもあります。

高齢で不妊治療を始める場合はそれに加え、成功率が低いこと(したがって、上記の負担がさらに重くなること)と、成功した場合にも、高齢出産に伴う新たなリスクが追加されます。


★★★


最近は、負担の重い「高齢での不妊治療開始」が増えていますが、その理由は、そもそも「結婚・出産のタイミングが遅くなっているから」です。そこで、なぜ結婚や出産が遅くなっているのか、という課題を整理し、図に追加してみました。


図2

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経済的な問題による晩婚化や、女性に関してはキャリアと出産・育児の両立が難しいこと、そもそも 20代なんて男女とも親になる覚悟ができていないというのもあるし、

若くして子供を産んだ場合、問題が起こるとすぐに「育てる能力もないのに子供を作るのは無責任!」と叩かれるため、「早めの出産は避けるべき」的な風潮が生まれている・・。

このあたりの理由で不妊問題が生じるのが、「社会的不妊」と呼ばれてるのでしょう。

なお保育園不足や男性が育児休暇が取れないなどの問題は、「キャリアと育児を両立できない」ことの理由なので、上記の表よりひとつ下のレベルの要因となります。


★★★


結婚・出産年齢が高くなっている背景には、「キャリアは後からは積めないけれど、妊娠は後からでもできる」と考えている人が多かったり、40代で子供を産んでいる人の話が大々的に報道され、それが自分にも簡単にできるように思えてしまう、という誤解など、根底には知識不足問題もあると思われます。

図3

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★★★


じゃあ、なんでこの件に関して、皆こんなに知識不足なのかといえば・・・下図の一番下の段を見て下さいね。

図4

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それは、不妊問題がタブー視されていて話題に上らないことや、この問題が大変な問題なのだという認識が社会一般に欠けているからでしょう。

また左側にあるように、無知は偏見の源となり、心ない言葉に傷ついている人(多くは女性)がたくさんいます。


★★★


その下も見てみましょう。

不妊問題、不妊治療問題に対する社会の問題意識の希薄さは、他の問題へもつながっています。


図5

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(一番左)問題意識がないために、不妊治療に関する啓蒙活動や支援活動がほとんど行われていません。啓蒙や支援のベースとなる詳細な基本データさえ、公開(収集も?)されてません。少子化が社会問題化され、担当大臣や予算がつくのとは大違いです。

また、婚外子制度や養子縁組、代理母や卵子・精子バンクなど、関連する制度問題も議論されないまま放置されているし、セックスレスや虐待、母子家庭の貧困問題など周辺の社会問題も放置されたままです。



というわけで、図4と5を上下に重ねると、不妊治療問題の全体像という感じになるのかなと(今のところ)思っています。


そんじゃーね


関連エントリ→ 「出産タイミングも自由に選ぶ時代?


http://d.hatena.ne.jp/Chikirin+personal/  http://d.hatena.ne.jp/Chikirin+shop/

2012-07-08 あたしは終わってる

前に「死ぬまで働きたい森光子か、さっさと引退してエンジョイライフの大橋巨泉か」っていうエントリを書いたら、ツイッターで、

  サッカーで言えば ヒデかカズか

  野球で言えば 工藤か新庄かですね、

というお返事を頂き、「ああそうだなあ、どこの世界にも二派の人がいるんだなー」と思いました。


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工藤公康氏は48才まで現役を貫き、キングカズこと三浦知良氏も45才でまだ現役。一方の中田英寿氏や新庄剛志氏は人も羨む才能を持ち、周囲から見れば「まだまだイケルでしょ?」的な段階で、「ここまででOK。他にもやりたいコトあるんで」って感じで引退しちゃった。


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ちきりんはもちろん大橋巨泉氏グループの所属なんだけど、この前、同年代の女性の友人2人と、この写真のお料理を食べに行っていろいろ話してたら、ふたりとも完璧な森光子派だと気がついた。


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ひとりは山手線の真ん中辺りに80平米のマンションを買って住んでるんだけど、「定借物件だから94才までしか住めないのよね。私、100才までは生きそうだから、今度は土地権利付のマンションを買おうかと思ってるのよー」って・・・


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もうひとりは乗馬に凝っていて、「この前、“マイ鞍”を買ったの。んー、50万円くらいかなー」って・・・


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まじすか?

(当然ですが、二人とも金融機関勤め)


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「でも、馬はまだ買ってないよ。あれ買っちゃうと結構、維持費もかかるしねー」


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はいっ?


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ふたりとも100才以上まで生きる気まんまん。働く気まんまん。


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この二人、ちきりんが死んだ後もあちこちお店を食べ歩き、「ちきりんが亡くなってからもう40年たつねー」「だねー、お墓参りにでも行く?」とか言いながら、「そういえば、あたし、またマンション買い換えたんだ」、「わーそうなんだ、私はまた馬、買っちゃった」とか言ってるに違いない。


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あたしの人生なんて、このふたりの人生の半分の時点で終わってるんだなーと思いながらお食事を堪能



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ほんと、あたしの人生は終わってる。(対友人比)



そんじゃーね。




神楽坂 石かわ

食べログ神楽坂 石かわ

丁寧で季節感たっぷりな日本料理。一生懸命、研究されてる感じもすばらしかったです。あと、器がどれも「ほほー」

2012-07-05 不妊治療に関する課題出しエントリ

先日、NHKの不妊治療に関する番組を見ました。そういえばこの問題についてブログに書いたことがなかったので、ちょっくら書いてみます。

ただ、この問題は考えるべきことの領域がとても広いので、今日は「課題出し」のみとし、課題の整理は次回にします。 

順番は“思いついた順”で、重要な順でも、カテゴリー別でもありません。また、現時点では必ずしも因果関係が検証されていない課題も含まれます。


★★★


課題1)「一年で何人が不妊治療を受けているのか」、「それは妊娠を望んでいる夫婦の何%にあたるのか」、「不妊の原因とは(男女別比率を含め)何がどの程度なのか?」、「どんな治療が何件行われ、それぞれの年代別成功率はどの程度なのか」など、不妊治療に関する公式なデータが存在しない問題


課題2)不妊治療を受け始める女性の年齢が高くなりつつあり(35歳以上が急増など)、治療の成功率が低下している問題。また、たとえ妊娠しても高齢出産となり、母子ともに様々なリスクが高くなっているという問題


課題3)年齢が高くなると妊娠確率や不妊治療の成功率が下がることについて、知識が普及していないこと (=課題2の原因のひとつ)


課題4)キャリア形成を優先せざるを得ないため、結婚、出産を遅らせ、そのために不妊治療を余儀なくされる女性がいること(正社員女性など)


課題5)産休や育休がとれる立場でもなく、家計のために仕事を優先せざるを得ないために、妊娠を遅らせ、不妊治療を余儀なくされる女性がいること(非正規雇用の女性など)


課題6)男女とも経済的な問題から、結婚、出産を望んでいても、そのタイミングが遅くなってしまう問題


追記メモ)上記4,5,6の他、保育園が見つからない、父親の育児休暇が取れないなど、出産後の育児体制が整えられないことから、出産を躊躇しているうちに高齢となり、不妊問題を発生している問題も。


課題7)大学・大学院への進学率が上がり、男女とも学生である期間が長くなって、「親になる精神的な準備」が、出産に適した 20代の間に整わない問題


課題8)男性の生殖機能と年齢の関係が(女性の生殖機能と年齢の関係に比べて)緩やかであるため、男性側に結婚、出産のタイムリミットを意識する必要性が少ないことが、結果として結婚、妊娠タイミングを遅らせているという問題


課題9)不妊治療に相当額のお金がかかり、保険適用がほとんどないため、事実上、経済力がないと不妊治療が受けられないという問題


課題10)不妊治療にはお金だけでなく、治療のための時間や精神的な余裕も必要で、仕事や生活環境の関係から、不妊治療が受けられない女性がいる問題


課題11)有名人の 40代での出産が大々的に、しかも、「すばらしいこと」ととりあげられ、出産の高年齢化を肯定する風潮に貢献している問題


課題12)不妊に悩む女性がメディアや周囲から、「子供を持つのが女の幸せ」、「子供がいない女性にはわからないだろうが、」などといった、無理解な言動に傷つけられる問題


課題13)婚外子の権利が認められていないことが、出産タイミングを遅らせ、不妊治療を受けざるを得ない女性の増加につながっているという問題


課題14)「女は子供を産んでこそ一人前」といった風潮がプレッシャーとなり、不妊治療がつらくてもやめられない女性がいる(もしくは、個人的には気が進まない不妊治療を受けざるを得ない)問題


課題15)不妊問題、不妊治療問題が話題としてタブー視されており、幅広い層を巻き込んだ議論が行われない語られない問題


課題16)夫婦間の意識や意見の違いから、不妊治療が難しくなる問題


課題17) 不妊治療に関する意見の相違が、夫婦関係に悪影響を与える問題


課題18)(男性由来の不妊も少なくないにも関わらず)不妊が男女共通の問題としてではなく、女性の問題として認識されがちなこと。およびそのために起こる問題


課題19)少子化が日本社会の大問題と言われ担当大臣までいながら、一方で不妊問題が放置されている問題


課題20) 卵子の冷凍保存などを含め、生命科学に関しての倫理について十分に議論されていない、という問題


課題21) どのような場合に実子として戸籍に入れられるか(代理母問題)、どのような子供に相続権があるのか(母親が死んでから冷凍卵子を使って生まれた子供など)の法律的な問題が、技術の進化に追いついていない問題


課題22)海外で認められている不妊治療の手法が、日本では認められていないという問題。ただし、それらが認められた場合、現在、海外で問題になっているように、「学歴が高い人や一流アスリート、容姿がよい人の卵子や精子ばかりが高値で売買される」などの問題もでてきそう。


課題23) 不妊治療を受ける夫婦が増える一方で、欧米ほど養子縁組が進んでいないという問題

これには2面あり、“自分の血を分けた子供”、“お腹を痛める”ことにこだわる個人側の問題と、40歳を超えたらダメとか、女性が働いている夫婦はダメなどの養子縁組のルールが厳しすぎるという問題


課題24)若くして結婚、出産し、離婚や虐待、生活苦による生活保護申請などが起こった時、社会は「親になる資格をもたないのに、無責任に子供を産んでいる」と厳しく糾弾する。

こういった風潮が、若いときに結婚、出産することを思いとどまらせ、不妊問題を大きくしているという問題。“社会的に”出産適齢期とされる期間が短すぎるのではないか?ということかな。


ツイッターでいただいた追加課題)妊娠しようと思うまで、不妊問題に気が付かないという問題。(たとえば、病気なら人間ドックや定期健診で見つけようという話になるが、不妊はそういう扱いはされていない)

これ興味深い意見ですね。でも多分、意味がないと思います。だって 25才で検査して妊娠機能に問題が見つからなくても、「じゃあ、安心して 35才より後で産めばいい!」とは言えないわけで。加齢と共に妊娠しにくくなるのは、検査で見つけられる病気とは違います。



・・・他にはどんな問題があるのでしょう?



それにしても課題リストだけを作ってもこれだけでてくるのだから、この問題の深刻さ、大きさがうかがえるというものです・・・


そんじゃーね。


追記)この件に関する続きのエントリ(課題の整理エントリ)はこちらをどうぞ


http://d.hatena.ne.jp/Chikirin+personal/  http://d.hatena.ne.jp/Chikirin+shop/

2012-07-03 ガイドブック以外の一冊、それが重要

5月中旬に出版した『社会派ちきりんの世界を歩いて考えよう!』、おかげさまで多くの方に読んで頂き、書評ブログや推薦コピー、感想ツイートもあれこれ頂きました。とても嬉しいです。ありがとうございます。

あの本を読んで「観光もグルメもお買い物も楽しいけど、それに加えて、自分も社会派っぽい旅行をしてみたい!」と思われた方にお勧めなのが、「海外を訪ねる前に、その国を舞台にした本を“ガイドブック以外に1冊”でいいから読んでいく」という方法です。

なんの本でもいいんです。政治や経済に関する難しい本である必要はなく、エンタメ色の強い小説で充分です。それでもガイドブックだけ読んでいくのとは、視点に雲泥の差がでます。見えるものが違ってくるのです。もちろん先におもしろい本と出会い、それがきっかけでその国に旅行する、というのもいいと思います。

私の場合、働いている頃は本を事前に読む時間がなかったので、行く国に関する本を先に買っておき、旅行直前にカバンに放り込んで、行きの飛行機の中で読んだりもしてました。それくらい直前でもいいのです。


というわけで、今日は「これ読んで、ここに行くと、全然違う景色が脳内に拡がるよ!」という本をいくつかご紹介したいと思います。



まずはいつもお勧めしているコレ。

ワイルド・ソウル〈上〉 (新潮文庫)

ワイルド・ソウル〈上〉 (新潮文庫)

ワイルド・ソウル〈下〉 (新潮文庫)

ワイルド・ソウル〈下〉 (新潮文庫)

日系ブラジル移民問題を正面から扱いながらも、皮肉たっぷりの楽しい文章で、サスペンス&ロマンスと、エンタメとしても秀逸な社会派小説です。私はコレを読んで、ブラジルに行こうと即決しました! おもしろすぎて一気に読めちゃいます。



完訳 紫禁城の黄昏(上) (祥伝社黄金文庫)

完訳 紫禁城の黄昏(上) (祥伝社黄金文庫)

完訳 紫禁城の黄昏(下) (祥伝社黄金文庫)

完訳 紫禁城の黄昏(下) (祥伝社黄金文庫)

中国、北京に行く予定があるならぜひこれを読んでいきましょう。清朝のラストエンペラー、溥儀に世界を教えた英国人家庭教師が、中国最後の皇帝の哀しくも壮絶な人生を描写したノンフィクションです。実話だなんてちょっと信じがたいですけど。これを読んで訪れれば、紫禁城の本殿、正面広場に立った時、胸が熱くなるような感慨を味わうことができるでしょう。



塩野七生『ローマ人の物語』スペシャル・ガイドブック (新潮文庫)

塩野七生『ローマ人の物語』スペシャル・ガイドブック (新潮文庫)

塩野さんの大長編「ローマ人の物語」を全部読むのはちょっと大変ですが、とりあえずはコレ一冊でもかなり俯瞰できます。イタリアはもちろん、トルコ、ギリシャ、エジプトなど含め、地中海沿岸のヨーロッパ、アフリカ諸国など、古代ローマ帝国エリアに旅行する人にお勧め。美術館や遺跡観光でも、一味違う臨場感や想像力が得られるようになります。



ハプスブルク家 (講談社現代新書)

ハプスブルク家 (講談社現代新書)

ウイーンを中心に約700年も欧州を支配したハプスブルグ家とは何だったのか、どうやってそんな強大な権力を手に入れたのか? ウィーンを訪れる方はもちろん、スペイン、フランスに行かれる方にもお勧め。王族&貴族時代の政治や権力、そのネットワークなど、当時の権力者一族の“力の根幹”が理解できます。



チェ・ゲバラ伝

チェ・ゲバラ伝

こんなカッコイイ人が実在したなんてびっくりしますよー! これぞ革命家。私はこれを読んでキューバのゲバラ記念館までいっちゃいました。立派な施設なのに誰もいなくて驚いたよ。



ベトナム戦記 (朝日文庫)

ベトナム戦記 (朝日文庫)

戦争とはどういうものか、生きるということ、死に直面するとはどういうことなのか。ひりひりするような従軍記です。今はとても平和になったベトナムに、雑貨を買いに、エステやグルメを楽しみに行くのもいいけれど、その前に一度これを読んでみましょう。ベトナムが全然違う国に見えてくるはず。



アメリカの経済支配者たち (集英社新書)

アメリカの経済支配者たち (集英社新書)

アメリカの大財閥の成り立ちとその力に驚愕します。権力と資金・・民主主義とかアメリカンドリームとはちょっと異なるアメリカの一面が垣間見れます。NYやシカゴ、ボストン、ロスなど大都市に行かれる方、美術館巡りの好きな方にもお勧め。



大航海時代のロマンが、海底の沈没船から浮かび上がります。人類はどうやって世界を発見したのか、という物語。大航海時代って、旅をすることの原点だったんだと、この本を読んで理解しました。読むとあちこち行きたい場所が増えます。私はポルトガルとかスペインにもう一度行きたくなりました。



韓国大統領列伝―権力者の栄華と転落 (中公新書)

韓国大統領列伝―権力者の栄華と転落 (中公新書)

韓国って、つい少し前までこんな壮絶な国だったんだんだよね。びっくり。韓流にハマる前に知っておきたい、お隣の国の歴史と政治です。読んでいると、日本の政治が「子供の遊び」のように思えてきます。



二つの祖国 第1巻 (新潮文庫 や 5-45)

二つの祖国 第1巻 (新潮文庫 や 5-45)

二つの祖国 第2巻 (新潮文庫 や 5-46)

二つの祖国 第2巻 (新潮文庫 や 5-46)

これも凄い本ですよね。カリフォルニアに移民した日系人が、日米開戦で放り込まれた壮絶な運命、そして、アメリカ人として生まれた(DNA的には完全に日本人の)日系二世が日米戦争の中で担わされた役割とは? 国家と個人の関係を深く考えされられます。シリコンバレーだけではない、カリフォルニアと日本の歴史。グローバル市民なんてありえない。いったんコトが起こったら、私たちは常に「お前は何人だ?」と問われる世界に生きているのです。。


他にもいろいろありますが、とりあえずこの辺で。それらの国に旅行した時に、風景がまったく違って見える貴重な体験を与えてくれた本ばかり選んでみました。

夏休みや秋の旅行シーズン、もしくは来年以降の旅行に備えて、みなさんもぜひご一読を。


本を読もう! そして旅にでよう!


社会派ちきりんの世界を歩いて考えよう!

社会派ちきりんの世界を歩いて考えよう!


そんじゃーねー!

2012-07-01 武士、軍人、官僚

江戸時代の人に、「明治時代から後の時代、日本には武士がいないんですよ」って教えてあげても、誰も信じないと思う。

何百年もの間、武士は日本の支配階級だった。江戸末期にもなれば、経済的には恵まれてないけれど、それでも世の中を動かしているのは武士だった。

幕府にしても藩にしても、出世して政治を動かすのは武士であり、いくらお金があっても商人なんてたかだか一般人。間接的に武士に影響を与えるべく、せっせと袖の下を渡すくらいのことしかできなった。社会を動かしていたのは武士なんだよね。

その「武士」という職業というか階級が丸ごと無くなってしまうなんて、当時の人には考えられないことだったと思う。まさかそんなことが起こるとは夢にも思わなかったでしょう。

でもそれは本当に起こった。武士はいなくなった。



明治以来に生まれて1945年までに亡くなった、明治や大正時代の日本人に、「今の日本には軍人さんはいないんですよ」って教えてあげても、多分信じないんじゃないかな。明治維新以降敗戦まで、軍人は日本の支配階級だったし、優秀な人たちがこぞって目指す職業だった。

お見合い市場でも大人気で、資産家や“いい家”のお嬢さんが結婚したがった。必ずしも経済的に恵まれていたわけじゃないけれど、軍人には他の人にはない権限や社会的な地位があったからね。坂の上の雲の世界をみればわかるように、あの当時、国を動かす意思と志をもっているのは軍人だったんだよね。

その「軍人」という職業というか階級がなくなってしまうなんて、当時の人には考えられないことだったと思う。まさかそんなことが起こるとは夢にも思わなかったでしょう。

でもそれは本当に起こった。今や日本にあの頃の意味での軍人はいない。

自衛隊があるじゃないかというかもしれないけど、彼らの本業は災害復旧です。いまだに紛争地帯に送られても、武器ひとつ使用できない。他国の軍隊に守ってもらわなければならないのだから。



武士と軍人にはいろいろ共通点がある。

(1)当時の社会の支配層であり、もっとも優秀な人たちだった。エリートと呼ばれる層だった。

(2)経済的に一番裕福なわけでも、給与が高いわけでもなかった。金銭的な動機で動く人たちじゃなかったということ。

(3)しかし、社会的地位があり、尊敬されていた

(4)実際に社会を動かす組織の中枢にいて、様々な政策を決めていた




何が言いたいんだって?


時代は変わるよね。ってことです。

後はエントリのタイトルをご覧ください。


そんじゃーね。