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Chikirinの日記 RSSフィード

2013-01-06 ポートフォリオ型とコミット型

「ポートフォリオ」という言葉は、いろんな業界でいろんな意味で使われてる言葉なのですが、金融の世界では「分散投資した資産の組み合わせ」みたいな意味で使われます。

100万円を投資する時に25万円ずつ、国債や貯金(のように価格が安定しているもの)と、株式や外貨など(価格変動率が大きいモノ)を組み合わせることを、「ポートフォリオを組む」と言います。

このコンセプトは、仕事について考える時にも援用できます。仕事にも、ポートフォリオを組むような仕事と、ポートフォリオを組まずに、特定の個別案件に深くコミットする仕事の2種類があるんです。


たとえば投資においてファンドマネージャーが、自分が運用するファンドのお金でいろんな株を買うのは、ポートフォリオを組む仕事です。

この場合、ひとつひとつの個別株にコミットしているわけではないので、組み入れている株式は適宜入れ替えます。全体として巧く廻ることが大事なのであって、特定の個別株が値下がりして損をしても、大きな問題ではありません。

エンジェル投資家も、有望そうなスタートアップ各社に投資をしますが、自分が出資した企業の全部が成功するなんてありえないと(最初から)わかってます。

投資した中のひとつが google やfacebook になれば、後の会社は全部倒産しても大成功です。


一方、同じ投資業務でも、自分がコレだ!と思った会社の株式を過半数まで買い取り、経営して企業価値を向上し、売り抜けようとするような場合は、特定企業へコミットをする仕事と言えます。

この場合は、「この会社が行き詰まっても、損切りして他の銘柄に入れ替えればいいや」ってわけには行きません。自分の財産の大半がその会社の株式となっており、自分の時間もマインドシェアも、その特定の会社に注ぎ込んでいます。

なんとかして、その会社の企業価値を向上させねばなりません。これがコミット型の仕事です。


本の編集者もポートフォリオを組む型の仕事です。年間に10冊、10年も続ければ100冊以上の本を作ることになりますが、大事なのは「担当した『○○』という本が何十万部のベストセラーとなりました!」と言えることであって、100冊全部が1万部ずつ売れることではありません。

全然売れない本をヤマほど作っていても、ミリオン(100万部。一年に数冊でるかでないかです)を出せば、一生「○○の編集者です!」と言いつづけられます。


著者の方は、一般的にはコミット型ですが、ポートフォリオ型の仕事をする人もいます。一生に数冊しか本を出さない人や、長編小説家のように、一冊書くのに1年かかるような場合はコミット型です。どの本にたいしても、「なんとかこの本を売らねば!」となるでしょう。

でも、ビジネス本の著者などで一年に5冊くらい書き、それを10年も続けるのなら、「ぶっちゃけ、どれが当るかわからないから、いろいろ出しておこう」という感じになります。最初から一冊にコミットするのではなく、全体のポートフォリオの中で、どれかひとつくらいドドン!と売れたらいいな、って感じです。


メーカーで商品開発を担当すれば、大半の場合はコミット型の仕事です。いろいろ開発してみて、いろいろ販売してみて、どれか当ればいいな、というメーカーはほとんどありません。ひとつの商品を突き詰めて突き詰めて突き詰めて、満を持してマーケットに出してきます。(それでも売れるかどうかはわからなかったりするのがつらいところです)


一般的にビジネスは複層的になっていて、前線の人はたいていコミット型の仕事をしていますが、経営者に近づくほどポートフォリオ型の仕事になります。

インド市場担当者の人は、インド市場に深くコミットしますが、グローバル事業担当役員なら、インドと中国とブラジルを(ポートフォリオとして)ウオッチしながら、投資の濃淡を決めていくことになります。


起業家と投資家の関係も、たいていは起業家側がコミット型(自分が考案したビジネスアイデアを妄信してまっしぐら!)で、投資家側は「まあやってみれば?(どうせポートフォリオのひとつだし)」って感じです。

でも最近はシリアル・アントレプレナー(あちこちの投資家から起業を請け負って、起業部分ばかり次々担当するみたいな人)もいるので、両方ともポートフォリオ型だったりします。


どっちの仕事がいいとか悪いということはありません。どっちが成功しやすいとか儲かるということも一概には言えません。ただし、人により向き不向きはあるでしょう。

ポートフォリオ型の仕事には、ある種の冷たさと割り切りが必要です。すべての要素の成功はありえないので、「巧くいったり全然ダメだったり」という現状を受け入れる必要があります。

一方、コミット型の場合には、とことんこだわる意識と根性が必要です。飽きっぽい人には向きません。それに加え、「トコトンこだわって自分が人生を賭けたのに巧くいかない現状」を受け入れられる度量の大きさ(気持ちの切り替え能力)も必要です。


ちきりんは、わりとよくコミットします。その方が楽しいからね、プロジェクトX的には・・。

でも、コミットするってけっこうつらいので、最近はてきとーにやるようにしてます。コミットするのは好きけどたいしてコミットしない。そのへんが、ちきりんのちきりんたる由縁です。


そんじゃーね



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