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Chikirinの日記 RSSフィード

2013-03-28 電子書籍・自己出版の大きな意義

昨年末から電子書籍リーダーを使い始めて3か月。想像してたより、よく電子書籍を読んでます。

電子書籍は場所もとらないし、すぐに読めるし、紙の本より安いことも多いのでついつい買っちゃいます。

今年は(私の定義では)日本の電子書籍元年なのですが、これにより書籍の単価は下がるけど、販売冊数は相当増えるのかもしれないと(自分の行動を見てると)思えます。


ところで、電子書籍については「読む」だけでなく「書く」にも大きな価値があります。

私は最近キンドルで読んだ下記の本から、その価値に気が付きました。

この本は紙の本がでていません。電子書籍だけなんです。

統合失調症 愛と憎しみの向こう側
(2013-04-02)
売り上げランキング: 27,616


内容は、奥様が統合失調症を患われた男性の手記となっています。

前に、統合失調症になった本人が書いた本を紹介しました

あれは、やや怖い本(狂気とは何か?という本)でしたが、こちらは家族の手記なので、冷静である分、現実的な大変さがよくわかります。

著者の方は自分の妻がこの病気にかかった時、ネットで必死で情報を探し、同じ境遇にいる人の情報を見つけると、すごく貴重でありがたいと感じたらしい。

だから自分も(同じような人への情報提供のために)この本を書こうと思われたそうです。


それにしても小さな娘が二人いて、専業主婦だった妻が発病し、妻の実家からは「お前のせいで娘は病気になった」と責められ、子どもは学校で「お母さんはなんの病気なの?」と聞かれる。

妻の治療のため家を売り払って引っ越し、病院との意思疎通もうまくいかず、時には失踪した妻を探すために街を駆けずり回り・・・と本当に大変。

統合失調症って 100人に 1人弱がかかる病気で、そこまで珍しい病気でもありません。けれどこういう病気は、非常に人に言いにくい。

たとえば妻が癌になった時なら、友人や親戚に「妻が癌になった。有効な治療方法や評判の病院について教えて欲しい」と言えたとしても、妻が統合失調症になった場合、同じことができるでしょうか?

遺伝しているのではないかと思われたら娘の結婚にも関わるかもしれないという心配や、妻が好奇の目で見られるのではないかという心配・・・様々な偏見を考えると、「誰にも言いたくない」と考える人が多そう。

でもこうして当事者が「誰にも言いたくない」と思うことについては、情報が全く外にでてこなくなるんです。

このため学術的に病気について解説した難しい本はあっても、家族が発症したときの家族の気持ちや対応について、わかりやすく説明してあるリアルな情報が全く見つけられない。

著者の男性がネットで情報を探しても、そういった実務的に役立つ情報がなかなか見つけられなかったのは、このためです。


で、彼は自分が情報集めに苦労したからこそこの本を書いたわけですが、それを可能にしたのが「電子出版での自己出版」という方法なのです。

電子出版なら、ほとんどコストをかけずに出版できます。分量や形式に関しても、紙の本のよう規格や制限がなく、誰でも書きやすい。この本も、紙の本ほどのボリュームはありません。

しかも電子書籍は匿名で出版できるんです。

プラットフォーム企業には本名を登録する必要がありますが、一般読者にそれを開示する必要はありません。

だからプライバシーを確保しながら、こういうトピックについても本が出せる。これは大きなメリットです。


「そんなのブログに書けばいいじゃないか」と言われるかもしれませんが、ブログでは誰でも見られるのでダメなんです。

こういうセンシティブな問題についてブログに長々と書くと、必ずお門違いな批判を始める人や、興味本位に他者を傷つけたいと考える人がわんさか寄ってきます。

かといって、ブログ読者を会員限定にしたり、有料コミュニティ内で開示しただけでは、検索にひっかからないため、広く必要な人に情報が届きません。

しかし電子書籍なら 500円など、自由にプライシングができます。たった 500円でも有料にすると、野次馬的な読者は一気に減ります。

しかもアマゾンのキンドル版なら、必ず検索にひっかかります。

つまり心ないコメントから自分と家族を守りつつ、同時に、必要な人には(そういう人にとっては 500円とか 1000円なんて高くはないので、)きちんと情報を伝えられるという大きなメリットがあるんです。


しかもこういう本については、実は「紙の本を出版社から出す」より、電子書籍のほうがよっぽどいいです。

なぜなら紙の本の場合、余程のベストセラーでも無い限り、スグに書店の棚からは無くなってしまいますが、電子書籍ならいつでも手に入れることができるから。

数百万部売れたような本でも、数年たてば紙の本は書店から消えてしまいます。ましてや大して数のでないこういう本が、書店で見つけてもらえる可能性は非常に低い。

このように電子書籍の自己出版というのは、そういう趣旨ではものすごく「使えるメディア」なんです。


統合失調症だけではありません。

他者に言いにくい病気や状況は他にもあるし、性的マイノリティであることや、息子が何十年も引きこもっているとか子供が発達障害だと診断されたとか、薬物使用歴や虐待歴から立ち直ったといった体験談など、おおっぴらに人に言いにくいことはたくさんあるでしょ。

でも、それについて真剣に悩む人にとって、他の人の体験談はとても価値があるはずなんです。

そして、こういった「言いにくい。だから情報が無い」という悪循環から抜け出す手立てとなるのが、匿名での電子出版という方法なのです。


こういう本は、売れる必要さえありません。書き手も儲けたいわけじゃないし、題名に病名さえ入れておけば、探している人は必死で検索するので、本がランキングの下の方にあっても、必ずそれを見つけ出せます。

「他者には言いにくいが、情報が少なくて困っている」・・・同じような状態に悩んだ経験のある人は、ぜひその体験談を電子出版で出すということも考えてみてください。

それは多くの同じような境遇の人の助けにつながることでしょう。


この本は内容的にもしっかりした読み応えのある本でしたが、そういう新しい電子出版の自己出版という新しい可能性を教えてくれたという意味でも、非常に価値ある一冊でした。


Kindle本は、iPhone, iPad, アンドロイド端末などでも、無料アプリをダウンロードすれば読むことができます。詳しくは下記を。


統合失調症 愛と憎しみの向こう側
(2013-04-02)
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そんじゃーね


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2013-03-25 民主主義は死んでるけど、資本主義は超元気

そろそろ正直に認めたほうがいいと思う。民主主義という制度は終わってる。まったく機能しないことが明らかになってる。

イタリアやギリシャみたいに、国が破綻しそうな段階でさえ(だからこそ?)民主主義は全く機能しないし、以前にも書いたけど、アメリカだってアホ丸出し(→ 「どの国もホントあほ」)


日本がダメダメだという日本人は多いけど、借金するのに何の問題も起こっていないこの段階で消費増税を決められるこの国はすごい。

あたしが外人だったら、「日本すげえ!」ってびっくりする。

ほかの国は、国債が発行不可能になっても、税金上げるのに大反対でデモとか暴動とか起こるのに、日本てホントまじめ。

(話はそれるけど)欧州を見てると、消費税って 25%くらいのところに天井があって、それ以上は無理なのかなという気がするんだけど、日本は今、予定されてる増税が終わっても、まだあと 15%の増税余地がある。しかもベースとなる消費額も大きい。

すごい国だな、ホントに。


ただし、あれだけ裁判所が嫌味を言っても、選挙の区割りひとつ変えられないんだから、日本だって民主主義が機能していないという点では同じ。

その一方、前回、「企業は国家を超える仕組みになる」と書いたように、資本主義はものすごい元気。

社会の在り方を変えるのは、もはや民主主義ではなくて、資本主義のほうだよね。


国家=民主主義→ 機能しなくなってる

企業=資本主義→ めっちゃ元気


と書けばわかりやすい。これから企業はどんどん国家を超えていく。(そして国に頼ってる企業は、国と心中することになる)



911とか SARSとかリーマンショックとか、世界を揺るがす大問題が起こっても、着々とそれを乗り越えて新しい地平を切り開く企業社会、というか資本主義。この逞しさにはホレボレする。

しかも、民主主義が欧州でもアメリカでも日本でもロシアでも中国でも機能していないのに対して、資本主義は、すべての国で機能してる。

建前さえ民主主義じゃなくても(たとえば中国とかね)、資本主義は機能することも証明されてる。このふたつは決してセットじゃない。


ちきりんだって、「資本主義 + 独裁」のセットがベストだとも思わないし、「資本主義+アナーキズム」がいいとも思わない。なんだけど、少なくも「今の民主主義システム」は死んでる。

何度も関連エントリを書いているように、一票の格差は即刻解消してほしいし(てか、選挙無効でしょ!? 最高裁の腰抜けおじさんたちには死んでも言えないでしょうけど)、ネット選挙も速やかに準備すべき。

だけど、そのふたつで民主主義が生き返る(機能し始める)とも思えない。それらは必要条件に過ぎない。


民主主義っていうのは、市場型の意思決定システムなわけだけど、市場が機能するにはものすごくいろんな条件が必要になる。

資本主義も市場システムなんだけど、民主主義より対象とする分野が圧倒的に狭い。そこでは、貨幣価値と生産性最大化という最大公約数的な全体の意思がある。

でも、民主主義にはそれがない。みんなが目指してる方向自体に「だいたいこっち」という目途が(目処さえ)ない。


それに、資本主義には弱者を切り捨ててもいいという原則がある。たとえば、入社する人を選べるし解雇もできる。だから機能する。

国は誰も首にできない。どんなアホな国民も 1票を持っている。

民主主義は資本主義より圧倒的に複雑で条件が多く、機能させるのがとても難しい制度なのだわ。


たぶんもっと分野を絞った局地的な運営システムに分岐させて、新しい運営システム(OS的なもの)を複数作っていく必要があるんでしょう。

このまま「全体を統括する仕組み」として期待しても、もう復活不可能な気がします。


まあ、シンガポールみたいな都市国家なら、資本主義国によって国を運営するみたいなことも可能だとわかったわけだから、分野なのか規模なのかわからないけど、「細かく刻む」という方法論はヒントになる。

(あたしはシンガポールが民主主義だとは思ってないけどね)


いずれにせよ最近は、自分の目の黒いうちに民主主義が機能する時代がくるとは思わなくなった。

代わりにこれからは、資本主義が唯一の(社会を変えていく)ルールとなる世界を見ることになるのかも。


おぉ怖っ!


なのでとりあえず、毎日おいしいものを食べ、楽しく生きていくのがいいと思う。


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そんじゃーね。


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2013-03-21 企業は国家を超えた仕組みとなる。あたしもマジで、そー思う。

この本、おもしろかった。

アップルやグーグルのみならず、マクドナルドからエクソン、モンサントまで、国境を超えて世界を「俺様の世界」に変えていく巨大グローバル企業の実態について書かれた本です。


→ キンドル版は 610円


働く人への示唆という意味では、ちきりんが以前に書いたこちらのエントリ → 「新)4つの労働者階級」とまったく同じことが書いてあります。

というか、ちきりんは「今から世の中はこうなりますよ」と書いてるのだけど、この本の中では「いや、もうそうなってますよ。これ見てください」と、実例が掲載されています。

取り上げられている業界(会社)は、アップルやグーグルなどの情報関連、マクドナルドに食肉業者や穀物メジャーなど食料分野と石油メジャー。


これって、いわゆる「現在のインフラ分野」なんだよね。

1.食料

2.エネルギー

3.情報


そういう大事な分野で、アメリカ資本の巨大グローバル企業が世界中を着々と「俺様ルールの世界」に変えていく、そのすさまじさが描かれていて、大変おもしろく読みました。実態が余りにすごすぎて、読んでてウゲウゲしちゃう部分も多かったです。

なお本書内にも書いてありますが、日本人から見れば彼らは「アメリカの会社」ですが、彼ら自身は全くそう思ってない。だから、国境を越えられるんです。これはちきりんが前に勤めてた会社も全く同じでした。反対にいえば、日本の企業は「日本の企業であり続けよう」とするから、国境を越えられない(グローバルになれない)んだとわかります。


学生さんや、日本企業だけで働いてきた人など、こんな世界は想像もできないという人は是非読んでみればいいと思います。

特に学生さんなんて、就活に当たってつまらないノウハウ本を読むより、こういう「世界はどう回っているのか」が書いてある本を読んだほうが絶対いい。親とか先生とか、世界がどうなりつつあるのか全然知らない人だけからアドバイスを貰ってたら、判断が30年遅れになっちゃうよ。


★★★


この本には、大きくふたつのことが書いてあって、

1.世の中、こうなってまっせ!

2.だからこれから働く人は、こうすべき!

に、分かれています。


1に関しては、資料も豊富で臨場感に溢れてて、とても興味深く読めました。特に、「企業は国家を超えようとしている」という点については、ちきりんもまさにその通りだと思います。

2については、やや煽りすぎなところもあるとは思いますが、「これから大事になるのは創造性です。アートと言ってもいい」という、まとめがなされていて、これは、最近ちきりんの書いたエントリとも通じるところがあり、「Logic, Market, and Art」、へーって思いました。(←なんなんだ、この小学生みたいな感想は・・)


とはいえ、他にもごく実務的な「グローバル企業で働くには、こういうスキルが必要なんですよ」という説明もまとめて書いてあって、さっきも言ったように、アメリカの企業ってどんなもんだか知らない人は、ほんと一回は読んでおくべき。

自分が日本社会でしか働いてきてなくて、それで子供に就職や進学のアドバイスするとかって、今やちょっと危なすぎると思うんでね。


★★★


最後に(内容とは関係ないんですが)、この本を紹介しようと思って、あらためて本を手に取って気づいたことがひとつ。

本の表紙に著者名と肩書きが載ってるんだけど、その肩書きが

「元・米アップル社シニアマネージャー」

となってるんです。

これって肩書きなんですかね?


経歴が「元○○」ってのはわかるけど、肩書きが「元○○」なんだろうか。じゃあ、今は何なんだ?というと、そっちは“経歴”の欄に書いてあります。

著者は長く日米のアップル社で働いていた人なので、本を売りたい側(出版社)としては、当然、今の職業より元の職業を打ち出したいというのはよくわかります。

だから表紙の名前の下には「元○○」だけが書かれてる。



ご本人が同意されてこうなっているんでしょうから、私には何の文句もないし、本を売るという目的ではいい方法だと思います。ただ他にも、もっと巧い方法はありそうに思いました。

“元職”で本を売りたい人はたくさんいて(というか、会社員は一般的に、退職して元職にならないと書けないことが多いからね)、そういう人の本の表紙をあれこれ見ると、いろんな工夫があって参考になります。


いずれにせよ、読んでソンのないお勧め本です。


内容的にも文量的にも電子書籍で読むのが向いてるかも。(iPhone, iPad, その他スマホ、kindleをお持ちの方は電子版をどうぞ)

→ キンドル版はこちら


そんじゃーね



関連エントリ 「民主主義は死んでるけど、資本主義は超元気


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2013-03-19 そんなに武士になりたいか?

あたしが 「いまさら大企業に入ってどーすんの?」 って書くと、すぐに「でも、ちきりんさん自身は、最初は大企業に入ったんですよね?」って言ってくる人がいる。


あんたね。


あたしが就職したのはもう 30年近く前だよ。


明治 30年に

元サムライだった商売人 「もうサムライの時代は終わった」

ぼく 「でも、おじさんだって、最初はサムライになったんでしょ!?」


とか言ってるのと同じですよ。


なりたきゃ、なれよ!


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そんじゃーね。


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2013-03-18 時代は変わるんだぜ

前回、「今どき事業戦略を立てる時、自社の強みは何かみたいなところから考え始めるなんて、もうそれだけで終わってるよね」と書きました。

でも、戦略考えるときに、自分の強みから考えるって王道じゃないの? そういうフレームワークも習ったことあるよ、という人もたくさんいるでしょう。

じゃあなんでこういう話になっているかといえば、それは「時代が変わったら、答えも変わるのよ」って話です。


確かに昔なら、自社の強みから何を作るかねって考えるのもアリだったと思います。なぜなら「自社の強み」って、(自社にとっても他社にとっても)そうそう簡単には変えられないものだったから。いわば、固定的な条件だったんです。

たとえば、長年かけて培ってきたノウハウだったり、特許で守られた技術だったり、何年もかけて細かく調整&改善してきたラインの行程だったり。

うちは持ってるけど、他社にはおいそれと真似できない、一朝一夕には作れない、手に入れられない。そういうのが「自社の強み」でした。で、それを活かして勝負しようぜ、みたいな話が成り立ったわけです。


でも今はもう時代が違います。

強みは買ってこれたり、自分が不得意でも得意な会社に委託できたり、技術だって売ってもらえたり一緒に利用したり(勝手に使って訴えられたり)、共有&調達できるものになったんです。

しかも、世界中から会社が集まって「じゃあ、こうやったどうよ?」みたいな話し合いを通じて、作り方さえ決めていく時代になりました。そこではみんな自分の手の内(強み)を見せ合って、まずは仲間に入れてもらえるかどうかで最初の勝負が決まるんです。


オープンイノベーションといってもいいし、水平分業といってもいいし、コラボレーションと言ってもいいんだけど、もはや「ひとりでスゴイもん作る」っていう姿勢に拘りすぎること自体がヤバくなってる。

これって個人でも企業でも国家でも同じでしょ。ひとりの人、ひとつの企業、ひとつの国家に強みがあるのは(ないよりはよほどマシだけだど)、それだけじゃ、勝てなくなってる。あのアメリカでさえ、自分ひとりで中国と対峙しようとしないでしょ。仲間を増やして勝負しようとするじゃん。


覚えておいたほうがいいのは、「友達のいない勉強のできる奴」とか、「一人で何でもやろうとする奴」の時代が終わろうとしてるってことだすよ。

利害を共にする人たちと組んで、それぞれの強みを持ち寄って、全体として超スゴイものを目指そう、そうじゃないと市場で選んでもらえない、という競争になってる時に、ひとりで頑張る!なんて無理すぎなんです。

なんでもかんでも自社(&系列・仲良し会社)だけでやろうとするから、「なんかショボイよね」みたいなものが出来上がる。


時代が変われば、答えは変わるってこと。


そんじゃーね。

2013-03-12 自分の強みを活かすというアホらしい発想

まさかと思いますけど、「自分の強みを活かして勝負する」ってのが「いい作戦だ!」と思ってる人はもういませんよね?


この「自分の持っている価値あるものを活かして○○する」という発想法のリスクというか、限界については、しっかり意識しておいたほうがいいです。

これって、あきらかに「供給者視点」であって「消費者視点」じゃないでしょ。そこが致命的なんです。


↓こう書けばわかるかな。

供給者視点:自社の持つ圧倒的に優れた技術を活かして、商品開発!


消費者視点:消費者が熱狂するほど欲しがるものを、世界中から他者の技術を集めてでも開発!

前者と後者の典型的な会社名も思い浮かぶでしょ?


前者は「差別化が大事」とか思ってるのかもしれないけど、後者は差別化なんて気にもしてない。「差別化」ってのは対競合の視点であって、対顧客の視点の言葉じゃないんだよね。競合と顧客、まずはどっちを見るべきなのか、よくよく考えたほうがいい。

てか、まずは顧客を満足させ熱狂させるのが最初でしょ。競合のことはその後でいい。

そこを間違えてるから、前者に対して顧客は「あんたの技術がどんだけスゴかろうとオレには関係ない。要らんもん作ってくれても買うわけない」ってことになる。


今どき事業戦略を立てる時、「自社の強みは何か」みたいなところから考え始める会社って、もうそれだけで終わってる。

そういうのって、技術を企業が囲い込んでいた時代の発想なんだよね。今や、技術は世界中の企業(や大学や研究機関や個人)が持ち寄って組み合わせて使うものになってるんだから。


わかってる?



個人でいえば、「やればできるのに(なんでやらないの?)もったいない」みたいなのも同じ。

んなもん、ナンモもったいなくないってば。


人間は「やればできること」ではなく、「やってて楽しいこと」に人生の時間を使うべきなんです。

「自分が他者より巧くできることをやるべきだ。それを選ばねばならぬ!」って、超貧乏性な発想だよね。

ピアノが少々巧くたって、好きじゃないなら長い時間かけて練習したってしゃーないやん。そんなん人生の無駄使いでしょ。苦痛なだけじゃん。宝なんて持ち腐れてればそれでいいんです。

子供に関しても、「この子の得意なことは何だろう?」とか考えてるとトラップにはまる。「この子のやりたいことは何だろう?」って考えないと。

就活の時も、学生さんはよく「私の強みは!」みたいなアピールをしてるけど、あんなの真面目に聞いてる人事なんかいるの? 面接する方が見てるのは「こいつは役に立つか?」ということであって、その人が自分で考えた強みとか、超どーでもいい。



この辺の本↓にも、言い回しはこのエントリより圧倒的にビジネス的だけど、突き詰めると全く同じことが書いてあります。どちらにも「強みを活かすとか言っててはダメ」って書いてある。

成功はすべてコンセプトから始まる

成功はすべてコンセプトから始まる


上記はけっこう実務的に参考になりました。下記はちきりんの尊敬する野口先生の本。いつもながら超マトモなことをおっしゃってます。どちらの本もkindle版があるので今すぐ読める。いい時代だね。


就活する時とかも気を付けたほうがいいよね。「わが社の強みは・・」とか威張ってる会社はロクなもんじゃない。そんなもん、消費者(=お金を払う人)には何の関係もない。

そうじゃなくて、「うちの商品はこれだけ売れてるんです!」って言ってる会社のほうが圧倒的にまともです。


強みから出来てようが、弱みから出来てようが、買ってきて集めた技術から作ったものだろうが、「これが欲しかった!!」みたいなもの作ってくれれば、それでいいんです。

反対に言えばこれからは「これが市場から求められてる!」と思うものなら、外部から人を雇ってきてでもわが社が提供する! という覚悟のある会社じゃないと生き残れない。

「自分の強みを活かしてできる範囲」しかカバーしない企業なんかお呼びじゃない時代になってる。



このブログが人気化したのは、ちきりんが、自分の強みである文章力を活かして何かできないかと考えた上で、ブログを書き始めたからなの? 

そんなわけないじゃん。読者は私の強みなんてモノには何の興味もないはず。そうじゃなくて、ここに読みたい文章があるから読んでるだけでしょ。

あたしだって、文章が人より得意だからブログを書いてるわけじゃない。アホみたいなことをだらだら書くのが好きだから書いてるだけ。そうでなければブログが人気化する前の3年半、一人で黙々と書き続けられるわけがない。

しかも、「何を書いたらおもしろいかな!?」の前に、「どうやったら他のブログと差別化できるか」なんて考えてたら、お話しにならない。重要なのは自分の強みなんかじゃない。何が求められてるの?ってことなんです。


大事なことを間違えちゃいけない。


くれぐれも「自分の強みを生かす」的アホな発想に陥らないよう気を付けましょう。


そんじゃーね



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2013-03-08 競争ってすばらしい

アップルが日本の電子書籍市場に(腰を据えて?)乗り出すと報道されてました → 日経新聞記事

電子書籍マーケットに関しては、去年末の kindle 発売から一気に活気づいてますね。

オオカミ少年的だった“電子書籍元年”がようやくやってきた、と感じてる人も多いでしょう。(個人的には、2013年を元年と呼ぶべきと思ってます)


日経の記事の中には、

iPhoneの国内累計出荷台数は1700万台、iPadは380万台 2012年9月末現在、MM総研調べ

とあります。

累計数なので(買い替えを考えると)、iPhoneを使っているのは 1200万人くらいとみるべきなのかな? 一機種でこれは大きな数字ですね。

一方のiPadは 380万台とのことですが、これならまだ他の端末や他の方式が勝てる可能性は十分にありそう。

iPhoneはブログを読むにはいいけど、漫画や雑誌、本を読むには小さすぎるでしょ。


★★★


さて、アマゾン、グーグル、アップル、楽天など、入り乱れて参戦してるこの市場ですが、こういうのを見てると「本当に、競争ってすばらしいよね」と思います。


昨年の半ば、楽天が(体制も整ってないのに)「とりあえず始める!」と宣言したからこそ、日本の電子書籍市場は始まりました。

これに焦ったアマゾンは、kindleの発売準備が整う何か月も前から“coming soon!”と宣言せざるを得なくなったのです。

楽天が見切り発車をしなければ、キンドルの発売は今年にずれ込んでいたんじゃないでしょうかね。


さらにキンドルが絶好調で、iPhone, iPadにもアプリをダウンロードして読む人が増え始めるとなれば、さすがのアップルも焦ります。

iBookとしても日本語書籍の販売開始をこれ以上、遅らせるわけにはいかないということでしょう。

各社の熾烈な競争がなければ、みんなもっとゆっくりやってたかもしれないのです。

そういう意味では、「見切り発車した楽天エライ!」とも言えます。

楽天にはこれからもそのポジショニングで頑張ってほしいものです。



てか競争する複数社が存在してなくて、たとえばアマゾンもグーグルもいない世界でアップルだけが存在してたら、どんなにエグイことになっただろうと思うし、

楽天がいてくれるからこそ、アマゾンジャパンってあそこまで(他国のアマゾンに比べても)配送費が安いんだよねとか、

グーグルがめちゃをしないのは、フェースブックがいるからだとか

競合がいることで、どれほど消費者が守られ、メリットを享受できるているか、痛感することは多々あるわけです。


「反対、反対、絶対反対!」しか言わなかった成田空港&地元関係者が、羽田空港の国際化が打ち出されたらいきなり「夜も飛行機飛ばそうか」とか「値段さげようか」「アクセス改善しましょう」なんて慌てて言い出したのもまったく同じで、


競争ってほんと大事!


なんで地方分権に反対する人がいるのか、マジでわからないよ。

行政こそ競争させるべき。最もどんくさいものを競争させずして、どうやって改善するの?


★★★


話を戻しましょう。ご存知のように、ちきりんはかなり明確な“アマゾン押し”なので、この本も読んでみました。

創業者のジェフ・ベゾス氏って、スティーブ・ジョブズ氏の神格化度合いに比べるとあまりに割安判断をされてる気がする。あたしはこの人こそすごいと思ってるんだけど。


ワンクリック ジェフ・ベゾス率いるAMAZONの隆盛
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本を読んで思い出したけど、アマゾンは一時期、ものすごい借金をしてシステムや配送センターを整え、海外にも積極投資を続ける一方、財務的にはずっと赤字で、全然利益が出せないと叩かれてた時期がありました。

ジェフとしては意図的な作戦(戦略)であったと思うけど、市場からの評価は無視できない。だからある時点で、(リストラまでして)利益を出す方向に舵を切ったわけです。


でも、最近また彼らは、採算度外視で(会計上の利益を出さずに)大きな投資をしようとしています。

電子ブックもそうだし、本以外のあらゆるものを売る小売業として世界でドミナントになるという目的のために。

ここから数年、ネット販売の世界では、すんごいおもしろいことが起こると思います。

超楽しみ。


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そんじゃーね。



<関連過去エントリ>

すべてがアマゾン経由で売られる時代へ

家で試し履きできる靴の通販ジャバリ体験記

アマゾンがいろいろ安くなってる気がする(本以外の日用品でも!)

お勧めキンドル本とアマゾンの準備着々

アマゾンと楽天

キンドルFireがやってきた!

2013-03-06 Logic, Market and Art

“色の三原色”というのがありますよね。たとえば、光の三原色はで、すべての色はこの3つの色の組み合わせ(混ぜ合わせ比率)により作り出されます。

それと同様、最近ちきりんは「世の中のすべてのものは、この3要素の組み合わせで決まってるんだな」と思い始めました。

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人もモノもコンセプトも、この3つの要素がどれくらいずつ含まれているかで、表現できそう。

たとえば極端な場合、「俺はロジック100%!」という人もいれば、「あいつってアート100だよな」という人や「マーケット100%な野郎」も存在します。

もちろん大半の人は、3つの要素の混じり合ったところにいて、そこには無数のバリエーションがありえます。

気の合う人、合わない人というのは、この比率のバランスが大きく異なるのでしょう。また反対に、自分と比率の違う人と話すと、新しい発見があって楽しいし、すごく勉強になります。


感覚的にわかると思うけど、それぞれ説明しておくと、

・ロジック=理屈の世界、あるべき世界

・マーケット=本能の世界、自然の世界、

そして

・アート=感覚の世界、説明できないイメージの世界


“ちきりん”という人間を自己分析すれば、

ロジック40、マーケット40、アート20かな。

表記方法は、[L40, M40, A20] ですね。


志に関してだと、

「あるべき社会を実現すべき!」みたいな志はロジックから生まれたもの、

「全員が自分のやりたいことやればいいのさ!」という意見はマーケットの人のもので、

「社会がどうなろうと関係ない」のがアート


ビジネスを設計するときにも、

「こういうサービスにはニーズがあるはず」がロジック

「俺の嗅覚的には売れるぜ」がマーケット

「売れるとか売れないとかどうでもいい」がアート


社会政策の場合は、

「弱者を救うべき」がロジック

「適者生存でしょ」がマーケット

「生にこだわるべきではない」がアート


食事について

「体にいいものを食べよう」がロジック

「旨いもん食おうぜ」がマーケット

「人はパンのみに生きず」がアート



人には、ロジックがないと動けない人もいるし、マーケット感覚に沿って自然に動く人もいる。それらを超越した世界に漂う人もいる。


あなたの比率は? 


表記方法はこちら[Lxx, Mxx, Axx]

合計は100です。計算を間違えないように。



あと、子育ての時はLを重視しがちだけど、実は世の中はMを身につけたほうが断然、食べていきやすい。

それと、Aの多い子は食べていけなくても(本人は)ぜんぜん関係なく幸せになったりできるので心配しなくていいです。


3つのうち、ふたつを持っていると器用に生きていけるし、3つもってたらそれだけで最強です。でも、ひとかどの人物になるのは「どれかひとつに集中して秀でた人」だけ。


世の中、そんなもんです。


そんじゃーね!


<関連エントリ>

「研究者・勝負師・芸術家」


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2013-03-03 あたしもあなたも、録画されてます

深夜にひとりで帰宅中だった若い女性が、吉祥寺で刺されて亡くなりました。未成年の少年二人が、金目当てで刺殺したとのこと。

被害者の女性は 1月に埼玉県から吉祥寺にでてきて、一人暮らしを始めたばかりだったらしい。ご冥福をお祈りします。

それにしても道を歩いてる 22歳の女性のカバンを奪っても、成果の期待値はせいぜい数万円。それだけのために、二人がかりで人を刺すとか、ちょっと日本じゃないみたいですね。

なんだけど、今日のトピックはそこじゃありません。今回、何度もテレビで流れた監視カメラの映像について。


今、世界中の都市はものすごい勢いで録画されるようになってます。街角への監視カメラ設置は、911が起こった 2001年に大義名分を得、2005年のロンドン同時爆発事件以降、一気に普及しました。

ニーズがあれば供給も増え、よくできたシステムが開発されます。最新の街角監視システムは「どんだけ?」っていうくらい進化してる。


監視社会

監視社会


一番最初にそれを感じたのは、オウムの高橋容疑者が逮捕された時でした。日本でも駅や地下通路はほぼ全部、網羅的に録画されてるんだなと、あの時、理解できました。

それとこの前、湘南の猫に記録媒体をくっつけたとかいう、パソコン遠隔操作事件の容疑者が捕まった時にも。

湘南なんて広い地域で、特定の猫に記録媒体をくっつけたという行動が、監視カメラで割り出される。都心の駅だけじゃなく、ああいうエリアまで監視カメラが網羅し始めてるんだわね。


そして今回。逃げていた少年は、深夜の犯行後、始発でいくつかの電車を乗り継いで逃走してるのですが、警察は彼が、どこで何線に乗ってどこで降りて、何線に乗り換えて・・をほぼすべて把握してた。


監視カメラ・・・すごっ!


ざっと考えただけでもこれだけの場所は ↓ 確実に録画されてると思う

・高速道路の出入り口や分岐点・・・車のナンバーはもちろん、前からの映像も

・幹線道路の要所

・JR,私鉄の駅の改札

・駅周りの地下通路(交差部分はマストで)

・新幹線ホームや乗り換え口

・空港のセキュリティやチェックインカウンター

・タクシー乗り場

・大型バスステーション

・フェリー乗り場


・コンビニの入り口前

・ファストフード店の出入り口

・大型ショッピングセンターの各出入口

・カラオケ店内外

・パチンコ屋内外

・ゲーセン(内外)、映画館など

・ネットカフェ受付、出入り口

・銭湯、サウナなどの施設入り口


・ホテルの出入り口、ロビー

・銀行支店内外

・銀行以外のATM周辺

・時間貸しパーキング

・新宿、渋谷等、繁華街の目抜き通り

・大型ビルや大型マンションの出入り口

加えてタクシーや公共のバスにもカメラがつき、「動く監視カメラ」状態に!?


私たちがテレビで見てる監視カメラの映像は、警察が把握してる映像のごく一部だし、画質も相当にぼかしてあるんでしょう。(プライバシー問題が勃発するとヤだし、逃走の参考にされると困るからね) 

実際には、もっともっとたくさんの鮮明な映像を、彼らは手に入れてるはず。

今回も最初は、最後に降りた駅名がぼかされていました。(日野だったのに、立川方面と報道) 犯人に、場所を特定してることを知られたくなかったのでしょう。

しかも今は膨大な記録の中から特定の人を“顔認知・検索”で探せるから、分析にも時間がかからない。


おーこわっ


今や家を一歩でると、あなたも私も、完全に録画されてる。

悪いことして逃げるのはもう無理です。外を逃げ回るくらいなら、家で韓国ドラマでも見てたほうがいいと思う。


大量監視社会―マス・サーベイランス 誰が情報を司るのか

大量監視社会―マス・サーベイランス 誰が情報を司るのか


念のための注)このエントリ読んで、「ちきりんは監視社会に警鐘を鳴らしてる!」とか言わないように。鳴らしてません、そんなもん。


そんじゃーね。



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