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Chikirinの日記 RSSフィード

2013-06-29 未来の働き方アンケート (001) 結果サマリー 2/2

先日おこなった、“未来の働き方”アンケート、第一回 の後半部分の結果です。


おそらく最も関心が高かったであろう質問、

Q5) 自分は何歳までフルタイムで働くことになる(であろう)と思いますか?

についての回答を、年齢別・経験社数別(自営業も1社とカウント)に集計してみました。


「いつまでフルタイムで働きたいか?」という質問ではありませんので、みなそれぞれに現実的に考え、回答してくださった結果だと思います。

下記の(最初の)グラフでは、現在フルタイムで働いている人のみについて集計しています。(まだ働き始めていない学生さんらの回答は含まれていません)


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非常に興味深い結果となりました。個人的に発見だったのは、「できるだけ長くフルタイムで働く」と考えてる人(グラフの一番右側)は、年代に関わらず人口の 2割ほど存在するんだなってことです。

新著の「はじめに」に書いてますが、“森光子さん”であり、“キングカズ”であり“工藤公康氏”的な人は、だいたい 2割くらい存在しており、世代が変わっても減ってないってことです。(このブログの読者の中で、ですが)


反対に「早期引退派」とまではいえませんが、「フルタイムワークは、せいぜい50代まで。もっと早くてもいい」と考えている人(グラフの右側寄り)は、それよりは相当多いとわかりました。

想定年齢を訊ねた結果がこれですから、「希望年齢」を聞いたら、もっと多くの人が「早めにフルタイムワークを切り上げたい」と思っているのではないでしょうか。

そして、その比率を年代別に比べて見れば、若いほど「フルタイムワークは、せいぜい50代まで」と考えているとわかります。20代の人なんて、半分の人が50代までで・・・と回答しています。

まじですか。さすが、ちきりん読者! ですね・・。


とはいえ、年を取るごとに「フルタイムワーク終了の想定年齢」は上がってきます。

・現実的に考えて早期引退なんて無理だろ? という状況が見えてくる、のか、もしくは

・実際にその年齢になってみたら、やっぱりあと10年くらいはフルタイムワークで働きたい! と思い始めた、

ということなのかな?


さらにこの分析で私が一番おもしろかったのは、各年代とも「経験社数が多い人と、1社のみで働いている人の回答に顕著な違いがある!」ってことでした。

グラフの一番右側の「できるだけ長くフルタイムワーク!」という回答の数字をみてください。20代で、1社のみの経験の人でこの回答を選んだ人は15%ですが、4社以上の経験がある人では35%と、ダブルスコア以上の差なんです。

これは他の年代でも同じで、50歳以上の人でも、1社だけを経験(ほぼ終身雇用的)の人では13%ですが、4社以上の経験がある人では、29%弱となります。

転職経験の多い人には「できるだけ長くフルタイムで働く」と考えている人が非常に多く、転職経験のない人では、そう考えている人は一気に少なくなります。


これ、50代だけに差があるなら、「何度も転職を繰り返している人は貯蓄ができてなくて、長くフルタイムで働かないといけない状況なのでは?」とも考えられます。でも20代でも大きな差があるんだよね。

20代で「できるだけ長くフルタイムで」と考えている人は、経済的な状況云々というより、意思としてそういう傾向が強いのだと思うのです。なので、やはり「1社でずっと派」と「数回の転職もあり」って人には、なんらか働くことに関する意識の差があるんでしょう。


それと、終身雇用的な環境で長く働いてきた「50歳以上・1社のみ経験」という人の回答はかなりユニークで、「フルタイムワークは60歳まで」という回答が非常に多く、「できるだけ長く」という回答が少ないんです。自身がすでに50歳以上なので、その多くが「フルタイムワークはもうそろそろ終わり」と考えてるってことです。

これ、長く同じ会社で(それなりに我慢して働いてきた結果、)「もういい加減、フルタイムで働くのは嫌だ!!!」と思っているのか、

「かなりの貯蓄もできたし退職金もそこそこ出るので、もうそんなに長く働く必要はない」という余裕の表れなのか、どっちなのか興味深いです。

いずれにせよ上記のグラフを上から下にざっと見ると、この「50代・1社のみ経験」の人だけ、回答傾向が他と違うのは、ちょっとおもしろかったです。(上から下に視線を流すと、ここで目がとまりますよね)


★★★


最後に、「現在フルタイムで働いていない」人の回答結果が下記です。

一番上のデータが、学生さん(19歳を含む20代で、一度もフルタイムワークをしたことがなく、将来はフルタイムで働く予定)、

下のふたつが、「一度フルタイムで働いているけど、今はフルタイムではない、そして将来はフルタイムに戻ると思う」という人のデータです。育児など何らかの理由のために、一時的にフルタイムワークを中断している人でしょうか。


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やはり若い世代は「そんな長くフルタイムで働くとか、考えられない・・」と思っている人が多いようですね。学生さんの4割以上が「フルタイムワークは50代まで」と回答しています。

ただ、まだ働いたことのない学生さんより、(最初の図で示した)すでに働き始めた20代の人のほうが、「早めにフルタイムワークを脱出!」と考えている人の割合は多いんです。

学生のほうが「早期引退したい!」と思ってるならともかく、働き始めた人のほうに「早めに・・」と考える人が多いってのは、ちょっとおもしろいですね。やっぱり実際に働き始めてみると、「こんな調子で長く働くのはヤダ」的になるのかもしれません。

まっ、いすれにせよこの年代は70歳定年がほぼ確定の世代です。早めにフルタイムワークをやめたければ、それなりの準備が必要なんだろうな。


というわけで、まとめとしては、

・「できるだけ長くフルタイムで!」と考える人は、どの年代にも一定割合( 2割前後)存在する


・1社でずっと働く人と、何社かの転職を経験する人は、働くことに関する意識がかなり違う。転職経験のある人ほど「生涯現役思考」が強い


・「フルタイムワークは50代か、せいぜい60歳まで」と考える人は(全体の半分くらいと)非常に多い


・特に20代など若い世代で、「早めにフルタイムワークは終わりに・・」という傾向が強い

というあたりでしょうか。



あと、補足で計算してみましたが、

・40代以上で、

・10年以上フルタイムで働いた経験があり、

・今はフルタイムでなく、もうフルタイムには戻らないという

・世帯主

つまり、すでに第二の人生を始めたと思われる人は、270人いました。これは同世代の全回答者数の 4.7%にあたります。

ちきりんブログの読者に限って言えば、21人にひとりは(ちきりん同様、)すでにそういう生活に入っているんですね。感慨深いです。


ご協力くださったかた、どうもありがとうございました!


そんじゃーね



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2013-06-27 未来の働き方アンケート (001) 結果サマリー 1/2

先日おこなった、“未来の働き方”アンケート、第一回の結果を公表します。たくさんの方に回答いただき、有効回答数は7000人を超えました。ご協力ありがとうございます!


まずは、回答者の年齢とフルタイムワークの経験年数を面積で表したのが下図です。

縦の割合は、回答者の年齢分布です。19歳以下は 7011名中 17名のみだったので面積としては見えません。(なのでこれ以降の集計では、20代以下と合算して集計しました)


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上図を見る限りちきりん日記の読者は、大半がずっとフルタイムで働いてきているようです。例外として 40代、50代のところに、これまでのフルタイムワークが10年以下という人も10%強、存在します。

これらの人は、

・一時期はフルタイムで働いたけど、今は長く専業主婦かパート主婦をやっている

・主婦ではないが、フルタイムではなくパートタイムの形で長く働いている

のいずれかでしょう。(今回は聞いていませんが、過去の経験から推測するに、回答者の男女比は半々より大きく男性に偏ってます。)


あと、20代でフルタイムワークの経験がゼロという人(おそらく学生さん)は、7000人中、約300人でした。このブログ、学生読者の方がもっと多いかなと思ってたのですが、それよりも圧倒的に「働いている人」に読まれてるんですね。

さらにフルタイムワークが3年未満という人を(ゼロの人と)合わせても 1000人ほどなので、回答者の7人に一人にすぎません。大半の人は、フルタイムで働き始めてから3年以上たつ、まさに今の日本を支えている人たちです。

そして言うまでもなくこの年齢分布は、現在の日本の人口構成比に比べて非常に若いです。今、日本の人口の 43%が 50歳以上ですが(びっくりでしょ!?)、このアンケートでは50歳以上は7.2%しかいません。反対に、人口の 16%しかいない30代が 43%近くを占めています。


★★★


次に、経験社数(自営業・フリーランス時期も1社と数えていただきました)を年齢別にまとめました。上記とは違い、学生さんなどフルタイムで働いたことのない人は除いて集計しています。


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これはおもしろいデータですね。20代では「3分の2弱の人は新卒で就職した会社から転職しておらず、3分の1強の人は、転職(か独立)を経験している」とわかります。若い人はもっと転職してるのかと思ってましたが、そうでもないようです。

ところが30代になると、1社目だと答えた人の比率は半減します。つまり、20代では過半の人が最初に就職した会社で勤めているけれど、39歳までというスパンで見ると、ちきりん日記読者の半分以上は、最低一度は転職か独立を経験しているってことのようです。


へー!


これは、煽り甲斐がありますね!  (←違う・・)



実はこういうデータは公式にはありません。なので、ちきりん日記の読者という偏りはあるものの、「30代では、半分以上の人が 2社目で働き始めている」と裏付けられたことには、それなりの意義があります。

というか、私は政府の政策担当者ではないので、日本全体の状況より「ちきりん日記を読むような人の動向」にこそ、興味があります。

みなさんだって、なんの偏りも無い日本全体のデータより、自分が読んでるブログの読者の動向の方が、自分の未来を考えるにあたっては意味があるんじゃないでしょうか? 

同じブログを気に入っているということは、考え方や価値観が似てるってことであり、この結果こそが「自分と似た人のキャリア」なんだといえるはず。

そう考えれば・・・今は20代で1社目だという人も、今はまだ働いていない学生さんも、39歳までにはその半数が転職か独立を経験する可能性が高いわけです。



これは、煽り甲斐がありますね!  (←だから違うって・・)


★★★


次に、「何十年も同じ会社で働いている、いわゆる終身雇用に近い形で働いている人」は、どの程度いるのか見てみます。

下記は、フルタイムワークの経験年数別に社数(自営業時期も1社と数える)を集計したものです。ここでも、「フルタイムワーク経験が3年を超えると、一気に転職(独立など)が増える」ことがわかります。

また、フルタイムで20年も働くと(=40代半ばになると)、1社でずっと働いている人は 3人に1人まで減ってきます。


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(表中の数字はすべて、“横に合計したものを100%とした時の割合”です)


上表の一番下、20年以上フルタイムワークをしてきた人のうち、33%弱が 1社のみで働いています。これがいわゆる「新卒・終身雇用モデル」に近い形の働き方をしている人たちの割合なのでしょう。


どうですか? 予想より多い? それとも少ない?

この辺は判断が分かれそうですが、今の40代半ばから50代の人でさえ、そういう人は 3人に1人しかいないということだから、今の20代や30代の人が20年働いた暁には、1社のみの経験しかない人は、この数字よりさらに低くなるとみるのが妥当でしょう。

つまりこのアンケートの回答者層でも、すでに「一社で最後まで勤め上げる終身雇用的な労働慣行」は、唯一の主なモデルではないということです。

また、フルタイムワーク経験が10年を超えると、経験社数が 4社を超える人も3割近くとなり、転職(や独立)を定期的に経験する人も珍しくない状況となっています。

これも、今すでに20年超、働いている人でもそうなのだから、今の20代が40代、50代になる頃には、勤務社数が4社以上の人が全体の半分、といった状況も、十分に想定できます。(というか、すでに現時点で30代の人では、より多い割合の人が2社目を経験しはじめているわけですし)


さて、ここまでの結果はいかがだったでしょうか?

自分の周りの状況と記が大きく食い違うとしたら、それが「今、自分が所属しているコミュニティ」と、「ちきりんの日記を読んでいる人たちの全体像」との乖離を表しています。


引き続き次回は、みんな何歳までフルタイムで働くことになると考えているのか、その感覚に年齢や経験社数の差はあるのか、についてみていきましょう。


そんじゃーね!


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2013-06-25 「見世物としての論争」に興味がもてません

気が付いている人も多いと思いますが、私は最近かなり意識的にブログの内容を変えています。

以前はテレビやネットで話題になった大きな事件や出来事について、自分の考えを書くことも多かったのですが、最近は電王将棋や梅原大吾さん関連のエントリを一ヶ月近く続けるなど、時事トピック以外について書く日が増えています。

これは、(最近マイブームの流行り言葉でいえば)、ちきりんなりの“大局観”に基づく方針転換です。


背景として、いくつかの要素があります。ひとつは、旬のニュースだけを追いかけていると、内容があっというまに古くなってしまうこと。アベノミクスや株価の乱高下について書いても、来年になれば誰も読んでくれません。時事トピックに乗っかったタイプのエントリは、消費期限が短いんです。

一方、特集型のエントリは、長く一定の関心を集めてくれます。私は、「ブログは蓄積がすべて」だと考えているので、できる限り、「数年後に読んでもおもしろいエントリ」を書きたいと考えています。


たとえばコンピュータ将棋については、向こう数年の間に(再びプロ棋士がコンピュータに負けるなど)、なにか大きな出来事があるたびに、定期的に話題になるはずです。

そういう時に、みんながそれについて検索したら、「Chikirinの日記」上に一定のまとまった数のエントリがあることは、このブログにとって大きな意味があります。

「次に世の中が電王戦について盛り上がる前に、なにかしら書いてストックしておくべきじゃない?」、「そうしておけば、その先に自分にとって、いい感じの局面がありそうだよね」と考えたわけです。


もうひとつの理由は、私が「Chikirinの日記」を読んでもらいたいと思っている想定読者層が、時事トピックについてのエントリを好む層と、ズレ始めてきたと感じるからです。

私には「こういう人に、このブログを読んでほしい」という明確なターゲットイメージがあります。そういう人たちは“日本の人口の 500人に一人程度”であろうと考えており、(赤ちゃんとか小学生とか超高齢者とかを除くと)日本全体で16万人から20万人くらいはいると推定しています。

今のところ、そのうち10万人くらいにはリーチできていそうなのですが、反対に言えば、あとまだ倍程度の未開拓市場があるわけです。


これまでは、社会的な時事トピックについてあれこれ書き、万遍なく注目を集めることで、それらの人たちにアピールできると考えていました。

でも最近は傾向が変わってきたと感じます。

ここ1年くらい、時事トピックについてのエントリを好む人は、「論争を見るのが好きな人」に偏りはじめています。ネット上の言葉では「炎上を見るのが好きな人」、もしくは、テレビ的に言えば「ワイドショーが好きな人」です。


これは、必ずしも積極的に火に油を注ぎたい人だけではなく、論争を眺めてその様子を楽しんだり、自分もコメンテーター気取りでなにかひとこと言っておきたい というような人も含みます。

彼らは、有名人が、「炎上しやすい(論争になりやすい)トピックについて発言してくれること」を心から楽しみにしています。そういうトピックでは、どんな意見を言っても、必ず反対側の立場の人から叩かれるので、それを見るのが楽しいのでしょう。


ここでいう論争になりやすいトピックとは、上杉隆さんが経歴詐称をしたとか、橋下大阪市長の慰安婦についてや、猪瀬都知事のイスラム圏に関する発言、そして、乙武さんがレストランで遭遇したトラブルについて、などです。

世の中には、そういったことについて、「一見論理的に見える賛否両論の意見が多数錯綜し、お互いがお互いの論理の隅をつついて非難しまくる様子を観戦すること」が、楽しくて楽しくてたまらない! という人がいます。

中でも、「影響力のある人同士が論争をするのを見たい!」人は多く、彼らは「ちきりんも論争に参入してほしい」と考えています。

私が何も書かないと、「○○についてどう思いますか? ぜひブログに書いてください」と言ってきたり、「ちきりんが○○について書かないのは、○○を支持しているからだ」などと裏読みする人もいます。


そういった人たちは、水たまりで泥んこになって戦う女性戦士を見たいとか、動物同士が戦うのを観戦したいと思っているのでしょうが、私自身は、そういう場所における見世物のひとりになりたいとは、まったく思いません。

そもそも、これらの論争は多くは、何らかの結論を出したいがための論争ではありません。「有名人が興奮気味に、必死で論争している状況が大好き!」という人が楽しむための、「論争のための論争」です。

もしくは、「見世物としての論争」と言ってもいいでしょう。テレビでは以前よく、デビ夫人や野村幸代さんが担当されていた部分です。



テレビがそういった番組で視聴率を稼いできたように、ネットでも、突発的に盛り上がる見世物的な議論にタイムリーに参戦すれば、PVは大きく伸ばせます。また、そういった論争について、ツイッターで継続的かつ積極的に発言を続ければ、フォロアーも増えるのかもしれません。

でも、それでは書き手は結局、ネット上でちょっとした憂さ晴らしをしたい人に、ストレス発散の材料を提供するだけの役割になってしまいます。


でも、それは私がやりたいことでも、「Chikirinの日記」を位置づけたいポジションでもなく、さらに、私がリーチしたい残りの 5万人から10万人が、そのグループに含まれているとも思えません。

私が獲得したいと考えている読者層は、誰かの失言を鬼の首を取ったかのようにあげつらい、ツイッターでもっともらしい正論や正義感やらを振りかざして虚栄心を充たすという、そういうタイプの人ではないのです。


以前、プロ格闘ゲーマーの梅原大吾さんが、「勝つことより、勝ち続けることが大事であり、そのふたつのために必要なことは、時には正反対のことである」と言われていました。

私にとっても日々の PVより、長期的にこのブログや、“Chikirinという書き手の価値”を高めることのほうが、よほど大事です。そして、そのふたつの目的のためにやるべきことは、やはり「正反対のこと」だと感じます。

「誰に読まれたいのか」、これが私にとって、とても大事なことなのです。



8年も書いているので、「Chikirinの日記は昔のほうがおもしろかった」と言われることもよくあります。でも、先日、M社を訪問した時にも言ったのですが、私は、「昔のほうがよかった」という人の意見は、なんであれ“ガン無視”することに決めてます。


「昔のほうがよかった」と言ってる人と、

「最近の若者はダメ」と言ってる人に、

まともな人はいません。


というわけで、これからも“ちきりんなりの大局観”をもって、ブログ運営にあたっていきたいと思います。


そんじゃーね!

2013-06-24 みんなで『未来の働き方について考えよう』

ちきりんの新著、『未来の働き方を考えよう』の発売から 2週間がたちました。多くの方からツイッターやブログを通して感想を頂いています。どうもありがとうございます!


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以前より告知していたように、今週くらいからボチボチ「これからの働き方」に関するエントリを書いていきますが、今回は新たな試みとして、毎週ひとつちっちゃなアンケート( WEEKLY MINI SURVEY ) を実施し、その結果を皆さんと共有しながら、いろいろ考えていきたいと思っています。

毎週、5問以内のミニ・アンケートを行うので、ツイッターで「次はこんなアンケートをしてほしい!」というリクエストを頂くことも可能です。

8月には東京・大阪での講演会、そして、第二回の SOCIAL BOOK READING w/CHIKIRIN も予定しているので、いろいろ合わせて、インタラクティブな議論ができればいいですよね。


この試みには、私がチャレンジしてみたいと考えているふたつの目的が込められています。ひとつは、「これからの働き方について、みんなと一緒に考えたい」ということ、そして、もうひとつが「ネットを通して、意味のある、双方向の議論をすることにトライしたい」ということです。

ご存じのように、ネット上でまともな議論をするのは至難の業です。いくつかのメディア・サイトがトライをしているけれど、私の知る限り、自分が参加してみたいと思えるものは存在していません。

私自身が開催した初回の SOCIAL BOOK READING w/CHIKIRIN も、多くの参加者の方が、真剣に考えた自分の意見を共有してくださり、みんなの意見を知るという意味では意義がありましたが、多数のツイートが短時間に殺到し、議論したり、熟考することは難しい状況でした。


でも、誰でも参加できるネット上で、建設的で意味のある、みんながぜひ参加したいと思える議論が行える日は、きっと来ます。それを最終的に実現するのは“技術”ですが、そこにどんな機能が欲しいのか、もっといえば、私(たち)はどんな議論がしたいのか、それを考え、伝えていく努力はユーザーサイドにも求められるものだと思います。

というわけで、今回は短時間のセッションだけではなく、ミニ・アンケートやリアルな講演会、ツイッターなど様々なツールを組み合わせ、時間も 1か月以上をかけながら、あれこれ試行錯誤していきたいと思ってます。

巧くいくかどうかは私にもわからないけれど、なんのリスクもないんで、チャレンジしてみましょう!



というわけで、記念すべき最初のミニ・アンケートはこちらです!

アンケートは終了しました!


アンケートの結果も、そして、「未来の働き方について考えるプロジェクト」もお楽しみに!!


そんじゃーねー




<未来の働き方アンケート 001>


Q1) 現在の年齢を教えてください

19歳以下

20代

30代

40代

50歳以上


Q2) これまでにフルタイムで働いた期間の合計を教えてください

フルタイムで働くとは、週に5日×7時間程度以上、働くことです。立場が正社員でもアルバイトでもインターンでも、週に35時間程度、継続的に働いていた場合は「フルタイムで働いていた」と解釈してください。

まだフルタイムで働いたことがない

3年以内

3年超 10年以内

10年超 20年以内

20年超


Q3) これまでにフルタイムで働いた会社数を教えてください

自営業・フリーランスなどの場合も1(社)と数えてください

0社 (Q2で「まだ働いていない」を選んだ人)

1社

2社、もしくは、3社

4社以上

6社以上


Q4) 現在の状況として、当てはまるものを選んでください

現在、フルタイムで働いている

現在は、フルタイムで働いていないが、今後、フルタイムで働きたい

現在はフルタイムで働いておらず、将来もその予定はない (世帯主である)

現在はフルタイムで働いておらず、将来もその予定はない (世帯主ではない)


Q5) 自分は何歳までフルタイムで働くことになる(であろう)と思いますか?  (もっとも自分の感覚に合うものをひとつだけ選んでください)


注1)この質問は、Q4で、最初のふたつの選択肢を選んだ方のみ、回答してください。注2)今はフルタイムで働いていないけれど、今後フルタイム勤務に戻る予定(意思)のある方は、最後にフルタイム勤務をいつまで続けると思うか、について回答してください。 注3)「そんなこと考えたこともない」という人は、今、考えてください。


働き続けられる限り、できるだけ長く

一般的な定年年齢(年金支給開始年齢)まで

70歳くらいまで

65歳くらいまで

60歳くらいまで

50代まで

40代まで

30代まで

20代まで

2013-06-22 円満離婚に向かう「政治と若者」

夏の参院選に向けて、各党の比例公認候補が次々と名乗りをあげています。

地道なドブ板活動や親の代から続く後援会組織が必要な選挙区と違い、比例区は候補者の知名度が勝負。このため各党とも“有名人”をひっぱりだすのが常となっていますが、今回もまた各方面、満遍なく笑える感じですばらしいです。


それらを見ていて思うのは、政党というのはホントによく“市場=有権者を見てる”ってことです。

たとえば、日本維新の会が公認するアントニオ猪木氏に、自民党が公認する渡邉美樹氏(ワタミグループ創業者)やオリンピック金メダリスト(体操)の塚原光男氏・・・

若い人はこれらの候補者を見ると、「なんなんだ!?」と呆れたり失望したり、(ちょっとマジメな人になると)本気で憤ったりするのかもしれません。

しかしこれは各政党が、「誰が選挙に行くのか」、「選挙に行く人の琴線に触れる候補者とは誰なのか」、すんごくよく考えた結果なのです。


たとえば、体操選手だった塚原光男氏が大活躍したのは 1972年と 1976年のオリンピックです。(なんと、この 2回のオリンピックで彼は、金メダル5個を含む9個のメダルを獲得しています) 当時、その活躍に熱狂していた世代も今や50歳から70歳、「一票の価値が都会の数倍も重い地域に集中的に居住し、かつ、投票率も非常に高い年代層」となっているのです。

“ツカハラ跳び”とか“月面宙返り”とか言われても、今の若い人には全くわからないでしょ? でも当時の彼は、今でいえばサッカーの本田圭佑氏や水泳の北島康介氏のような人気アスリートだったわけです。

塚原氏の月面宙返りを(テレビの前にみんなでへばりついて!)大興奮しながら応援し、月面宙返りのポーズを何度も真似して遊んだ当時の子供たち・・彼は、そういう世代の票を獲得するための候補者なのです。


アントニオ猪木氏も同じです。力道山に見いだされ、ジャイアント馬場と組んだプロレスで大活躍した彼の全盛期も、やはり1970年代から1980年代にかけてです。

これらの候補者は、若い人にとっては「誰それ?」かもしれませんが、きちんと選挙に行く年代の人にとっては“青春時代のシンボリック・アイコン”です。

「誰があんなのに投票するんだ?」と思っている今の若者の中にも、30年後に本田圭佑氏や北島康介氏が立候補したら、一票を投じる人はたくさんいるでしょう。


ワタミグループの創業者、渡邉美樹氏も、主にネットメディアから情報を得ている人たちにとっては、「社員に長時間労働を強いるひどい経営者」というイメージかもしれません。

でも、投票率の高い年代の人たちの多くは、「若い頃は死ぬほど働くもんだ。そんなことに文句を言うなんて、最近の若い者はなっとらん」と思ってます。

彼らにしてみれば渡邉氏は、「若者や時代におもねらず、言うべきことをはっきり言える心意気のある経営者」です。

彼が若い従業員に「365日、24時間働け!」と言ったとしたら、若い人は反発するかもしれませんが、高齢者は彼にエールを送るんです。そして選挙で政党が狙っているのは、そういう世代の票なのです。


★★★


選挙はとても市場的です。政党は、実際に投票にいく人や一票の価値が高い地方の人が、大量に釣れる候補者を探してきて公認しようとします。

特に自民党はセンスがよいです。民主党が政権をとれたのだって、この市場センスが抜群だった小沢一郎氏のおかげでしょう。

未だに「反原発」とか「護憲」とか言ってる政党は、(言ってることが正しいとか正しくないというコト以前に)、全く選挙市場というものがわかっていません。あんなことを続けてたら、ホントに遠からず消滅しちゃうことでしょう。


比例区ではありませんが、自民党が堀江貴文さんを候補者として強力支援したのは 2005年でした。当時の自民党は彼を支持することで、若い人の票や、市場メカニズムを尊重し、構造改革を支持する人の票を狙おうと考えていたわけです。

けれど今回の候補者を見る限り、政党はもはや若い人の票を狙うことさえ止めてしまったように感じられます。(安倍氏はニコニコ動画などネットへの露出に積極的ですが、彼が期待しているのは若者というよりは、ネット上でアクティブな“右側の人たち”だと思います)

高齢化が進む一方で若者の政治意識は相変わらず低く、今後も若年層の有権者は急速に減少します。そんな層の票をわざわざ狙いにいく必要は、もはや無いという判断なのかもしれません。


一方の若者のほうも、政治への期待は大きくありません。

今回は初めての「ネット選挙」などと騒がれていますが、スマホやPCから投票できるわけでもなく、相変わらず貴重な日曜日に近くの公民館まででかけて行って、鉛筆で投票用紙に候補者の名前を書く必要があるのです。

・・・明日の都議選の20代の投票率なんて、いったい何パーセントだったりするのでしょう?


若者と政治は、粛々と円満離婚の手続きを進めているかのように見えます。「いろいろあったけど、今後はお互いに割り切って別々の道を進みましょう」という感じです。

新刊『未来の働き方を考えよう』にも書きましたが、国家という仕組みのもつ意味は、これから急速に小さくなります。日本人だから日本で働くという話でもなくなるし、「日本人だから日本の大学を目指すべき」でもなくなる。


「国とかどうでもいい」と考え始めた若者と、「若者とかどうでもいい」と思い始めた国・・・お互いに納得の上、円満に離婚し、それぞれの道を歩もうとする二者。彼らがヨリを戻す可能性は、どこかにちょっとでも存在しているのでしょうか?


そんじゃーね




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2013-06-18 人生を無駄にするための10の方法

1.やればできるとわかっていることばかりする

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2.会えばどんな話になるか、(会う前から)わかっているような人ばかりと会う

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3.楽しいとも思えないことを、お金や義務感や惰性のために続ける

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4.将来のために我慢する

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5.いかに昔がよかったか、みんなで語り合う

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6.自分の環境を嘆く

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7.恵まれている人を攻撃する

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8.「スゴイですね!」「さすがですね!」と言ってくれる人ばかりの環境で長く働く

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9.一緒にいてイライラする人から離れない

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10.社会や政治や会社など「自分以外の誰かが問題を解決すべきである」、と一生懸命に主張する

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そんな人生をおくらないために・・・

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そんじゃーね

2013-06-17 コンピュータ将棋 まとめ その2

長らく続けてきたコンピュータ将棋の関連エントリ。今回のインプット&アウトプットを通して私が感じたことは、以下の3点でした。


1.人間はすごい!

将棋電王戦では人間が負けたけど、やっぱり全体として人間ってスゴイんだなと強く思いました。

個人戦なら投了するところ、団体戦の勝敗がかかっており、自分が負けたら第五局が“消化試合”になってしまうという対局において、「なにがあっても負けられない」と粘った塚田九段の判断とか、

電王戦直後、そっこーで「今回のソフトを永久保存する」と決めた川上ドワンゴ会長の判断とか、

“指す”と"打つ”がごっちゃになってた私に、使い分け方を教えてくれた山本一成さんの、全方向に気を配った巧みなコミュニケーションとか・・・みんなホントすごいです。


卑近な例ですが、あたしだって毎朝、何を食べるか、何を着るか、何についてブログに書くか、日々たくさんの判断をごくごく自然にこなしてます。

今回コンピュータが挑んだのは、将棋という特定のゲームのみです。その限定一分野で人間に勝つために、開発者の方がプログラム開発に注ぎ込んだ時間と能力と熱意の総量を考えると、「人間って相当にスゴイんだな」というのが率直な感想です。



2.コンピュータの進化はとっても楽しみ!

その一方で(もしくは、“だから”というべきか、)あたしはコンピュータやロボットを含め、機械がどんどん進化することに、何の不安も恐れも感じません。

むしろ、今は実現できていない明るい未来のために、もっとどんどん(驚くべきスピードで!)進化してほしいと思ってます。


機械が進化すればするほど、人間はくだらない作業から解放され、“人間らしさ”をより純粋に追求することになるはず。

たとえば今回あたしが確信したのは、「人間はロジカルシンキングなんか勉強してる場合じゃない」ってこと。そういうのは、そのうち機械がやってくれるようになるでしょう。

私たちはもっと、機械が引き受けてくれそうもない部分に集中すべきなんだよね。「楽しい」とか「大好きだ!」とか、「美味しい」とか「気持ちいい」とか「感動する」みたいなところに。

コンピュータは常に、人間がどっちに向かうべきか、示してくれる。ワープロが「人間は、漢字の書き順を覚えることに、貴重な人生の時間を使わなくてもいいですよ」って教えてくれたみたいに。



3.好きなコトをやっている人はみんなかっこいい

プロ格闘ゲーマーの梅原大吾さんに、今回の山本一成さん、それに、「職業選択に迷いはなかった」と言う片上大輔六段。

30才でミクシィの社長を引き継いだ朝倉祐介さんや、講演会の後、あれこれ話をした若手メンバーの方も。

その他にも、(ブログには書いてないけど)ここんところ会う若い人達がみんな「迷い無く自分の好きなことをやっている」感じで、すごくかっこいいなと思います。


すぐに「最近の若者は・・」的なことを言い出すおじさん達は、自分自身、本当に「心からコレ!と思える仕事」をやってんのかな?

「うっ、そう言われると・・」という、そんなあなたには・・・




こちらの本がお勧めです↓


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以上、新刊の宣伝エントリでした。


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そんじゃーね!

2013-06-15 インプット & アウトプット

ここまで10回ちょっと、コンピュータ将棋に関するエントリを書いてきたので、今日は、私がこのシリーズを書くにあたって読んだ本など、“インプットしたことの一覧”をまとめておきます。


コンピュータVSプロ棋士―名人に勝つ日はいつか (PHP新書)
岡嶋 裕史
PHP研究所
売り上げランキング: 964,548

最初に読んだのはこの本です。理由は kindle版があったから。

コンパクトに基本的なことが全部まとまってるので、電子書籍が好みの方にはこれがオススメ。


われ敗れたり―コンピュータ棋戦のすべてを語る
米長 邦雄
中央公論新社
売り上げランキング: 158,158

この本は(ここで挙げた)他の本とは全く違います。

日本将棋連盟の会長として、どういう方針でコンピュータ将棋との対局を考えてきたかについてや、盤外の諸条件をどう考えていたかなどのエピソードを知ることができ、とても新鮮でした。

コンピュータ将棋の仕組みについて書いてある他の本と組み合わせると、電王戦の意味が立体的に理解できると思います。

ちなみにこの本を読んで私は、「人と違うことをする」って超大事よねと再確認しました。

そうじゃないと「自分である価値」がない。米長氏の人としての個性が伝わる一冊でもあります。


ボナンザVS勝負脳―最強将棋ソフトは人間を超えるか (角川oneテーマ21)
保木 邦仁 渡辺 明
角川書店
売り上げランキング: 453,080

内容的には一冊目とも重なるのですが、保木さん(ソフト開発者)と渡辺竜王というトッププロの生の声で構成されているので、両方の視点が対比できる興味深い内容(構成)となっています。

渡辺竜王と Bonanza の対局は 2007年ですが、当時はこんなトッププロがテレビで生中継されながらソフトと対局できる時代だったんだと思うと感慨深いです。


人間に勝つコンピュータ将棋の作り方
瀧澤 武信 松原 仁 古作 登 橋本 剛 小谷 善行 鶴岡 慶雅 山下 宏 金子 知適 保木 邦仁 伊藤 毅志 竹内 章 篠田 正人
技術評論社
売り上げランキング: 153,847

激指、YSS,GPS将棋、Bonanza、習甦などの開発者が、それぞれのソフトの誕生の経緯やプロセス、工夫などについて書いている本です。

コンピュータ将棋協会の会長・副会長なども、将棋ソフトの基本と歴史を説明されてます。

プログラム側の進化の経緯を学ぶには、大変参考になりました。

相当やさしく解説してあるし(それでも私には“だいたい”しかわかりませんけど)、開発者の方のソフト開発への姿勢や思いが垣間見れるのが何よりです。


頭脳対決!棋士vs.コンピュータ (新潮文庫)
田中 徹 難波 美帆
新潮社 (2013-04-27)
売り上げランキング: 830,320

一冊目、三冊目などと重なりますが、人工知能研究からさらに進めて、ヒューマノイド研究について述べているのは、この本だけでした。

特に「コンピュータは、教え込んだ特定目的では人間に勝てるけど、目的自体を自分で設定しながら様々なことに対応できる人間の能力は、それとはまったく異なるものだ」とし、

人間がそういう能力=知能をもっている理由として、「人間には、常に死ぬ可能性のある“身体”があり、これを守るためという大目的があるから、そのために何をすべきか、自分で考え、学ぶのだ」というロジックがとても興味深かった。

たしかに私たちは「死なないため」という大目的のために、食べたい! 眠りたい! 危険を避けたい! 仲間を作りたい! など、様々なサブ目的を自分で設定して自律的に動きます。


以下、この本からの引用

知性の源となるのが「生きたい」という要求であるとすれば、知性は身体と切り離せない関係にあることになる。


なぜなら「生きたい」と思うことは、身体を持つことで生じる自己認識と、それが有限であることの認識とセットだからだ。


(中略)


すべてを教えてやらなくても、環境から自分で学習し、複雑に知性を進化させるには、「生き延びたい」という欲求と有限の身体が必要なのだ


だとすると、目指すべきはやっぱりアトムだってこと? 

電源が切れそうになると、自分で「やばっ!」と思ってコンセントを探す、そんな“生存本能”をもったプログラムがでてくる日はやってくるんでしょうか?、


第二回電王戦の第四局で引き分け(持将棋)となった塚田泰明九段の手記が掲載されていたので買ってみました。

とても正直な感想が載っていて、かつ文章もユーモアに溢れていてとても素敵でした。やっぱり人間はめちゃくちゃおもしろい。


上記の本を読んだうえ、第二回将棋電王戦の第二局で、初めて現役のプロ棋士に勝利した ponanzaの開発者 山本一成氏のレクチャーを 8時間も受けました。(うち半分は片上六段も同席)・・・超贅沢なインプットですよね。

加えて、数多くのネット記事と関連動画も視聴しました。


以上が、私が今回のシリーズを書くにあたって摂取した(?)インプットのすべてです。だいたい全体で、25時間くらいかな。

・書籍を読んでた時間 11時間

・焼肉食べながらのレクチャー 8時間

・ネット上の情報をあれこれみていた時間 6時間


そして、それらのインプットによって生成されたのが、下記のアウトプットです。

<コンピュータ将棋 関連エントリの一覧>


1) 『われ敗れたり』 米長邦雄

2) 盤上の勝負 盤外の勝負

3) お互い、大衝撃!

4) 人間ドラマを惹き出したプログラム

5) お互いがお手本? 人間とコンピュータの思考について

6) 暗記なんかで勝てたりしません

7) 4段階の思考スキルレベル

8) なにで(機械に)負けたら悔しい?

9) 「ありえないと思える未来」は何年後?

10) 大局観のある人ってほんとスゴイ 

11) 日本将棋連盟の“大局観”が楽しみ 

12) インプット & アウトプット ←当エントリはこれです


情報収集にかかった 25時間に加え、アウトプットの文章を書くにも一エントリ平均 1時間はかかっているので、合計で 40時間弱が「リソース投入時間合計」です。

当初の予想よりたくさんの時間を投資しましたが、アウトプットのクオリティに関しては、必ずしも満足のいくものではありません。

生産性は悪くない気がしてるけど、絶対レベルがもうちょっと高ければよかったなとは思います。

なんせ将棋もコンピュータも全くわからないという二重苦だったので、なにか大事なことがわかってない気もしています。(が、それが何かはわかってないという状態です)

あと 40時間くらい勉強したら、もうちょっと違うことが書けるかもしれません。


でも今回は、新しいことを学べてとても楽しかったです。

長い時間をかけてご協力くださった山本一成さんには心より感謝しています。これからも ponanza の益々のご活躍に期待しています!

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お勧めいただいた下記の本も、そのうち頑張って読んでみたいと思います。(20年以内くらいには・・)

ポスト・ヒューマン誕生 コンピュータが人類の知性を超えるとき
レイ・カーツワイル 井上 健 小野木 明恵 野中香方子 福田 実
NHK出版
売り上げランキング: 18,185


あと、これは皆さんからいただいた回答のセンスがすばらしく、予想外に笑えました→番外編)将棋とコンピュータ将棋の違いをツイッターで聞いてみたら?


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そんじゃーね!

2013-06-12 『未来の働き方を考えよう』 発売です!

ちきりん 4作目となる 『未来の働き方を考えよう』 が、発売になりました。この本、結構な難産だったので、無事に出版できてかなり嬉しいです。

未来の働き方を考えよう 人生はニ回、生きられる (文春文庫)
ちきりん
文藝春秋 (2015-11-10)
売り上げランキング: 88,408

(追記:2015年に文庫化されたので、文庫へのリンクに変更しました)


→ Kindle版

→ 楽天ブックス(文庫版)


古くからの読者の方はよくご存じのように、私はブログでも「これからの働き方」について様々なエントリを書いています。

でもそれらはどれも、単発のテーマについて書いた短編エッセイのようなもので、必ずしも、

「ちきりんとしては、社会&世界が全体として、これからどう変わっていくと思っているのか、その中で、個々人がどう人生設計をしていくべきだと考えているのか」といった全体像が見えるものではありませんでした。


一年くらい前にリンダ・グラットン氏の『ワーク・シフト』を読んで以来、私なりに

1)これからの世界がどうなると思っているか

2)個々人はどうすればいいと思っているか

を、きちんとまとめたいと考えるようになりました。


それが今回ようやく、一冊の書籍としてまとまったということで、とても嬉しく思っています。

あと、今回の本は、今までとはちょっと位置付けが違うかもしれません。

たしかにこの本には、私の考えたことがまとめてあります。

でも、寧ろ私はこの本が「これから、働き方について真剣に考えたいと思っている人たちの出発点になってくれたらいいな」と思っています。

答えじゃなくて、議論を始めるための課題シートみたいになるといいなと。まさに「考えよう!」って感じでね。

<目 次>

序 章  “働き方本”ブームが示すモノ

第一章 現状維持の先にある未来

第二章 世界を変える3つの革命的変化

第三章 新しい働き方を模索する若者たち

第四章 「ふたつの人生を生きる」

第五章 求められる発想の転換

終 章 オリジナル人生を設計するために


今年の 4月からは、企業に 65歳までの雇用を求める法律が施行されましたが、すでに 68歳や 70歳まで雇用を延長しようという議論が始まっています。

こんな調子では、今 20代の人はほぼ確実に 70歳まで働くことになるだろうし、それより若い今の子供たちに関しては、75歳定年の可能性もあるんです。

23歳から働いても 52年ですよ、それ。


ホントに 23歳の時に、安定した一流企業に入り、解雇されずに( 50年も!)勤め続けることが、目指すべき人生だと思います?

それが自分の人生を楽しめる、唯一の働き方でしょうか?

そして本当に、我が子に目指させるべき道だと?


どう考えても、違うでしょ。っていうのが、私の偽らざる気持ちです。

若い人だけじゃありません。今 40歳の人で、あと 25年も今の組織で今の仕事をするのだと考えたとたん、くらくらしちゃう人だっているはずです。


じゃあどうすんの?


その答えになることを、第四章以降にきちんと書き込んだつもりです。


みなさんがこの本を読み終えた今月末くらいからは、「働くこと」、「これからの働き方」について、集中的に考え、シリーズエントリを書いていく予定です。

また、アンケートやツイッターを通して、読者の方のご意見も積極的に取り入れ、インタラクティブなセッションにできればいいなと。

東京と大阪ではセミナーもできそうなので、その場でも多くの人の意見を聞きたいし、8月にはぜひ、『ワークシフト』でやったような「Social book reading with CHIKIRIN」も開催したい! (前回の反省を踏まえ、もう少しツイートが読みやすくなるよう工夫しますね)


そう。

この夏は、

みんなで、

「未来の働き方を考えよう!」

未来の働き方を考えよう 人生はニ回、生きられる (文春文庫)
ちきりん
文藝春秋 (2015-11-10)
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(追記:2015年に文庫化されたので、文庫へのリンクに変更しました)


→ Kindle版

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そんじゃーねー!

2013-06-11 日本将棋連盟の“大局観”が楽しみ

コンピュータ将棋について延々とエントリを書いてる私ですが、将棋についてもコンピュータについてもほとんど知識がありません。

なので、もっぱら関心があるのは、ビジネスとして、もしくはマーケティング的な側面からの「人間 対 コンピュータ将棋」というイベントです。

前にも書いたように、今年はすでにA級棋士を含む 5人がソフトと対局し、1勝 3敗 1分けで負けています。

なので次は、「コンピュータソフトは、タイトルホルダーに勝てるのか!?」に注目が集まるのは、当然のことです。

そんな注目を集める来年の将棋電王戦を、どんな形で開催していくのか。それを決めるのが、第二回 将棋電王戦 終了後の記者会見 (youtube) の際、前面に並ばれた 3名(3つの組織)なんだとすると、 


・日本将棋連盟

・コンピュータ将棋協会

・ドワンゴ(将棋電王戦スポンサー)

が話し合って決めるのかなと思うのですが、その結論がどうなるのか、とても楽しみです。

しかもこの三者、それぞれに「先の先の先の先の手まで読んで(もちろん相手の出方もすべて検討したうえで)、大局観をもって判断する」のがめちゃめちゃ得意そうな組織ばかりでしょ。

そんな三者が話し合えば、凡人には想像もできないレベルの、超ハイパーな大局観がぶつかり合うことになりそうで、なんだかワクワクしちゃいます。


★★★


この中で特に注目なのが、日本将棋連盟です。なぜなら、他の二者に比べて日本将棋連盟(以下ときどき“連盟”と略)は、読みだの局面評価だのの前に、“ゴール設定”自体が難しそうだからです。

コンピュータ将棋協会やソフト開発者は、より強い棋士と対戦したい、そして勝ちたい、もっともっとコンピュータ将棋を強くしたい、将棋というゲームを解明したい、それを人工知能の開発に活かしたい・・・など、目標がクリアです。

ドワンゴも「プレミアム会員を 1000万人にするぞ!」という目標がわりとクリア・・(すみません、適当なこと書いてます。けど・・まあ目標はクリアそうです) 

でも日本将棋連盟が、将棋電王戦に参加することで“目指すべきゴール”は何なんでしょう?


来年はソフトに勝利して雪辱を果たし、その後も負けないこと? 

それとも、タイトルホルダーができるだけ先まで、コンピュータに負けないようにすること?  

んー、(ありえるとは思うけど)なんか違う気がしますよね。


できるだけ多額の対局料を確保すること? ・・・これも違うっぽい。

将棋電王戦が盛り上がり、新規の将棋ファンが増えること・・・これは、あるかもしれません。


でもね。コンピュータ将棋側のゴールが「トップ棋士に勝つこと!」なのに、連盟側の目標が「将棋ファンを増やすこと」では、勝負になりません。

しかも、将棋電王戦の盛り上がり(=将棋ファンを増やす効果)って、いつまで持続するの? 

今は「人間が負けるかも!?」という段階だからみんな熱狂するけど、常に人間側が負けるという状況になっても、電王戦を楽しめる?


電王戦が他のタイトル戦と同じように、特定の期限なく盛り上がりを期待できるイベントだったら、プロ棋士側も本気の投資が可能になります。

でも、どうせ数年しか盛り上がりが期待できないイベントだとしたら、タイトル挑戦者のようなトッププレーヤーにとって、電王戦に照準を合わせた研究をするのは、ものすごく負担が大きいでしょう。


なぜなら、大半のプロ棋士の方が「人間相手の将棋と、コンピュータ相手の将棋では、準備の方法がまったく異なる」と言い、

塚田九段も手記の中で「コンピュータ将棋への対策は、人間相手には全く役に立ちません」とまで言われているように、電王戦には特別な対策が必要になるからです。

米長氏の『われ敗れたり』の中には、当時、コンピュータとの対局条件について尋ねられた羽生三冠が、「もしも対局することになれば、一年間はタイトル戦に出ずに、コンピュータと対局するための準備をする」と回答したと書かれています。

それくらい、人間との将棋とコンピュータとの将棋は(現時点では)違うものなんです。


今回、A級棋士として電王戦に参加した三浦八段にとっても、過去一年で最も大事な目標は電王戦で勝つことではなく、

渡辺竜王や森内名人、羽生三冠に挑戦する権利を得、タイトルを狙うことだったのではないでしょうか。


もちろん来年以降に電王戦にでるトップ級棋士も、「電王戦で勝つために全力を尽くすべきか、それとも、まずはタイトルを狙いにいくべきであり(もしくは昇段を狙うべきであり)、できる範囲でコンピュータ将棋の対策をすべき」か、という選択を迫られます。

プロ棋士のその選択は、電王戦の結果にも少なからず影響するでしょうし、連盟にしても、「そもそもこのイベントを通して、連盟は何を得ようとしているのか」が明確にならないと、どういう形でこのイベントを続けていくべきなのか、考えにくいんじゃないかと思います。


★★★


ところで将来的に、それぞれの将棋ソフトが、竜王戦や名人戦などタイトル戦の予選から、イチプレーヤーとして参加するような可能性はあるんでしょうか?

人間の棋士と同列に予選を戦い、勝ち抜いて挑戦者の座を射止めたら、タイトルホルダーと対局できるという既存のシステム、もちろんタイトル戦は 5番勝負とか 7番勝負・・・に人間もソフトも横並びで参加する。

「今年のA級にはコンピュータソフトが 3つが入りましたねー」みたいな感じで、順位戦から参加。

これだとまさに「将棋ソフトと人間、頂点にたつのはどちらか?」みたいになる気がするんですけど。


今年行われた第二回電王戦では

・コンピュータ同士の大会(世界コンピュータ将棋選手権とか)で勝ったソフトが、

・人間のプロ棋士と対戦する

という「別コースで上がってきた二者が、頂上決戦で初めて対局する」システムでしたが、余興ならそれでもいいけど、どっちが強いかを真剣に決めたいなら、普通のタイトル戦に各ソフトも参加すればいいじゃんとも思います。


おっと、でもそういうシステムだと、ドワンゴがスポンサーとして将棋界に入り込める余地が無くなっちゃっう? 

既存メディア(=タイトル戦のスポンサーの大半が新聞社)とは喧嘩しないポリシーの会社ですしね。

などと言い始めると話が長くなるので終わりにしますが、いずれにせよ「次の電王戦の設計がどうなるのか」のほうが、人間とコンピュータの勝ち負け自体より私には興味深いところです。

将棋に関しては天才的な大局観を誇る人たちが集まった日本将棋連盟の、“盤外での大局観”がどういうものなのか、かなーり楽しみ!?


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そんじゃーね


<コンピュータ将棋 関連エントリの一覧>


1) 『われ敗れたり』 米長邦雄

2) 盤上の勝負 盤外の勝負

3) お互い、大衝撃!

4) 人間ドラマを惹き出したプログラム

5) お互いがお手本? 人間とコンピュータの思考について

6) 暗記なんかで勝てたりしません

7) 4段階の思考スキルレベル

8) なにで(機械に)負けたら悔しい?

9) 「ありえないと思える未来」は何年後?

10) 大局観のある人ってほんとスゴイ 

11) 日本将棋連盟の“大局観”が楽しみ ←当エントリはこれです

12) インプット & アウトプット 

13) コンピュータ将棋まとめその2

2013-06-09 大局観のある人ってほんとスゴイ

コンピュータ将棋について調べていると、頻繁に“大局観”という言葉を聞きます。

局面の評価において「この条件は有利、こちらの数字は不利、ここはどーのこーの」と細かく分析するのではなく、

全体として「だいたい いい感じ」とか、「よくない雲行き」などと判断し、さらに「おそらくこっちの方向に向かえば、より良くなるだろう」と考える。

そういうざっくりした状況判断が“大局観”と呼ばれており、人間(プロ棋士)は大局観に基づいて手を選んでいます。


これも経営者と同じですよね。

彼らは市場や競合の動向、自社の力量や勢いをざっくり把握したうえで、「よし、ここで勝負だ」とか、「ちょっとヤバいから慎重に」と、考える。

「この数字が○ならこうする」といった細かい“機械的な”判断をしているわけではありません。


この大局観をコンピュータに持たせるのが難しい。

優れた大局観を持つには、判断に影響するすべての要素を抽出、数値化し、重み付けすることが必要で、コンピュータは今、それを延々と(ちから技で)勉強しています。

コンピュータソフトが、トップ棋士やカリスマ経営者レベルの大局観を持てるようになれば、それはすなわち、将棋初心者や新入社員でもトップ棋士やカリスマ経営者と同じ状況判断ができるようになるってことだから・・・そりゃー凄いことです。


★★★


今回の第二回将棋電王戦でも、「これは、すごい大局観に基づく判断!」と感心したことがありました。

といっても私は将棋は素人なので、その多くは電王戦の運営に関する判断です。

たとえば、第二回将棋電王戦の終了直後にドワンゴの川上会長が、「今回の将棋ソフトを永久保存する」と発表されました。

これを聞いたとき私も、「おー、ホントにそうだ。是非そうすべき!」って思いました。


なんでかって?


よくわかりません。


よくはわからないけど、絶対そうすべきだということは、私にもわかりました。今そうしておくことで、将来、ものすごく大きな意義(価値)が出てくるだろうと。

・・・こういうのが「大局観に基づく判断」です。


考え方はこうです。

開発者の方は毎日のようにソフトを改良されているので、放っておくと、「第二回将棋電王戦で○○棋士に勝った、そのプログラム」を後から探すのが、とても大変になるかもしれません。

今回の 5局で使われたソフトをまとめてきちんと保存しておくと、これから毎年のように大幅に強くなる将棋ソフトが、一番最初にプロに勝った時の強さとはどんなものだったのか、あとから検証できるし、他の人も対戦できます。

そのあたりまでは私にもボンヤリわかるんですけど、ずっと先から振り返れば、「この時点でのソフトを永久保存する」という判断は、もっともっと大きな意味がでてくるだろうとも思えます。

この、「今、この手を指しておくこと(ソフトを永久保存すること)が、将来の非常に価値の高い局面につながる」と考えた川上会長の判断が、まさに“大局観に基づく判断”なんです。


★★★


もうひとつ。昨年の電王戦は、故米長邦雄氏とソフトの対局だけだったのに、今年は 5人のプロ棋士と 5つのソフトの対局となりました。

そしてドワンゴは「ぜひA級棋士をひとり出してほしい」と要請していたようです。


「新潮45」に掲載された塚田九段の手記には、「A級の参加者がひとりほしいという要請があった」と書かれているし、

実際に出場したA級棋士である三浦八段も、こちらの記事にて、他の棋士は立候補だったり将棋連盟内での選抜だったようですが、

「私の場合はドワンゴさんからご指名をいただいていたようで、直接、ドワンゴの方からも熱心に頼まれまして・・。断りづらい気がして、そこまでおっしゃるなら、とお受けしました。」

と話されてます。


A級棋士は、将棋界でタイトルホルダーに次ぐトップ 10 以内の棋士です。

この「今回の団体戦に、一人でいいからA級棋士に出てもらおう!」と考えたドワンゴの判断も、めっちゃ戦略的です。

そもそも第一回電王戦のように、“一人 vs.ひとつのソフトの対局”を続けていたら、今回いきなりA級棋士を呼ぶことはまずできなかったはず。


ステップ1)一人対ひとつの一局ではなく、5人対 5ソフトの団体戦にしましょう!

という提案を(対局後の興奮冷めやらぬ、電王戦直後の記者会見の前に)通しておいてから、

ステップ2)そのうちのひとりは、A級棋士を是非!

と持っていく。


ステップ1の速攻技と、ステップ2の粘り腰・・・ドワンゴ側の、この辺のセンスの良さというか、交渉ごとの巧さというか、「どういう手を選べば、より有利な局面につながるか」という大局観は、ほんとにすごいです。



今までのコンピュータとプロ棋士の対戦の歴史はこんな感じになんですが↓

主な出来事
1975年頃人工知能研究の一環として将棋ソフトの開発開始
1980年頃単に合法手が指せるだけのソフトもたくさん存在
1990第一回 コンピュータ将棋選手権大会 開催
1996チェスのチャンピオン、カスパロフ、IBMが開発したチェスソフト(ディープブルー)に勝利
1997.5カスパロフがディープブルーに敗れる 2勝1敗3引き分け 「人工知能が人間に勝利した日」と大きく報道される
2005.6アマチュア竜王戦で“激指”がベスト16に
2005.10.14日本将棋連盟 プロ棋士が将棋ソフトと平手(ハンディなし)で対局することを禁止令
2006.5保木邦仁氏開発のボナンザ 世界コンピュータ将棋選手権に初出場で優勝
2007.3.21渡辺明竜王がボナンザに勝利(持ち時間2時間) ボナンザは予想以上の善戦
2009.1保木邦仁氏がボナンザのソースプログラムを公開し、他の開発者の利用を認める
2010.10.11あから2010(激指、GPS将棋、Bonanza、YSSによる合議制で作られた将棋ソフト)が 清水市代女流王将に勝利
2011.2.6ニコニコ動画 初のタイトル戦生放送 (棋王戦 5番勝負)
2012.1第一回将棋電王戦 米長邦雄氏 ボンクラーズに敗北
2013.4-5第二回将棋電王戦 5 対 5 の団体戦で将棋ソフトが 3勝 1敗 1分けで勝利

ソフトは、2010年に女流トップには勝っているし、2012年には引退した元トップ棋士にも勝っています。着実に山を登ってきてるんです。

そんな中、今回、4段、5段、6段の棋士が 5人出てくるのと、将棋界で 10人しか存在しないA級棋士がでてくるのでは、その意味は大きく異なります。


結果はどうあれ、A級棋士が出てくれれば、次回(第三回)電王戦への期待値は大きく上がります。当然、「次は A級棋士ではなくタイトルホルダーを」という話に進みますよね。

第三回の企画をするにあたって各関係者が議論する前提条件が、質的に変わる。だから今回、ぜひとも一人はA級棋士に出てほしい。

こういう戦略的な判断こそがまさに人間の判断であり、「人間すげー!」なんです。


てか、大局観のある人ってほんとにスゴイ。


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そんじゃーね


<コンピュータ将棋 関連エントリの一覧>


1) 『われ敗れたり』 米長邦雄

2) 盤上の勝負 盤外の勝負

3) お互い、大衝撃!

4) 人間ドラマを惹き出したプログラム

5) お互いがお手本? 人間とコンピュータの思考について

6) 暗記なんかで勝てたりしません

7) 4段階の思考スキルレベル

8) なにで(機械に)負けたら悔しい?

9) 「ありえないと思える未来」は何年後?

10) 大局観のある人ってほんとスゴイ ←当エントリはこれです

11) 日本将棋連盟の“大局観”が楽しみ 

12) インプット & アウトプット 

13) コンピュータ将棋まとめその2

2013-06-07 「ありえないと思える未来」は何年後?

今回、将棋ソフトについて何冊か本を読み、ponanza 開発者の山本一成さんと話した中で、ソフト開発者とそれ以外の人には、いくつか根本的な発想の違いがあると感じました。

山本さんが「将棋の完全解明より、コンピュータが人間の知性を超える日のほうが早く来る」と言われたのにも驚きましたが、


同じく将棋ソフト開発者の保木邦仁氏が本の中で、「ボナンザ (Bonanza)は、全幅検索を用いた点とコンピュータ自身に学習させたという点で、コンピュータ将棋としては画期的であり、関係者にはすごく驚かれた。

それでも(将棋の強さの結果が他のソフトと)同じレベルにすぎないということにやや愕然とした」と書かれているのですが、この言葉も私にはピンときませんでした。


保木氏は、ボナンザはこれまでのソフトとは異なる発想で作られたのだから「まったく弱いか、あるいは群を抜いて強いか、どちらかになりそうなものだが、そうはならなかった」と振り返られてます。

でもね。人間なら、「やりかたを大幅に変えたけど、結果は対して変わらなかった」という経験はよくあります。

勉強方法を根本的に変えてみたけど、たいして成績が上がらない(下がらない)とか、

食べるものを変えてみたけど、人間ドックの数値も変わり映えしない、

もしくは、化粧の仕方を根本的に変えてみたのに、結局どうよ、みたいなことは・・・よくあるでしょ?


私は保木氏の言葉を読んで、「そうか、ソフト開発する人って、“考え方を大きく変えたら、いいにしろ悪いにしろ、劇的に結果が変わって当然”と考えるんだ」と、初めて認識したんです。

この点については山本さんも「プログラムをちょっと変えただけで結果がめちゃくちゃ違ってしまうのはよくある話。保木さんの感覚はごく自然」とのこと。


この理由を考えていたのですが、もしかすると人間は「根本的に何かを変えたつもり」でも、実は過去に引きずられ、もしくは、知らず知らずのうちに変化することへの抵抗が表れてしまい、結局あまり変えずにいたりする、のかもしれません。

だから「大きく方法を変えたのに、結果はたいして変わらない」という経験が多いのかも。


機械の場合は、指示されれば必ずそのとおりに変えます。躊躇も抵抗感もありません。しかもバカ正直に(すべての場合において指示されたように)変えるから、レバレッジも大きく作用します。

「やり方を変えたら、結果は劇的に変わる機械」と、「やり方を変えたのに(=変えたつもりなのに?)、結果として何も変わらない人間」の違いは、それぞれの変化に対するスタンスを反映しています。


★★★


もうひとつ、変化に対する人間とコンピュータの感覚の違いが鮮明だったのが、2007年に行われた渡辺明竜王と保木邦仁氏の会話です。

渡辺竜王はこの本の中で、「でもいつの日か人間が完全に勝てなくなるということはあるんですかね。私が生きている間に」「あと 60年以内でどうですか? 私が生きているうちには?」と話されています。

(※この会話は今から 6年前の 2007年に行われているので、渡辺竜王の今のご意見ではありません)


ここで私が関心を持ったのは、「人間が、あり得ないほど画期的なことが起こるのは、何年後だと考えるか」という時間感覚です。

「いつ再び世界大戦が起こるか」とか、「誰も働かなくても食べていけるような日がくるだろうか」みたいなことを考えるとき、私たちはよく「自分の目の黒いうちに、それがあり得るか」と考えます。

これは、今の時点では想像もできないことが起こるタイミングは、人間の寿命と比較するほど長い時間感覚の中で捉えられる、ということです。

渡辺竜王の“60年”も同じ感覚からでてきた言葉でしょう。


ところが保木氏は、「 60年というのはかなりのものですよ。20年でものすごく技術は発展すると思います」と(かなりやんわりとですが)、コンピュータの進化を考える時間単位としては、60年は長すぎると指摘されます。

その言葉を受けて渡辺竜王は、「確かに 20年、30年後ならどうなっているんでしょうね」と言われてますが・・・おそらく20年、30年という時間単位でさえ、コンピュータ側にいる人たちにとっては、長すぎる時間なのだと思います。


誤解のないように。私は渡辺竜王がコンピュータ将棋の進化の速度を読めていないなどと指摘したいわけではありません。

そうではなく「人間の時間感覚が、何に規定されているのか」ということに興味があるんです。


私たちは、今まで生きてきた中で「何かが根本的に変わる」のには、最低でも 10年単位の期間が必要だった、という経験をしてきています。

私自身、自分の性格が子供の頃と今では大きく異なっていると感じますが、その変化には 20年以上の歳月がかかっています。

自分の故郷の風景が、昔には想像できなかったほど変貌したという人もいるでしょうが、それも数十年単位で起こったというケースが多いでしょう。

「この間まで赤ちゃんだったのに、すでに俺の言うことを聞かなくなった娘」も、その成長には 20年近い歳月がかかっています。

人間を含め、アナログなものの変化は(毎年少しずつ変化はするけれど)、結果として「想像できないほど変わる」には、数十年がかかるんです。


ところがコンピュータの進化は、それよりは相当に短い単位で画期的な変化が起こってきています。

だからそういう世界に身を置く人にとっては、数年後は予測できても 10年後ともなれば、今はとても想像できないことが可能になっていてもまったく不思議ではないのです。

むしろ 30年後とか「自分の目の黒いうちに」なんて単位では、あまりに先過ぎて、何が起こるかなんて考えるのも無駄、くらいの感じなのでしょう。


言うまでもなくこの「時代変化の早さの体感速度」が、アナログ時代とデジタル時代の大きな違いです。

私たちは(=今までの人間は)「世の中は変化しつつあるけど、結局のところ、大きな変化が実際に起こるには、それなりの期間がかかる」と考えています。

今の時点で、大企業に就職したい学生やそれを勧める親も、そういう感覚です。

「大企業が永久に安泰だとは言わないけど、あと数十年は・・」とか、「自分の目の黒いうちは」みたいな感じ。


私が今回学んだのは、人間とコンピュータでは大きく時間感覚が違うってことです。

そして、プログラム開発を自分でやっている山本氏や保木氏に関していえば、彼らの常識はコンピュータ側の経験に基づく常識(デジタル世界の時間感覚)です。

将棋ソフトに限っても、箸にも棒にもかからない状態が長く続いた後、ここ数年でトッププロに対抗できるほど強くなりました。

“まだまだ先の話”がある時点から突如、現実的になるという事態は、コンピュータの世界では頻繁に起こっているのです。


生物は、ものすごく長い期間をかけて環境適合できた者だけが生き残ってきました。生物が変化に要した時間は、めっちゃ長い。

でもコンピュータの世界は、それとはまったく異なるスピードで進化してきました。


だとするとデジタル革命の起こる今後、今の私たちが想像でもできない社会が出現するのは、30年後でも“自分の目の黒いうちに”でもなく、たった 10年ほど先なのかもしれない。

そして、この「変化の速度が根本的に変わる可能性」を意識しているかどうかが、次の時代をどう生きるべきかという個々人の判断にも、大きく影響してくるはず。


みなさんは、“今の時点ではあり得ないとさえ思えるほど、今とは異なる社会”がやってくるのは、いったい何年後だと思ってますか?


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そんじゃーね


<コンピュータ将棋 関連エントリの一覧>


1) 『われ敗れたり』 米長邦雄

2) 盤上の勝負 盤外の勝負

3) お互い、大衝撃!

4) 人間ドラマを惹き出したプログラム

5) お互いがお手本? 人間とコンピュータの思考について

6) 暗記なんかで勝てたりしません

7) 4段階の思考スキルレベル

8) なにで(機械に)負けたら悔しい?

9) 「ありえないと思える未来」は何年後? ←当エントリはこれです

10) 大局観のある人ってほんとスゴイ

11) 日本将棋連盟の“大局観”が楽しみ 

12) インプット & アウトプット 

13) コンピュータ将棋まとめその2

2013-06-05 なにで(機械に)負けたら悔しい?

人間対コンピュータの勝負である将棋の電王戦が盛り上がったのは、「プロ棋士が、コンピュータソフトに負けることへの関心」が高かったからでしょう。

でもね、人間は既に、多くの分野で機械に勝てなくなっています。でも私たちはそれをたいして気にしていません。


たとえば体力的なことで機械に負けても、悔しいと感じる人なんてもはやいませんよね。

「くそー、パワーショベルの野郎は何トンも持てるのに、俺は 100キロしか持てないぜ。悔しー!」などとは思わないし、「どんなに頑張ってもプリウスより早く走れない。あんなハイブリッドな奴にさえ勝てないなんて、オレはもう絶望だ」とも考えません。

人間は飛ぶこともできませんが、だからって、機械(飛行機)に対して悔しいなんて思わない。


「飛行機を作ったのは人間だから悔しくないんだ」って? 

そんなこと言ったら、将棋ソフトを作ったのだって人間です。今のところ、「人間を作った機械」は現れてないので、そこまで突き詰めるなら人間はナンも負けてません。


★★★


「身体能力で負けるのは悔しくないけど、脳力で負けると悔しい」のでしょうか? 将棋は「知能を競うゲーム」だから、負けると悔しい?


でもアタマを使うことに関しても、人間はすでにあれこれ機械に負けてますよね。

「くそー、俺の電子辞書は広辞苑含め 36冊も丸暗記してるんだぜ。俺がまだ一冊も暗記できてないのに!」とか思わないっしょ。「暗記」でボロ負けしてることを、私たちは屁とも思ってない。

計算は?

100均で買えるちゃちい電卓でさえ、589657 ÷ 358748 を一瞬で計算するけど、あたしは全く悔しくありません。


この前、プロ棋士の方に「詰将棋でソフトに負けてるのって悔しいですか?」って聞いたら、「全然悔しくない」とおっしゃってました。

詰将棋とは、王手を続けながら王将を詰ませる手順を探し出すゲームで、こういうパズル的な問題が、プログラムはとても得意です。

そして、プロ棋士でも 1時間以上かかる何百手の詰将棋を、ソフトが数分で解いても、プロ棋士は「別に悔しくない」わけです。

鉄道オタクの人だって、渋谷から京都経由で福井まで行く最短経路を、yahoo路線などのウェブサービスが一瞬で表示してくれても、別に悔しくはないでしょ?


つまり、身体能力はもちろん、頭を使うことにおいても、

・暗記

・計算

・正しい答えが一つだけ存在するパズル的な問いの答えを探すこと

に関しては、私たちはもう機械に負けても、あんまり悔しくないんです。


★★★


将棋の場合は、大局観と呼ばれる形成評価の能力などが(現時点では)チャレンジを受けてるわけですが、これだってそのうち機械に負けることに慣れてしまう可能性は、大いにあります。

たとえば天気予報に関しても、今ではプログラムのほうが人間より正確だと言われています。こういうの、気象予報士の方は悔しいかもしれませんが、私はまったく悔しくありません。

私の専門である「文章を書くこと」に関しても、ニュース報道を元に自動的に文章を書くソフトが現れ、それが「Chikirinの日記」より人気になったら・・・悔しくないとは言わないけど、それもすぐに慣れそうです。

特に、今ブログを書いてない人にとっては、悔しいはずもなく、単に「超便利なソフトができた!」ってだけでしょう。


結局のところ、「自分と直接的に競合しない限り(=自分の仕事や価値を奪わない限り)、コンピュータがどんどん進化するのは非常によいことだ」と私たちは考えているんです。

だから、人間がやってることの多くは、これからもどんどん機械に置き換えられていくでしょう。

そして、(今までもそうしてきたように)私たち人間は、「現時点では機械にはできない分野」に逃げ込んでいくしかありません。


それって何分野?

創造力? 感情に訴える部分?


そのあたりも、永久に負けないとは言い切れませんよね。

コンピュータが描いた絵が、人間の描いた名画より感動的なものになり、「いやー、最近のコンピュータは、いい絵を描くようになりましたねー」みたいな日が来るのかもしれない。

感情表現についても、コンピュータが「もう少しゆっくり、こういうトーンで話したほうが、相手に気持ちが伝わりやすいですよ」と(謝り方が上手い人の膨大な話し方事例を分析した上で)教えてくれたら、そういうのが不得意な人には便利すぎです。


というわけで人間は、体力から始まって脳力のアレコレ、感情分野から創造力の必要な分野も含め、どんどん広い分野で機械に勝てなくなるはず。

そのたびに「人間にしかできないであろう」分野に逃げ込んむことを「撤退戦」と考えるか、それとも発想を変えてポジティブに捉え、「機械ができることはどんどん機械に任せ、人間は、自分が楽しいことだけをやって生きていけばいい」と考えるか。

生産に関わることや面倒なことはすべて機械に任せ、人間は「何も生み出さないが、自分自身がおもしろここと、楽しいことだけをやって生きる!」日がやってくるのは、私にとっては「明るい未来」であって、恐怖でも不安でもまったくありません。


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そんじゃーね


<コンピュータ将棋 関連エントリの一覧>


1) 『われ敗れたり』 米長邦雄

2) 盤上の勝負 盤外の勝負

3) お互い、大衝撃!

4) 人間ドラマを惹き出したプログラム

5) お互いがお手本? 人間とコンピュータの思考について

6) 暗記なんかで勝てたりしません

7) 4段階の思考スキルレベル

8) なにで(機械に)負けたら悔しい? ←当エントリはこれです

9) 「ありえないと思える未来」は何年後?

10) 大局観のある人ってほんとスゴイ

11) 日本将棋連盟の“大局観”が楽しみ 

12) インプット & アウトプット 

13) コンピュータ将棋まとめその2

2013-06-02 4段階の思考スキルレベル

将棋ソフトに関しておもしろかったのは、先日も書いた「探索」と「局面評価」という思考プロセスです。

1)探索=とりうる選択肢を、自分の選択肢→相手の対応策(選択肢)→自分の選択肢、と深掘りしつつリストアップ


2)局面評価=上記の過程で現れる局面を、どの程度、自分に有利か(不利か)評価する


3)その上で、自分にとって最も有利な局面につながる選択肢を選ぶ


探索とは、下記のような図=探索木=ツリーのイメージです。 (『人間に勝つコンピュータ将棋の作り方』より)

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この探索と局面評価というステップは、ビジネスや個人生活などあらゆる意思決定の場面で使われてます。


将棋のような完全情報ゲームでないため、より複雑ですが、ビジネスでは、

・自社が値段を下げる→他社が対抗してくる→自社はどうする?・・・であったり、

・自社が買収を提案する→第三者が価格を釣り上げる→公正取引委員会がいちゃっもんをつける→自社はどうする?

というように、自分と他者の選択により、結果として現れるそれぞれの局面を評価し、どの手を選ぶと自分たちに有利な局面が実現できるか、私たちは日々考えながら意思決定をしているはずです。


★★★


最初のステップである「探索」には、選択的探索と全幅探索というふたつの方法があります。

すべての選択肢について深く探索しようとすると、ものすごい時間がかかるため、「一定の条件を満たす選択肢しか深堀りしない!」と最初に決めてしまうのが、選択的探索です。

ボナンザ以前の将棋ソフトはこれをやっていましたが、どういう基準で深掘りする選択肢を選ぶのか、という条件設定がイマイチだったため、成果が上がっていませんでした。

でも保木氏が開発したボナンザは、チェスソフトで使われていた全幅探索を採用します。


★★★


私たちは全幅探索と聞くと、文字通り全ての選択肢を深堀りするのかと勘違いしがちですが、実はそうではありません。

全幅探索においても、不要な選択肢を早めに見極めることが必要です。

ただし全幅探索では、「こういう条件の選択肢しか深堀りしないよん」と最初に決めてしまう選択的探索とは異なり、

一定の計算のもとに「この枝(選択肢)の先には、他の選択肢にあるより、よい局面はでてこない」と判断したときだけ深堀りしない枝を切っていきます。

ここでもやはり、いかに効率よく「深くは読まない手」を決められるかが探索の質を決めるということです。


そういえばビジネスの意思決定でも、「どうすれば成功するか見極める」ことが目的なのに、「すべての選択肢を網羅的にリストアップする」ことに熱中してしまう=目的と手段を取り違えてしまう、“ロジカルシンキング初心者”が存在しますよね。

また、結論を出すためだけなら簡単なのに、すべての数字を同じように重視し、徹夜で巨大なスプレッドシートと格闘しているような人も、たいてい無思考な全幅探索に陥っています。

そんなことをやっていたら、仕事にせよ将棋にせよ時間ばかりかかってしまい、実戦には使えません。

大事なのは、「その先に有利な局面がなさそうな選択肢は、できるだけ早めに検討対象からはずす」、という思い切った意思決定をしつつの全幅探索なのです。


★★★


さて、コンピュータが「できる限り賢い全幅探索」を試みている一方、人間はどんな思考プロセスで探索をしているんでしょう? 全幅探索? それとも選択的探索?

この図は、山本一成氏が、私にコンピュータと人間の探索方法の違いを説明するために書いてくれた図です。(文字は私です)

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つまり人間は「ここだ!」と思うところを“直感的に”見定めて深堀りし、もしそれが違うとわかった場合、また別のところを“直感で”選んで「ここじゃね?」と深掘りし始めます。

これって「仮説思考」と言われてるのと同じ思考方法ですよね。

でも・・・人間にもいろんな思考レベルの人がいますからね・・・というわけで、その辺を整理してみると、おそらく下記のような四段階になるんじゃないでしょうか?


<レベル1 思い付きで決める人 & 完成度の低い選択的探索>

過去の経験に基づいて「絶対こっちだ!」と固執したり、思いつきで最初に浮かんだアイデアに、「めっちゃいい案! 絶対コレに違いない!」と浮かれ飛びつき、それ以外には目を向けなくなってしまう人。

初期の将棋ソフトも同様で、めちゃ単純なルールに基づき、考えるべき選択肢を絞り込んでしまっていました。

これでは最善の解がある選択肢を間違って切り捨ててしまい、反対に、どうでもいい分野ばかり時間をかけて調べる、みたいなことになりがちです。


<レベル2 ロジカルシンキング初心者 & どの枝も刈り込まない全幅探索>

これは、漏れなくすべての選択肢であるAからZまでを、端から順に検討しようとする人。

一見、正しい方法のように見えますが、これでは正しい解に辿りつくまでにめっちゃ時間がかかり、実務に使えません。

私たちはよく(やや否定的なニュアンスで)“機械的な思考”と言いますが、既に機械はそういうレベルの思考をしていません。

むしろロジカルシンキングだの MECE だのを必死で使おうとしている人こそ、“機械的な思考”に陥ってしまっているわけです。

てか中には、「完璧にレベル2ができるようになるのがゴールだ!」と思ってる人さえいます。それじゃあお話になりません。


<レベル3 ベテランコンサルタント & 巧く枝を刈りこめてる全幅探索>

全体観をもって漏れなくすべての選択肢を検討するわけですが、検討の途中で「これは明らかにありえない!」とわかった選択肢については早めに検討を打ち切り、正解がある可能性の高い選択肢のみを深堀りする方法です。

ざっくりした試算をしながら、深掘りするべき選択肢を早めに見極めてしまう人は、仕事が早く、しかも大事なことを見逃しません。

ただしコレができるようになるのは(人間にとっても、機械にとっても)スゴく難しい。


<レベル4 稀代の名経営者や将棋のトッププレーヤー & 洗練された高度な選択的探索>

頭の中に全体像を浮かべ(=大局観?)、最も解がありそうな選択肢にピンポイントで目をつけ、そこを集中的に深堀りします。

全部を検討するのではなく「この辺に答えがありそう」という勘所だったり、嗅覚だったりをもって突然(他者から見ると)極めて思い切った選択をする。

もちろん途中で「これは最善ではないかも!?」と思い始めたら、最初の仮説に拘らず、さっさと次に可能性が高いと思える選択肢に移って、また深堀りを始める。

これ、表面的にはレベル1の「思いつきで選んでる人」に似てるのですが、実際には全然違います。

彼らが選択する手に関しては、なんらか(本人が言語化できるか否かは別として)理由があります。たんに「あっ、それ考えるの、忘れてた!」というレベル1の人とは違うのです。



今、将棋ソフトはレベル3のところで鋭意工夫を重ねていて、4のレベルにあるトッププロに挑戦しようとしています。

もしそれが可能になるのであれば、

・ほとんど分析らしい分析もせずに

・「この会社を買収するぞ!」とか、「この分野は撤退する。代わりにあっちの分野に重点投資する!」と

・まるで思いつきのように決めてしまい、

・けれども実際にやってみたら成功を重ねるカリスマ経営者の意思決定

も、コンピュータが代替できる日がやってくるってことなのかな?


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そんじゃーね!


<コンピュータ将棋 関連エントリの一覧>


1) 『われ敗れたり』 米長邦雄

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3) お互い、大衝撃!

4) 人間ドラマを惹き出したプログラム

5) お互いがお手本? 人間とコンピュータの思考について

6) 暗記なんかで勝てたりしません

7) 4段階の思考スキルレベル ←当エントリはこれです

8) なにで(機械に)負けたら悔しい?

9) 「ありえないと思える未来」は何年後?

10) 大局観のある人ってほんとスゴイ

11) 日本将棋連盟の“大局観”が楽しみ 

12) インプット & アウトプット 

13) コンピュータ将棋まとめその2