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Chikirinの日記 RSSフィード

2013-12-08 俺のイタリアン 俺のフレンチ

今年の4月に発売された本なのですが、とてもおもしろく、いろいろ考えさせられ、しかも、読んでて涙が出てきてしまいました。

ビジネス本を読んで涙が出たなんて久しぶりです。私は涙腺が弱いので、映画とか小説の場合は、感動して涙が止まらなくなることはよくあるんですが、ビジネス本で泣くのはさすがに珍しいです。


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著者の坂本孝氏は、「ブックオフの創業者」として有名ですが、生涯で13の企業を立ち上げている連続起業家でもあります。13の事業のうち、成功したのは、

・中古ピアノの販売

・ブックオフ

・俺のイタリアン、俺のフレンチなどの飲食業チェーン

の 3つとのこと。


精米や精麦を手掛ける老舗企業の家に生まれ、何不自由なく育った氏は、苦境に陥って銀行管理下に入った家業の再建に携わるなど、若くから事業家としての経験を積みます。その後は独立して次々と事業を起こし、上述したように“大半は失敗”しつつも、ブックオフで大ブレーク。

京セラ創業者の稲盛和夫氏に心酔しており、稲盛塾の塾生でもありますが、最後はさまざまな問題を起こし(様々な問題に巻き込まれ、なのか、週刊誌にハメられて、なのかは不明)ブックオフの経営から身を引きます。この時、坂本氏の年齢は67才。


ブックオフの創業者なんだから、別にもう働く必要はなかったでしょう。悠々自適の老後もありうるその時、彼が選んだ道は、まったく経験のない飲食業での新たな起業でした。その時の年齢は 69歳。70歳目前です。

現在、氏が携わる「俺の株式会社」は、「俺のイタリアン」「俺のフレンチ」などの飲食店チェーンを経営しています。

それらの店のコンセプトは、“ミシュラン星付き級の料理人が腕をふるい、高級店の 3分の 1の価格でおいしい料理を提供すること。フード原価率 60%超えでも、顧客を 1日 3回転以上させることで繁盛店の利益を実現すること”(俺の株式会社ウエブサイトより)とされており、極めてユニークなビジネスモデルです。

飲食店の原価率は通常 3割と言われています。1万円のコース料理の原価は 3000円です。しかし、俺のフレンチなら 5000円で同じ材料を使った料理が食べられます(原価率は 5000円の 6割で 3000円)。しかも材料だけではありません。料理人も超一流店のシェフなのです。


こう書くと、「高級料理を低価格で販売するために、社員や仕入先の人たちは安月給でこき使われているのでは?」と思われそうですが、そうではありません。

彼らの店は立ち飲み(立ち食べ?)で、かつ、常に客の途切れない行列店にすることで固定費負担を最小化し、そんな低価格(&高原価率)でも、料理人にはこれまで以上の年収を確保しようとしています。

というか、「その分野で一流と言われる料理人の年収が 600万円程度だなんておかしいだろう? 1000万円の年収の料理人が輩出できるレストランを経営するのが、経営者としての務めではないのか?」という気持ちが坂本氏にはあるんです。


コレすばらしいですよね。日本の料理人って、グローバルに見れば驚くほど高いレベルの仕事をしてるのに、あれで年収 600万円ではかわいそうすぎると私も思います。そういう人たちに高い給与が払えないのは経営者がアホだから、というのは、今、多くの“モノづくり”の企業で起こっていることとまったく同じでしょう。

同様に坂本氏は、店で生演奏を聴かせるミュージシャンに関しても、「一流音大を出ても、飲食店のライブで生計を立てるしかなく、しかも年収は 300万円未満」みたいな人がたくさんいると知り、客が一日 3回転する自分の店でライブチャージ数百円でライブをしてもらうことで、彼らの職場を確保し、収入増に役立ててもらおうと考えます。

・客には一流の音楽を数百円のライブチャージで楽しんでもらい、

・ミュージシャンにも稼げる職場を提供する

というのは、

・一流の材料を一流の料理人が調理した料理を客に格安で楽しんでもらい、

・一流シェフにも今まで以上に稼げる職場を提供する、

のと同じ目標です。


もちろん「俺の株式会社」もガンガン儲けながらね。


世の中には「立って一流料理を 5000円で食べるより、2万円払ってもいいからゆったり座って長々とおしゃべりしながら食事をしたい」人も多いでしょう。

でも「 2万円なんてとても払えないけど、そういう料理を食べたい!」人もいるわけで、両方の選択肢が提供されることには、大きな意義があります。


そして何よりも、「なぜ、ミシュランの星が付いた店で働いていた有名シェフや、銀座に店を構えていた一流料理人が、次々と「俺の株式会社」に転職するのか」という点こそが、この本が伝えるもっとも重要な点です。

彼らが「給料が高くなりそうだから」だけで、格下の店に転職するなんてありえません。それくらいは誰でもわかりますよね。


では、なぜ彼らは「俺のフレンチ」で調理してみたいと思うのでしょう?

本の中にはシェフたちの経歴が書いてありますが、本当に錚々たる店で腕を振るっていた料理人ばかりなんですよ。

それが 3歩も歩けば壁にぶつかるほど狭い厨房の店に転職し、自分の腕を振るおうと決めるのです。

なんで!?


その理由がわかったとき、私は涙が止まらなくなったんです。



・・・ここから先は本を読んでください。


人はなんのために働くのか。

何に対して喜びを感じるのか。

経営者とは何を実現しなければならないのか。


他業態にも応用できるビジネスモデル上のヒントや、飲食店チェーンの在り方、世界展開などに関する考察に加え、「働くって何なんだっけ?」という本質的な問いについてのエッセンスが凝縮されています。

長い本でも難しい本でもなく、むしろ口語体でスゴく読みやすいにも関わらず、驚くほど多くの学びが得られました。最近読んだビジネス書では最も感動した本のひとつです。


そんじゃーね


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追記)店舗販売をされている書店様へ

下記をプリントしてPOPとしてご利用いただいても(私は)問題ありません。ご自由にお使いください。

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あっ! → 丸の内の某書店さんかな?