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Chikirinの日記 RSSフィード

2014-11-29 電子書籍って儲かるの? 一年後の収支決算

私が初めて(個人で)電子書籍を 出したのは 1年前。 内容はブログ運営記で、自作の表紙が初々しい(?)この本でした ↓ 

「Chikirinの日記」の育て方
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電子書籍といえば、

・Sonyのリーダーや 紀伊國屋書店のサービスなどは以前からあり、アメリカでの盛り上がりもあって、何年もの間、「日本でも、今年こそ電子書籍元年か??」と言われ続けていたものの、


・日本で本格的なブームが始まったのは、楽天が kobo を始めるぞー!とぶち上げた 2012年の 7月


・その後、アマゾンが急遽 kindle 端末を日本で発売開始 ( 2012年 10月)。同時に、キンドルでの個人出版も可能になりました。


・そこで私も、2013年(去年) 11月に初めてのオリジナル電子書籍を発売したわけです。


・この 2年間は、「誰でも電子書籍が出せる時代が来た!」という興奮の声が起こったり、無名著者の小説がたくさん売れたと話題になった一方で、「いやいや、セルフパブリッシングなんて全く売れないよ」という体験談も多くあり、


・結局のところ電子書籍は売れるのか、売れないのか。儲かるのか、儲からないのか。いまでも様々な意見が入り乱れている

という状況です。


セルフパブリッシングからちょうど一年、文藝春秋から紙書籍化も実現した この機会に、私がトライした電子書籍・個人出版の結果をまとめておきます。

結果)オリジナル電子書籍である「Chikirinの日記の育て方」は、

・部数としては、発売から 1年間で約 1万部がダウンロードされ

・印税収入は 450万円強

となりました。


これを、同じ著者(あたし)が出版社経由で出している紙の本と比べると、(紙の本は複数出しており、売れ行きもバラバラなので、その平均と比べた場合)

・部数は“かなり”少ない ( 3分の1から 5分の 1) けれど、

・印税収入は“やや少ない程度” に達しています。


この数字をどう見るか、ですけど、

1)販売部数(ダウンロード数)

紙の書籍と同水準の価格であれば、電子書籍の販売数が紙の書籍よりかなり少なくなるのは、今の時点では仕方ありません。

紙の本を読める人の数(=大人の人口)に比べて、「スマホやタブレットで本を読む人・一度でも読んだことのある人」はまだ限定的です。

特に、ある程度の長文を読むには、スマホではなくタブレットが無いと厳しいのですが、こちらは 世帯普及率でさえ、まだ 2割なんですよね。(スマホで長文を読めるのは若い人だけだと思います)

今の電子書籍市場では、1万ダウンロードがあれば「ベストセラー」と呼ばれるようですが、紙だと最低でも 5万、もしくは 10万部くらいでないとベストセラーとは言いにくいので、この辺からみても、まだ市場は紙の書籍の 10分の 1 くらいなのだろうと思います。


<書籍および電子書籍の市場規模について>

ICT 総研 2014年度 電子書籍コンテンツ市場動向調査

出版物の分類別売上推移

電子書籍の市場規模(電子書籍情報まとめノート)

紙の出版市場規模(電子書籍情報まとめノート)


とはいえ、タブレットやスマホの普及率、そして、電子書籍を読む人の比率はこれから確実に拡大するので、今の時点(=電子書籍元年から 2年の時点)でこの結果なら、決して悪くはありません。

タブレットの(世帯普及率ではなく、)個人普及率が 5割を超えれば、市場規模も相当に拡大するでしょう。

そうなれば私の場合、数年以内に「紙の本と電子書籍の売れる冊数は同じ。もしくは電子書籍のほうが多い」くらいになるかもしれません。

著者属性により、読者の電子書籍選択比率が異なるわけですが、私はもともとブロガーなので、その比率も相当に高いと思われるからです。


2)印税率

今、紙の本の一般的な印税率は 10%です。これは著者と出版社の個別契約なので、それより低い場合や高い場合もあります。

一方、個人出版の(=出版社や電子書籍業者を使わずに自分で出した)電子書籍の場合、印税率は 30%から 70%までと、かなり高くなります。

ただし将来、テキスト作品をマネタイズするためのプラットフォームが、独占状態に陥らないことが(書き手にとっては)とても重要です。

もし利用できるプラットフォームが独占状態になれば、印税率は、紙の本と同程度まで下がってしまうかもしれません。

さらに今後は、「一ヶ月の定額料金を払えば、電子書籍は読み放題」といったサービスも始まるはずで、こういった新しい価格構成の中で、著者がどれくらいの配分を受けられるかは、ひとえにプラットフォーム側の判断にかかっています。

他にも、電子書籍図書館サービスや、電子書籍の貸し借りという概念が導入されることも想定できるので、私みたいに実験的にやっている人はともかく、これを本業としてやっていこうという人には、この点が最大の不安要素(不確定要因)かもしれません。


3)本の販売価格

印税率に加え、収入の絶対額を左右するのが、本の販売価格です。

電子本でも一時期は 100円とか 200円の本ばかりがランキング上位に入っていましたが、最近は 1000円前後の本でも売れるモノは売れる(し、売れないものは安くても売れない)という傾向になっています。

今後は他の商品同様、高価格帯、中価格帯、格安商品と、複数の価格帯の市場が並立する形になるんじゃないでしょうか。

100円本ばかり出す著者、100円本専門の出版社( 100均出版社!)にたいして、500円から1000円あたりの、中価格帯の本を出す人&出版社、

そして、1500円以上など、高価格帯の本を出す著者&出版社といった具合に。


あたりまえですが、価格は販売部数(ダウンロード数)に大きく影響します。今回の私の本も、価格を 100円や 200円に設定していたら、ダウンロード数は大きく伸ばせたでしょう。

ただ私の場合、今後も出版社から本を出していく予定であり、“100円本の著者”と一緒にされて、得することはひとつもありません。調査目的で 100均出版社の本をいくつか読んで見ましたが、ほんとに文章の質がヒドイです。

なので今後も、「一定の対価を払っても、読みたいと思えるだけのコンテンツを提供できる書き手」という評価を維持できるよう頑張りたいと思います。


★★★


なお、今後の電子書籍のプライシングに関しては、一部を無料(もしくは格安)で読ませて、「残りを読みたければ 700円」といった、これまで書籍の世界では存在しなかったプライシングの工夫も始まるでしょうし、

ビジネス書や自己啓発本などは、発売からの時期や売れ行きに応じて価格を見直すという試みも始まるでしょう。紙の本では難しかった柔軟な価格変更が、電子書籍なら容易に実現できるのです。

今回の本も 2回ほどセールを行い、売上げへの影響を調べましたが、本に関しても洋服などと同様、

「欲しいモノは欲しいと思った時に買う!」という人の他、

「欲しくてもセールを待って買う人」、さらには

「セールになっていたら、要らないモノまで買ってしまう人」まで、

様々なタイプの消費者が存在するのだと理解できました。



以上、販売部数、印税率、書籍の価格という 3要素を掛け合わせると、「電子書籍って儲かるの?」の答がでるわけですが、今回の初オリジナル電子書籍に関しては、そこそこ成功と言える結果になりました。これくらいの収入になるなら、ある程度の時間をかけて執筆しようと考える人もいるでしょう。

今後は価格や印税率が下がる分を、電子書籍を読む人の裾野が広がることで、どの程度カバーできるのかが、ポイントになるのかな。私も継続的に本を出しながら、市場の拡大具合を確認したいと思います。


こちらは今回、紙の書籍になったもの↓ タイトルと表紙が変わり、過去の代表的なエントリも追加しました。 


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★★★


ところで、ここまでは完全に個人で出す(セルフ出版型)電子書籍の話でしたが、最近は、出版社経由で出した本についても、それなりの収益が上がるようになってきました。

こちらの印税率は(電子書籍であっても)そんなに高くないのですが、それでも、過去数年に出版社から出した本の「電子書籍印税の合計」は、ようやく 300万円を超えてきました。

まだ紙版の印税には遠く及びませんが、著作を数多く抱える著者にとっては(私のレベルではなく、過去に数十冊とか書いてるような著者にとっては)、絶版もなく、話題になる限りいつまでも売れ続ける電子書籍の印税は、それなりの収入源として期待できるんじゃないでしょうか。 (この人とかね・・


ちなみに下記は、電子書籍(マンガ)の個人出版で成功されている漫画家の鈴木みそさんの本。テキスト書籍とは異なる市場の立ち上がりを見せているデジタルマンガの世界について、いろいろ学べておもしろいです。マンガでも、今後は出版社を介さない個人出版の作品が増えていくでしょう。

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新市場が大好きな私には、とっても楽しみな未来です。

そんじゃーね!



★過去関連エントリ★

電子書籍の個人出版を試してみたよ! セルフ・パブリッシングの体験記