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Chikirinの日記 RSSフィード

2015-03-31 第5話 「パジャマを生地で選ぶ」という新しい市場

<これまでのあらすじ>

第1話 ウォールストリートから八日市へ

第2話 価値を伝える

第3話 「市場の選択」という幸運

第4話 「買うと決める」と「買う」の分離


インタビュー中、北川社長は何度も「一般の消費者が生地の違いをここまで理解し、評価してくれるとは思っていませんでした」と言われてました。


パジャマを買う時に気になる項目を挙げてみると、

・季節とのフィット(生地の厚みや、長袖か半袖かなど)

・デザイン(パンツタイプかネグリジェか、ボタンかかぶりタイプか、柄など)

・値段

・肌触り、素材

などでしょうか。


通常、肌触りや素材は検討要素のひとつに過ぎず、それもせいぜい「綿 100%か」「自然素材か」くらいしか意識されていません。

でも、ラブリーが売ってるパジャマって、「まず素材で」選ばれてるんです。


たとえば私が好んで着てるのが、オーガニックコットンのパジャマ。真冬用がコレで、↓

→ (アマゾン)男女兼用 0331

→ 「★ちきりんセレクト★での説明


春秋がこちら↓


→ (アマゾン)レディース 0308



春先から夏は同じ天竺ニット生地で半袖の↓

→ 「(アマゾン)半袖 レディース 0601


上記はいずれもオーガニックコットンのニット系(編み地系)生地ですが、ほかにも、織り地系の生地があります。

たとえば下記はガーゼ製品で、左から、一重ガーゼ、二重ガーゼ、三重ガーゼのパジャマです。


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→ (アマゾン)半袖夏用 二重ガーゼ パジャマ 0602


一重ガーゼは本当に薄くて、透け感があるほど。二重ガーゼは普通に冷房を使う家なら夏用にぴったりですが、三重ガーゼはかなり厚手(↓)

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「なんでガーゼなんていう夏の素材で、こんなぶ厚いパジャマを作るんですか?」と聞いてみたところ、「ガーゼという生地が大好きで、一年中、ガーゼのパジャマを着ていたいという人もいるんです」とのこと。


なるほどねー!


私は真夏だけガーゼのパジャマを着ていますが、「ガーゼを一年中着る」いう発想はありませんでした。

でも、洗えば洗うほど柔らかくなり、通気性も良くて他の生地にはない肌触りがあるガーゼを「一年中、着ていたい!」と思う人は(言われるまで気が付かなかったけど)確かにいるでしょう。

まさに「パジャマ選びには、生地が何より大事!」という人です。


(子供用のガーゼパジャマも人気)



他にもパイル生地が好きな人向けの、パジャマがこれ↓

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→ ふわふわ両面パイル地 メンズ


パイルも汗をよく吸い取ってくれるタオル地というイメージで、どちらかといえば夏の素材だと思うのですよね。

だからもしパイルを冬にも着たいなら、相当に分厚く作る必要があるわけですが、それがなかなか難しいらしい。

上記のパジャマは極みシリーズというブランドで 1万 5千円もするんですけど、びっくりするようなボリュームのパイル(両面ループなんです)で、

なんと 1964年(前の東京オリンピックの年!)に輸入されたフランス製の織機で作られてる生地なんだって。(今の最新の機械だと、こういうボリュームは出せないのだとか)


ふーん! 


とはいえこれも確かに、「ガーゼ命!」「パイル大好き!」って人には、極上のパジャマなんだと思います。


★★★


その他にも、

麻好きの人には、リネン(左側)と、ラミー(右側)のパジャマがあるし、(リネンとラミーは全く異なる植物で、手触りもかなり違います)

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アウターに使われるシャツ生地で作られたパジャマもあります。

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→ レディース オックスフォードナイティ


私自身は、アウターとしてもシャツを着ないので(=硬い生地が好きでないので)、パジャマでこんな生地を選ぶのはありえないと思うのですが、人の好みは様々。

こういうパリッとした生地のパジャマが大好きという人も当然いるんでしょう。


あと、こちらは、リヨセルという天然繊維にシルクとナイロンの混紡。アウターのドレスにもいいんじゃないかと思えるほど光沢があってなめらか。肌触りもとてもよいです。



というように、パジャマ工房では様々な自然素材のパジャマを作ってて、おそらくここでパジャマを買う人は、「生地でパジャマを選んでる」と言えるくらい、生地へのこだわりが強い人なんだと思います。

というか、私のように今までパジャマの生地なんて、せいぜい「綿 100%かどうか」「自然素材かどうか」くらいしか考えてなかった人も、こういうお店でパジャマを買い始めると、とことん素材にこだわりたくなる。

つまりパジャマ工房は「生地中心でパジャマを選ぶという楽しみ or 新しい市場」を創造したんですよね。


ちなみに私の場合、自然素材の中でも特に綿と麻が好きで、シルクやカシミヤ、ウールなどは、そこまででもありません。これ、前者と後者の違い、わかります? 

綿と麻は植物由来、シルク(繭・蚕)やカシミヤ(ヤギ)、ウール(羊)は動物由来なんです。

植物由来の素材の方がさらっとしてて、人間の肌と一体化しない。一方、動物由来の生地は肌と馴染むような暖かさがあると感じます。

「一年中、ガーゼのパジャマを着て眠りたい!」という人もそうですが、違いがわかってくると、みんな生地に自分なりの好みがでてきて、どんどんこだわりたくなる。


★★★


加えて、ここまで多彩な自然素材を扱えるのも、同社が「ローテクの小さな縫製工場だから」なんです。

というのも、オーガニックコットンなどの自然素材は、ちょっと引っ張るだけで長さが変わってしまう。縫っているうちに、Sサイズが Mになってしまったり、ということもあるそうです。

規格品を大量に作らねばならない大手メーカーでは、こういう素材はとても扱いにくい。

つまり「小さな縫製工場だから、超ローテクの会社だから、手作りだから」こそ、ここまで生地にこだわることができたわけで、まさに弱みを強みに逆転させた好例です。


このページには、パジャマ工房で扱われている多彩な種類のパジャマ、そしてその生地の説明がまとまっています。

→ ★生地についての説明ページ★


パジャマの生地にココまでこだわれるなんて、ほんとーに豊かな時代になったって気もするし、同時に、そういう新しい「価値」が取引される市場が出現した(作られた?)ことにも、ちょっと感動してしまいます。


そんじゃーね!


<関連サイト>

→ 初コラボ 真夏用レディース ちきりんパジャマが新発売!

→ 真夏用メンズ ガーゼパジャマも開発!

→ 真冬用 信じられない肌触りのオーガニックコットンパジャマ


http://d.hatena.ne.jp/Chikirin+personal/  http://d.hatena.ne.jp/Chikirin+shop/

2015-03-28 第4話 「買うと決める」と「買う」の分離

<これまでのあらすじ>

第1話 ウォールストリートから八日市へ

第2話 価値を伝える

第3話 「市場の選択」という幸運


ラブリーの北川社長から「アマゾンでは接客するのが難しい」と聞いた時、「!」って思いました。

確かにアマゾンの画面は「買う」という目的に最適化されているため、「どんな商品なのか理解する」とか、「買うべきかどうか検討する」ために必要な情報量は多くありません。


実はラブリーが運営するパジャマ工房では、規格外に大きなパジャマも 1500円から 2000円の追加料金でオーダーメイドできます。

すごく背が高い人なら、幅は通常サイズで丈だけ長くしてもらえるし、おなかがどーんと出ているお父さんでもキレイに着られるパジャマが手に入る。

→ パジャマのオーダーメードについて


一度オーダーするとサイズを保存しておいてくれるので、次回からは「胴囲だけ前回プラス 3センチで」といった調整オーダーも可能。もちろんネットでも申し込めるし、特殊な依頼については電話でも相談できます。

その他、「こっちの生地で、あっちのデザインのパジャマを」とか「上着は一つ、ズボンは 2本という組み合わせ」で買うこともできる。

 

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ところがアマゾンでは、そんな複雑な売り方はできません。彼らは購入履歴など情報を独占したいためか、顧客と売り主(店舗)が直接につながること自体を、歓迎してないっぽい。


とはいえアマゾンサイトの高い利便性を愛するユーザーの中には、「楽天の店ってゴチャゴチャすぎて見る気もしない」という人もいます。


これって、なんかもったいなくないですか? ポテンシャルな顧客を取り逃がしてるというか・・・


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北川社長から「アマゾンでは接客が難しくて」という言葉を聞いたとき、私の頭に浮かんだのは、コジマ、ヤマダ電器、ビッグカメラなどの家電量販店の置かれた立場でした。

ああいう店で売られてる大型テレビや高級掃除機だって、ほんとは“丁寧な商品説明や情報”、すなわち「接客」無しに売れる商品ではないんです。


でもアマゾン始め、ネットで家電を買う人は(まだマジョリティではないけど)どんどん増えています。

なぜなら、彼らは接客によって手に入れるべき「情報」をリアル店舗で手に入れ、その後、ネットで「購買」するから。いわゆる「実店舗のショールーム化」ってやつです。


ここでは、

・接客されたり情報を得る場所 と、

・購入する場所 の分離が起こっています。

コ難しく言えば、「価値供給プロセスのアンバンドリング」もしくは「ショッピング機能のアンバンドリング」かな。


で、これと同じことが、ウェブサイト同士でも起こる可能性があるのかも? と思ったんです。


たとえば私はよく本をブログで紹介します。それを読んで「この本を買おう!」と思った人は、アマゾンや楽天ブックス、もしくは電子書籍のサイトなど、お気に入りの販売サイトに移動して本を買います。

この時、本の販売サイトにもレビューや本の内容説明は載っているけれど「そんなの読まずに買う」人もたくさんいるはずです。


なぜなら先にちきりんブログを読んで、「この本をぜひ読みたい!」と思った時点で、購買についての意思決定は完了しており、あとは「購買」するだけだから。

これって、「情報を得る場所と購買場所の分離」ですよね? 


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こちらは、私がラブリーのオーガニックコットンのパジャマを勧めてるエントリなんですが、→ 「ちきりんセレクト:極上オーガニックパジャマのご紹介


「ショッピングサイトはアマゾンしか使わない」という人の中には、

「ちきりんのブログで情報収集」→「アマゾンで購入」

って人も、いるんじゃないでしょうか?


こんな高いパジャマ、アマゾンに載ってる情報だけでは買う気になれない。楽天のショップページのように、詳細な情報がないと価格に見合う価値があるとは納得できない。

でも「楽天のページはどうも自分には合わない。読む気がしない」って人でも、「ちきりんブログで情報を得てアマゾンで買う」という選択肢があれば、「情報収集」と「購買」を別々のサイトで行うことが可能になる。


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(予定表には“ちきりん訪問”の文字が!)


もちろん、「情報提供」と「接客」は違うので、接客と言えるレベルの顧客との関わりをもとうと思えば、さらに一工夫が必要になります。でもやりようによっては、それさえ不可能じゃないかも。


a) 購入検討に必要な情報は、(自分が信頼している)ちきりんブログで得る

b) 購入は、一番便利なアマゾンで買う

c) 接客が必要な部分は、品番と注文番号を通して、直接ラブリーと連絡する

といった「ショッピング機能のアンバンドリング」がネットの上でも起こること( or 今後進むこと)は、決して不思議なことではありません。てか、そういうニーズは確実にあると思う。


そして、上記の例では a) は私のブログですが、それと同じ機能をもつサイトを売り手の店舗自身が用意することだって可能なんです。

必要な情報を体系的に全部載せたサイトを作り、購入はアマゾンサイトに任せてしまう、みたいなサイトね。こうなると、ショップ主導による「ショッピング機能のアンバンドリング化の推進」って話になる。


そして、上記の a) b) c) が起こった時に“中抜き”されるのは、楽天市場のような、無料での接客や情報提供をウリにして客を集め、続けて「購買」もしてもらい、そこから利益を得てるサイト(=これまでの家電量販店)ってことになるんです。


いえ、ホントにそんなことが起こるのかよくわかりませんけど、いろいろ考えてると、ネット販売ってこれからもホント面白いなと思えた次第です。


そんじゃーね!


<関連過去エントリ>

→ 考)“販売以外”の店舗価値


<関連サイト>

→ 初コラボ 真夏用レディース ちきりんパジャマが新発売!

→ 真夏用メンズ ガーゼパジャマも開発!

→ 真冬用 信じられない肌触りのオーガニックコットンパジャマ


http://d.hatena.ne.jp/Chikirin+personal/  http://d.hatena.ne.jp/Chikirin+shop/

2015-03-25 第3話 「市場の選択」という幸運

<これまでのあらすじ>

第1話 ウォールストリートから八日市へ

第2話 価値を伝える


インタビューの中で北川社長が、

「楽天市場では、1万円もするウチのパジャマが ランキングでトップ 10にいくつも入れる んです。でも、Yahoo!ショッピング ではそうはいきません。トップに入るのは 2000円、3000円のパジャマばかり。安くないとダメなんです」

と言われた時、

「これを聞いただけでも、滋賀まで来た価値がある」と思いました。


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(取材日に株式会社ラブリーにて、ちきりん撮影)


みなさんが今、ネットで何かを売りたいと考えたとしましょう。どこのモールに店を出すか、比較検討しますよね。

名前の売れている会社なら独自ドメインでオンラインショップを開けばいいけど、そうでなければ楽天やアマゾン、Yahoo! など、ネット上のショッピングモールに出店しようと考えるはず。

そのほうが集客力も高いし、決済や管理もラクです。特に初めてのネット販売であれば、既存のプラットフォームを使うことでサイト作りについても学べます。


そこで、出店すべきモールを選ぶため「ショッピングモール 出店条件 比較」といったキーワードで検索をします。

見つかった比較サイトには、初期費用や毎月の出店料、売れた時のマージンなどの経済的な条件に加え、店舗数やプロモーション施策など営業支援策が載っています。

最終的には複数モールで店を開くにしても、最初はこれらの条件を比較し、まずはどのモールに店を開くか検討する --- これはまさに「市場の選択」です。


ではその際、もっとも重要な条件はなんでしょう? 


初期費用や出店料などのコスト?

モール全体の企画力や集客力?


冒頭の言葉を北川社長から聞いたとき、私は、ラブリーが楽天市場に最初に店を出したことは、ものすごく幸運なことだったんだと理解しました。

だって、もし最初に Yahoo! に出していたらどーなったと思います?


ラブリーは最初に楽天に出店し、後から Yahoo! に出店したから「Yahoo!では、高いパジャマは評価されにくい」と言えてるけど、

もし最初に(安いパジャマしか評価されない)Yahoo!に出店してたら、こう思ってしまった可能性もあるんです。

「やっぱりノーブランドのパジャマを 1万円なんて価格で売るのは無理なんだ・・・」


「一般の消費者に、生地の違いなんてわからないよな」


「ネット通販で高級品を売るのは無理かもしれない。。。」


これじゃあ「最初にどの市場を選んだか」によって、運命が変わるくらい大ききな違いになりかねません。


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つまり、楽天市場のユーザーと、Yahoo!ショッピングのヘビーユーザー、そして、Amazon を好んで使う人、というのは、「何に価値を感じるか」が大きく異なってるのです。


といっても、「楽天ユーザーの方が金持ちだ」みたいな安直な結論にしないでください。

だって、オーガニックコットンなど自然素材に関しては楽天ユーザーの方が高い価値を感じるけど、

精巧に作り込まれたフィギュアについては、 Yahoo!ショッピングのユーザーの方が高い価値を感じる可能性だってありますよね。

市場によって顧客の経済力に差があるのではなく、「市場によって、顧客が何に価値を感じるかが異なってる」んです。


だから、自社が市場に提供する「価値」をよく理解し、その価値をもっとも高く評価してくれるユーザーが集まる市場を選ぶのがスゴク大事。

そうしないと、提供する価値と求められている価値が合ってない市場を選んでしまっただけなのに、

「自分は市場で評価されない人間なのだ・・・」

「うちの商品は市場では通用しない・・・」

みたいな誤った結論になりかねません。


こうして市場の選択を間違えて結果が出ず、諦めてしまう。そういう人、現実にもたくさんいるんじゃないかな。


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5年前、Amazon は今ほど多様な商品を売っていなかったし、Yahoo!はモール事業に出遅れており、楽天ほどの集客は見込めないと考えられていました。

だから、当時のラブリーが楽天に店を出そうと考えたのは、ごく自然な判断だったと思います。


でも、もしも「すごく安くてかわいいパジャマ」を作っているメーカーが、5年前、同じように「とりあえず楽天で」店を出していたらどうなっていたでしょう?

Yahoo!ショッピングならトップになれたかもしれないその店は、「やっぱ無名の店にはネット販売なんて無理だ・・・」と思ってしまったかもしれないのです。


オーガニックコットン、極上の肌触り、日本製の手縫い・・・こういったコトに価値を感じるユーザーがどの市場にいるのか? どの E C モールを主に使っているのか?

「自分が提供できる価値を、正当に評価してくれる顧客は、どの市場に多く存在しているのか?」


ネット販売だけでなく、就活でも婚活でもリアル販売でも、こういう視点で「市場を選択」することがすごく大事なんだよって話は、下記の新刊にも書いたとおりです。

市場に向き合ってみたのに結果がでなかったら、「やっぱりダメだ・・」と落ち込む前に、「もしかして参加すべき市場を間違えたかも?」と考えてみてはいかがでしょうか?


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そんじゃーね!


<関連サイト>

→ 初コラボ 真夏用レディース ちきりんパジャマが新発売!

→ 真夏用メンズ ガーゼパジャマも開発!

→ 真冬用 信じられない肌触りのオーガニックコットンパジャマ


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2015-03-23 第2話 価値を伝える

<これまでのあらすじ>

第1話 ウォールストリートから八日市へ


リーマンショックの煽りを受け、30年来の取引先であった一流メーカーからの仕事を失ったラブリー。

北川社長は藁をも掴む思いで、ネット直販に活路を見いだそうとします。当時は“ E C サイトといえば楽天”の時代。そこでさっそく相談してみたところ、

幸いにも担当者が熱心に相談に応じてくれ、同社は 50年前の創業以来初めて「自社ブランド商品のネット販売」を開始、自ら市場と向き合うことになったのです。


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(最寄り駅の八日市駅 予想してたより立派な駅舎)

とはいえ、

長らく有名メーカーのパジャマを作ってきたと言っても、ラブリーの社名など誰も知りません。せっかく作った販売サイトも、楽天市場の膨大な数のテナントの中に埋没してしまいます。

そこで、楽天から提供される様々な広告手法を利用することになるわけですが・・・それには相応の費用もかかります。


「確かにお金はかかります。でも、まずはサイトを訪問してもらわないと始まらない。数十万円の売上げしかない段階で、数十万円を使ってバナー広告を出したりメルマガを打ったりしました」 (北川社長)

↑ 楽天は出店料よりこっちのほうが、よっぽど儲かってそう。(ちきりん心の声)


それにしても、これじゃあ売上げが全然足りません。30人の従業員がいれば、最低でも月商 1000万円は必要のはず。

その 10分の 1も売上げない段階で、多額の資金をネット広告に投じるのは勇気が要ったでしょう。


「うちはネット通販業者としてゼロから起業したわけではなく、その時点で既に 30人の社員を抱えていました。

だから一枚でも注文が欲しかったし、なにをやってでも短期間で軌道に乗せる必要があったんです。一年やってダメなら撤退する覚悟で、できることは何でもやろうと」 (同)

・・・まさに背水の陣。


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そんな努力の甲斐もあり、楽天市場での売上げは少しずつ上向き、1年後には「まだまだ十分ではないけれど、伸び率を見る限り、いけるかもしれないと思えるレベル」に達します。

さらにその後、同社の商品は高い評価を獲得、なんとパジャマランキングでトップを取るような商品が出始めるのです。


「世の中に 2000円、3000円のパジャマが溢れている中、1万円もするパジャマがランキングトップに躍り出るなんて驚きました。

しかも 3年後には、自社企画パジャマの直販だけで事業が成り立つところまで注文が増えてきたんです」 (同)


ただし間違えないように。同社が成功したのは、「広告をバンバン打って、認知度を上げたから」ではありません。

そうではなく、「市場が評価する価値を提供していたから」+「その価値を、商品、サイト、広告を通じて、顧客に伝えることに成功したから」ですよね。

市場に価値が提供できていない供給者がどんだけ多量の広告を打っても、商品が売れ始めるなんてことはありません。


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では、同社商品のどんな価値を、市場は評価したのでしょう?


ひとつは、「圧倒的な素材(生地)の質」です。

昔から高級品を作っていたラブリーですが、直販商品となれば中間マージンがかからないため、今まで以上に素材にお金を掛けることが可能になります。圧倒的に「気持ちいい!」生地が使えるのです。


けれど問題は、「顧客が素材の質を理解し、相応の対価を払ってくれるのか?」ということです。

「これまで 1万円以上の価格で売れていたのも、高級ブランドのタグがあったからです。

それがなくなり、素材の質だけで消費者にその価値を理解してもらえるのか、その価値に、相応のプレミアム料金を払ってもらえるのか、半信半疑でした」 (同)


ところがフタを開けてみると、アラびっくり!

消費者はその質を理解し、7000円、8000円、時には、1万円、1万5千円という価格を受け入れるのです。

しかも、プレゼント用に買ってから自分用に買い直す人、冬用を買ってから春用も買い足す人など、リピート注文も続々と入ります。

パジャマを買った人に商品を送るとき、別のパジャマの生地をサンプルとして一緒に送るだけで、次はそのパジャマの注文が来るというのだからびっくりです!(←あたしもこの作戦にひっかかってリピート購入しました・・)


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でもね・・・なんか、話がうますぎませんかね?


デフレのど真ん中ですよ?

リーマンショックの後ですよ? 

身近なお店には 2000円のパジャマが溢れてるんですよ?


なんで 1万円もするパジャマが(しかもノーブランドなのに?)、順調に売れ始めたのでしょう?


そこには・・・


「市場の選択」における偶然の大幸運があったのです!



「市場の選択」って?

あっ、この本に出てきた、婚活市場で 200連敗したイケメン男性の話ですね?

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そうです。でも、市場の選択に失敗したイケメン男性とは逆に、ラブリーは偶然にも「自社にベストフィットした市場の選択」をしていたのです。


「それだけじゃわかんないよ。もっと具体的に説明してくれ!」 って?


もちろん説明しますよ。・・・・次回のエントリで!


そんじゃーねー


<関連サイト>

→ 初コラボ 真夏用レディース ちきりんパジャマが新発売!

→ 真夏用メンズ ガーゼパジャマも開発!

→ 真冬用 信じられない肌触りのオーガニックコットンパジャマ


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2015-03-21 第1話 ウォールストリートから八日市へ

滋賀県、琵琶湖の南側、八日市(ようかいち)にある社員 30名ほどの老舗パジャマメーカーを訪問しました。

二代目社長の北川恭司さんに( 3時間近く!)伺ったお話しがとてもおもしろかったので、何回かに分け、シリーズでお伝えしていきます。


訪問したのは、株式会社ラブリー

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東海道線の近江八幡駅から最寄り駅の八日市駅までは、 1時間に 2本の電車が走っています。本数は少ないけど沿線は(田んぼではなく)住宅地なので、世田谷線と同じような趣でした。

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八日市の駅前。ビルや道路の立派さに比べると人が少ないです。途中の商業施設でパジャマ売り場を覗いた後、歩いて目的地へ。

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株式会社ラブリーは創業 50年を超える老舗企業ですが、5年前までの 30年間あまり、某有名ランジェリーメーカーが販売する高級パジャマを縫製していました。いわゆる“大企業の協力工場”(下請け工場)だったのです。

発注元のメーカーはランジェリーやパジャマ分野の高級ブランドで、商品は主に百貨店、デパート内にある専門店コーナーで売られています。

ブラジャーなら 5千円から 1万円、パジャマは 1万円を超えるものも珍しくありません。下着一式を揃えれば、すぐに数万円かかります。

スーパーや通販では、よく “3枚 1000円のパンツ”が売られていますが、このブランドのパンツ(パンティ? てかショーツ)なら 1枚 2000円なんてこともあるハイエンドなブランドです。


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もちろんそのメーカーも国内外に自社工場を持っていますが、試作品製作や小ロット商品の縫製には、高い技術を持ち、小回りの効く協力工場も必要です。株式会社ラブリーは長い間、そんな協力企業の一つでした。

ところが 5年前。ラブリーに(てか、世界中&日本中に)激震が走ります。

その前年、2008年秋に起こったリーマンショックの影響が 1年をかけて、ウォールストリートから遠く離れた八日市にまで到達したからです。


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これまでそういった高級ブランドのインナーを買っていたのは、「下着はこの会社のモノしか身につけない」とか、「家具・家電から文具、下着まですべてを百貨店で買う」といった保守・伝統的な価値観をもつプチ富裕層(中の上以上の家庭)でした。

リーマショックはこの層の消費を直撃します。

そして 2009年に入ると日本中のデパートには閑古鳥が鳴きました。誰もデパートなんかでは、買い物をしなくなってしまったからです。


当時は、大企業を含め数多くの企業が大量の非正規スタッフを雇い止めにし、年末には寝る場所を失った失業者が日比谷公園で大規模な炊き出しを受けるという事態まで起こっています。

1年も前に決まっていた内定を突然に取り消された学生もいたし、日経平均も 6000円代まで暴落。政府は金融機関に、異例の融資返済モラトリアムを依頼しました。

こうして世の中が大混乱に陥る中、ラブリーでも取引メーカーからの発注が激減。企業存亡の危機に直面したのです。


「アメリカの金融危機が、まさかこんな田舎町の小さな工場に影響を与えるなんて、まったく想像していませんでした」 (同社 北川社長)


そうですよね。金融にも投資にも縁の無い滋賀県の小さな工場にまで、アメリカの投資銀行の破綻が壊滅的な影響を与える。世界は既につながってしまっているのです。


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30名の社員を抱えた北川社長は、生き残りを賭けた模索を始めます。

それは、有名ランジェリーメーカーという「組織」に評価され、選ばれていた縫製工場から、パジャマを買う顧客という「市場」に直接選んでもらえる直販メーカーになるための、第一歩でした。

当ブログでは、何十年もの間、大組織に評価されてきた株式会社ラブリーが「市場による評価」を得る企業へと脱皮したプロセスについて、これから数回に分けてレポートしていきます。


そんじゃーね!


帰りに米原駅で買ったお弁当。美味しかったよん!

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<関連サイト>

→ 初コラボ 真夏用レディース ちきりんパジャマが新発売!

→ 真夏用メンズ ガーゼパジャマも開発!

→ 真冬用 信じられない肌触りのオーガニックコットンパジャマ


http://d.hatena.ne.jp/Chikirin+personal/  http://d.hatena.ne.jp/Chikirin+shop/

2015-03-17 何度も一緒に旅行できるということ

1週間、一緒に旅行できるパートナーって、すごい貴重だと思うんですよね。 1週間、一緒に旅行した直後に、「また来年も一緒に旅行したい!」と“両方が”思える人って、家族だろうと友達だろうとなかなか見つからないんじゃないでしょうか。

というのも、旅行って時間価値と金銭価値という、ものすごく貴重なふたつのリソースが制限された環境での、「時間&お金配分ゲーム」だからです。


たとえばパリに 1週間、旅行するとします。パリにいられる期間は 1週間しかありません。ひとりは美術館に行きたい、もうひとりはお買い物に行きたいとします。

いつも住んでる街なら、お互いに「じゃあ今週は美術館に行こう! んで、来週は買い物につきあってね!」みたいなことが可能です。譲り合って、順番にお互いの趣味につきあえばいいでしょ。


だけど、旅行期間は有限です。そんなに何回も来られるわけじゃない。長くても 1週間とか 10日です。ひとつの都市に限れば、せいぜい 2日ほどってことも多い。

特に期限を意識することのない通常の生活に比べて、旅行中は時間価値がすんごい高いんです。だから、(たとえ夫婦であったり親友であったり親子であったりしても)相手に合わせる負担感が、通常の何倍にも大きくなる。

でも、旅行中に「じゃあ、あたしは買い物に行くから、あなた美術館に行ってくれば?」みたいにバラバラに動き始めると「一緒に旅行をする意味ってなに?」的な疑問も生じたりします。

なかには夫婦でも、「片方は旅行が嫌い・片方は行きたいところがいっぱい!」だったりすると、あるタイミングから「ひとりで行ってきていいよ」みたいになるコトにもなります。別に仲が悪いわけではなく、両方それでハッピーだったりする。

女ひとりで海外団体ツアーに参加してます
たかさきももこ
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売り上げランキング: 81,965

(↑妻は途上国や遺跡が好き、夫は途上国嫌いのため、妻がひとりでツアーに参加し始めたとのこと)


時間価値に加え金銭価値の違いも、他の遊びに比べ、旅行ではより明確に対立します。

「12時間以上かかる場所に行く時、20万円を余分に払ってビジネスクラスで行きたい」と思う人と、「新婚旅行でもないのに、そんなお金出すの、もったいなすぎるでしょ!?」と思う人が一緒に旅行するのは、プラニングの段階から大変です。

若い時の方が一緒に旅行する人を探しやすいのは、若い時はたいていの人が貧乏なので、価値観が違う人でもみんな「エコノミークラスの一択」しかないからです。飛行機にしろホテルにしろ、年齢が上がるとともに選べる選択肢が増えるので、価値観の違いが表面化し始める。


ホテルも一泊 3万円を問題ないと思う人と、あり得ないくらい高いと思う人がいます。

それは貧乏か裕福かって問題だろって?


違うんですよ。3万円だしてタブレット買うとか、3万円でスーツ買うとかは「全くもったいなくない」と思う人の中に、「一泊のホテルに 3万円はありえない」と思う人と、「 3万円のホテルいーじゃん、タマには贅沢したい!」と思う人がいるんです。

基本的に旅行中の出費というのは、「快適さにいくら払うか?」というものばかりです。モノや具体的なサービスに払われるのではなく、「心地よさ、快適さ、楽さ、スムーズさ」への対価だから、人によって価値観がより大きくぶれるんです。


それと、旅行というのは使うお金がイチイチが可視化されるという特徴もあります。家で暮らしてても、1日あたりの固定資産税とか、1日当たりの電気代や水道代なんて意識しないでしょ。1日何円の住宅ローン払ってるとか、計算したことあります?

月に 7万円のローンを払ってて、そのうち 3万円が利子なら、毎日 1000円、一週間で 7千円の利子を払ってるわけです。だけど、そんなの誰も意識しない。

でもそれを「宿泊費が一泊いくら」って言われると、非常に明確に「ソレ、お金の使い方として意味がある?」っていう判断が突きつけられるんですよね。だから価値観の違いも可視化されちゃう。


★★★


最後に旅行中って、寝てる時間をのぞき 1日 14時間くらい同じ人と(数メートルの範囲内で)一緒に行動することになります。

普通、同じ人とこんな長い時間ずううっっっと一緒ってあんまりないんですよね。夫婦でレストランを経営してるとか、そういう場合だけじゃないかな。


一緒に住んでて、ふたりとも仕事が休みの日曜日だって、朝から晩までずっと一緒に行動したりしないでしょ。ひとりでパソコンに向かってたり、ちょこっと近くまで出掛けたりするじゃないですか。

家族って、実はそんなに長い時間一緒にはいないんだよね。例外は生まれたばかりの子供と母親くらいです。子供だって一定の年齢になれば学校に行ったり友達と遊び始め、家族であっても一緒にいるのは夜と週末だけだったり、週末だって、どちらかが買い物にでかけたり、一緒にいてもリビングと別の部屋にわかれてたりする。


ところが旅行中って、朝ご飯も昼ご飯も夜ご飯も一緒に食べるんですよね、一週間とか。。。。しかも、せいぜい 40平米くらいの空間でずっと一緒にいることになる。距離にして数メートルの範囲に、1日中× 1週間、一緒に過ごす。

今はスマホがあるからだいぶマシ(同じ部屋にいても、それぞれが別の世界に入れるよう)になったけど、それでも一緒にいる時間と空間の密度は、日常生活とは比べものにならないくらい高いんです。

てか、「スマホがなかったら大変すぎ。スマホ無しでこの人とずっと一緒にいたら、そんな長い時間、いったい何を話せばいいの?」って人もいると思う。


そういう状況で、“両方が”「全く喧嘩しない」 + 「内心でもむっとしない」 + 「内心でもうんざりしない」 っていうのは、相当に価値観があい、遠慮無くなんでも言える関係性の人じゃないと難しい。

ちなみに、片方だけが「めっちゃ楽しかった!」と感じており、もうひとりは「・・・」って時や、「相手が楽しかったならそれでいいや」って思ってくれることはよくあります。でも“両方が”同じように楽しかったと感じられる関係ってのは、ほんとに貴重なんです。

だから、一週間一緒に旅行してもストレスがなく、「また行こう!」ってすぐに思える人が見つかったら、ほんと大事にしたほうがいいし、そういう人が見つかるなら・・・


ってことを、マーケット感覚を働かせて考えてると・・・・いろいろ思いつくでしょ?


そんじゃーね!



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2015-03-14 身近な生活でプライシングの練習を!

テレビと録画機を買い換えようとネットであれこれ調べ、機種をほぼ決めして家電量販店に見に行ったら・・・

ネットとの価格差が予想以上に大きくて愕然とし、買えずに帰ってきてしまいました。

ちょっとした差ならリアル店舗で買いたいと思ってたのですが、テレビが 3.5万円差(ネットで 7万円、実店舗で 10万円強)、録画機が 6万円差(ネット 13万円、実店舗 19万円!)だったんです。合計すると 10万円近い差。


そこまでの差とは思ってなかったので、

えー!

と思わず日和ってしまったのですが、じゃあすぐに「ネットで買おっ!」となるかと言えば、そうでもありません。

ネットで買うのと、実店舗で買うのには次のような違いがあるからです。

1)ネット最安値の店はカード使用不可(振り込み、代引きなど)


2)引き渡しは玄関先(玄関からリビングなど設置場所までは購入者が運ぶ。もしくは別途依頼をし、追加料金を払う)


3)ハコから出したり、必要に応じて組み立てたり(足を付ける程度ですが)も自分でやる必要がある


4)ハコや梱包材の廃棄も、購入者が行う


5)接続と設置も自分でやる


6)古いテレビの廃棄は、リサイクル法に則って業者を選定。電話で申し込んで、別途取りに来て貰う。あまりに安い業者は不法投棄をする可能性もあるので、きちんとチェックしながら選ぶ必要あり。


=リサイクル実費(数千円)は実店舗でもかかりますが、古いテレビを引き取りに来て貰う料金は別途かかります。


さらに、引き取り時には在宅の必要があります。古いテレビの引き取り日と新しいテレビの配送日を揃えるのは、かなり難易度が高い。こちらもリビングからの運び出しには追加依頼(料金)が必要。


録画機は粗大ゴミとして引き取りを申し込み、粗大ゴミシールを買ってきて貼り、家の前まで運ぶ。


7)ネット販売業者の場合、初期不良などの対応にやや不安あり


価格差が大きく、運ぶのも簡単な録画機だけネットで買うことにした場合、テレビの価格差は 3.5万円ですから、

上記 7項目の作業がそれぞれいくらの価値を持つサービスであるか、自分でひとつずつ考え、その合計が 3.5万円より高いか低いか、と考えるのがプライシングの練習です。

「設置までやってくれる業者もあるよ!」という人は、「数多くのネット販売業者を比較し、自分に必要なサービスを提供してくれる業者を探す手間」をいくらにプライシングするのか、も考えてください。


ポイントは(新刊にも書いたように、)それぞれの作業の妥当な価値には、個人差があると理解することです。

玄関先からリビングまでテレビを運ぶなんて朝飯前という屈強な人と、あたしみたいな“か弱い女性”では、2)の認識コストが大きく異なります。

ツイッターでは「最近の 40インチのテレビは、ちょっと大きめのタブレットみたいな重さですよ!」って言ってる人がいましたが、10kgのテレビが「ちょっと大きめのタブレット」と同じ重さに思える人と私では、「運搬代として妥当」と考える価格が違うのは当たり前です。


6)の業者を探したり、引き取り日程を調整したりすることの事務コストや、古いテレビを処分する日に在宅しなくちゃいけないことのコストも、「どうせ毎日、家にいます。ヒマだし」って人と、予定ぎっしりの多忙な人では、妥当なコストが異なります。

設定や接続も、得意な人と不得意な人で価格認識が違うし、

「テレビが入ってたハコを適切な大きさにバラしてゴミ置き場に持っていき、床に散らばった段ボールカスを掃除機で吸い取る」

という作業を、1000円程度の手間と考える人もいれば、「一万円払ってでも誰かにやってほしい」と思う人もいます。


おそらく上記全部の手間代として、3.5万円の価格差を「全く問題ない」と思う人もいるでしょうし、一方、「これくらいのことで 3.5万円も安くなるなら、全く迷わずネットで買う」という人もいます。

大事なことは、「そんな手間はたいした手間ではない!」と叫ぶことではなく、「自分ならそれぞれの作業をいくらとプライシングするだろう?」と考えることです。

さらには、「それぞれの作業を最も高くプライシングする人はどんな人で、それらの人ならいくらの価格を付けるだろう?」と考えましょう。それが「市場が求める価値」です。

新刊では、マーケット感覚を身につけるための具体的な方法を 5つ挙げて説明していますが、そのひとつである「プライシング」の練習は、こういう身近なことでも行えるのです。



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★★★


そういえば先日、野口悠紀雄先生と対談した時、「アメリカの有名大学が授業をネット上に無料公開する時代に、わざわざ高いお金を出して留学することの価値は何なんでしょう?」という話題になりました。


大学(院)留学によって得られる価値を分解すると、

1)語学力の取得

2)学位の取得

3)知識やスキルの習得

4)就職市場で高い給与を得るための条件獲得

5)ネットワーク価値

6)海外在住体験ができる価値

7)学歴ロンダリング価値

8)異文化体験価値

9)その国での居住権を得るために有利になるという価値

など、いろんな価値に分かれます。


1から 9、それぞれの妥当な価値を計算して積み上げた価値の総額が、留学にかかる総経費を大きく上回っているならば、その教育投資は価値があると言えます。

そしてもちろん、上記 1から 9の価値も人によって異なるわけですから、留学が教育投資として見合うのかどうかも、人によって答えは違います。つまり、他人に聞いても答えはでないってことです。


みなさんも身近な例を使って、ぜひ、自分なりのプライシングを試してみてください。


そんじゃーね!


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2015-03-11 取り柄じゃなくて、取り柄に気が付く能力を

新刊の 『マーケット感覚を身につけよう』 に関して、感想を呟いたり、ブログを書いてくださる方もたくさんあって、著者としては嬉しい限りです。

特に今回の本では「どうやってマーケット感覚を身につければよいのか」という“ HOW ”を詳しく説明したため、読者の方が自分の身の回りのコトを題材に、実際に考えてくださる例も目立ちます。

「読んで満足な本」ではなく、「読んで変われる本」を書きたい私としては、すごく嬉しい。


たとえば、こちら↓


こういうふうに、いつも自分が使っている店、買っているモノの「価値」とは何かと突き詰めて考えたり、身の回りで売られているものの「妥当な値段」っていくらなのか、自分なりにプライシングしてみたり。

そういうことの積み重ねが、マーケット感覚を鍛えるんだよね。


★★★


あと、こちらの方、最初は普通に 「ちきりんの新刊を読んだよ!」的なエントリ を書いてくださったんですが、その 3日後には、もうひとつ別のエントリ 「ブログのタイトルを変えました」で、こう書かれてるんです。

先日読んだちきりんさんの「マーケット感覚を身につけよう」に書いてあったように、僕は自分には市場で通用する専門性がないと考えていた。


そして専門性が無いから、世の中に価値のある情報を提供することができないんだ。だから専門性のある仕事に就かなければ! そうすればきっと価値のあるブログを書けるようになって、読者も増えるだろうと考えていた。


でもまあ、それは自分の足元に転がっているダイヤの原石をみようとせずに、遠くの山にある金脈にばかり目を向けているようなもので、わざわざそこを目指して険しい道を歩まなくても、きちんと周りを見渡せば、僕にしか書けないエントリがあるんだろうなと、気付くことができました。


そうするとあら不思議。今まで全く価値がないと思っていた周りの風景が、全く違った価値を持ったものに感じられるようになりました。


そしてブログ名だけでなく、エントリ内容もこの日以来「今の自分に生み出せる価値」を意識したものに変わってるんです。

これを読んで私も「すごいな」って思いました。たかが本を一冊読んだだけで、そこから得たモノを即座に取り入れ、今までと違うやり方が試してみられる。こういうことができる人に「売れるモノが何も無い」なんてありえない。


ちなみに上記ふたつは 2月 23日と 2月 26日に書かれてて、その間の 2月 24日には、「知らない人は損をしている。有料メルマガって超面白いんだぜ?」というエントリが書かれてるんですが、そこにも「価値の素」が見つかります。

僕は現在4つのメルマガを定期購読しています。

ホリエモンこと堀江貴文さん、津田大介さん、藤沢数希さん、夏野剛さんの4人です。

どのメルマガも非常に面白く、かつ今までの常識をぶっ飛ばしてくれる非常におススメのメルマガになっております。(いるかどうかわからないけど)僕のブログの読者なら、絶対に購読すべきメルマガだと思います。


(中略)


特に上記 4人のメルマガは必読ね。あれだけの情報量を毎週得ることができて、4人合わせてたったの月額 2,916円(税込)なり。

飲み会を 1回我慢すれば良いだけです。それだけで、その飲み会 100回分以上の情報を得ることができます。冗談抜きでマジで!


メルマガって「ネット上には無料で読めるサイトが山ほどあるのに、月に 500円とか 1000円とか払うのって高くない?」とか、

「中身が見えないから、誰のメルマガにどんな価値があるのかよくわからない」「おもしろそうではあるけど、イマイチ購読に踏み切れない」「自分に向いてる内容なのかな?」など、購読を迷ってる人もたくさんいるでしょ。

本なら書店でチラ見してから買えるけど、メルマガって、書き手が選んだ部分がサンプルとして開示されてるだけだし。

だからどのメルマガにどういう価値があるのか、すごく具体的に教えてくれるサイトがあったら、購入を迷う側にも、そしてメルマガの発行者側にも大きな価値がある。


もちろん、単に「メルマガには価値があるよ!」と言うだけではなく、メルマガの中身をコピペすることなくその価値を伝えるには、それなりのスキルも必要。

迷ってる人が価値を感じる情報とはどんなものなのか、深掘りして考え、それを市場に提供して反応を見て(=失敗して)、中身を改善し(=市場から学んで)・・・というサイクルが、成功までには何度も必要にはなります。

でも、その最初の一歩となる価値の源は、ほんとーに身近なところに転がってるんだよね。


「自分にはなんの取り柄もない」と嘆く人に必要なのは、「取り柄」に気が付くためのマーケット感覚なんだということを、まずは理解して欲しい。

そしてこの本に書かれた 5つの方法を実践して、みんな自分の中にある、もしくは自分のごく近くにある貴重な「価値の源」を見つけてほしい。

自分の価値は、会社とか国家(資格)といった組織に認めてもらう時代から、市場に認めてもらう時代になるんだから。


そんじゃーね!


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2015-03-06 2年ぶり 東京・大阪・名古屋で講演

2015/3/7 追記 満員御礼 全会場の整理券が売り切れました。ありがとうございます。

2015/4/16 追記 イラストによる講演内容報告はこちら


★★★ 以下は、2015/3/6に書いたブログエントリです★★★


先日出した 『マーケット感覚を身につけよう』 、今回は久しぶりの書き下ろし本なので、東京・名古屋・大阪にて出版記念講演を行います。

★ 3月17日(火) 大阪(大阪駅・梅田近く) 定員 200名

 18時半スタート 入場料 1000 yen


★ 3月26日(木) 東京(西新宿コクーンホール) 定員 500名

 19時スタート  入場料 1500 yen


★ 3月27日(金) 名古屋(名古屋駅近く) 定員 170名 

 19時スタート 入場料 1000 yen


各講演の主催書店は下記

◎大阪:紀伊國屋書店梅田本店 06-6372-5821

大阪梅田講演について

・チケット受け取り場所は、紀伊國屋書店梅田本店 3番カウンター


◎東京:ブックファースト新宿店 03-5339-7611

新宿講演について 

・チケット受け取り場所は、ブックファースト新宿店地下 2階 Eゾーン レジカウンター


◎名古屋:三省堂書店名古屋高島屋店 052-566-8877


★以前の講演会に参加された方と、今回、予約済みの方のツイート★


講演会では、本の中には書ききれなかった多くのマーケット感覚に関するリアルな事例を紹介したいと思っています。あと、いつも以上に質疑応答の時間を長くとり、参加者の質問にも答えたい。

あたしはこの「マーケット感覚」っていうのが、これからの世の中を生きていくのにホントに重要な能力だと思ってるんです。だからできるだけ多くの人に、その概念と重要性を理解してもらい、かつ、身に付け方を知って欲しい。

次の書き下ろし本(=講演機会)なんていつになるのか全くわからないので、“動くちきりん”を一度は見ておきたい!という方も含め、「マーケット感覚って超大事そうだぜ、ベイビー!」って思った方は、この機会にぜひどうぞ!


そんじゃーね。


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瞬間風速で、一番いいランキングのスクリーンショットを集めてみた!

  ↓

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2015-03-03 ちきりんお茶会&アンケート結果発表

先週末、二日に渡って「ちきりんお茶会」を実施しました。

当日の様子を参加者の方が描いてくださいました。上手すぎる!!!


参加された方のブログ → みほしブログ:ちきりんさんのお茶会に参加してきました!


これは、昨年の11月に発売した二冊の本にちなみ、「自分の好きなツイート&ブログ」を選んでアンケートに答え、全体の回答と近い方から順に お茶会にご招待するという企画で、応募数は約 300名。約10倍の倍率でした。


アンケートの結果ですが、まずはこの本に掲載されたツイートから、

多眼思考 ~モノゴトの見方を変える300の言葉! ~
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栄えあるベストツイート賞に選ばれたのはこれ! 1000人近くがお気に入りにしてくださった大人気ツイートです。ゆっくり、噛みしめながら読んでみてね。

第二位は個人的にとても好きなツイートです。

第三位 一年以上前のツイートですが、新刊で書いた「市場の選択」の話ですね。

第四位 ホントにそう思います。

第五位 掲載したのは、私の呟き部分のみです↓

第六位は、「これを選べばお茶会に当選しやすいだろう」と考えた人の票を集めたみたいです。

第七位

第八位 ほんとにそうよ↓

第九位(ふたつセットです)

第十位 これもお気に入りが 1000を超えてますね。

以上です。みなさんの好きなツイートは入賞していたでしょうか? 上記は今からでも RT できますので、よろしければ是非。


次に、ベストブログ大賞はこれ→ 「全国の子供たちに告ぐ:お年玉はソッコーで使うべき!」 (アンケートの回答期間が年末年始だったからかも)


以下ランキングは、

第二位 「成長したければ、ひたすら変化すべし

第三位 「仕事と家庭の両立なんて、目指すのやめたらどう?

第四位 「将来有望な若者の将来価値を毀損する、大きなワナ

第五位 「豊かになる意味

第六位 「始点に立っていても、ゴールまでの道筋は見えません

第七位 「得るモノ、失うモノ

第八位 「「AともいえるがBともいえる」とか言う人の役立たなさ

第九位 「新)4つの労働者階級

第十位 「なんで全員にリーダーシップを求めるの?


どれも書いた当時から話題のエントリで、選ばれたのも妥当な感じですが、やはりこの本に載っているのが多かったです。

「自分メディア」はこう作る! 大人気ブログの超戦略的運営記
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お茶会は、土曜日は晴天、日曜日は大雨の中、丸の内のおしゃれなカフェで行われ、とても楽しいひとときでした。

二日目は、最後に店の外で参加者の方と写真を撮っていたところ、お面を見つけた通りすがりの方から、「あなたがちきりんさんですか? マーケット感覚の本、買いました!」とかって握手を求められてびっくり。似顔絵アイコンの認知度も、けっこう上がってきたのかもしれません。

応募してくださった方、来てくださったみなさん、どうもありがとうございました!


そんじゃーねー!


お茶会参加者の方からいただいたおみやげ(↓)ありがとうございましたー!

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