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Chikirinの日記 RSSフィード

2015-11-08 ひとりで弁当食って寝たい人向き

先日、金沢に お寿司を食べに行った 時、行きは北陸新幹線の普通指定席、帰りはグランクラスに乗ってみました。


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北陸新幹線は 4月に開業したのに、なぜ今頃って?

だって記念乗車の人ばっかの時期に乗っても、「このクラスに本当に価値あるの? どんな人が乗ってるの?」がわからないだろうと思って。

それが、今頃になって乗ってみた理由です。


決してトレンドに“乗り遅れた”わけじゃないですからね!

誤解しないようにね!!


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これまでの普通席&グリーン車に加え、“ファーストクラス並”を標榜して導入されたグランクラス。

普通指定だと東京・金沢間は片道 1万 5千円ほどですが、グランクラスだと 2万 7千円近くと、料金は倍近い。

はてさて、それだけの価値があるんでしょうか?


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(車内は、一人用と二人用の席が通路を挟んで並び、全体で 6列 18席)


結論から言えば、「私にはそこまでの価値はない」って感じです。


グランクラスは、シートが非常にいいです。ものすごく座り心地がいい。

飛行機のビジネスクラスと比べても、さらに高品質で快適。よくできてる=すばらしいデザインです。(なので、ゆっくり寝たい人には最高です。)

とはいえ、今や飛行機のファーストクラスは完全フルフラットなんだから、それと比べるのは無理です。


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(シェル型なので、座席を倒しても後ろの席に影響しない。写真はリクライニング前)


このクラス、普通席なら 5席ある電車幅に 3席しかないので、隣の席がやたらと“遠い”です。

そして、シェル型シートに座席間の仕切り板があるので、背もたれを倒して体が沈み込むと、隣の人の顔はまったく見えません。

なので隣が他人ならいいんですが、「隣に座った夫婦や友人の顔を見ながら話す」のもできないんですよね。


そうなると、カップルとか女子旅とか家族旅行とか、“おしゃべりしながら行きたい”乗客には必ずしも向いていません。

小さい子供だって、座っていて自然に母親の顔が見られる席のほうが安心でしょ。


さらにグランクラスは座席を向かい合わせることもできないので、親子 4人(もしくは友達 4人)で乗ると、前後 2列に別れてしまい、背もたれも高くて話ができません。

親子 3人なら通路を挟んで横一列に座ることになり、これもめっちゃ“遠い”です。車両の端から端まで「おとーさーん!」って感じになり、お茶とかお菓子とかを渡したければ、わざわざ立つ必要がある。

ワイガヤで行きたい旅行なら、そんな席より向かい合って座れるグリーン車や普通指定席のほうがいいですよね?


帰省シーズンに新幹線でよく見かける子供を 2人連れたお母さんも、普通車なら腕置きを跳ね上げてつなげ、ソファみたいにして使えますが、ここではそういう使い方も無理。

「大人ひとり」で乗ることが前提のグランクラスは、子ども連れにもやさしくない。家族やグループでの旅行向けには、イマイチな作りでした。


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お弁当や飲み物、おつまみは無料で、特にお弁当はとても美味。東京駅で売ったら 1500円くらいのレベルのお弁当。

なんだけど、乗車時間が最長でも 2時間半なので、必ずしもその時間内に弁当を食べたい人ばかりじゃないんですよね。

おいしいけど「おやつには多いが、食事には物足りない」みたいな中途半端な量だし。


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お茶も(なぜかワザワザ)下部が狭くなってる不安定なガラスコップで出されるので、ウトウトした時にコップを倒しそうで怖いです。


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車両の飾り付けには“和”をすごく意識してるんですけど、


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たった 2時間半なのに、こんな「いかにも飛行機の真似をしました」みたいな飲み物メニューとか、配る必要があるのかな?


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日本って“ラグジュアリー“のことを、“形式張ってる”ことだと勘違いしてる人が多い。


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私が乗ったのは、

・開業してから半年後

・平日昼間

でしたが、

乗車率は 6割ほど。これは悪くないと思います。


意外だったのは、乗ってる人にビジネスパーソンが多かったこと。

中には高崎・東京という 50分ほどの距離にグランクラスに乗ってくる人もいて、当然、会社の経費規定で認められてるんだと思いますが、

「景気いいのなー」って思いました。


だったらもっと“ビジネス仕様”な席にすればいいのに、テーブルは東海道新幹線の普通席よりかなり小さくて不安定。

前席の背部から倒すタイプのテーブルではなく、自席の脇から斜めに引き出すタイプのため、重いモノを乗せるとたわむし使う時に膝に当たるしで、体の大きい人やパソコン使う人には、かなり不便な作りでした。

これじゃあ、仕事もグリーン車の方がやりやすいかも。


それにこの車両、“大人専用”ではないので、赤ちゃん連れのお母さんが隣に乗り込むこともあり得ます。

つまり、「がっつり仕事するぞ!」と思って高いお金を払っても、必ずしも静かな環境が保証されているわけではないんです。

加えて乗務員の女性が(「お茶のおかわりはいかがですか?」的な感じで)やたらと通路を行き来しながら手元をのぞき込むので、集中して仕事してる人には落ち着かない。


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(洗剤、水、空気が出る手洗いは便利。家に欲しい!)


ワイワイ行きたい観光客にも、乗車中に仕事したいビジネスパーソンにも向かないとすると、このクラスに価値を感じるのは、

・一人で乗って誰とも話さず、弁当食って寝たい人

・夫婦旅行だけど、お互い話したくもない(顔も見えなくていい?)熟年夫婦

・芸能人など、他の乗客に見られたくない有名人

かな。

特に、一両に 18席しかなく、このクラスの切符を持ってないと(ルール上は)車両にも入ってこれないので、「隠れていたい」人には大きな価値があると思います。


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今回、私が価格相応の価値を感じられなかった理由のひとつは、片道に普通指定席を使ったからかもしれません。

というのも、北陸新幹線は平日なら普通席もガラガラなんです。直前に切符を買っても、隣に誰もいない二人席や三人席が確保できる。

これだと、「隣に人がいるグランクラスの 2人席のひとつ」より、「その半額で 3人席を自分ひとりで使える普通席」のほうが、かなりお得。

親子や友達との旅行だって、向かい合って(しかも空席が多いから、2人や3人で 4人分の席を使いながら足を伸ばし)お弁当食べたり話したりゲームしながら行けるわけで。

断然そっちのがいいよね?


だからホントは、いつでも普通席が満席に近く、グリーン車でさえ隣席が埋まることも多い東海道新幹線にグランクラスを作ったら、もっと大きな価値が出せるんです。

こちらは芸能人や大物経営者の利用も多いので、高価格でもプライバシーとゆったりさが確保できる“より上のクラス”のニーズはかなり大きいはず。

東京・広島間以上の距離など乗車時間が長い場合でも、あのシートなら体もラクだろうし。確実に飛行機から客を奪えます。


でも現実的には、東海道新幹線にグランクラスを導入することはできないでしょう。あんな乗車率の高い電車の席数を減らすのは不可能。

これだけ寝るのに適した快適シートなんだから、夜中に博多や札幌を出て、朝、東京駅に到着するなど、超長距離利用にも向いてる。

東京を夜中に発、博多に早朝着なら弾丸ツアー向けに便利だし、反対方向は、地方で仕事の後の会食までたっぷり楽しみ、だけど夜の間に東京に戻りたいというビジネスパーソンにぴったりだけど、これも線路の保守点検時間を確保するために不可能。

かくして日本では、九州の豪華列車や北陸新幹線、東北新幹線のグランクラスなど、「客が少ない路線ばかりが豪華になる」というパラドキシカルな状況が起こっています。


この、「富裕層のニーズがあるから豪華列車」ではなく、「客が少なくて車両が空いてるから豪華列車」となるのは、いかにも日本的ですよね。

そもそもの発想が「市場=需要がある」ではなく、「供給能力がある」というところから始まってるでしょ。


製造業でも同じです。多くが「こんな技術があるから、こんな商品を作ってみました」であって、いつまでたっても、「こういうニーズがあるから、こういう商品を作ってみた」に変われない。

今回のグランクラスで感じたのは、まさにそれと同じでした。「ニーズ側(市場側)じゃなく、供給側からの発想で作られたクラスよね、これ」と。


だからこんな「一体、誰向けのサービスなの?」かが、よくわからない席になってるわけです。

形式を整えてラグジュアリー感だけは醸し出すけど、顧客のニーズを深く考えたという形跡が見えない。

楽しく旅したいグループ旅行客や家族連れのニーズも、がっつり仕事したいビジネス客向けのニーズも掘り下げることなく、「ひとりで弁当食って眠りたい」みたいな人向けに、こんなクラス作ってどーすんの?


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(キスしてるみたいでかわいい!)


グランクラスについては以上ですが、北陸新幹線には普通席とグランクラスの他グリーン車もあるので、来年はそれに乗ってみたいと思います。

私の仮説では、グリーン車は更にガラガラなのでは? って感じ。あと、グリーンとグランクラスの客層の違いにも興味あります。


そんじゃーね!



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