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Chikirinの日記 RSSフィード

2016-03-27 で、どこにあるのよ?

木下斉さんにボロクソに言われてる ふるさと納税ですが、もちろん私もお世話になってます。

てか、ここ数年、この制度のおかげでお米をまったく買ってない。


これ、納税すると返礼品と一緒にいろんな売り込みパンフレットが届くんです。

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どこの自治体も“ふるさと納税”をきっかけに、都会からの観光客(あわよくば移住者)が来てくれることを期待してるみたいなんですけど、

だったら、送ってくる書類に県名くらい書くべきだと思いません?

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これじゃあ、どこにある町なのか、全くわからないでごじゃるよ。

観光に行こうにも、北陸にあるのか四国にあるのかで、行きやすさも行きたくなる季節も全然ちがうのに。

これ見て「ああ、あそこね」って分かる人が、どんだけいると思ってんのかな??

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ここ(↓)なんて年賀状まで送ってくるんだけど、町長さんの写真を載せる前に、町名に“ふりがな”を振ってほしい。

正確な読み方がわからないと(観光に行こうかなと興味をもったとしても)ネットで検索するにも大変なんです。

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役所って住所にしろ名前にしろ、住民にはすべての書類に“ふりがな”を書かせるくせに、自分達の町名は日本中の人が読めて当然と思ってるんですかね。

ちなみに町長の写真を載せるのは、町民向けのパンフレットなら意味があります。選挙ポスターと同じ効果があるからね。

でもそれを、町長選挙の有権者でもない“ふるさと納税者”向けの年賀状にまで載せるのは、住所を町名から書き始めるのと全く同じ。誰に送る書類なのか、ぜんぜん考えてない。

年賀状には町長の写真ではなく、日本地図を載せ、自分の町のある場所にでっかく“丸”をつけといてください。

そのほうが余程マシですよ。


ここは文章から、大陸が九州だということはわかる。でも県名は不明。

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こういう町や村の役場は、いつもは自分ちの住民にしか書類を送らないから、住所を書くときに県名を書くという習慣がないんです。

だから都市部に住む人に書類を送るときも、(何も考えず)全く同じフォーマットで資料を送ってくる。


でもね。これらは納税書類なんだから、本人やその家族、税理士さんにアシスタント、税務署職員まで、いろんな人の目にとまるんです。

しかもふるさと納税をしてる人の大半が、港区だったり世田谷だったり、都市部に住んでるってことも知ってるでしょ?

だったらせめて自分の町がどの大陸にあるのか、何県にあるのか、書いといたらどう?


それが一目で分かるようにしておけば、出張とかにいくとき、「そーいえば、○○町って近くだったよな?」みたいになるじゃん。


移住を考えてる人だって県名が頭に残っていれば、テレビで宮崎県の特集を見た時、「そーいえば、あの自治体も宮崎県だったよな」みたいに想起できる。

町のある場所が北海道や北陸だと強調し、意識付けておけば、テレビが「北陸新幹線が開業!」「北海道新幹線が開通!」とニュースで報じてくれるたびに、

「そうかー新幹線が開通したんだね。この前、ふるさと納税した町も行きやすくなったかなー」みたいに考えてもらえるじゃん。

そういうの利用しなくてどーすんの?

ほんと、マーケット感覚の不足が甚だしい。


他にも、返礼品の再注文書を同封し、納税後、返礼品を別途注文してくれた人には配送料無料とか割引をすれば、再注文の大きなインセンティブになるし、

書類に「返礼品名&その写真」を載せる(←納税した人がもっとも忘れないのは「あれが美味しかった」という記憶なので、どの町から何をもらったかの紐付けに役立つ書類が重要)とか、

できることはいくらでもあるのに、みーんな横並びで観光パンフを送ってくるだけ。

もうちょっと顧客目線で頭を使ったほうがいいのでは?

てか、顧客インタビューをするくらいの意欲をもったほうがいいのでは?


「はっ! 確かにそのとおりだ・・・」と思った自治体の方、この本、お勧めですよ。

本書は、ハーバード・ビジネス・レビュー読者が選ぶベスト経営書 2015 の9位に選ばれた他、ビジネス書大賞 2016 にもノミネートされています。


そんじゃーね!


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2016-03-16 放置されるペーパーホルダーが示すモノ

今回のラオス旅行、アジアを代表するハブ空港である、韓国の仁川空港からは、ビエンチャンにもルアンパバーンにも直行便が飛んでいます。

だからラオスでは韓国人の観光客にたくさーん会いました。

ところが日本からラオスへの直行便は飛んでないので、私はベトナム航空を使い、ハノイ経由でラオスに出入りしたんです。


ハノイの空港は(他のアジアの空港と同じように)成田より圧倒的に立派できれい。

すばらしいっ!ってことで、さっそく生春巻きとビールで「うひひ」してたわけですが、


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その後、行ったトイレで「???」となりました。

これ

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何が「???」かわかります?

映っているのはトイレットペーパーホルダーですが、上の丸いのと、下の(日本でよく見るタイプの)ホルダーと、ふたつ付いてるんですよね。

しかも下部の「日本でよくあるタイプ」にはペーパーがセットされておらず、使用されていません。

空港のトイレは広く、女性用トイレでは 10個以上の個室がずらっと並んでいます。そのすべての個室に、使われてないホルダーが空しく放置されてるんです。


なんで、使用されてないペーパーホルダーが付いてるのか?


私の仮説はこうです。

写真には写っていませんが、便器には“ TOTO ”の文字がありました。

経済支援かビジネスかは不明ですが、空港のトイレは日本企業が納入しているようです。

おそらく便器だけでなく、個室を仕切るパネルやトイレのドア、そして壁付けのペーパーホルダーも、すべてセット品なのでしょう。

だから、日本と同じようなペーパーホルダーが“もれなく”付いている。


んが、こんなものは海外の空港では使えない。


なぜって?


メンテが大変すぎるからです。

日本タイプのホルダーにセットできるトイレットペーパーは長さが短い。

空港のようにひっきりなしに使用されるトイレでそんなペーパーを使っていたら、ものすごい頻度でペーパーを交換する必要がある。

それじゃあ大変すぎるから、上のどでかい丸形のホルダーに入るような、長ーーーーーいトイレットペーパーを使うワケです。


この大きな丸いタイプ、日本ではあまり見ませんが、海外の公共施設では大半がこっちだと言っていいほど普及してる“グローバルスタンダード”なペーパーホルダーです。

おそらくベトナムの空港でも、最初に日本メーカーが設置したトイレのホルダーが「げげっ、こんなの使えないよ!」って代物だったので、こっちのデカイのを後付けしたのでしょう。


念のタメ、他の場所にあるトイレも(広い空港を走り回って!)確認してみましたがどこも同じ状況でした。

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この、「使われないまま放置されてる日本タイプのトイレットペーパーホルダー」は、いろんなことを示しています。

「日本式のモノが当然、一番いいはず」という思い込みで、世界で使われてないものをそのまま輸出、設置してしまう日本メーカーの姿

(↑ こんなんだから、あそこまで素晴らしい洗浄機能付き便座がなかなか世界で普及しないのでは?)


もうひとつは、海外の良い物を(知らないのかイヤなのか知りませんけど)全く取り入れようとしない日本の姿です。

だってね。

日本だって空港や商業施設、駅や新幹線、学校から市役所まで、多数の人が使うトイレでは、海外タイプのホルダーを使ったほうがよいと思いませんか?


人手不足の中、お掃除の人がペーパーを取り替える手間を大幅に省けるでしょ?

写真をみてもらえば分かるけど、ペーパー交換の頻度は 10分の 1くらいで済むかもしれない。


しかも日本式のホルダーではすぐにペーパーが切れてしまうため、日本の大規模施設のトイレには、未使用のペーパーがたくさん置いてあります。

このトイレットペーパーを持ち帰ってしまう人も少なくなく、震災後のペーパー不足の時には、高級デパートのトイレにさえ「持ち帰らないでください」の張り紙がでていたほどです。


なのになぜ日本では、いつまでも家庭用のペーパーホルダーを公共施設で使い続けるの?

日本だって、ハノイ空港みたいに後付けしてでも大型のモノに変えてしまったほうが合理的では?


使われないままむなしく放置されるトイレットペーパーホルダーは、

・海外のニーズに頓着せず日本式の商品を押しつけ、一方で、

・海外の合理的な商品を日本に取り入れようという気もない、

・「日本のモノが一番いいに決まってるだろ?」的な思想の犠牲者のように見えました。


トイレの数は、ハノイの空港だけでも相当数に上ります。

でも、おそらくハノイだけでもないのでしょう。

ホーチミンでも、もしかしたら他のアジアのあちこちの空港でも、大量に「使われないまま」朽ちていく日本タイプのペーパーホルダーが存在しているのかもしれません。

グローバルに受け入れられない日本の商品が使われないまま、ずらりと並んで空しく放置される光景には、ちょっと哀しい気持ちにさせられました。


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そんじゃーね!


<以下、当エントリに関するフォローアップツイート>


<関連エントリ>

これはびっくり! → 東海道新幹線のトイレのミラクル!


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2016-03-12 100年=不発弾処理にかかる年数

古都ルアンパバーンには、「ラオス不発弾処理プロジェクト・ビジターズセンター」という施設があります。

ラオス全土に未だ多く残る不発弾の処理を進める組織の広報拠点で、オーストラリアの支援で運営されてるとのこと。

街ゴト世界遺産であるルアンパバーンには観光客が溢れてるのに、こんな物騒系の施設を訪れる人は少ないのか、この時の見学客は私だけでした。


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<センターの入口に並ぶのは本物の爆弾やミサイル>


前に「ラオスの歴史と政治」で書いたとおり、ラオスはベトナム戦争の舞台として国土を使われ、アメリカ軍から大量のクラスター爆弾を落とされています。

クラスター爆弾とは、ひとつのミサイルの中にたくさんの小さな爆弾が入っていて、落ちると広範囲に爆弾が飛び散るもの。

これですね。てかクラスター爆弾の実物って、今回はじめて見ました。

↓ 

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最近の中東の戦争では、アメリカ軍も世界世論を気にし、(誤爆も多々あるとはいえ公式には)「軍事施設だけをピンポイントで爆撃している」とよく強調しています。

しかし当時の戦争では、共産軍がたてこもる密林の上から「ぜんぶ焼き尽くせ!」とでもいうかのように絨毯爆撃式の攻撃を行うのは、ごく普通のことでした。

東京大空襲の焼け野原の写真を見てもわかりますよね。

一般人がどんだけたくさん住んでいてもまったく斟酌しない。あれが当時の戦争のやり方です。


これはラオスの地図と、爆撃を受けた場所(赤い点)の表示。ひどすぎ!と思いますが、もしかしてラオスの右側にあるベトナムには、さらに多くの爆弾が落とされたのかもしれません。

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(北部は山岳地帯なのであまり爆弾が落ちていません。南の方はいわゆるホーチミンルートです)


膨大な数のクラスター爆弾は、戦争から数十年たった今でもラオスの人を苦しめています。

なぜなら散らばったものの爆発しなかった“不発弾”が、草むらや浅い土の中に今でもたくさん残っているからです。


草むらや里山を歩く人が、土に埋もれた不発弾を踏んで爆発させ、吹き飛ばされるだけではありません。

丸いボールのようにみえる爆弾は、不発弾の怖さを知らない小さな子供達にとって、草むらで見つけたらスグに手にとってみたくなる「おもちゃのボール」に見えるのです。

そして嬉しそうにそのボールを掴んだ瞬間・・・・幼い命は一瞬にして吹き飛ばされます。


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だからラオスでは、まだ文字も読めない就学前の幼い子供達にも「不発弾とは何か。どんな形状をしているのか。見つけたら決して触ってはいけないこと」などを教えるのが、重要な教育となっています。


★★★


もっと悲惨な現実も。

アメリカが落としていった様々な爆弾は、鉄や銅やアルミなど、様々な鉄類、もしくは非鉄資源によって作られています。

これらは、貧しいラオスにとって極めて貴重な資源です。


このため戦後、貧しい人や子供に日銭を払い、爆弾のカケラを集めさせる業者が数多く現れました。

爆弾のカケラが多く残るエリアには、当然に不発弾も数多く残っています。

生活のためにこの仕事に従事した貧困層の人達、もちろん子供達もまた多くが、不発弾の犠牲となりました。

これは爆弾のカケラを集めて換金する貧困層の家族と、彼らが集めてきた金属片を買い取るため、業者が重さを計っているところ。

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不発弾処理のビジターセンターには、毎年の不発弾の処理件数と、その犠牲になり、命を落としたり障害者となった人の数を記録したボードがあります。

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今年は(2月だし)まだ死者はいませんでしたが、昨年でさえ 2名が不発弾により命を落としていました。。。


★★★


夜市でアルミのスプーンなどを売っているお店。

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これらも、ラオスに落とされた爆弾に使われていたアルミから作られています。

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ブラックジョークとして、同じ素材から作った爆弾型のキーホルダーも。

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ガイドの Tさんは言いました。

「今はタイからステンレスやプラスティックなど、いろんなスプーンが入ってきています。

でも僕が小さい頃、ラオスのスプーンと言えばこれしかありませんでした。

これでラーメンの汁とかスープとか、飲んでたんです。

まさか爆弾から作られてるなんて知らなかった。

僕たちにとってスプーンと言えばコレのことだったから」


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カンボジアでも地雷処理が問題になっていますが、ラオスでも不発弾の処理が完了するには 100年かかるとも言われています。

100年て・・・一世紀ですよ。


この施設で展示資料を見ながら、

「あたしがビルゲイツくらいお金持ちだったら、こういうプロジェクトにどーんと寄付ができるのに」と思ったり、

「あたしが優秀な技術者だったら、ルンバみたいに自動で不発弾を見つけるロボットを開発できるのに」と思ったりしました。(※ ルンバの技術はもともと地雷探索のために開発されたものです)


残念ながらアタシにはお金も技術もないし、と思っていたら、Tさんが言いました。


「僕が生まれたのは、戦争が終わってラオスが共産主義になってから数年後です。

だから小さい頃に受けた教育は冷戦構造を強く反映していて、僕らは幼稚園の頃から日曜の朝、広場に集められ、「アメリカは諸悪の根源だ! アメリカはラオスに賠償しろ!」とみんなで叫ばされました。

ぼくも含め小さな子たちは、「アメリカって何?」ってのさえ分からない年齢だったのに。


さらに小学校に入ると、フランスがラオスを植民地にしていかに酷い搾取をしたか、タイがラオスからどんな貴重な仏教資産を盗んでいったか、アメリカがどれだけの爆弾を落として多数の人を殺したか、西側諸国の悪行ばかりを教えられました。

でも僕が学校で習ったそういう話を家ですると、父が言いました。


「それは政治宣伝だ」と。


そして、「よく覚えておけ。爆弾なんかより言葉のほうがよほど危険だ。爆弾に気をつけることも大事だが、言葉にこそ気をつけろ」と言ったんです」


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これを聞いた時、「もしかしてあなた、あたしの職業を知ってるわけ?」と思ってぎくっとしました。

(もちろん彼は、そんなこと知るはずもありません)


たしかに私には多額の資産も技術もないけれど、この話を言葉にすることはできます。

この話を 誰でも見られるネット上に書いておけば、それを読んだ日本のどこかにいる 12歳の誰かが、将来、技術や資産やリーダーシップをもって、この問題を解決するのに大きな力を発揮するかもしれない。

もしそうなったら、あたしもこの問題に大きく貢献できるってことじゃんと。


ラオスの不発弾だけではありません。

カンボジアの地雷、ベトナムで使われた枯れ葉剤などケミカルウェポンも含め、たった数年、使われただけで、数十年、100年と人を殺し続ける殺傷武器。

もしかして今も同じようなものが、中東などの紛争地で使われているんでしょうか。

人間ってほんと、後先考えない動物でごじゃります。


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そんじゃーね。


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2016-03-07 子供からおみやげを買わないという教育支援

ラオスは ASEAN のメンバーではあるものの、いまだアジアで最も貧しい国のひとつです。

このため日本や中国、そして国際機関から NPO まで様々な人や組織が支援を行っています。

今日はそれらのうち、「商品企画&デザインの支援」と「観光客にもできる教育支援」のふたつについて書いておきます。


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<メコン河を望むレストランにて>


ラオスの名産品のひとつが、少数民族を含むラオスの人達が昔から手作りしてきた伝統的な織物です。

シルクが多いですがコットンもあります。民族により織機で複雑な模様を作る場合と、刺繍して作る場合があります。


もともと自分達の祭りや風習、日常生活のために作っていた布なので、昔はそれらが商品として、広く販売されたりはしていませんでした。

しかしある時点で先進国の人達がそのすばらしさに気づき、ラオスで買ってきた布を自国で売り始めます。

しかし、そこにはふたつの問題がありました。


ひとつが、商取引に疎い少数民族が(事実上、騙され)あまりに低い報酬で商品を売り渡してしまうこと。

もうひとつが、伝統的なデザインでは必ずしも先進国顧客のニーズに合わず、市場が限定的で産業として成りたたない、ということです。


前者の問題はあきらかですが、後者も重要です。

たとえばこちらは伝統的な模様の商品↓

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すばらしいと思いますが、日本で日常的に使えるかといえば“ちょっと違う感”が漂いますよね。

しかも布全体にこれだけ細かい文様を作るにはベテラン女性でも数ヶ月から半年が必要で、

その作業に適正な価格を支払った上で先進国に持ってきて売ろうとすると、商品価格が数万円にもなってしまいます。

それが下記のようなモダンでかわいい柄になると、

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日本や欧州でもスカーフなどとして日常的に使いやすくなる上、伝統柄と比べて柄部分の面積が少なく単純。

だから制作期間も短く、お土産品としてまとめ買いしてもらえる価格で売れるようになる。

結果として市場規模がどーんと拡大し、多くのラオス女性がこの仕事で現金収入を得られるようになるんです。


それにしてもこの新柄とか「なんとなく日本的」って思いません?

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そうなんです。

実は日本の着物生地のデザイナーなどがラオスまで指導に訪れ、「こういう柄なら作りやすく、日本人に売れやすいですよ」って教えてるんです。


同じような支援(マーケティング支援、商品開発支援)は、欧州からもたくさん入っていて、たとえば私が今回ラオスで買ったこのネックレス。

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丸玉部分の技法はラオスに古くから伝わるものですが、デザインや企画にはヨーロッパの NPO が関わってます。

このため値段も 12ドル(1500円)とふつーに先進国値段ですが、おかげで日本に戻ってからでも十分に使える商品となっています。

こういった「伝統技術+モダンデザイン」での商品開発は、日本では最近、金沢で急増しており、このネックレスなんかもその一例です。

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金箔・金細工や螺鈿は金沢伝統の工芸技術ですが、今時それで重箱やお椀を作っても、誰も買ってくれません。

でも、こういうアクセサリーにしたらぐっと売れやすくなる。

金沢では民間コラボで行われている「伝統技術+モダンデザイン」の試みが、ラオスでは先進国が支援として行い、伝統技術をもつ少数民族の女性達の「稼ぐ力」創出に貢献しているのです。


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<こちらは自然の草花を使った紙作り>


このように最近は「寄付や援助」ではなく、現地の人に稼ぐ力を付けてもらうという経済支援が増えているのですが、

その中でもうひとつ、今回、話を聞いて「ほんとそうだな」と思った支援について書いておきます。

それはガイドの T さんから聞いたこの話。


Tさん 「観光地や少数民族の村に行くと、おみやげを売る子供たちが寄ってきます。でも子供からは、お土産を買わないでください」

ちきりん 「なんで?」

Tさん 「親が子供を学校にやらなくなるからです」

ちきりん 「??」

Tさん 「大人達は、大人が売ってたら買わない商品でも、子供が売りにいけば外国からの観光客は簡単に買ってくれると知っています。

だから土産物を売る行商に、わざわざ子供を連れて行くんです」


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<梳いた紙を乾かしてるところ>


「ラオスの義務教育は無料ですが、それでも文具や活動代など最低でも年間 20 ドルはかかります。

つまり子供が 3 人いると 60 ドルかかるってことです。

でも、土産物を売りに連れていけば、子供一人が一日一ドル売るだけで、年間で 900 ドル以上の売り上げになります。

ブローカーがいるので全額手に入るわけじゃないけど、 3 割もらえるだけで 270ドルもの稼ぎです」

ちきりん 「学校に行かせるのと比べると、年間差し引き 300 ドルもの違いになるんですね!」


Tさん 「すると親はこう考えるんです。

政府は子供を学校にやれとうるさいけど、文字なんて読めても稼げない。

土産物の売り方を学んだほうが、よほど我が子の将来のためになる、と。

そして子供を学校にやるのを止め、毎日働かせるようになるんです」

ちきりん 「親もそのほうが子供のためになると信じてるんだね」

Tさん 「親は自分自身も学校に行った経験がないし、世の中の動きについても知識が無いため、教育の意義が理解できないのです」


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<手作りの紙からできたグリーティングカード いい味わいです>


Tさん 「文字も読めないまま大人になってしまうのは、本人にも親にも、そして国にも大きな損失であり不幸です。

夜市でも、子供がかわいいからこの店で買う、という素振りを見せないでください。

そういう客が多いと、隣で店を開いている人が「次からは自分も子供を連れてこよう」と考えてしまいます。


ラオス政府も、子供からお土産を買わないよう呼びかけています。

ラオスでは人口の 15%が文字を読めないと言われていますが、実際にはもっと多い。基礎教育の普及は国家の最優先政策なんです。


政府がクチをすっぱくして「子供を学校に!」と言っているので、1週間、子供からお土産が売れなければ、親は「これでは将来が心配だ。やっぱり学校に行かせたほうがいいかもしれない」と考え始めます。

なのに一日にたったひとりの観光客が子供からお土産を買い、一緒に写真をとって 1ドルを渡してしまうことで、その子が教育を受けるチャンスは消えてしまうんです」


Tさん 「物乞いも同じです。

一日中 路上をウロウロして、手のひらを外国人に差し出してニッコリ笑い、一ドルもらうということが商売として成り立つのだと、子供達に教えないでください。

彼らが裸足なのは、サンダルが買えないからじゃありません。裸足のほうが儲かるから、ただそれだけです。

彼らは市場に野菜や魚を売りに来る親についてきて、親が働いている間、市場の周りで遊びのように物乞いをします。

サンダルは親の店で脱いでしまい、わざわざ裸足で出掛けるのです」


なんと・・・そんなことをしていたら、ケガや感染症のリスクだって高くなります。

そもそもそんなことしてる時間に、学校に行かなくちゃいけないのに。


ラオスだけの話ではありません。

私達は途上国で裸足の子供達がお土産物を売りにくると、大人が売ってたら買わないものでも、ついつい買って「あげたり」しそうになります。

「一緒に写真を撮ってもいいから 1ドルちょうだい」とねだる子供に応じてしまう観光客も少なくありません。

でもその行為が、子供の教育機会を(ひいては子供の将来の可能性を)奪ってしまう。


もし日本の街中でそんな子供が寄ってきても、私たちは彼らから安易にモノを買ったりはしませんよね? 

「子供にこんなことをさせて・・・いったい親はどこにいるんだ?」と憤慨するでしょ?

だったら世界の子供たちにも同じように接することが、大人の義務ではないでしょうか?


子供からお土産を買わないという教育支援

モノは大人から“日本でも使えるもの”を買うという経済支援

(これにより彼らは売上げから利益を得られるだけでなく、「こういうデザインが売れやすいのね」と気付くことができます)


旅行中から、「この話だけは必ずブログに書かなくちゃ。多くの人に伝えなくちゃ」と思っていました。

みなさまもぜひ、周りの方にお伝えください。


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そんじゃーね


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※ 2016年の慶應義塾大学の入試問題がこちらの書籍より出題されました。子供に国際感覚を身に付けさせるにも最適な一冊です。

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2016-03-02 ルアンパバーンの托鉢に見る伝統と変化

敬虔な仏教国であるラオスでは、黄色い袈裟に身を包んだお坊さんが一列になって歩き、沿道に並ぶ人々から一握りのご飯を受け取る托鉢(たくはつ)というセレモニーが毎日行われています。


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ガイドの Tさんによれば、「托鉢において、お寺は郵便局のような役割です。人々が祖先に届けたいお供え物をお坊さんに託せば、自分の代わりに祖先に届けてくれます」とのこと。

日本だと仏壇に供えるご飯を、ラオスではお坊さんに託す、ということですね。

時にはタイや日本から来たお坊さんも(ラオスのお坊さんに食べ物を渡す側として)参加するため、お坊さんがお坊さんにお供え物を渡すという不思議な絵も見られます。

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托鉢はラオス全土で行われてますが、もっとも観光客向けにアレンジされているのが、古都であり世界遺産でもあるルアンパバーンという街の托鉢です。

まず、ここの托鉢は開始時間が違います。

他都市では通常、朝 5時半頃に行われますが、この時間だと周りはまだ真っ暗。これでは観光客が托鉢の写真をとれません。

不届き者がフラッシュを使うとお坊さんの目にもよくないので、ルアンパバーンでは「托鉢は明るくなる 10分前」(なので季節により異なるのですが、たいていは他都市よりかなり遅い時間)に始まるんです。


また、普通は自分のお寺の周囲を歩くのですが、お寺の数が多いルアンパバーンでは観光客の混乱を避けるため、すべての寺のお坊さんが決められたルートを一筆書きで歩きます。

そしてこの道、托鉢の間は車両が通行禁止になります。

托鉢をカメラに収めようと必死になる観光客が、車に気付かず事故るのを防ぐために。

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(※念のタメ、あたしじゃありません・・・)


お供えをする側は、靴を脱いで膝立ちになるのですが、今は観光客用に、小さなイスまで用意されており、最近は地元の人まで(高齢の人などは)イスを使い始めています。


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お坊さんに渡すのも、もともとは蒸したご飯だけですが、現在はお菓子も渡せるよう付近の路上で売られています。

これは完全に観光客向けです。ご飯は手で摘まむので慣れないと大変ですが、お菓子なら手も汚れません。


またルアンパバーンの托鉢の道には、このようなカゴが置いてあります。

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(※最初、ゴミ箱だと思ったのは私だけではあるまい・・)


ここのところ参加する観光客が急増。お坊さんはちょっと歩いただけで、大量のお供え物を受け取るようになっています。

これでは器もスグに満杯になってしまうので、お坊さんは自分が受け取ったお供え物をこのカゴに移します。

すると托鉢の後、このカゴを置いた近所の人がそれを持ち帰って皆で食べ物を分けるのです。

こんなカゴにご飯は入れられないので、この点でも伝統にはない「お菓子の托鉢」が編み出されたというわけ。


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(※沿道のカゴにお菓子を移すお坊さん)


ちなみに、お寺に持ちかえられたご飯だけでも大量なので、お坊さんが食べた後は、こちらも近所の貧しい家庭の人達に分け与えられます。

(ラオスでは、お坊さんが食べた残りの食べ物には御利益があると言われています。なのでお坊さんも、受け取った食べ物のすべてから一口ずつ食べるという食べ方をします)


この「托鉢でお坊さんが受け取った食料を貧しい人に配る」ことが、1年 365日、雨の日も風の日も全国すべてのお寺で行われているため、最貧国とも言われながらラオスでは、物乞いをほとんど見ません。

この国では少なくとも「食べるものが無い」状態にはなり得ないのです。


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地元の人にも観光客にもマナーを守らない人はいます。

お供えとして使うご飯やお菓子を観光客に売る地元の人。

お供え物はお土産とは違うので、積極的な営業は禁止されているのに、立ってると次々と売り子さんがやってきます。

また、観光客側はフラッシュ禁止の他、お坊さんの前に立ってはならないとされているのですが、

カレンダーやポスター製作、雑誌取材のために雇われた世界中のカメラマンが、歩道の真ん中=お坊さんの進路の前にたち、真正面から写真を撮ろうとします。


まあでも、それくらいはどこの観光地でも起こっていること。

むしろ注目すべきは、本来 5時半から始まる托鉢を「明るくなってから始める」と決めたり、「観光客は裸足にならなくてもよい。イスに座ってもよい」と認めたり、車両を通行止めにしたり、ご飯だけでなくお菓子の托鉢を認めたり・・・

ルアンパバーンで行われている「観光客が托鉢を見学、参加しやすくする様々な施策」のほうです。

そういうのって誰が決めたかガイドの Tさんに聞いてみたところ、「形としては行政側が決めているが、ラオスでは誰もお坊さんに命令はできない。だから位の高いお坊さん達が話し合い、合意して決めているはず」とのこと。


なんか、おもしろくない?


だって観光客の多くは、ルアンパバーンを「昔の伝統をいつまでも守っている素朴な古都」だと思ってるんですよ。

ところが実態は、ビエンチャンを含め他都市では 5時半から行われてる托鉢を「観光客が写真を撮りやすいよう、明るくなってから開始」してるなんて、ものすごい柔軟な姿勢でしょ?


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ルアンパバーンはメコン河のほとりにあり、ラオス王国時代の伝統様式で建てられた家やフランス植民地時代の風情ある欧風建物が数多く残り、街ごと世界遺産に指定されていて、日本でいえば、鎌倉と軽井沢を足して(京都の)鴨川を加えたようなすばらしい街です。


そういう恵まれた観光資産を持ちつつ、一方では、

・伝統ど真ん中の托鉢に様々な「観光客への配慮」を取り入れ、


・「ユネスコの許可が無いと何も変えられない世界遺産の街」なのに中心部でアマンがホテルを経営し、


・バックパッカー向けのゲストハウスと並んで、サービスも料理もワインも先進国並みの高級レストランや、めっちゃおしゃれな雑貨やシルクドレス、アクセサリーのショップが並んでる。


ここは、「敬虔な仏教国ラオスを代表する古都」である一方、ものすごーく「マーケット感覚に溢れた都市」・・・でもあるんです。

だからこそ、早々にユネスコの世界遺産指定も受けている ←これ、けっこう大変なんですよ。

おそらく 10年もたてばこの街は、東南アジアを代表する「世界中のお金持ちとハイソ&アーティスティックな人達がバカンスを過ごしたがる人気スポット」になることでしょう。


最貧国とも言われるラオスに、鎌倉や軽井沢より可能性の高い国際観光都市がある。

「国の時代じゃなくて都市の時代」・・・既に使い古されたフレーズではありますが、そのことをしみじみ再確認した旅となりました。


ラオス、舐めたらあかんぜよ。


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そんじゃーねー


追記) ちなみにこの都市、韓国の仁川空港からは直行便が飛んでます。一方、日本からの直行便は、未だ首都ビエンチャンにさえ飛んでません。

この本に書いた仁川空港の話を思い出しますよね。


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