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Chikirinの日記 RSSフィード

2016-08-23 偽装難民についてはどう考えるべき?

このエントリは連載ものです。

第一回 問題はデータと首相の認識

第二回 びっくり! これが日本の難民認定基準

第三回 難民条約とインドシナ難民

第四回 トルコとミャンマーの違いとは?

第五回 難民ってどーやって日本に来るの?


前に書いたように、日本の難民認定基準は他国に比べて理不尽なほど厳しい上、結果がでるまで平均 3年、中には 10年かかるコトもあります。

でも何より根本的な問題は、日本の姿勢が「困っている人を人道的な見地から助ける」という姿勢ではなく、「偽装難民が入ってこないよう厳しく審査する」という姿勢に偏りすぎていることです。


母国より豊かな国で暮らしたいと考える偽装難民はすべての先進国にやって来てます。

でも G7 先進国の中で、ここまで難民支援に消極的なのは日本だけです。

ドイツやアメリカにだってたくさん偽装難民は来てるはず。それでも、下記の数字なんです。

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この問題って、次の 2点で生活保護に対する批判とすごく似てます。

1)不正が見つかると制度自体の是非論につながる

2)自分に責任がある人は助けなくてよいという意見がある

生活保護も不正受給が報道されるたび、制度全体を見直せと言い出す人がいます。

でもね。

小学生でも無い限り、「一切の不正のない支援などあり得ない」ことくらい理解できますよね?

「不正のある支援は絶対に許せない!」と主張することは、「一切の支援制度なんて無くていい!」と言ってるのと同じなんです。


日本人の好きなカンボジアへの教育支援だろうと、欧米の有名 NPO が行う人権的な支援だろうと、すべての支援制度や援助活動において、支援品をちょろまかしてる関係者や、その制度を利用してがっぽり儲けてる人はいます。

でも、だからといって制度や援助活動の是非を問うなんてお門違いです。


人道支援に関しては、目の前で困ってる人をなんとか助けようという話がまずあって、その上で、できるだけ不正が起こらない制度を作りましょう、という順番です。

「不正が起こるような制度はいらない」(=事実上、支援を止めるべきという主張)にしていい話ではありません。


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JAR 製作


2番目の「自分が悪かった人は助けなくていい」というのも、人道支援には適用されません。

人道支援というのは、最後の最後、本当に困ってる人に手を差し伸べようという話です。その人が「なぜ」困ることになったのか、そんなこと尋ねる必要もありません。

山や海で遭難した人の捜索に多数の救助隊が動員されたり、海外で誘拐された日本人の救出に多大な費用がかかったりすると、

すぐ「そんなところに行くなんて自己責任」という話がでます。


ですが、目の前に死にそうな人がいたら、できる範囲で助けるのはあたりまえです。

軽装で険しい山に入ったり、興味本位で紛争地にでかけるのは確かに問題でしょう。でもだからといって「助ける必要は無い」という話にはならない。


これが理解できない人がいるなんてほんとーにびっくりですけど、

難民に関しても、「紛争を起こしたのは欧米なんだから、欧米が助ければいい」とか言う人がいます。

欧米はもちろん助けてるでしょ!?

だからって、それが理由で日本が何もしなくていいという話にはならないんです。


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( JAR 2014年度 年次報告書より 以下すべての写真は同資料より)


あとね。

難民申請をした後に日本で働いてると、「働いてるじゃないか! 偽装難民だ!」とか言う人がいるんですけど、

審査には 何年もかかかるんだから、働くのは当たり前です。

ルール上も(申請後、半年後からは)認められてるし、そもそも働かないと食べていけません。


そうして得たなけなしのお金から本国の家族に仕送りすると「ほーらみろ、やっぱり出稼ぎに来た偽装難民だ!」と、鬼の首をとったように大喜びする人もいるんだけど、

自分だけ安全な国に逃げてきて、いつ家族を呼び寄せられるかもわからない。

せめて(自分の生活はギリギリまで切り詰めてでも)本国で困窮してる家族に送金したいと思うのは、


偽装難民なの? 

それを許すことはそんなに大きな問題なの?


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(医療、食事、住居・・・まさに生きるための支援)


難民認定を担当する法務省は、最近、制度を手直ししようとしてます。

「難民認定制度の運用の見直しの概要」(2015年9月)


これを読む限り法務省としては

1)偽装難民を排除しないと職員の手が足りなくなる上に認定率が下がり、内外から言われなき非難を受ける。なので偽装難民を手早く分離、処理したい


2)真の難民の認定を正確かつ迅速に行うための、担当者のスキルや知識の向上を計りたい


3)偽装難民と真の難民の区分を早めに行えるよう、プロセスを変更したい


(以上、ちきりんによるサマリー)

と思ってるよーなんですが、


この制度変更に関して法務省が広く国民の意見を聞くためパブリックコメントを受け付けたところ、

なんと! 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)がコメントを寄せてきました。

第5次出入国管理基本計画案に関するUNHCRの見解 & 資料


UNHCR の意見はざっくり言えば、「これでは人道支援ではなく、あまりにも偽装難民排除に重きが置かれすぎ!」というもの。

サミットの議長国まで務める立場にありながら国連の機関にこんなこと言われるなんて、ある意味ほんとすごいです。


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(JAR 活動実績についての説明)


最後にもうひとつ。

日本で偽装難民の可能性が高そうなのは、技能実習生としてやってきて難民申請してる人でしょう。

実際、最近はこの立場からの申請が急増してるんで、おそらく法務省も困ってるんだと思います。


んが、

実はこの外国人技能実習生という制度自体(難民から話がそれるので詳しくは書きませんが)問題の多い制度で、人権侵害ではないかと海外から指摘されてます。

なので私としては、もっともっと技能実習生からの偽装難民申請が増え、この制度(技能実習生制度)がどんな制度なのか、多くの人に知られたほうがいーんじゃないかとさえ思ってます。


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そんじゃーね!


次回に続く


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