生活強者のための炊飯器

今日は敬老の日なので炊飯器の話題です。(??)


下記は、とある炊飯器の内釜にある水加減を示す目盛りなんですけど、

ちょっと複雑すぎませんかね? 

(半月形のオレンジマークについては後で説明します)


・「エコ炊飯 すしめし」っていうのは、ひとつの単語? それとも、「エコ炊飯」と「すしめし」というふたつの言葉? 

・「炊きこみ2」って何? 炊きこみご飯の2合のこと? それとも、「炊きこみ2」っていうお米か料理があるの?

・で、結局、雑穀米はどこの目盛りを使えばいいの?

・MAXって何??? なんでいきなり英語? なんで下線付き? もしかして下線じゃなく目盛り?

・B423って何? 型番? ここに、こんなにデカく書く必要が?

・なぜ左側の目盛りは一本の直線の左右に目盛りを付けてる“骨スタイル”なのに、右側は数字の周りを囲うボックス型なの? なぜ両方、同じスタイルの目盛りにしないの?? 

など疑問がいっぱい。

いえもちろん、説明書を読めば書いてあるんでしょうけど。


★★★


ここで、オレンジの半月マークについて。

この炊飯器は、認知症を患いながら家族に支えられ、自宅で暮らす高齢者 Aさん家のものです。

昔は料理上手だったという Aさんですが、今は食事の用意もひとりではできません。でも生活リハビリの一環として、ご飯だけはこれまでも自分で炊いてきました。

最近、長く使っていた炊飯器が壊れたのでご家族の方が新しい炊飯器を買ってきたのですが、

ある程度、美味しく炊けるレベルの炊飯器の中で「できるだけシンプルなもの」を選んで・・・これだったんだそうです。


ところがこの炊飯器に買い換えてから、Aさんは自分でお米を炊くことができなくなりました。

水加減をどの目盛りにあわせればいいのか、自信が持てなくなってしまい、誰かの確認が必要になったからです。

失敗してべちょべちょのご飯ができあがった時の哀しさ、そして情けなさ。

「自分はこんなことも一人ではできなくなってしまったのか・・・」と、高齢者に自信を失わせるために作られてるんですかね? この炊飯器。


そこで家族の方が内釜の中に貼ったのが、半月形のオレンジのシール。これは、「この直線の下の目盛りに水をあわせてね」という意味。

本当は、相当の高温になる炊飯器の内釜の中に、こんなシールを貼るのはよくなさそう。

でも、そうしないと、Aさんがひとりでご飯を炊くことができません。


ところが・・・残念ながらこれでも Aさんには目盛りの判別がとても難しかった。

そこで次に採用された解決策が、ご飯は常に一合で炊くこと。なぜなら1合なら、どの目盛りでもあまり水の量が変わらないからです。


で、2合以上炊くときは、家族の方が水量を確認します。

せっかくの新しい炊飯器なのに、なんだかいろいろ残念な感じでしょ。


こういう超複雑系の高機能な炊飯器、爆買いする中国人にはウケがいいのかもしれません。

彼らは中国でも買える普及品ではなく、日本でしか買えない高級炊飯器を探してるので。

でも高齢化が進む日本では、白米を炊くための目盛りだけが、わかりやすーく載ってる炊飯器へのニーズもあるのでは?

“おかゆ”や“おこわ”を炊きたい時は、計量カップで調整したっていいわけだから。

てか、
普通の家って炊飯器で白米以外を炊く機会はどれくらいあるのでしょう?
1週間に1回は、おこわを炊いたり、おかゆを炊いたりしてるの?


★★★


ちなみにこちらは、同じく Aさんの自宅にあった電話機の子機(左・ピンク)と、玄関インターホン(右・白)の子機


電話、もしくはインターホンの音が鳴った時、それが電話の音なのか、インターホンの音なのか、Aさんにはもう、耳だけで聞き分けることができません。

ところが電話もインターホンも、白やシルバーの商品が非常に多いんです。

なので Aさんの家族は、機能や値段ではなく「ピンクだから」という理由で、この電話機を選んでいます。


それでも白とピンクでは(コントラストが弱くて) Aさんにはわかりにくい。

ということで、こちらにも青や緑のシールが貼られています。はっきりした色なら目が弱っても、少しはわかりやすいから。

耳が弱り目が弱る。年を取るってそういうことなんです。


★★★


今日は敬老の日。

こんな複雑な目盛りが読み解ける「米炊きリテラシーの高い生活強者」向きの商品だけでなく、

おいしいお米の炊ける高級炊飯器で、もっとシンプルな商品があってもいーんじゃないですかね?

高齢者だけでなく、お手伝いをしたい子供にだって、こんな難解な表示は不親切でしょ?


実はこの炊飯器の内釜には、上記とは別にもう一ヵ所、水加減の目盛りがついてるんです。下記にそのふたつを並べてみました。

どちらも複雑で、かつ、どこがどう違うのかも一目ではよくわからない。

何を炊くときに、どちら側のどの目盛りを使えばいいのか。米炊きリテラシーの高い方ならすぐに理解できるんでしょうけど。

無洗米で“すしめし”を炊くときはどーすればいーのかとか。もはやクイズにできるレベルです。

てか内釜の中に2行にもわたる注意書きを書くっていったい何なの??

デザイナーとかいないの?

てかデザイナー使ってコレなの?


念のタメもう一度。

今日は敬老の日です。

いつの日か、体や判断力が弱ってきたお年寄りでも、おいしいご飯を炊くことのできる炊飯器が開発されますように。



そんじゃーね

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