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Chikirinの日記 RSSフィード

2016-12-30 価値に応じたプライシングの重要さ

連載エントリの途中ですが、年末なので今日は別の話を。

例年お正月は関西で過ごす私。東京からは新幹線で移動するのですが、いつも不思議に思うことがあります。

それは「なんで新幹線の料金って、年末年始など超繁忙期でも平常時とほとんど変わらないんだろう?」ってこと。


帰省には飛行機を使う人も多いと思いますが、飛行機チケットの実勢価格は、閑散期と繁忙期で大きく違いますよね?

閑散期には様々な割引きが使えて安くなるけど、お盆や正月、GWの料金はかなり高い。

買うタイミングまであわせると、3倍くらい違う場合もある。


ところが新幹線の場合、その価格差はこく僅かです。

新幹線には、

・グリーン席

・普通指定席

・普通自由席

があります。


指定席と自由席の差は 500円ほどですが、グリーン料金は普通指定席の倍くらいします。

でもどれも閑散期と繁忙期の価格差は小さく、普通指定席券で数百円ずつ安くなったり高くなったりする程度。

飛行機も新幹線も規制があるので、JRや航空会社が価格を自由に決められるわけではありません。

それでも実際には相当に柔軟なプライシングが行われている飛行機に対し、新幹線は需給による価格変動がものすごく小さい。


★★★


ちなみに 16両編成の東海道新幹線の場合、3両がグリーン席ですが、この 3両の「通路やデッキ」に立って乗りたい人も、グリーン料金が必要です。

なので正月やお盆に全体の乗車率が 180%などとなっても、グリーン車の通路やデッキに立っている人はいません。

トイレにもスムーズに行けるし、車内販売もちゃんと回ってきます。

グリーン料金は普通指定席の倍もするので、「通路もみなさんのために確保しますよ」ってことなのでしょう。


一方、普通指定席に関しては、指定券を持っていれば席は確保できますが、繁忙期、乗車率が 180%ともなると、

通路やデッキには自由席チケットを持つ人がぎっしりと立って(詰まって)います。

繁忙期の客はたいてい荷物も大きいので、指定席のチケットを買った人は、「席には座れるけど、通路もデッキも人でいっぱいなのでトイレにも行けないし、乗り降りにも一苦労」となります。


繁忙期、通路まで混雑するのは自由席も同じです。

こういう時期、自由席に座れているのは(めっちゃ運のいい人を除き通常は)

・東京など始発駅から乗った人で、

・1時間程度、ホームで並んで待った人

です。


繁忙期の場合、品川や新横浜から乗って自由席を確保することはできません。

そして東京駅の新幹線ホーム、自由席車両あたりでは「次の次の次」の新幹線を待ってたりする人もおり、とても混雑します。


★★★


以上が現状なんですが、もし私が自由にプライシングしていいと言われたら、きっと下記のように変えてしまいます。

・繁忙期のチケット価格は、通常期の 2倍程度まで引き上げる

・繁忙期は自由席を廃止し、すべて指定席にする

・指定席チケットの他、格安の「立ち乗りチケット」を売る


まずはお盆、GW、正月休みのピーク日、今年で言えば、12月 29日と 1月 3日は、通常料金の 2倍、それ以外のピーク日でも通常の 1.5倍などとします。

こうすれば、どうしてもその日に乗らないといけない人以外は、帰省日を1日でもずらそうと考えるでしょう。その分、確実に混雑は緩和されます。

また繁忙期のみ自由席を廃止すれば、狭いホームで 3台先の新幹線を待つ人の行列もなくなります。

ホームの混雑解消にも役立つし、人生の貴重な時間を並んで過ごす人も減らせるのです。

さらに「立ち席チケット」を安く売ることで、それぞれ価格に応じたサービスを選べるようになります。

このチケットの値下げ分は、指定席を増やすこと、繁忙期料金を上げることで捻出できるでしょう。


私は基本的に、「価格は、提供されている価値に応じて設定されるべき」と考えています。

これができてないと、無益な行列や不公平が生じるだけでなく、売上げや利益も最大化できないからです。

今はまったく同じ料金を払いながら、自由席に座れる人と、通路やデッキに立ったままの人がいます。

地下鉄や山手線ならともかく、何時間も乗る新幹線でそれってとても不公平なことだし、ガラガラの日と乗車率 180%の日の指定料金が(ほぼ)同じなのも不公平です。

ちなみに東海道新幹線は比較的いつでも乗車率が高いのですが、他の新幹線はガラガラの日もよくあります。

ガラガラの日はもっと安くして(飛行機のように直前には投げ売りでもして)席を埋めた方が、売上げも増やせるのでは?


★★★


宅配サービスについても同じことを思います。

くろねこヤマトも佐川急便も、年末になると遅配が発生します。

どこも毎年謝ってますけど、あんなの「年始年末は通常の 2割増しの特別料金」を設定すればいいんです。

増収分は年末年始に働いてる配達員の方の時給に上乗せしましょう。


もっといえば楽天もアマゾンも、年始年末の注文には特別配達料をとればいい。

そうすればどうしても年始年末に必要なモノ以外は、みんなピークシーズンを避けて買うようになるでしょう。

荷物の集中度合いが下がり、遅配も減るはずです。


宅配に関しては、不在宅への再配達が大幅なコスト増につながっていると聞きますが、それなら、

「コンビニ受取りならポイントがつきます」とか、

宅配ボックスのないアパートや戸建ての人が

「不在の場合は、あらかじめ登録しておいた近くのコンビニに配達しておいてくれたら、後で取りに行きます」

と申請するだけでポイントを与えるとか、なんらか再配達を減らす価格的なインセンティブを付けるべき。

ポイントはナナコでも Tポイントでもいいですが、世の中にはたった 5ポイント(5円分)もらえるだけで、行動の変わる消費者がたくさんいるんです。


しかも今は、細かくプライシングを分けても対応できる技術が存在しています。

宅配の時間指定も(再配達を減らす効果があるため)現在は無料ですが、午前と午後と夕方の 3区分指定なら無料、「いつでもいい」なら 100円引き、二時間ごとのタイムゾーン指定には +200円など、

もっと細かく「サービスの付加価値にあわせて対価を払う」形に変更すべきでは?

そうすれば、「いつでもいい」を選ぶ人が増えて、宅配のロジは相当ラクになりそう。だって今は「いつでもいい」人でも、無料だからと時間指定をしてたりするんですから。

もちろん「いつでもいい」を選んで不在→再配達となった場合は、ちゃんと「再配達料金」をとりましょう。


★★★


年賀状が 1月 2日の配達を止めたのも人手不足が原因と言われてますが、そもそもなんで年賀状が普通の葉書と同じ値段なのかわかりません。

あんな特別な手間や手配が必要なものは、一枚 100円なり 150円なりにすればいいんです。


前に自治体のゴミ収集の担当者で、一月初日の収集日に有休をとる人が多いと問題になってました。

正月明けはゴミの量がめっちゃ多く、仕事がハードだからだと。

だったら年始のゴミ出しには特別なピンクのゴミ袋でも指定し、一枚 300円とかで売ったらどうでしょう? 

多くの家庭では袋代の 300円を節約するため、生ゴミ以外は 中旬になってから出すなど、ゴミの量の平準化を進めるはずです。

もちろん増収分は、正月初日の収集日に働いた人の手当にすればいい。


鉄道各社は大晦日から三が日、それに大きな花火大会が行われる日などにも臨時電車を出して夜通し営業したりしてるけど、ああいう特別な日も運賃は 2倍とか 3倍にすればいい。

いつもなら 390円の運賃が 800円でも構わないでしょ。

増収分で安全を確保し、そんな日に働く人の時給に充てるべき。


他にも、適正な価格がつけられてないものはたくさんあります。

高速道路も、混んでても空いてても同じ値段っておかしくない?

レストランも、早くから予約しても直前でも同じ価格って変じゃない?

飛行機やホテルなら、予約タイミングによって値段が違いますよね。


キャパシティ商売はどれも同じで、早くから「今日は満席」「今日はガラガラ」と分かっていると、バイトの手配から材料の仕入れまで、大幅に無駄が削減できます。

だからレストランでも早めに予約を入れると 5千円のコースが 4700円になりますよ(もしくは、ビール一杯無料!)というのは、十分に合理的なプライシングのはずなんです。


技術とインセンティブシステムを利用して、もっともっと「価値に応じたプライシング」が当たり前になり、

付加価値の高いサービスにはきちんと相応の価格が支払われるようになってこそ、「生産性」が上がるのだってことが、

「生産性=コスト削減」だと思い込んでる人には、わからないのでしょう。

価値あるサービスに正当な対価を取らないから、いつまでもデフレから脱却できないし、生産性も上がらない、そして、働く人がとことんまで疲弊してしまうのだということを、

少しでも多くの人に理解して欲しいです。


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みなさまよいお年を!

そんじゃーね。


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