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Chikirinの日記 RSSフィード

2016-09-13 パラリンピックについて思うこと

リオではオリンピックが終わり、パラリンピックが行われています。

パラリンピックについての私の関心事は以下のとおり。


1.パラリンピックにおけるドーピング規定

ロシアが国家ぐるみのドーピングをやってたと指摘され、今回のパラリンピックにはロシア選手がまったく参加できていません。

オリンピックのほうはロシア選手団 389人のうち 271人の参加が認められたので、パラリンピック側の厳しさが際立ちます。


そもそもドーピング違反は、オリンピックでもパラリンピックでもあったのか?

BBCによると、

世界反ドーピング機関(WADA)独立委員会の報告書は、2011年から15年にかけて、ロシアのスポーツ省が選手らの尿検体を操作していたと認定した。


報告書は、パラリンピックの 8競技(うち 5競技が夏季)に関連した 27の検体について操作があったとした。

ってことなので、ロシアに関してはオリンピック選手にもパラリンピック選手にも同様の問題があったようです。

なので処分の差は国際オリンピック委員会と国際パラリンピック委員会の判断の差、ということらしい。独立した 2団体が別個に判断し、後者の方が厳しい判断をした、ということですね。

当然ロシア側は「国際オリンピック委員会の判断が妥当」と言ってるし、西側諸国は「パラリンピック委員会の判断の方が妥当。国際オリンピック委員会はプーチン氏に日和った」と考えてます。


そもそもパラリンピックのドーピング規定ってどうなってるんでしょう? 

オリンピック選手の場合、今や風邪薬ひとつ飲めないのだと思うのですが、障害をもつパラリンピック選手の場合、飲まざるを得ない薬だって当然あるだろうし、それらの中に禁止薬物が不可欠な成分として含まれてることだってあるでしょう。

そしてもちろん「病気のために必要だから」という理由を盾に、意図的に禁止薬物を使う選手だって存在するはず。


というわけでググってみると、日本財団の研究員の方のレポートが見つかりました。

やはりパラリンピックのドーピング規定に関しては、治療使用特例など、オリンピックとは全く異なる規定があるようです。


そしてパラリンピックでも(もちろんロシア以外でも)ドーピング違反は存在してるんですが、

今回のリオでは、ケニアの重量挙げのワンジク選手がドーピング違反が指摘出されたにもかかわらず、本人が「咳止め薬に禁止物質が含まれていただけだ」と主張。

国際パラリンピック委員会はこの誤飲説を認め、結果は懲戒処分のみで、競技への参加は許されてたらしいんだけど、


こんな言い訳、オリンピックでも通じる??? 

ロシアに関しては、自分自身は何も違反をしていない選手まで出場禁止にしたくせに、個別選手のドーピングにはずいぶん甘いのね。。。とも思える一方、

途上国のパラリンピック選手なんて専門的なコーチやアドバイザーがついてない場合も多そうで、「しゃーない」的な判断だったのかもしれない。

けど、「ちょっとでも見つかったら一発アウト!」なオリンピックに比べれば、基準はやっぱりわかりにくい。


それに、オリンピックのドーピング規制がどんどん厳しくなる中、パラリンピック選手のドーピングについてはあまり取り上げられることもない。

これってやはり「障害者だから」なのか、それとも今後はオリンピック同様、厳しくなっていくのか。

このあたりが最初の興味です。


2.すごいのは道具なのか選手なのか

オリンピックは人間の競技ですが、パラリンピックって、人間+道具の競技ですよね。そもそも「車椅子マラソン」なんて、人間の足だけで走るマラソンとは全く違う競技でしょ。

それらの道具(義足や車椅子)がどれほどハイテクで先進的かという特集は、パラリンピック中、雑誌でもテレビでもよく見るのですが、道具のブランド(製作会社)が表だって名誉を受けることはないみたい。


たとえば F1レースの場合、シューマッハとかハミルトンという選手名と、ホンダとかルノーといった自動車会社名は、同じくらい注目されてますよね。

でもパラリンピックもオリンピックも、道具のメーカーは(たまにテレビが特集するけど)すくなくとも「道具を作ったメーカーや技術者も勝者」という F1みたいな扱いではありません。


オリンピックの場合、2008年頃イギリスの SPEEDO というメーカーが作ったレーザー・レーサーという水着を着て泳いだ選手が新記録を連発。

他メーカーのスポンサーを受けてる北島康介氏など日本選手はその水着を着られないから不利だ!といって騒がれました。

その後、国際水泳連盟は水着の素材についてルールを強化。特殊な水着は使えなくなるなど、「高い記録が出過ぎる道具は使用禁止」という動きもあるわけです。


これってパラリンピックでは考えられないですよね?

パラリンピックでは「どこまでもどこまでも道具の機能を追求」し、オリンピックだと「すごすぎる道具がでてきたら使用禁止にする」のって、

このふたつの大会が何の大会なのか、ってことを(オリンピックは人間の競技であり、パラリンピックは人間+道具の競技だってことを)象徴してる気がします。


そうなると、次に興味がでてくるのがこの点


3.パラリンピック記録がオリンピック記録を凌駕するのはいつ頃か

ドイツの走り幅跳びのマルクス・レーム選手は、すでにオリンピアンを凌ぐ記録を持っており、今年のリオではパラリンピックではなくオリンピックに出たいと言ってたんです。

国際陸連の判断は「カーボン製の義足に優位性がないと、選手自身が証明すること」というもの。

それを証明するための専門家研究チームも作られたようですが、時間切れということもあって、今回はオリンピックには参加できませんでした。

・参考記事 本人インタビュー


とはいえ走り幅跳びだけでなく、今後はオリンピック記録よりパラリンピック記録のほうが記録として高い、という種目が増えていくのはまず間違いないでしょう。

だって、どー考えても人間の進化より道具の進化のほうが早そうだもん。

こちらの TED スピーチでも、「義足ランナーがウサイン・ボルトを超える日」ってのがありましたが、

2020年の東京オリンピックはともかく、その 8年後くらいになれば、半分くらいの種目でパラリンピックのほうが記録が上、みたいになってくんじゃないかな。


そもそも機械が人間の能力をサポートするのは当たり前なので、今は、

・オリンピック=健常者が人間の力のみで戦う

・パラリンピック=障害者が人間と機械のコンビで、さらなる高みを目指して戦う。

しかありませんが、そのうち、


・○○ピック=健常者も障害者も、人間と機械のコンビで、さらなる高みを目指す戦い

なんてのがでてきたりしないのかな?


また、今のパラリンピックで使われている道具は、機械工学的、もしくは、素材工学的にベストを追求して作られたものに見えますが、

その車椅子にマイコンが付いたり人工知能がついたりして、「ボールの動きを自分で判断して動くテニス用の車椅子」とか、「グラウンドの状況に最適化して動く義足」とかが実用化された場合、

パラリンピックでも(今のオリンピックみたいに)先進的すぎる道具の使用を禁止する動きが出てきたりするんでしょうか?

これは、身体的なハンディを補うための道具は認められるけど、知的能力を補うための道具が認められるパラリンピックというのはあり得るのか、という話でもあります。


これまでパラリンピックは「障害者のスポーツの祭典」だったわけですが、

これからは、「機械にアシストされた人間の能力がどれほど凄いかを人間に見せつける場」になっていくのかもしれない。

リオデジャネイロ・パラリンピックは、このイベントの趣旨が大きく変わる転換点のような気もします。


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そんじゃーね!


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