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Chikirinの日記 RSSフィード

2017-07-08 勝手に失望し、勝手に裏切られる人たち

SNS 時代になって急増してるのが「勝手に失望し、勝手に裏切られる人たち」です。

これ、今も昔も思春期の子供にはたくさんいます。

もともと仲が悪かったわけではなく、以前はトイレに行くにも腕を組むような仲だったのに、突然「裏切られた! 許せない! 絶交する!」みたいになる。

理由は、この年代の子供たちが「親友には自分を 100%肯定してほしい」と期待するからでしょう。


思春期の子供たちは「自分の完璧な理解者」を探しています。

今まで「完璧に自分を理解し、受け入れてくれていた」親に代わる誰かを見つけるのが、この時期のミッションだからです。

そして彼らは親友だったり、心ときめく異性だったり、時には所在なげに街をうろつく自分にやさしく話しかけてくる見知らぬお兄さん(実は優しくない!!)にその役割を求めます。


けれど身も蓋もないことを書いてしまえば、世の中には「自分を完全に理解してくれる誰か」なんて存在しません。

ある面では気が合うとか、仕事では尊敬できるとか、こういう点では私とまったく意見が同じだとか、そういうのはあっても、大人になれば、「何から何まで同じ」だなんてことはありえない。

むしろ「その事実を受け止め、理解するのが大人」だとも言えます。(参考過去エントリ 「大人の条件とは?」)


しかし思春期の子供たちは、「すべてにおいて同じ意見だからこそ、◯◯ちゃんと私は親友なの!」と考えます。

そしてその中には、思いがけなく「意見が違う」「感じ方が違う」事態に遭遇した時、「なるほどねー、○○ちゃんと私は気が合うけど、こういうコトに関しては感じ方がこんなに違うのねー。へー」と大人になっていく人と、

「親友だと思っていたのに 許せない!」みたいに思ってしまう「まだまだ子供」な人が混在しています。

思春期とはそういう時期なのであり、後者が「いきなり裏切られ失望する」のは、世の中に存在するはずもない「完璧な自分の理解者」への期待(妄想)があるからです。


★★★


ネットの世界でも、有名人にたいして「◯◯さんがそんなこと言うなんて失望しました」「○○さんを尊敬してたのにがっかりです」みたいに言ってる人、よくみませんか?

これは「○○さんが嫌いです」とはまったく違います。最初から嫌いな人にたいして、私たちはわざわざコメントしたり話しかけたりしません。

「失望してる」人たちの多くは、「もともとは期待していた」んです。なのに裏切られた。だからショックを受けている。


裏切られ、失望した人は、相手を拒絶するだけでは気が済まず、時には悪態をつき、執拗に攻撃までします。

その際にも「嫌いです!」ではなく、わざわざ「大好きだったのに、こんなことするなんて許せない!」と表現する。

自分が相手に期待していたという事実。そして裏切られたという(本人にとっての)事実。だからこそ失望したという自分の受けたショック。

それらをどうにかして伝えたい。わかってほしい。切にそう願うから。


さらには、相手と自分の間には「相互理解」が成立していると思い込んでいるため、「少々攻撃的な言い方をしても、あの人ならきっと私の真意を理解してくれるはず」とまで考えます。

だからその「一方的な信頼に基づく乱暴な非難」が原因でブロックされたりした日には、それこそ一生をかけて恨み続ける。

客観的に見れば「会ったこともない人にそんな口のきき方をしたら、ふつー拒絶されるでしょ」っていう状態なのにね。


★★★


私は最近こういう人を「勝手に失望する人」「勝手に裏切られる人」と呼んでいます。

なぜなら彼らの大半は、自分を裏切った(と思い込んでいる)相手に会ったこともありません。

せいぜい SNS で一度リプライをもらった、というレベル。相手から見れば「あんた誰?」な状態です。


そんな状態でありながら「○○さんが不倫をするなんて信じられません!」とか言い出す。

正直、ある程度、仲の良い友達でも「あの人がそんなことをするなんて信じられない!」ことはよくあります。

ましてや、会ったこともない人が不倫しそうかどうかなんて、まったくわからんでしょ? 

会ったこともない人に「○○さんが△△するなんて信じられない!」などとまで言える「信頼」を、一体どうやって築いたのか? 


リアルな社会で私たちは、「会ったこともない人」にそんな期待は持ちません。

それがありえるのは冒頭に書いた思春期か、相手が意図的に妄想を持たせようとしている場合(身近系アイドルや営業上手のキャバ嬢&ホスト)だけです。

ところが最近はツイッターやインスタグラム、ブログなどネット上の情報だけで、相手にたいして「○○さんと私は完全に意見が同じ! この人は信頼できる!」と思い込める人が増えています。


SNS は妄想を育てやすいメディアです。

なぜならたとえ多くの情報に触れているつもりでも、実際にはリアルに会うのに比べ、圧倒的に情報量が少ないからです。

そもそもブログやツイッターに自分の生活や心模様の 100%を開示するなんて不可能だし、情報の出し手は意識的にも無意識的にも「他人に見せる自分」と「見せない自分」を分けています。

だからそこには、多くの「見えていない空白部分」が生じます。

読み手はそれを想像力で補うのですが、その想像が「自分を完璧に理解してくれる人が、広いネットのどこかには存在する」というネット万能神話と結びつくと、「妄想」に昇華(?)します。


その後はすべての情報が「自分として、こうあってほしいと考える相手の姿」を補強するために使われ、

どこかでひとつでも自分とは決定的に違う部分が見つかってしまうと、「あの人がそんなことを言うなんて!」と失望し、裏切られたと勝手に決めつけて怒り始める。


★★★


9割の部分で共感でき、1割だけ意見や感じ方が異なる人に出会うのは、リアルな社会ではそうそう起こらない“僥倖”です。

そんな人、なかなかいません。そこまで理解しあえれば、親友やパートナーや起業仲間になれるレベルです。

でもネットの世界では、9割は共感でき、1割だけ意見や感じ方が異なる人にたいして失望し、裏切られたと嘆き、怒りに駆られる人がたくさんいます。

彼らが求めるのは 9割の共感ではなく、10割の=完璧な共感だからです。

そして時には「裏切りを償わせよう」としたり「裏切り行為に気づかせて、反省させよう」と思ったりまでします。

こうなると完全な粘着ネットストーカー、もしくは炎上プロジェクトメンバーのできあがりです。

もちろん彼らの言い分としては、「期待していたのに、信頼していたのに」と伝えることで相手の猛省を促し、ふたたび自分の期待に応えてくれるよう、願っているだけなんでしょう。


★★★


こういう現象の根底にあるのは、「自分を完璧に肯定してくれる人、完璧に共感できる誰か」を探す人の多さです。

遠からずそういう期待に応える AI(付きロボット)が誕生するとは思いますが、少なくとも現時点でのリアルな世界では、そんな人は見つけられない。

だから私たちは、アイドルに、韓流スターに、二次元のキャラクターにそれを求めます。

それは何も悪くありません。

彼らは「商売」として(夢と称する)妄想を売り、客側もそれを理解してお金を払い、現実にはありえない甘美な世界を楽しむ。立派なエンタメ産業です。


でも、リアルには「自分の完璧な理解者」も「自分と完全に同じ意見の人」もいません。

たとえ SNS 上でそう思える人が見つかっても、それは単なる妄想です。

勝手に期待した挙げ句、勝手に裏切られ・勝手に失望する人になってしまうと、最悪の場合、「勝手に人間不信に陥る」「勝手に世の中に絶望する」みたいな不毛な状況に追い込まれてしまいます。


「目標は低く」持ちましょう。

すべての考えがあなたと同じ人などいません。

あなたの完璧な理解者など、世の中には存在しないのです。


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そんじゃーね


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