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Chikirinの日記 RSSフィード

2017-01-08 dietary requirements?

このエントリは昨年から続く連載シリーズの第五回です。

第一回 浅草から考える多文化共生

第二回 インバウンド観光にみるムスリムの可能性

第三回 B級グルメから神戸ビーフまで

第四回 産業政策としてのハラール認証


レストランでコース料理を頼むと、「なにか苦手なものはありますか?」と聞かれることがありますよね。

あれ、みなさんは何と答えてますか?


ざっくり類型化すると、

・「セロリが苦手です」と好き嫌いを伝える人

・「固いモノは避けて」と依頼する歯の弱い高齢者

・「エビにはアレルギーがあるのでダメ」と体質上、食べられない食材をあげる人など、かな。

とはいえ日本人の場合、「なんでも食べます!」と元気に(?)答える人が大半でしょう。


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(当エントリ内のご飯写真は私の食べたものですが本文とは無関係です)


以前、米国系の企業に勤めていたとき、海外で行われる会議や研修によく参加していました。

開催場所はアメリカ、欧州の他、シンガポールや香港、バンコク、上海などアジアでも行われ、参加者は世界中から集められます。

その際、参加者には「ホテルの部屋はいつからいつまで必要か?」、「空港からホテルまでの送迎手配は必要か?」「その場合はフライトスケジュールを記入せよ」などと書いてある手続き関連の申し込み書(今はウェブ上の申し込みフォームへのリンク)が事前に送られてきます。


この申込書には、もうひとつ必ず載っている質問があります。

それは dietary requirement について。直訳すれば「食事に関するリクエスト」です。

たいてい「 特別な手配が必要な場合は、遠慮せず記入するように」などと書いてあり、私はいつも「特になし」と答えていました。


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これ、レストランで聞かれる「なにか食べられない食材はありますか?」という質問と同じように見えますが、実のところ、その想定範囲はかなり違います。

少なくともこの質問に「私はトマトが嫌いです」などと答える人は存在しません。(たぶんね)


この質問の趣旨は・・・たとえばカリフォルニアやニューヨークには多くのベジタリアンがいます。

なのでそういうエリアでは、比較的、庶民的なレストランでも、ランチのチョイスにベジタリアンメニューがあったりするんです。

でも彼らが他国や他都市に行くと、必ずしもベジタリアンメニューは一般的でなく、なかなか手に入らない。

だからそういう人には最初から dietary requirement を申告してもらい、主催者側で準備をしておこうというわけ。


そういえば飛行機の中で選ぶ食事も、昔は「肉か魚か」のチョイスでしたが、今は「チキンかベジタリアンメニューか」みたいになってることが多いでしょ。

それくらい肉を食べられない人が増えてるってことなんです。


ベジタリアンだけではありません。国際会議などには、宗教的な事情から食べられない食材のある参加者も大勢やってきます。

その代表的なものが、今回の連載テーマでもあるハラール食しか食べないムスリムの人達なんですが、他にも食事制限を課している宗教は多々あります。

日本のお寺にだって、精進料理しか食べない宗派がありますよね。

宗教でなくても、動物愛護の観点や健康維持に関する独自の思想に基づき、食事内容に制限をもうけている人もいます。


下記の資料をご覧ください。

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(それぞれ個人や家庭による解釈差もあるため、一律すべてが厳密に表の通りというわけではありません)

この表は左から右に見ていきます。

たとえば一番上だと、「ベジタリアン食に豚肉以外の肉や魚を加え、アルコールを除く」と、ムスリムのハラール食の条件になる、といった具合です。

これをみると、ヒンズー教の人は牛肉と五葷の野菜(ニンニク、ニラ、ラッキョウ、タマネギ、アサツキ)を食べないとわかります。

日本の精進料理も五葷の野菜は使いませんよね。

あと、ユダヤ教の人はコーシャと認定されたものじゃないとダメ、ビーガンの場合は、肉だけでなく乳製品もダメ、など、その制約は様々です。


日本人の場合、レストランで「なにか苦手な食材は?」と聞かれても、「好き嫌いはありません。なんでも食べます!」的な回答をしがちですが、

国際会議の主催者から聞かれる dietary requirements の趣旨は、それとはかなり異なる(広い)意味合いの質問なのです。


ちなみにスペインのサッカー強豪チーム、レアルマドリードでは、ジダン監督を含め数人の選手ががムスリムです。

このため彼らが遠征で泊まるホテルや利用するレストランには、当然のことながらしっかりとしたハラール対応が求められます。

また、世界中からアスリートの集まるワールドカップやオリンピックなどでも、選手が利用する食堂や調理スペースにはハラール食の専用エリアが設けられます。


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日本では昨年の後半、IR = Integrated Resort(統合型リゾート)に関する法律が衆院で可決されました。

統合型リゾートの目玉はご存じ「カジノ」ですが、その賭博色を消すためにくっつけられたのが「国際会議場や展示施設」で、だから「統合型」と呼ばれています。

とはいえ国際会議の誘致に必要なのは、ドデカい会議場=ハコモノ、だけじゃないんですよね。


日本は何かというとすぐにハード面から入りますが、グローバル企業や国際的なイベントの主催者が開催場所を選ぶ際、なにより重視するのはソフト面の対応力です。

そこには、空港からのアクセス、周囲の観光資源、イベント運営に必要な英語の話せるアシスタントの雇いやすさなどに加え、様々な dietary requirements への対応力も含まれます。

たとえばユダヤ人が多く参加する会議を誘致するには、「コーシャに対応した食事が用意できるか?」が問われるし、

アラブやインドネシアの人に来て欲しいなら「どれほど充実したハラール食を提供できるか」が、イベント誘致競争上の大きなポイントになります。

なので国際会議を本気で誘致したいなら、「コーシャ? それなに?」とか言っていては話になりません。


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昨年行われたリオ・オリンピックでも、ハラール専用食堂が作られました。

こちらの記事によると、ブラジルの選手村担当者は、専門団体の指導を受けハラール食のためのキッチンや食堂スペースを完全分離。

そうして提供されたハラール食はムスリム以外のアスリートからも人気となり、その提供数を大幅に増やしたと書いてあります。

当然、東京オリンピックの選手村でもハラール専用食堂が作られるのだと思いますが、

その際には選手村の外にある街中のレストランにも、どれだけ多彩な dietary requirements に対応できるかが問われることでしょう。


ちなみに、先日のエントリで紹介したサムライラーメンは、ムスリムだけでなくベジタリアン、ビーガンまで食べられるように作られたグローバル(バリアフリー)ラーメンです。

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「みんなで食べられる、みんなで同じ食卓が囲める」というのは、第一回エントリで紹介したセカイカフェや、今回の取材を受けてくださっているハラールメディアジャパンが理想とする世界観なんだとか。

そういえば今は日本でも、子育て世帯の多い地域のスーパーマーケットにおいて、小麦、卵、牛乳など、子供に多い食物アレルギー源となりうる食材が含まれているか否か、シールでわかりやすく表示してあったりします。

さらに最近は高齢者向けの団体旅行でも、糖尿病の人向けの特別食や高血圧に配慮した減塩料理を用意しますとうたっているツアーがあったり、

食材通販の中に、咀嚼力の弱った高齢者向けの柔らかい食事が提供されていたり・・・。


そう考えれば「なんでも食べられる」が普通であって、「食べるものに制限がある」のが特別、ってことでもないんですよね。

それぞれの人にそれぞれの理由があり、食べられないもの、食べられるものがある。

そういうことを「あたりまえ」に受け入れられる都市になっていくことが、

少なくとも国際都市を目指し、海外から多くの観光客や国際会議を誘致したいと考えている国にとっては、最低限、必要なインフラになっていくのでしょう。

てか、それもできずに、お・も・て・な・し とか言われてもね。


大イベントの時だけじゃありません。

職場にだっていろんな国の人が増えれば、社員食堂も対応が必要。もちろんオフィス周りのレストランにとっても大きなビジネスチャンスです。

これからは「なんでも食べられる人」だけのためではない食コミュニティが、ごく普通のように存在する社会になっていきます。

東京オリンピックまでの 3年間に、街のレストランや日本の食産業がどれほど「食の多様性」に対応できるようになるのか。

大きな変化が起こることを楽しみにしています。


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そんじゃーね。


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