12月6日の第九回文学フリマに参加します。

入稿が終わり、あとは当日を待つだけとなりまして、そろそろ告知しようかなと。
文学フリマ | 小説・評論・詩歌 etc.の同人/商業作品展示即売イベント
スペースはA-11「幻視社」
会場は京急蒲田駅近くの大田区産業プラザPIOです。私はこの会場、まだ一度も行ったことがありません。

今回の幻視社は第四号、通算五冊目、始めてから六年目となります(一回落ちた)。いつものテーマ特集は「みえないもの」。そして同時に「特集 追悼 向井豊昭 1933〜2008」という二段構成となっています。

前回の雪辱をはらし、今度はフルカラー表紙です。

イラスト・デザインはいつもの狩野若芽氏。
第一特集「見えないもの」は、三つの小説と二つの評論で構成。
そして要注目は特別企画「向井豊昭特集」です。これはちょっと異例なので説明します。
向井豊昭 - Wikipedia
向井豊昭氏については以前このブログでも扱ったことがあります。
向井豊昭「怪道をゆく」 - Close to the Wall
北海道から東京に移り、アイヌや言語、権力について書き続けたアナーキーで方法的な小説家です。早稲田文学新人賞を史上最高齢の62歳で受賞し、蓮實重彦中原昌也などにも賞賛され、「BARABARA」「DOVADOVA」「怪道をゆく」などの著作があるのですけれど、去年惜しくも亡くなられました。

この「向井豊昭特集」ではなんと、生前親交のあった岡和田晃氏(id:Thorn)の伝で、ご遺族の許可を得て、「早稲田文学」に保管されていた向井氏の遺稿を借り受け、そこから選んだ未発表短篇を三篇掲載しております。どこの文芸誌でもいまだ行われていない、向井豊昭特集です。文業に比してあまりに知名度の低いこの状況に少しでも穴を開けたいと願います。上記記事でも書きましたが笙野頼子ファンにも強くオススメしたい。

話を戻して、とりあえず目次を。

●テーマ特集 見えないもの
 ――小 説――
服部半蔵  柿崎 憲
バカと世界の物語  エンドケイプ
週刊基地外  佐伯 僚
 ――評論・雑文――
「世界劇場」から外れた演技者ジュヌヴィエーヴ
――ジャック・ヨーヴィルドラッケンフェルズ』と「流血劇」についての試論
   岡和田 晃
見えていても見えない  東條 慎生
 ――テーマ外・小説――   
Trois contes 
渡邊 利道

●特集 追悼 向井豊昭 1933〜2008
 ――未発表小説――
パパはゴミだった。
40代バンバンザイアットホームカウンセリングコーポレーション(1)
六花

 ――論考・エッセイ――
見えないものこそ、見つめなければならないのだ
――向井豊昭メモ
  東條 慎生
「わたしは誰の命令も受けてはいない。わたしを貫く、歴史の声に突き動かされているだけ」
――向井豊昭論序説
  岡和田 晃
向井豊昭氏からの書簡について  岡和田 晃
付・向井豊昭著作リスト

およそ、テーマ特集と向井豊昭特集でページ数を半々という感じになりました。表紙合わせて計120ページの幻視社史上最大ボリュームでお送りします。


メンバー紹介を。
巻頭の柿崎憲さんは今回初参加です。岡和田さんの紹介で書くことになったんですけれど、彼の自己紹介で、こんなブログを書いてます、と提示されたのが
脳髄にアイスピック
これだったのでやたら驚きました。岡和田さんもこんなの書いてたのか、とひとしきり驚いてました。あなたも知らなかったのか、と。
そんな脳髄の火星さんことid:Lobotomyさんは津原泰水が好き的なことを言っていたのでどんなのかなと思ったら送られてきたのは田中哲弥だったという顔になる頭のおかしい短篇でした。
エンドケイプさんは電子出版で三冊の小説が販売中のモノカキさん。イラストも描いていて、ブログではいくつかのキャラクターが見られます。そのうちのひとつは東京国際アニメフェア東京都行政書士会ブースのキャラクターに採用されたとか。
ちなみにWikipediaに記事があります。すげえな。
エンドケイプ - Wikipedia
旧ブログby Ameba
作品も携帯小説的な女性一人称から見た、現実の形、を書いています。
佐伯僚さんは当誌皆勤で書いていますね。携帯小説でいくつも作品があります。切通理作著『サンタ服を着た女の子』(白水社)にてフォトストーリーとコラムを執筆。

サンタ服を着た女の子―ときめきクリスマス論

サンタ服を着た女の子―ときめきクリスマス論


読書の時間 - 佐伯ツカサ
ここから作品が見られます。
小説は、彼女らしい頭のおかしい人の饒舌な文体が楽しい一篇。

評論の岡和田晃さんはid:Thornさん。前回から参加の批評家さんです。(テーブルトークRPG、翻訳、文芸批評をメインに、それらを横断した視点からの議論が面白い。

ガンドッグゼロ リプレイ アゲインスト・ジェノサイド (Role&Roll Books) (Role & RollBooks)

ガンドッグゼロ リプレイ アゲインスト・ジェノサイド (Role&Roll Books) (Role & RollBooks)


社会は存在しない

社会は存在しない


Amazon.co.jp: 岡和田 晃: 本
SF乱学講座 岡和田晃 - 「「ナラトロジー」×「ルドロジー」――新たな角度からSFを考える」 - Close to the Wall
今回の評論は、ジャック・ヨーヴィル、という「ドラキュラ紀元」作者キム・ニューマンの別名義で書かれた、RPGウォーハンマー」の世界観をもとにした吸血鬼ものの小説「ドラッケンフェルズ」論を書かれています。この小説は面白そうです。
ウォーハンマーノベル ドラッケンフェルズ (HJ文庫G)

ウォーハンマーノベル ドラッケンフェルズ (HJ文庫G)

私のは下條信輔「サブリミナル・マインド」とクリストファー・プリースト「魔法」について書いた記事を再利用し、オリヴァー・サックス「妻を帽子とまちがえた男」と「火星の人類学者」からの紹介を加えたブログ再編記事となっています。手抜き臭いですね。

テーマ外小説、というのはその名の通り、テーマとは特に関係ないながらも無理矢理載っけた作品です。直前まで載る予定は無かったのですが、渡邊利道さんのせっかくの寄稿を無駄にはすまい、とちょっと不格好な位置ではありますが、ねじ込んでみました。
渡邊利道さんはid:wtnbtとしてはてなでも書いています。驚くほどの教養と批評眼です。小説は三つの物語で構成された掌編集。なんというか、話は冷たくないのに冷徹な眼差しが背後に光っている、そんな印象です。


向井豊昭特集
ここでは、向井氏の遺稿から三篇を掲載。
「パパはゴミだった。」は死んだ父親とキツネの変化と秩父困民党、そして東北方言でできた短篇で、アイヌ、北海道こそ出てきませんが、非常に向井氏らしいアプローチの作品です。
「バンバンザイ〜」は親子三人の家庭をコミカルに描いた連作の第一章で、子供向けに近い体裁で、リストラが吹き荒れる社会に抵抗する意気を見せています。ちょうど小泉純一郎首相の時代が背景です。
「六花」掌編といっていい短さで、哀しい調子の詩的な作品。
と、30ページほど未発表原稿が掲載しています。単行本のものしか知らない読者には意外な、しかし教員生活の長かった向井氏らしいと感じることのできる興味深い作品だと思います。
次の向井メモは、向井氏の小説作品の概説的な特徴をいくつかの作品を例示して眺めてみたものと、向井氏の全単行本(自費出版も含む)および、同人誌掲載作などを読んでの簡単なコメントとの二部構成の著作解題です。「早稲田文学」などに載った膨大な雑誌掲載作はそのごく一部しかふれられておらず、網羅的なものにはまだ遠いのですが、自費出版ものや氏の自作同人誌「Mortos」等を入手できていない読者の方には貴重な情報が含まれているかと思います。
岡和田氏の「向井論序説」および「書簡」は、簡潔な向井論の素描と、向井氏と岡和田氏のあいだでやりとりされたメールを遺族の許可を得、一部抜粋、紹介したものです。未発表エッセイのようなものとしてどうぞ。

これに限らず、向井豊昭の膨大な単行本未収録作品と、未発表原稿がまとめられないものかと思うことしきりです。この特集がその一助となれば良いのですが。

本誌にも書きましたが、このような同人誌に許可をくださった遺族の向井恵子さま、向井流さま、ならびに原稿を保管してくださっていた市川真人さま、「早稲田文学」編集部さまに、ここに感謝致します。

幻視社通販について

すでに要望を頂いていますので、通販について書いておきます。
こちらのメールアドレス(「あっと」を@にかえてください)に
inthewallあっとking-postman.com
欲しい号と数量、送り先の住所を連絡してください。
数日中に発送します。代金はこちらから口座番号を返信しますので、そちらに代金を振り込んで頂くかたちになります。振り込み手数料はそちら持ちでお願いします。かわりにといってはなんですが、送料は頂きませんので、本の価格500円のみを振り込んで頂ければ結構です。
ただし、梱包に気を遣いませんのでご注意ください。