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Close to the Wall

2010-10-15

[][]もっと素人による進化論、進化生物学のお薦めの本

俺みたいな文系素人が進化論を面白がるための約20冊 - 万来堂日記3rd(仮)

という記事があって、これは非常に面白く読んだ。のっけから四連続で読んだ本が出てきていて、全二十一冊(上下巻はひとつとカウント)のうち、自分も読んでいる本は六冊くらいだったけれど、それらは自分でもかなりオススメだと思っている本だったので、これはとても参考になりそうだ。とりあえず木村資生の本は買ってきた。

上掲記事の旅烏さんは素人といいながらもずいぶん読んでいて、ここで紹介されていない膨大なバックボーンがあるかと推測される。恥ずかしながらはるかに素人の私も屋上屋を架す、というよりも屋根の下に屋根を作る勢いでより素人目線の、自分なりのお薦め本を並べてみたい。

自分でも読んでいてオススメの進化論生物学関係で既に記事を書いているものにリンクする。

長沼毅「深海生物学への招待」 - Close to the Wall
スティーヴン・ジェイ・グールド「ワンダフル・ライフ」 - Close to the Wall
リチャード・フォーティ「生命40億年全史」 - Close to the Wall
サイモン・コンウェイ・モリス「カンブリア紀の怪物たち」 - Close to the Wall
アンドリュー・パーカー「眼の誕生」 - Close to the Wall
リチャード・ドーキンス「盲目の時計職人」 - Close to the Wall
ジェームズ・ローレンス・パウエル「白亜紀に夜がくる」 - Close to the Wall
マット・リドレー「やわらかな遺伝子」 - Close to the Wall
スティーヴン・ジェイ・グールド「ダーウィン以来」 - Close to the Wall

特にカンブリア大爆発ものの「眼の誕生」は名著だと思うんでオススメ。ただ、これを読むにはやはりグールドコンウェイ・モリス、と順に読んでいくのが良いと思う。グールドのものは理論的には疑問ありとはいえ、基礎的な部分を詳しく具体的に述べていて、他のこの手の本を読むときの参考になる部分が多いので。

マット・リドレーのものはこれしか読んでないのだけど、遺伝子の働きについてのえらい面白い本。その人を形作るのは遺伝か環境かという古来からの問題について、遺伝子が実際にはどのように働くのか、ということを通して答える。

白亜紀恐竜絶滅についての本は、ある学問の前提が転換する過程を描いていて面白い。古生物学の白熱のドキュメントだ。それまでの前提を突き崩す新発見の過程を描いたものとしては、生物学ではないけど、それまでまるで発見されずにいた系外惑星が続々と見つかる様子を扱った井田茂の「異形の惑星」がアツい。

異形の惑星―系外惑星形成理論から (NHKブックス)

異形の惑星―系外惑星形成理論から (NHKブックス)

ドーキンスのはまだこれしか読んでいない。面白いけど結構ハードな本なので後回しでも良いか。しかし、早川はなぜドーキンス本をどんどん文庫にしていかないのか。どれも高くてでかいので困る。

個人的に特に薦めたいのは長沼毅の一連の著作。

生命の起源と地球外生命の可能性 - 長沼毅「生命の星・エウロパ」 - Close to the Wall
長沼毅、藤崎慎吾 - 辺境生物探訪記 - Close to the Wall

極限環境微生物の探求は、生命の起源の探求でもあり、地球外生命の探求でもあるという長沼氏の姿勢はとってもワンダー。ハオリムシは江ノ島水族館に見に行った。深海生物については北村雄一による以下の本がある。進化というより生態を追った本だけど写真等がフルカラーなんでオススメ。

ブックマークのコメントでも言われているけど、本家ダーウィン種の起源は最近新訳が出た。これ、買ってはあるのだけどまだ手を付けていない。これも読んでいないけど訳者による新書も出ている。「眼の誕生」の訳者でもあるので、「光スイッチ説」が紹介されている模様。

種の起源〈上〉 (光文社古典新訳文庫)

種の起源〈上〉 (光文社古典新訳文庫)

種の起源〈下〉 (光文社古典新訳文庫)

種の起源〈下〉 (光文社古典新訳文庫)

ダーウィンの夢 (光文社新書)

ダーウィンの夢 (光文社新書)

長谷川眞理子 - 進化とはなんだろうか

ブックマークコメントで、やや専門的では、という意見があった(私も読んだものに関してはそうでもないと思う)けど、ちょうど先日非常に面白い入門書を読んだのでこれをオススメしたい。

進化とはなんだろうか (岩波ジュニア新書 (323))

進化とはなんだろうか (岩波ジュニア新書 (323))

長谷川氏は行動生態学専門家で、著書にも動物関連のものが多く、特に性について書いたものが多い。私はまだこれだけしか読んだことがないけど、かなり有名な人。

岩波ジュニア新書、ということで何にも知らないところから入っていける。ジュニア、というけれど、このシリーズは昔習ったことなんか綺麗に忘れてしまったという大人が読んでも充分満足できるレベルだったりして、とっても役に立つ。

本書冒頭で長谷川氏は、「進化論」と呼ばれていて、個人の意見であるかのように聞こえるけれども、これは既にれっきとした現代生物学の一部、というより「現代生物学を統合する総合的な理論」だと述べ、「進化生物学」と呼ぶべきだと主張している。まあ、すでに「進化論」という呼び方がが人口に膾炙してしまっているので難しいところはあるけれども、すでに確立した学問だと言うところはおさえておきたい。

内容は行動生態学者らしく、その点を重点的に述べていて、古生物などについては述べていない。適応と自然淘汰についてが主題。有名な「フィンチの嘴」などについても紹介されている。自分はこれを読んで、今まで読んできたものが古生物学に偏っていたのに気づいた。

面白いのは、いくつかの場面でゲーム理論や数式をもちいたアプローチをしていることだ。鳥が餌をどう集めるか、という研究では、遠さの違う餌場を用意し、鳥がどれだけその餌場に滞在するか、というのを計測している。餌場では長く滞在するほど餌の獲得量が減っていくので、距離と滞在時間を考慮して最適の回り方をしなければならない。この距離と滞在時間を数式化し、ある条件下でどう鳥が行動するかを予測し、そしてその数式の予測通りに鳥が行動することが確認される。つまり、仮説と検証の科学的モデルだ。しかし、動物はずいぶん合理的に行動するんだなぁと。

同じことは行動だけではなく、進化についても行われている。環境の異なるいくつかの小さな島にトカゲを放し、十年、十四年後にどのような変化が起こったのかを検証した実験がある。この結果、小さな枝が多い場所では小回りのために後ろ足が小さくなり、大きな枝や幹があるところで暮らす群れでは後ろ足が大きくスピードを出せるようになっていた。これは実験前に他の研究で明らかにされていて、実地に実験することで検証された例だ。

進化論というと、歴史のように実験の出来ない科学的でない学問、という偏見が時にみられるけど、本書を読めば進化は人為的に起こすことの出来る現象で、実験により再現可能なものだということが理解できる。


長谷川氏は生物が多様な種をもち、さまざまな形態、生態を持っているのは何故か、という基本的な疑問は、この「進化」ということなしには解けない疑問だという。彼女は現代遺伝学の基礎を築いたテオドシウス・ドブジャンスキーの次の言葉を引いている。

生物学のどんな現象も、進化を考えに入れない限り意味を持たない

長谷川氏は終盤こう書いている。

ドブジャンスキーが言うように、進化の考えを抜きにしては、生物学の知識はただの寄せ集めにすぎません。進化を考えてこそ、生き物の構造、生理、生活史、行動、生態、多様性などのすべてが意味あるものとして見えてくるのです。223P

進化というメカニズムを考えることで、目の前の生き物が、なぜいまそうあるのか、ということを考える筋道を与えるということ。進化という考えを知ると、すべての生き物が魅力的な謎に見えてくるということを体験できる。

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