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Ctenophoraの日記

2008-09-24

メラミン - Melamin - その背景と毒性 11:41

http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/0/05/Melamine.svg/150px-Melamine.svg.png

食品に含まれるタンパク質量を偽装するために、牛乳製品などに混入されていることが指摘されてきている。特に2007年アメリカで発生したペットフードのメラミン混入によるペットの大量死が2008年に発生した食品への混入の前哨として解析されている。 American Chemical Society による報告をベースに関連情報を整理した結果をここに記す。

一次情報

JBWEB000065: HTTP Status 404 - /iapps/landpage

メラミン偽装の背景

タンパク質量を定量する方法として ISO 標準となっている事実上の de facto はケルダール法 (Kjeldahl method) と呼ばれる3価の窒素を検出する手法である。一世紀以上も検査法として利用されて来たという実績があるが、タンパク質に含まれている窒素かどうかは原理的に調べることはできず、アミノ酸の一次配列の特性によっては定量性が低下することも原理的に想定される。

タンパク質定量法であるケルダール法とその性質

この検査方法の欠点を悪用する形で、メラミン (1,3,5-Triazine-2,4,6-triamine or Cyanurotriamide) という有機窒素化合物が食品中のタンパク質量を偽装するために利用された。

メラミンの毒性に関する仮説

結論から言うと、メラミンおよびシアヌル酸の複合体がpH中性条件で存在することにより、急性腎不全を引き起こされる、という理解になっているようだ。

下記の論文の筆頭著者は、メラミン結晶の析出が腎不全の原因の一部になっているだろうとコメントしている。

Assessment of melamine and cyanuric acid toxicity in cats

Journal of Veterinary Diagnostic Investigation 19, 616-624 (2007)

Abstract 抜粋

No effect on renal function was observed in cats fed with melamine or cyanuric acid alone. Cats dosed with a combination were euthanized at 48 hours after dosing because of acute renal failure. Urine and touch impressions of kidneys from all cats dosed with the combination revealed the presence of fan-shaped, birefringent crystals.


The kidneys contained estimated melamine concentrations of 496 to 734 mg/kg wet weight and estimated cyanuric acid concentrations of 487 to 690 mg/kg wet weight.

仮説提出に至る過程

http://pubs.acs.org/cen/_img/86/i19/8619sci3scheme.gif

2007年のアメリカにおけるペットフード禍では、 FDA と Cornell University はそれぞれ独立にメラミンの混入を同定、Cornell University の研究者が症状を示したペットの尿および腎臓のサンプルからメラミンを検出したと報告した。特に FDA Forensic Chemistry Center (FCC) では (質量分析DART/MS) を用いて同定を行ったそうだ。

DART’s real strength, however, is in analyzing surfaces without sample preparation. All of these analyses take place at atmospheric pressure, so no vacuum is required.

さらに、ラマン分光、赤外線分光を FFT してスペクトル解析を行い、 DART および GC-MS でメラミンの存在を確認したらしい。さらに、シアヌル酸 (cyanuric acid) も検出されたと ACS のウェブにはある。

R. Duane Satzger, director of the organic branch of the agency's Forensic Chemistry Center in Cincinnati によると、タンパク質総量に占める混入量は質量換算で 25% だったらしい (これが、どの製品なのか、25% が平均なのか、どのような統計量なのか、SD はいくつかなどの情報の記載はない) 。

そして培養細胞系での実験などを経て、上述の論文が提出されるに至った。

蛇足

http://omlc.ogi.edu/spectra/melanin/melaninstruct.gif

ちなみにメラニン (Melanin) は色素であり、有機窒素化合物ではあるが構造が異なる。

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2008-09-22

Hand held CLSM!! 11:26

ペンシル型プローブ式の共焦点レーザー顕微鏡システムというなんだか信じられないものが販売されているようだ。販売元はプライムテック株式会社、資本金は5千万円、設立から20年。

プローブの構造

http://www.primetech.co.jp/up_images/scanner-J-s.jpg

レーザー光の投射と蛍光の検出用に単一光ファイバーを使用し、スキャナーによるX・Y軸方向への光ファイバーの調節には音叉を、Z軸方向への調節には深度調節部を有しています。

スキャナー・対物レンズ等を極小化してプローブ内に内蔵することによってプローブ交換が不要となり、小型プローブでありながら広視野・高解像度な画像取得を実現しました。

対物レンズの性能が記されていないので、どの程度まで集光可能なのかが気になるところ。NAのデータくらいだしてくれてもいいのに。

ガリバノミラーではなく、音叉でファイバーを操作するって一般的なのかな。共焦点で音、というとAOTFが浮かぶけどこちらは励起側の波長制御機構だし...。

しかしながら、

475×475μmの広視野を維持しながら、水平方向0.7μm・垂直方向7μmという高解像度の共焦点顕微鏡観察がリアルタイムに実現します。

という微細領域を撮影するのに、本当にハンドヘルドで大丈夫なのか?通常CLSMでの観察は除振台上でないととてもできないんだけどなぁ。

蛇足ながら共焦点て、非接触で距離を測るのにも使えるのね...。

KJKJ 2008/09/25 15:17 面白い機械ですなー、メラミンついでに見てたらこの前の話題のもまとめてたんですね。
ほんとかわからないけど、結構綺麗に取れてますね。どこまで暗いサンプルでもいけるのか気になります。

CtenophoraCtenophora 2008/09/25 16:02 一度、デモに来てもらうといいかもね。こちらの系で使うのは難しい可能性が大きいけど。

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2008-09-19

人工遺伝子合成と遺伝子組み換えの利用 10:42

ウィルスやバクテリア由来のタンパク質を生物を制御するための道具として利用し、生命現象を解析することが比較的容易になってきている。特に、NCBI に集積されている DNA 配列のデータベースDNA の機能に関する文献の情報を基に、目的とする機能を抽出して実験をデザインするための資金的および時間的コストが大幅に短縮されている状況を鑑みると、今後このような方法論は一般的になっていくだろう。

人工遺伝子合成に関して、海外のサービスと日本国内のサービスを比較すると2-3kb程度の長鎖DNAでの一塩基あたりのコストが日本は海外よりも3倍程度高い ($1 = 106円として換算)。


機能性DNAの一例として Exocytosis を止める TNT light chain

TNT light chain CDS


Reference

Tetanus toxin light chain expression in Sertoli cells of transgenic mice causes alterations of the actin cytoskeleton and disrupts spermatogenesis.

Eisel U, Reynolds K, Riddick M, Zimmer A, Niemann H, Zimmer A.

EMBO J. 12, 3365-3372 (1993)

Cleavage of members of the synaptobrevin/VAMP family by types D and F botulinal neurotoxins and tetanus toxin.

Yamasaki S, Baumeister A, Binz T, Blasi J, Link E, Cornille F, Roques B, Fykse EM, Südhof TC, Jahn R, et al.

J Biol Chem. 269, 12764-12772 (1994)


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