静寂を待ちながら

お笑い、テレビ、ラジオ、読書

あなたの「ヴォイス」はありますか?

先日、この本を再読しました。

現代霊性論

現代霊性論

(装画は井上雄彦さん)

タイトルからして、一見、怪しげに感じられるかもしれません。
しかし、内容は宗教前史論・民俗学、埋葬史、それから日本の現代宗教観に渡るまでを分かりやすく語った、対談形式の思想本です。


この中の一節に、心が揺さぶられました。

内田

「『クローサー』という映画で、新聞記者(ジュード・ロウ)がロンドンの街で出会った少女(ナタリー・ポートマン)に、「仕事は何やってるの?」と訊かれる場面があります。
「新聞記者」と答える。
「何を書いているの?」「死亡欄」。


で、そんな仕事が面白いのかと聞かれると、こう答えるんです。


「僕はほんとうは作家になりたいいんだけど、まだ自分のヴォイスが見つからないんだ」


この「自分のヴォイスが見つかる/見つからない」というのは、僕にはすごくよくわかる。
村上春樹さんも書いていたけれど、作家の条件というのは、自分のヴォイスが見つかるかどうかにかかっている。
自分のヴォイスを探しあてたら、あとは無限に書ける。


ヴォイスというのは、なんとも他にいいようがないんですけれども、語法、口調、ピッチ、語彙、語感などが全部含まれると思うんです。
そのヴォイスを見出すと、言葉が流れるように出てくる。


ヴォイスが見つからないと、何を語っても、どこかでつっかえてしまう。あるいは、出来合いのストックフレーズを繰り返す以上のことができない。
ヴォイスで語ると、たとえばほとんどがストックフレーズで出来ている文章を書いても、そこにまったく違う、何か活き活きとしたものが感じられる。」


(同著 「質問の時間」 P.271〜272 より 抜粋)

わかり過ぎるほど、わかる言葉です。

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