2008-10-07
南部陽一郎氏がついにノーベル賞を受賞された!!
しかもずっと取ると言われていた小林、益川氏との共同受賞とは。南部陽一郎氏がノーベル賞を取れなかったらノーベル賞の意味がないと思っていたので本当に嬉しい。南部先生は物質の質量の起源となるヒッグス機構のアイデアとなる自発的対称性の破れのアイデアを素粒子に初めて持ち込んだ人なので恐らくLHCでヒッグス粒子を見つけない限りはもらえないと思っていたのだが、もしかすると高齢なんでかつてのランダウのように健康上の理由ということもあるのかもしれない。南部陽一郎は預言者のような研究者で、皆が注目する前に一人何かを切りひらいていくタイプという印象を持っている。量子力学のDiracと似たイメージの人。クォークに色を導入したのもこの人だ。僕が研究しているストリング理論の発見にも関わっている。ごく最近流行しているM2ブレーンを記述する南部ポアソン括弧も大昔に南部陽一郎が物理に導入したものだ。インタビューで益川氏が自分の受賞より南部さんが受賞されたことが嬉しいと言っていたのは照れもあるだろうが本心だと思う。ちなみに彼らの業績はCPの破れを記述する小林・益川行列というものを導入しクォークの第3世代の存在を予言したことである。彼らの業績をあわせると現在の素粒子論の全貌がみえてくるようになっている。
Amazonのレビュー
恐らく素粒子やってた人だと思うがAmazonのωという人のレビューがとても面白い。
http://www.amazon.co.jp/gp/cdp/member-reviews/A1Q9J89W6FW183/ref=cm_aya_bb_rev
EMANの「趣味で物理学」を誉めているのに「趣味で相対論」は酷評している。
「趣味で物理学」は大学で物理に面食らった人が読むのに良い本だと思うが「趣味で相対論」は何が悪かったのだろう。竹内薫関係の本については自分も同感。ループ重力の本は酷すぎたのでお茶部屋に置いてきた。でも難しい問題を説明してやる!という意気は良いと思う。
南部・小林&益川は何をしたのか
家族で祝杯をあげてきました。記念に自分なりに解説をしていきたいと思います。思いつくままに書くのでかなり長くなるとおもいます。小さく分けて小出しに書いていこうと思います。間違い思い込みなどが多いと思いますので訂正お願い致します。
結論から
彼らの業績を先に書いておくと、
南部氏‥質量の起源を説明する自発的対称性の破れを素粒子に初めて導入した。このアイデアは後にヒッグス機構として素粒子の標準模型に組み込まれた。
小林氏・益川氏‥CP対称性の破れを説明するモデルを作り、そのために素粒子で初めてクォークの第3世代の存在を予言した。
です。これらの業績を知るためには、現状の素粒子の標準模型と呼ばれている理論を理解しなければなりません。
参考文献
今、手許にないのですが南部氏自身が書いた名著
クォーク―素粒子物理はどこまで進んできたか (ブルーバックス)
があります。数式抜きで素粒子論の概要が把握できる良い本です。
素粒子といわれているものは何か?
現在、素粒子と言われているものが何であるかをまず整理しましょう。
まず、素粒子とはこれ以上分割できないものである。と考えてください。
以下はよく説明があると思いますのが簡潔に書いてみます。
原子 = 原子核 + 電子
原子は、原子核と電子でできています。原子核と電子は電磁場(電磁場の波が電磁波、光です)によって安定に繋がっています。
安定に繋がっているといっている意味は、太陽系が惑星と太陽からできていて、重力場(重力、万有引力)によって安定に廻っているという意味と同じようなものと捉えてください。
電子はこれ以上分割することのできないものです。→電子は素粒子!
原子核 = 陽子 + 中性子
原子核は陽子と中性子からできています。陽子と中性子はπ中間子等(湯川秀樹が予言した粒子です)によって安定に繋がっています。
ミクロの世界は波と粒子 中間子?
(中間子はハドロンとも呼ばれます。陽子、中性子はメソンとも呼ばれます。)
●子というのは粒子によくつかう名前の付け方です。さて、今まで、重力場、電磁場といっていたのに、なぜ、陽子と中性子は中間子という●子をつけた名前で呼んでいるのでしょうか。
どんどん分割して小さくしていった場合、世界を記述する力学が通常の力学(ニュートン力学ともいう)から量子論という小さなものを記述する力学(量子力学ともいう)に変化します。
ミクロの世界は波と粒子2 相補性
量子論の最大の特徴は通常の世界では粒子、物質の性質を持っていたものが波の性質を持ちはじめ、波の性質をもったものが粒子の性質を持ち始めるということです。これを波動性と粒子性の相補性と呼びます。
ミクロの世界は波と粒子3 光子と重力子
つまり、ここで中間子といっているものも場であると考えて中間子場といっても良い訳です。
ちなみに電磁場(電磁波)から出てくる粒子性を光子
重力場(重力波)から出てくると期待される粒子性を重力子と呼びます。
陽子、中性子、中間子 = クォーク
陽子、中性子、中間子はそれぞれクォークからできています。陽子はクォーク3個、中間子はクォーク2個からできています。クォークはお互いにグルーオンと呼ばれる粒子で繋がっています。
クォークやグルーオンはこれ以上分割できていません。→素粒子!
小まとめ
物質を分解していくと
電子
クォーク
と
力にまつわる(繋ぎとめるのにつかわれている)粒子である
重力子(これは小さすぎるので今回の主役ではありません。グラビトンとも呼びます。)
光子(フォトンとも呼びます)
グルーオン
に分解できました。
しかしこれだけで話が済まないのが素粒子の謎です。
波って何が揺れているの?→場
さて、ミクロな世界では波が粒子性を持ち、粒子が波動性を持つということを言いました。
いわば、すべてのものが波動性を持っている世界です。
そうすると、この様々な波を作っているものは一体何かということが疑問になると思います。
それを「場」と呼ぶことにしましょう。水の波があらわれる「場」は水面であるようにです。
先ほどの力に関しては次のようになります。
光子 → 電磁場(この量子論を量子電磁気学 QEDと呼びます。)
グルーオン → SU(3)ヤン-ミルズ場(この量子論を量子色力学 QCDと呼びます。強い力とも呼ばれます。)
重力子 → 重力場 (アインシュタインの一般相対論です。これは重力子や量子論は完成していません。)
足りないもの‥弱い力、ニュートリノ、ヒッグス!
今、説明した素粒子の枠組み、クォークとグルーオン、電子と光子だけでは足りない要素があります。それが弱い力、ニュートリノ、ヒッグスです。南部氏と小林・益川氏の業績もこれらと深く関わっています。
南部・小林&益川は何をしたのか2
陽子、中性子はクォーク3個からできている。
前回の補足を書いておきます。
陽子、中性子はクォーク3個からできていると述べましたが、
クォークにも種類があり、それぞれアップとダウンという二つのクォークがあります。
陽子はアップクォーク2個、ダウンクォーク1個
中性子はダウンクォーク2個、アップクォーク1個
で構成されています。
ということはアップクォーク3個とか、ダウンクォーク3個で成り立つ粒子もあるんじゃないの?
と思ってしまいますが実際にはあります。これらクォーク3個からできる粒子をまとめてバリオンと呼びます。
ニュートリノ
前回の話で原子核は陽子と中性子からできているという話をしました。
この中性子と陽子は良く似ている粒子であり、中性子が崩壊して陽子と電子に崩壊(β崩壊)することが確認されていました。しかし、中性子、陽子、電子だけでは実験結果ではエネルギー保存の観点から出てくる結論と実験結果とのつじつまがあわないことがわかり、失われたエネルギー分の粒子を持つほかとあまり相互作用を起こさない粒子があることが予言されました。これがニュートリノと呼ばれる粒子で、ニュートリノが他の粒子と行う相互作用として弱い力(相互作用)の存在が提案されました。
ニュートリノはこれ以上分割できていません→素粒子!
中性子 → 陽子 +電子 +(反)ニュートリノ
(反)とつけたのはここで放出されるのはニュートリノの反粒子と呼ばれるものだからです。反粒子とは何でしょうか。
反粒子とは何か
反粒子とは通常の粒子の持つ質量以外の性質(電荷等)を反転させたものです。
反粒子の発見は電子を記述するディラック方程式の発見によってもたらされました。
ディラックは自身のディラック方程式によると電子には正のエネルギーを持つものと負のエネルギーを持つ粒子の2種類が存在しないといけないことを発見しました。
物理的に許されない負のエネルギーを許さないために、ディラックは次のような発想をします。
空間は負のエネルギーを持つ電子で満たされている(ディラックの海)。我々は正のエネルギー、もしくは負のエネルギーの電子の存在しない欠損(空孔)のみを観測できる。この欠損は電子とは逆の電荷を持った粒子のように振舞う。
このような空孔は陽電子(反電子)と呼ばれ後に実際に発見されることになります。光に対する影のような存在ですから性質が逆なわけです。
例えば、次のようなことが考えられます。
ある高エネルギーの光が負エネルギーの電子に働きかけます。すると負エネルギーの電子が光のエネルギーによって
励起され正エネルギーとなって飛び出します。元の負エネルギーのあった状態は欠損ができ陽電子となります。
これを図でかくと
γ → e+,e-
γは光(電磁場)、e+は陽電子、e-は電子の意味で書きました。これは対生成と呼ばれます。
実はこの式は化学の反応のしきのように移項しても成立することが知られています。
移項する際にe+はe-に、e-はe+になります。γはγのままです。
γ,e+ → e- (陽電子に電磁場のエネルギーが入り電子が飛び出す。)
e+,e- → γ (電子と陽電子が衝突し光子が出る。対消滅と呼ばれる。)
このような物質と反物質を入れ替える(移項する)操作でも成立することを荷電共役変換(C変換)と呼びます。
アップクォークとダウンクォーク、電子とニュートリノ
さて、ここまで説明すると先ほどの
陽子→中性子+電子+(反)ニュートリノ
という図を分解することができます。
陽子や中性子等のバリオンはトップクォークやダウンクォークからできています。
よってこの図はクォークについて反応に分解することができるのです。例えば、
udd → uud , e- , (反)ν
ここでuddは中性子、uudは陽子、uはアップクォーク、dはダウンクォーク、e-は電子、
νはニュートリノをあらわします。
この反応は前の議論のような移項ができ、
udd , ν → uud , e-
のような図を考えることができます。
ニュートリノが介在するこのような相互作用を弱い力と呼びましたが、
弱い相互作用とはこれらの図からu,dの入れ替え、νとeの入れ替えをすることのできるものであることがわかります。
これらをまとめて
(u,d)
(e,ν)
と書いたりします。数学的にはこれを行列と呼びます。
電子とニュートリノをまとめてレプトンと呼びます。
クォークの色
先ほど書いた図ですが
u,ν → d , e-
とは描かなかったのは何故でしょうか。これはアップクォークがニュートリノとぶつかってダウンクォークと電子が
観測されるという図になっていますが、実はクォークは単独では発見されていません。クォークが単独では発見されないことには理由があります。それがクォークの閉じ込めとよばれる機構です。このような閉じ込めの機構がおきうる原因がクォークの持つカラー(色)にあります。
カラーは次のように電子を考えるとわかりやすいです。
電子、陽電子(e+,e-) 介在するもの‥光子 →電荷という値は一つであり、その正負だけがある。
クォーク、反クォーク 介在するもの‥グルーオン → 対応するカラー(電荷)は3種類あり、それぞれに正負がある。この3種類を便宜上、光の3原色(赤、青、黄)に対応させている(量子色力学の由縁)。
このカラーは今回ノーベル賞受賞となった南部とM.Y.Hanによって初めて提案されたものです。
強い力はこれらの色の入れ替えを引き起こす力です。
さきほどの弱い力のときと同じように
(u(赤),u(緑),u(黄))
のようにひとまとめに書くことができます。
つまり弱い力からみれば
(u,d)
であり、強い力からみれば
(u(赤),u(緑),u(黄))
という組でかけるのです。
ちなみに電子、ニュートリノは色を持ちません。つまり強い力を感じることがありません。
そてこのような強い力を解析すると、クォーク同士に働く力は色の関係から近づけば近づくほど弱くなり、離れれば離れるほどバネのように強くなることがわかりました。これを漸近的自由性と呼び、クォークを単独で取り出せないこのような仕組みがクォークの閉じ込めと呼ばれるようになります。この業績で2004年にグロス、ポリツァー、ウィルチェックがノーベル賞を受賞しています。
しかしこの閉じ込めの機構の解析は非常に難しい(近似計算がきかないため)ため計算機による解析等で現在でも盛んに研究されています(格子ゲージ理論)。
電子にもクォークにも家族がいる。世代の謎
さて、我々の物質を構成するものは電子、u,dクォークに分解されました。
中性子の崩壊からさらに他にニュートリノがあることがわかり、力としては
電磁相互作用(光子)、強い相互作用(グルーオン)、弱い相互作用(?)、(重力(重力子?))
の4つが存在することがわかりました。
弱い力に対応する粒子‥?の部分はなんでしょうか、
これを考えたのがグラショウ達でWボソン、Zボソンと呼ばれる粒子です。これらは南部、ヒッグス達が発展させたアイデアで質量を持ちます。今回のノーベル賞の理由の一つなので後ほど詳しく説明します。
まとめると
(u,d)
(e,ν)
γ,g,Z,W,
です。γは光子、gはグルーオンのつもりでかきました。
しかし、話はこれだけではすまないのです。
(u,d)
(e,ν)
には、同じような性質をもつ
(c,s)
(μ,ν)
があることがわかったのです。
これらは
c チャームクォーク
s ストレンジクォーク
μ μ電子
ν μニュートリノ (これに対応して電子と対になるニュートリノを電子ニュートリノと呼びます。)
と呼ばれ、第2世代と呼びます。逆に以前のu,d,e,νを第1世代と呼びます。
第2世代は第1世代のそれぞれの対応粒子よりも重い粒子です。
このコピーは第3世代まであることがわかっています。
(t,b)
(τ,ν)
t トップクォーク
b ボトムクォーク
τ τ電子
ν τニュートリノ
さて、今まで、色々な粒子の入れ替えが起こる相互作用をみてきました。
これらの世代間を入れ替えるような相互作用というものも考えられそうです。
これはいままでの理論を
u⇔c⇔t
d⇔s⇔b
の入れ替えが起こるように組み合わせることで実現できます。
この入れ替わり具合を
| / | u | c | t |
| u | |||
| c | |||
| t |
の表にかいたものを小林・益川行列と呼びます。dsbについても同様の行列があります。
これは単に可能性として導入されたわけではなく、CP対称性の破れを説明するためにはこのような3世代混合を考える必要があったということです。発表当時は第3世代そのものが存在しない中での業績です。
(e,μ,τ)側には同様の混合は存在しないのかというと牧・中川・坂田行列と言われるものがあり、こちらはニュートリノ振動という現象を予言し、素粒子の最新の話題です。
南部・小林&益川は何をしたのか3
説明する順序を思いっきり間違えて収集がつかなくなりつつありますが、続けます。
小林・益川が説明したかったCP対称性の破れとはなにか?
CP対称性とは
C変換、P変換をしても理論がかわらないことを意味します。
C変換‥荷電共役変換
‥すでに説明しましたが、物質と反物質を入れ替えても理論が変わらないという対称性です。
(これは数式でいうと複素共役のようなものになります。)
P変換‥パリティ変換‥
パリティ変換とは我々の世界で空間を反転させる(鏡の世界と自分達の世界を入れ替える)操作でこの変換で理論、現象が普遍であることをパリティ変換不変性と呼びます。
このような空間の反転で物理が変わらないことは非常に自然と思われていたのですが、実はこのような反転操作で世界は不変ではないことが50年代にLee,Yang,Wuによって提唱、発見されました。この発見からC変換も不変でない場合があることがわかりました。
そこでC変換と組み合わせた変換、CP変換なら理論、現象は不変であろうと考えられたわけです。
小林・益川の業績
しかし、CP変換に対する不変性も3世代以上のクォークの小林・益川行列を用いた混合を考えるとCP対称性を破る場合があることが小林・益川によって示されたのです。
(計算でいうと、小林益川行列がCP変換で複素共役を含めた変換をしてそれが元にもどらない差分だけCP対称性が破れていることになります。)
この現象が起こることを実際に確認するにはK中間子と呼ばれるdクォークとsクォークでできた粒子やB中間子(こちらはsとb)を使って精密にその破れの具合を測定しなくてはなりません。これらの実験施設をKファクトリーやBファクトリーと呼びます。つくばのKEKや米国のSLACで実験が行われ、このCP対称性の破れは小林・益川の予言通りに起こることが確認されました。
このような混合が何故おきているのかを解明することが更なる物理の問題として残され、実験、理論の両面で研究が行われています。
南部・小林&益川は何をしたのか4
注意 今までもとさらに以降の話ですが、内容に関しては再構築しているので歴史に沿った話ではありません。説明しやすいように順番を変えています。
さて、今みたように
| 第1世代 | 第2世代 | 第3世代 |
| (u,d) | (s,c) | (t,b) |
| (e,ν) | (μ,ν) | (τ,ν) |
電荷を持つ粒子間に働く電磁相互作用(その媒介粒子‥光子)
クォークの色の入れ替えるような効果を持つ強い相互作用(その媒介粒子‥グルーオン)
これらの(,)内を入れ替えるような効果を持つ弱い相互作用(その媒介粒子‥Z,Wボソン)
のようにまとまったわけですが、
実はこれらの媒介粒子とかいたところでZ,Wボソンだけが他の力と異なる様相を持っています。
それは光子、グルーオンは質量をもっていないのに対して、Z,Wボソンが質量を持っているという点です。
更に致命的だったのはWボソン、Zボソンに質量を持たせて理論を構築しようとすると、近似計算が予言能力をもつような整合的な理論(繰り込み可能な理論)を作ることができないという問題でした。
このような整合的な理論は光子の理論(量子電磁気学)ではファインマン、朝永、シュウィンガー等によって構築されていました。量子電磁気学では光の理論はゲージ理論と呼ばれる理論で構築されており、ゲージ理論では光の質量は厳密に0でなければならないことが要請されることがわかっていました。これをU(1)ゲージ理論と呼びます。
強い力の理論(量子色力学)も後にゲージ理論の一種であることがわかりました。これをSU(3)ゲージ理論と呼びます。この3はカラーの種類です。後にこの理論もトフーフトによって繰り込み可能な理論であることがわかります。
逆にいえばQEDはカラー(QCDのものとは違いますが)が1個(これを電荷と呼びます)のゲージ理論といえます。
弱い力を記述するZ,Wボソンも同様にゲージ理論で記述することはできないでしょうか、そのためには0と要請されるはずのZ,Wボソンの質量について説明する必要があります。これを実現するのが南部氏が導入した自発的対称性の破れで、これはヒッグスによってヒッグス機構という形で素粒子論に組み込まれました。
Z,Wボソンもゲージ理論で記述できると考えます。まず質量を無視して考えます。
クォークの場合を考えます。
これはいつもは省略して書いていますが
(q(赤),q(青),q(黄))という
カラーを交換する効果を持つSU(3)ゲージ理論で記述されます。
ということは
(u,d)
(e,ν)
についても何かカラーのようなものを二つもっていてその交換で記述できるような気がします。
カラーのようなものが二つなのでSU(2)ゲージ理論のようなものを考えます。
実はこれだけでは質量に関してはもちろんですがつじつまがあわないことがわかります。
弱い相互作用で入れ替わる
u⇔d
e⇔ν
において両者の電荷が異なるのがその理由です。
電荷はU(1)ゲージ理論と関係していましたが、
上記のようなSU(2)ゲージ理論で上記問題を解決するためには
保存されるものはこのSU(2)とU(1)をあわせたときに存在する電荷に対応するもの(ハイパーチャージと呼びます。)
であると考え、
電磁場と弱い相互作用は二つをまとめて一つのゲージ理論と考えなくてはいけないことがわかりました。
この二つをまとめたものを電弱理論と呼び対応するゲージ論をU(1)*SU(2)ゲージ理論と呼びます。
当然、このままでは質量の問題が解決していません。
南部・小林&益川は何をしたのか5
ここでは自発的対称性の破れを説明します。
自発的対称性の破れ
自発的対称性の破れは元々、物性の分野等で知られている現象でした。
例えば、磁石を考えます。磁石はミクロに見れば小さな磁石に分解することができます。これらの磁石は高温では
熱によってそのS極とN極がばらばらに反転したりしています。この場合、これは磁石といいましたがお互いの力を打ち消してしまい磁力を持っていません。この状態では例えば磁石のすべてのSとNを反転させても何も見た目も実際にも何も変わらないようにみえます。これはそのような反転で不変という対称性が存在することを意味します。
これを低温に近づけていくと、熱による運動が少なくなり、小さな磁石はまわりと同じ向きにそろうようになります。このとき、磁石のすべてを反転させると明らかにすべてS(N)がN(S)となり反転で不変であるという対称性を持っていません。このように見ているものの状態の対称性が破れてしまうことを自発的対称性の破れといいます。
さて、この磁石に対応するのが今回新たに導入するヒッグス場です。そして磁石のS極とN極を反転させる変換が、
前回話したゲージ場におけるSU(2)の対称性‥SU(2)のカラーの入れ替えに対応する変換性に対応することになります。
ゲージ対称性
ゲージ理論のゲージという言葉をきちんと説明していませんでした。
位相を説明する必要があります。
位相とは波の位相と同じ意味です。複素数でいうところののθにあたります。
実は今までのべた
電子のような電荷を持つ粒子はこの複素数でいうところの絶対値で書かれています。
絶対値は位相(θ)の変換によってかわらないので、これらの理論はこの変換について対称性を持っています。
この位相は拡張することができます。を行列にすることでそれができます。
以前、
強い力では
(u(赤),u(青),u(黄))という組
もしくは
弱い力では
(u,d)という組を考え、それを入れ替える対称性(u⇔d)を考えていました。
これらも行列と考えることができます。
つまり、先ほどのという行列をこれらの(u(赤),u(青),u(黄))という行列と掛け算することによってこれらの色の入れ替えを記述することができるのです。
これらの入れ替えによる変換はもとの行列でないと同じように絶対値で不変です。
ゲージ原理
これだけではなく、このような入れ替えの普遍性は場所によって入れ替え具合を変えても成立してしまうことを要請してしまうのがゲージ原理です。
場所による入れ替え具合を要求すると先ほどの絶対値をもってしても理論は不変にはなりません、そのためには質量が0のゲージ粒子と呼ばれる粒子の存在が必要となります。ゲージ粒子を記述する理論をゲージ理論と呼びます。
このゲージ粒子が
U(1)ゲージ理論では光子
SU(3)ゲージ理論ではグルーオン
に対応するのです。
さて、今考えている
U(1)*SU(2)ゲージ理論では対応するゲージ粒子が出てきます。ただしこれは光子とZ,Wボソンに対応するものが一体となっています。
また、この場所に依存するような入れ替え対称性を持つ位相変換をゲージ変換と呼びます。
自発的対称性の破れとゲージ理論
前回、磁石に対応するのが今回新たに導入するヒッグス場です。そして磁石のS極とN極を反転させる変換が、
ゲージ場におけるSU(2)の対称性‥SU(2)のカラーの入れ替えに対応する変換性に対応することになります。
と述べましたがこれが
磁石‥ヒッグス場
磁石のSN‥弱い力のカラーに対応するもの
極の入れ替え‥ゲージ変換
に対応するするわけです。ここでヒッグス場は様々な粒子やZ,Wボソンに対応するゲージ場と相互作用をしていると考えます。
ここで磁石と同じくヒッグス場が一斉にある値を持つことでゲージ変換の不変性が崩れます。
これによりヒッグス場と相互作用をしていたものはその値に応じた質量を持つことになります。
これを説明するのは難しいのですがヒッグス粒子との相互作用は
e+ → H ,e-
のような形をしていて、この相互作用は
理論ではeHe
のような掛け算であらわされています。
一方、電子の質量は理論ではmeeのような形で書かれます。
今、ヒッグスのある部分がmのような値をとることになるとeHeがmeeとなり、質量が出てくるのです。
このような機構によって、U(1)*SU(2)ゲージ理論とヒッグス粒子の相互作用をつくり、SU(2)部分のゲージ対称性をヒッグス場が値を持つことで自発的対称性の破れによって破ることでZ,Wボソンに質量をもたせるようにすることができます。ヒッグスは同時にクォークや電子と相互作用することによってこれらの質量をもたせるメカニズムとして機能します。
このようにして南部氏が素粒子の世界に持ち込んだ自発的対称性破れによって、U(1)*SU(2)ゲージ理論にヒッグス機構としてくみこまれ、電弱相互作用と呼ばれる電磁気学と弱い力を統一した理論(ワインバーグ-サラム理論)として記述されることができたのでした。
我々の質量はこのようなヒッグス場の自発的対称性の破れに起源を持つとして説明されることができるということは驚きを感じます。また、このような素粒子の理論は標準模型と呼ばれ、ヒッグス粒子以外の粒子はほぼみつかっています。LHCでは残るヒッグス粒子がほぼみつかるはずです。
問題はこのヒッグスが標準模型で予言しているような振る舞いをしているかどうかです。それによってまた更なる標準模型の先にある理解、世代とは何を意味するのか、電磁気と弱い力は統一されたが強い力とは統一されないのか‥等の理解への手がかりがつかめるはずです。
とても読めない内容になってしまいましたが、一応これで切ります。一つ一つをもっときちんと説明しないと意味がないですね‥。
修士の分際の僕に専門であるはずであろう超伝導に関してこんなに文章書けません。
物理も化学も受賞とは今年はすごいですな。
化学のほうは、また分野がまったく違うので、新聞なんかに書いてあること以上には何もわかりません。。。正直、あっちは生物系だしね。