舞台と関係ないこと

話題にしにくい話でもあり、私自身のショックもなかなかなものだったし、誰かに聞いて欲しくて、でも誰にでも話せることでもなく、とうじうじしていた。でも、むしろ不特定多数の人にぶつぶつ言う方がいいような気もするので書いておく。

喪中のお知らせの届くこの季節、近年はたくさん届くのでただでさえ寂しくなるのだが、今年は衝撃が大きかった。文楽を通じて知り合った方がお二人も七月に亡くなられていた。私さえ大阪遠征する体力と気力が戻ればまたお会いできるだろうと呑気にかまえてた。今年の年賀状はお二人ともお元気そうな自筆入りのお便りだったし、まさかその半年後にこの世を去られるとは思いもよらなかった。でも、そういうことを何度も味わってきたのに懲りない私は本当に馬鹿者だ。どんなに悔いても、もうお会いできない。

神様は、いい人から召されていく。

ざっと観てたんだな

眠くもならずにずっと観て楽しめたのは、いつものように細かく観ていなかったからかもしれないなー、と思ってます。まあね「あの人形は足がフラフラしてるなー」とか「この左はうまいなー誰だ?」とか逆に「こらこら、主遣いに合っとらんぞ」程度のことはちらちら思いましたけど、それより話が好きだから楽しんじゃいましたね。
2点、個人的にイヤだったこと。
ひとつめは、塩谷判官切腹で由良さんが出てきた時にバカみたく大きな拍手が起きたこと。そこまで和生さんの判官が素晴らしくよくて静謐と緊張に満ちた空気が舞台を覆っていたのに吹っ飛びました。ご贔屓が出てきたら拍手するのはかまいません、私も簑助さんが出てきたら拍手しますから。でも、あの場面ですよ、少しは遠慮がちに叩いたら如何かな。ご贔屓に聞かせたくて叩いてるとしか思えなかったです。だって、休憩の後にぞろぞろ帰っちゃったもの。
ふたつめは山科閑居の後に「大当たり!」という掛け声があったこと。「藤蔵!」という声をかけたのと同じ方だと思うけど、そもそも三味線さんだけにかけるっておかしいんじゃないでしょうか。野球ならバッテリーですよ、どちらが欠けても成り立たない相棒です。しかも申し訳ないですが、後半に関しては大当たりには程遠かったと思います。太夫と三味線が張り合ってるみたいでした。あんなオトナな段なのに。
まあ、最近ちゃんと通ってない私が何を言うかと言われたら返す言葉もないですが。


さて。全体的に2部の方が面白かったかも、です。一力での簑助さんのおかると勘十郎さんの平右衛門、サイコーでした。今、人形さんは同期のお三方が若い人達をぐいぐい引っ張ってる成果が出てるのだと思います。特に和生さんは文雀さんのいなくなられた穴を全力で埋めようとなさっている気迫が伝わってきます。私は山科閑居での本蔵が死ぬほど好きなんですが、平右衛門とは全く違う重みを出している勘十郎さんは流石。玉男さんは、まだまだ若いのだからそんなに収まらなくていいのにねー、と思ってしまったり。由良さんの内面の燃えたぎる思いがイマイチ伝わってきませんでした。


太夫さんもお若い人がとても頑張っていて先が楽しみです。三味線さんとの組み合わせで随分違ってくると思いますので、それも楽しみではあります。もう一回聴く機会があればよかったな…

仮名手本忠臣蔵の通し

10:30から21:30(だった?)の間、ほぼ眠気に襲われなかったのはいいが、帰宅後も眠れなくなった、やばい。久々に力の入った舞台を観たけど、ふと「土日の方が力が入るのかな?」なんて思ったり。


天河屋ってのが、個人的にものすごーくツボで、他のこと忘れた気がする。あ!そうだ!判官切腹で、移動した後の石堂の左脚の袴が引っかかって脛が見えていて「あああ」と思っていたら足遣いさんがそっと直してて感動しました。すごいねー、よく気が付いたよねー!

17日の話ですが

紀尾井ホールの会員向けの無料イベントに行ってきました。八王子車人形と女義さんの「韓国公演」の公開リハ。車人形は何度か拝見したことがありますが、私の観たものはエンタメ色の強いものばかりで、今回のようにがっつり義太夫と組んでいるのは新鮮でした。もちろん、本当はそっちが本来の形なのでしょうけれど。
女義さんは大好きな越孝さん。久々に拝聴しましたが、やっぱりこの方は「プロだ」と思いました。もっともっと時間を作って聴きに行きたいものです。

通しの予定でしたが

今日は通し観劇の予定でしたが、先週末にひいた風邪が抜けきらなくてどうにも意識を保ちきれないので2部の途中で脱落。普段よく出る段だし、最後の床がイマイチだとちらほら聞いていたのでチャリ場の笑いで引き上げました。熊谷桜まで観てもよかったのですが、抜けにくいし(^-^;

久々に気合いを入れて観たら1部の林住家でスイッチが切れ、小住さんも睦さんも最初の一声しか記憶になく(>_<)簔助さんが出ていらしてやっと目が覚めました。


この狂言は熊谷桜からの見どりばかりで、私も視聴室の録画でしか観たことのない段がいくつもありました。大序があると制札の意味がわかっていいですよね。義経が制札を読んでる時の直実の表情が(首の傾げ具合とか)いい伏線だし、上演前に録画で流せばよいのにね。怪我をした小次郎だと言って抱えて去っていく場面も「ああ、ここで入れ替えんのね!」とわかりやすくなります。

主人公が直実だから忠度の方は脇筋になっちゃうのかもしれませんけど、忠度の話も面白いと思いました。片袖を形見にと菊の前に渡すのですが、それが忠度の最期を思わせる、なんていうあたりは唸りました。まあ、忠度は能が素晴らしいので、能でいいか(笑)

寿式三番叟、なかなかに賑やかしかったですが、三味線の揃い具合に比べて太夫さんの語りがバラバラっとなる時があって残念。津駒さんは声の質がこういうお祝い事には向いてない気がします。三輪さんみたいな声の方がいいような…。津駒さんは一人で静かにみっちり語るところに配置してほしかったです。

正直に言うと、玉勢さんの人形がいいと思ったことは今まであまりなかったのですが、三番叟、よかったです。景事のような遊びのない役の方が向いているのでは?姿勢もいいしきれいでした。左さんもすごく頑張っていましたし、玉男さんの襲名から玉門パッと明るくなりましたね。人形さんは若い人も育っていますし、楽しみです。個人的には「神奈川県出身の勘介くん、頑張れ!」

あと、人形では……三人のお女中、紋秀さんの拵えが一番きれいでした。胸元の乱れがなくて襟の詰め具合も品がよくて素敵でした。


咲さんのチャリ場、ずっごぐ面白かったです。その件はまた後日。

床山さんのこだわり

わたくしは、九月公演の主役「熊谷直実」が女房「相模」の首でございます。首だけではわからないと仰いますか?いえいえ、よくご覧くださいまし。

わたくしの髪にさした簪をよくよくご覧になればおわかりでしょう。そう、これは熊谷家の家紋「向い鳩」でございます。

文楽劇場床山さまが、わたくしへの思いをこめてお作り下さったものです。何も言わずとも衣裳を着ずとも「あなたは相模なのですよ」という心を込めて髪を結って下さっているのです。わたくしも精一杯、勤めたいと思います。
…ってこの首が言っている気がしました。人形に命を吹き込む人々の思いがひとつになる舞台、素晴らしいものでありますように。

ちなみに政岡だと「竹に雀」の伊達家の家紋の簪だそうですよ。

週初めに行ってきました

2時からの公演は若手さんが今までやったことのないような役割を担っていたせいか、眠気もおきずに楽しんだのですが、夕飯を食べたあとの鑑賞教室はほぼ睡眠(^◇^;)普通、耳だけは聴こえてるのに、天満屋は聴いた記憶が……ありません。奇跡的に足のすりすりの時だけ突然目がくゎっと開いて観れたのですけど、道行もほぼ靄の中にいるようでした。ちゃんと聞いたの、解説だけかも。んまぁ、好きな作品ではないので仕方ないっちゃ仕方ないんですけど、演者の皆様には申し訳なかったと反省しております。

そう言えばBの解説は真面目な二人とヤンキー一人というなかなか面白い組み合わせでした。希さんの学級委員長感、ハンパないです。

公演、呂勢さんはやはり頭抜けていて「あ、プロが出てきた」という感じでした。三味線との組み合わせもありましょうが、何が違うんですかね。個人的にはずっと前から睦さん推しなんですが、今回は「もうちょっと!」感あり。大井川で唸らせてくれる人は絶対私好みだって信じてるんです。津駒さん、呂勢さんに続けー!頑張れー!