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2017-02-27

EDH パラドックス考

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Paradox Engine / パラドックス装置 (5)

伝説のアーティファクト

 

あなたが呪文を1つ唱えるたび、あなたがコントロールするすべての土地でないパーマネントをアンタップする。

霊気紛争で生まれてしまった、雑におかしい事が書いてある最高のおもちゃ。マスターピースのスポイラーで見えた瞬間にtwitterのTLが凄いことになったのは記憶に新しく、発売後1ヶ月にして禁止の呼び声も高い。綺麗に使えるデッキが一応ひとつ組めたところで、使用感の評価をしていく。

あっ。

パラドックスの使い方

「イージーウィンすぎる」「茶色なのでどんなデッキにでも入る」とは禁止派の言、さて本当にそうなのかと言われると懐疑的。パラドックスで勝つためには、

  • 盤面にある程度非土地のマナ源があって
  • パラドックス着地後にスタートするための種火(呪文とキャスト用のマナ)を確保した上で
  • うまく回せるための相方もしくはループを継続するための十分な手札

が必要になる。強いテキストではあるがあくまでも他のカードありきの代物であり、単体だとバニラファクトでしかなく、取り回しに難儀するカードであると評さざるをえないだろう。

ただ漫然とカードを選択したならば、パラドックスで勝てたゲームは、きっと代わりに他のコンボを使っていても勝てたはずのゲームだ。特定のジェネラルにおいて採用コンボの相性の良し悪しはあっても、それはEDHにおいて避けて通れない現象である。すぐに思いつくところで生き埋めウーズと相性の良い原形質、バサルトブライトと相性の良いサーダアデールやウーナ、変身暴君と相性の良いタシグル。これらの例とシッセイやアーカムがパラドックスと相性が良いのは全く同じだ。

パラドックスの評価

前段で既存のコンボ系ジェネラルとの類似を挙げたが、構造だけではなくカード単体の性質としても似ている。ある友人はパラドックスを「強い金粉の水蓮」と評し、それはかなり良い線を突いていると思うが、より近いカードとしては《ブライトハースの指輪》あるいは《潮吹きの暴君》だろう。

下準備が必要で、単体ではほぼバニラで、間違いなく勝ち手段なのにいざ勝つその時まではずっとライブラリーや手札で腐り続け、かといって先置きしてターンを返したりしようものなら危険度が知れ渡っているため3人がかりで潰される。最悪のパターンだとコピーやコントロール奪取によって相手が勝ってしまったりする。

総じて言えるのは、既存の様々なコンボ専用カードよりも突出して強いと言い切れる部分は一切ない、ということだろう。

つまり何が言いたいかというとだな

パラドックスとかどうでもいいからむかつきをいい加減なんとかしよう(切実)

2016-06-09

EDH コンバット先の選択

0. 導入

対戦相手が3人も居るEDHというゲーム、「誰を優先的に殴っていくべきか」という疑問や、それに関する議論が定期的に起こるのはさほど不自然なことではないだろう。だが、いつそれが起こっても、とあるひとつの言説が混入していることが気になって、筆を執ってみた。

曰く──「青いデッキを優先的に殴るべき」。

青いプレイヤーが卓に居ると自分のやりたいアクションが通らないから、だの、青いデッキはコンボで勝ってくるからヘイトを向けなければいけない、だの、一見もっともらしい理由で飾られたこの方針を正しいものとして見ているプレイヤーは、どこにでも一定数いるらしい。

しかしだ。青いデッキもそうでないデッキも、コンボデッキもコンバットデッキも、様々なジェネラルを使い使われした経験から言わせてもらうと、殴るなら青、という盲目的な方針は明確に間違っていると結論付けざるをえない。もちろん、あらゆる場面において例外なく間違いであるとまでは言わないが、ゲームの大方針として身を任せてはいけないレベルの失策である、とまでは言ってしまってよいと考えている。

1. ライフはリソース

まず前提条件として、ライフは「手札」「クリーチャー」「マナ」等と同列にあり、それぞれと交換可能な──その時々でレートが変動するにせよ──リソースの一種であり、故に手札やクリーチャーやマナと同様に、ある程度ゲーム内で消費しても構わないものである。ライフそのものが勝敗条件に直結しているが故にしばしば特別視されがちだが、そうやってライフを一段階上のリソースと見做して不必要に大事に扱うことは著しくゲームのバランスを欠く。例えば黎明期に《チャネル》だの《剣を鍬に》だのが出来てしまったのは明らかに開発側がライフを過大評価したせいだし、逆に普段のゲームでも、数点のライフを大事にしすぎたあまりに別のリソースの確保がままならなくなって落としたゲームの心当たりのひとつやふたつあるはずだ。

さて、翻ってEDHの話だ。かつて別の記事で語ったことだが、このフォーマットでは、総ライフの多さに起因して、戦闘によるものとコンボによるもの以外では対戦相手による自ライフへの干渉がほぼ起きないと言っても過言ではない。コンボでライフを減らされている状況というのは概ね「そのまま死ぬ」とイコールで結べるので考えないことにして、残るのは戦闘である。

60枚構築にままある「《稲妻》《稲妻》《瞬唱》《稲妻》!」のような突然死を想定しなくてもよい以上、生死ラインのライフを脅かすのは盤面に見えている脅威だけだ。つまり、ある程度の安全バッファをとった上で、実際に死ぬまでの時間を逆算することができる。殴られている側からしてみれば「死へのカウントダウン」というのは「それまでは好き勝手にできる猶予期間」と等価でしかないのだ。

マナを支払い、カードを消費してクリーチャーを出す。そのクリーチャーが召喚酔いから解放されて、ようやくいくばくかのライフを削り取り、勝利への一歩を着実に踏み進めた──残念ながらそれは嘘っぱちだ。現実的には何もしていない、否、手札とマナと時間を吐き出した上で何ももたらしていないのだから、一人だけが大損していると言ってもいい。

なまじ数字で進捗が見える分、対戦相手のライフを削ることは見えない手札やライブラリーを気にしながらゲームを進行するよりも明確な目標に見える。しかしコンボを決めようとしている側からしてみれば「死んでさえいなければいい」というのが現実だ。0を割ってさえいなければ、ライフが3点だろうが100万点だろうが、実のところ大差は無い。ましてや、青いデッキは特にライフを消費して行う行動がほぼ無く、ライフを減らされようが痛くも痒くもないのだ。まだしも《無のロッド》あたりを盤面に叩きつけた方が機能不全に陥らせることができて有意義だろう。

2. 戦闘行動の是非

中途半端にライフを減らしてもコンボで勝つデッキ相手には意味が無い。であれば、戦闘が主軸になっているデッキはどう対抗すればいいのか──そうして、コンバット系のデッキもコンボじみた勝ち筋を求めるようになるのはある種必然なのだろう。例えば1/1の群れが大量のドローやマナをもたらしてそのままターンが帰ってこなくなったり、例えば突然毒カウンターが11個降ってきたり、例えば小粒なジェネラルの何気ないアタックを通したらパワーが20点増えたり、例えば1ターンのうちに総打点が120点を大きく踏み越えたりと、コンバットで勝つにしろ愚直に数ターン掛けて一人を殴り殺すのではなく一捻りが必要だ。

普通のクリーチャーは往々にしてそのような勝ち方に寄与しない。しかしコンボ的な動きに対して守勢に回ったとき、さりげなく盤面に存在する小粒な生物が大きな抑止力として働いてくれることは多々ある。その可能性と相手のライフ数点を天秤に載せて、それでも攻撃に出るべきかどうか。その判断は慎重に行うべきだろう。

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−ブロッカーが立っていることが大事な盤面もある−

3. 前段を踏まえて

さて、このままではこの記事の結論が「殴りに出るな」になってしまう。一応主題が「誰を殴るか」である以上、ここまで述べたハードルを踏み越えてでも殴るべき状態やその相手がどのようなものであるのかについてを考えよう。

冒頭で述べた通り、MtGにおいてライフはリソースであり、ライフ以外のリソースとの交換が可能なものだ。つまり、積極的にその交換を仕掛けてくるような相手のものであれば、ライフを削ることは間接的に手札やクリーチャーやマナや時間という、直接ゲームを決めうるリソースを削り取ることに繋がる。そしてその標的となるべきは、青という色ではない。

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ライフをリソースにする色、というならば、やはりこの色をおいては語れないだろう。EDH最強カードであるところの《むかつき》を筆頭に、細々としたものから大規模なものまでライフを引き換えにリソースを拾っていくカードは枚挙に暇がない。大きくライフを吐き出した時のリターンが尋常ではないため、それを阻止するためにライフを削り取ることは十二分に肯定されうる。殴るとすれば最優先すべきは黒だと言えるだろう。

緑、赤

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さて盤面に黒いプレイヤーがいなければ他の4色は等価なのか、と言われるとそうでもない。緑と赤の2色には、種類こそ少ないがライフを大きなリソースに変えるカードが存在する。

4ライフをカード1枚に変換する《森の知恵》、3ライフを青天井にマナに変える《背信のオーガ》。デッキによって採用率は変動するものの、ジェネラルやそれまでのゲームで見えたカードを基に推測することは可能だ。入っていると判断できたならば、やはりこの2色に対してもライフを削ることが肯定されうる。

白、青

この2色はあまりライフと他リソースの結びつきが無いといえる。記事の前半を延々と消費して述べた通り、わざわざライフを削ることに対するリターンが薄いため、白や青に対抗するのであれば素直なコンバットではなく他の手段を模索するべきだ。

4. まとめ

今回の記事の内容は公開タイミングの関係上かっこかりさんの二番煎じ的なものになってしまったので向こうも読んでもらえるとより理解を深められるだろうかっこかりさん筆早すぎませんか

「当面仕事のない1/1〜2/2くらいの小粒で殴る」程度の何気ない行動にも、行動の選択肢や考える余地がこれだけ存在する。盲目的なヘイトの概念に駆られることのないよう、一度立ち止まって思案を巡らせてみてほしい。

2016-02-29

EDH Mox考

フォロワーさんがこんなことを言っていたので、

新マリガンルール後のモックス類について考えていることをちょくちょくまとめていこうと思った。ちなみに俺が先日使ったデッキからはクロム以外抜けてる。

基本

名前こそ似ているけれど、基本的にEDHで使える3種のモックスはそれぞれ大きく運用方法が異なり、本来どんなデッキにも無条件で全部入れるようなカード群では無い。これは《水蓮の花びら》についても似たようなことがいえる。

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Mox Opal / オパールのモックス (0)

伝説のアーティファクト

 

金属術 ─ (T):あなたのマナ・プールに好きな色1色のマナ1点を加える。この能力は、あなたがアーティファクトを3つ以上コントロールしている場合にのみ起動できる。

オパールは、単体では他のコストを特に要求しない素直なデザイン。但し、ある程度安定してアーティファクトを並べられないデッキにおいてはバニラアーティファクトとなるリスクを常に抱えている。ちゃんと意識してデッキを組めばマナ自体は安定して出せるが、最初手の加速という仕事は実はあまり得意ではない。性質上、マナクリーチャーを多用するタイプの緑デッキとは相性が悪いことに注意。

Chrome Mox / 金属モックス (0)

アーティファクト

 

刻印 ─ 金属モックスが戦場に出たとき、あなたの手札にあるアーティファクトでも土地でもないカードを1枚、追放してもよい。

(T):その追放されたカードと共通する好きな色のマナ1点をあなたのマナ・プールに加える。

ハンド1枚というコストは重い上に、出るマナの種類が限定されることがネック。その代わりに大体どんなカードでもコストに充てられることはメリットであり、とりあえず当面使わないカードを投げてマナ加速ができるのは偉い。無色単でもない限り何らかのコストを用意するのは容易いので、全体的にどんなデッキにおいても癖なく使える優良カード。

Mox Diamond / モックス・ダイアモンド (0)

アーティファクト

 

モックス・ダイアモンドが戦場に出る場合、あなたは代わりに土地カードを1枚捨ててもよい。そうした場合、モックス・ダイアモンドは戦場に出る。そうでない場合、それをオーナーの墓地に置く。

(T):あなたのマナ・プールに、好きな色のマナ1点を加える。

で、今回俎上に載っているのがこれ。土地というコストはクロムの方に比べて若干ゆるいように見えてこれが一番の曲者で、手札の土地を吐き切るタイミングでの盤面の総マナ数が他2種と違って増えない。「追加のマナソース」としての運用はできないと承知した上で積む必要がある。

3種に共通しているのは「何らかの形で他のカードを必要とする」という点。新しいマリガンルール適応以後、都合の良い餌の調達が質数双方の面で難しくなっているのが向かい風。

ダイアモンドの特性

順調にターンが進み、初手にある土地──大体は2、3枚だろう──と、そこから展開できるマナベースを全部出し終わった盤面を考えてみよう。《ダイアモンド》を出していても出していなくても、そこに在る総マナ数は基本的に同じになる。そうなった時、残るのは土地に比して割られたり無力化されたりしやすい《ダイアモンド》のデメリットだけだ(色安定のメリットについては別問題なのでここでは考えない)。

つまり、加速札としての《ダイアモンド》のメリットを享受したければ、展開終了までに使える「のべマナ数」と、展開している間に関しては1マナ多く使える「瞬発力」の点でちゃんと得をしなければいけない。そのアドバンテージもターンが進むにつれて平坦化されていき、逆に余分なカードを使った分のディスアドバンテージが目立ち始めるため、中・長期的なプランを基礎としたデッキとは根本的に相性が悪いカードだといえる。

《ダイアモンド》は「序盤の時間を後払いで買う」カードであり、その点トータルのマナ数がゲームを通してプラス1点される他のモックスとは大きく異なる。

ダイアモンド運用に適したデッキ

では、実際にどんなデッキなら《ダイアモンド》を入れてもいいのか、いくつか挙げてみる。

a) たくさんドローできるデッキ

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序盤の先行のためにカードを余分に消費した分を帳消しにできれば、先行した分だけ純粋に有利になるという発想。先行に要したカードの補填ができるだけでなく、増えた手札で更なるアクションを取るためにも《ダイアモンド》のマナが役に立つ、噛み合った組合せ。

自分自身がこの類のカードを使わなくても、環境に7ドローが蔓延っているなら「誰かしらが撃つだろう」という当て込みで《ダイアモンド》が入ることもある。というか過去にあった。

b) ジェネラル依存度が高い/アド損分を担保してくれるデッキ

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特に戦闘を介するものは1ターンでも早い着地が何より重要になるので、序盤に無理をしてでも出す意味が生まれる。ただし6マナあたりのラインを超えると「中・長期のプラン」の領域に足を踏み入れてしまうので、その場合は別のカードによる「序盤の加速」をより早く行う助けとして《ダイアモンド》を使用することになる。

緑系であればマナクリーチャーを介した方が安定しやすいが、1t目キャストが現実的な2マナジェネラルなどは話が別。

c) コンボ

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マナを吐き出して大量のカードを引いたあと、マナの残っていない盤面から強引に継続するための札となる。この場合は序盤の優位という発想とは多少毛色が違った運用もするし、本来の想定通り一刻も早くコンボ体勢を整えるという運用もする。


おわりに

駆け足だったので雑なまとめとなるが、言うことは概ねいつもと同じ。採用率が高い定番カードだからといって無条件で入れていいわけではないし、投入するカード1枚1枚に対してきちんと考察を重ねることこそがデッキを練り上げる一番の近道であると信じている。

2015-11-15

第七回EDHカード紹介: 《ボロスの魔除け/Boros Charm》

第七回まで続いてきたみんなで作るEDHカード紹介、今回のテーマは「インスタント・ソーサリー」。正直なことを言うと範囲が広すぎてこのテーマだけで何回でも書けそうなものなのだが、ここまで行儀よくカードタイプを消化してきたので最後はこうなるのも致し方なしだ。

MtGの華たる呪文、他の面々がどのような選択をするのかは気になるがそれは脇に置いておこう。今回紹介するカードはこれだ。

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Boros Charm / ボロスの魔除け (赤)(白)

インスタント

 

以下から1つを選ぶ。

・プレイヤー1人を対象とする。ボロスの魔除けはそのプレイヤーに4点のダメージを与える。

・あなたがコントロールするパーマネントはターン終了時まで破壊不能を得る。

・クリーチャー1体を対象とする。それはターン終了時まで二段攻撃を得る。

概要

これまで紹介してきた わけのわからない カードたちに比して、随分と馴染みのあるカードだと思われる。基本的に高い効率を誇る火力呪文として運用され、モダンのバーンデッキが単色ではなく白を採る原動力にすらなりうる強力なカードだ。

一方で他の2つのモードは4点火力以上のダメージを叩き出すためにはデッキを歪めなければいけなかったり、色と噛み合わない防御的な性能であったりするため、まず使われないと言ってもいいだろう。魔除けの持つ融通性を捨て去ってなお採用されるほどに、2マナ4点の火力というのは他に類を見ない高効率なのだ。

だが、ただ既存の構築フォーマットで実績のあるカードを突っ込んだだけではうまく働いてくれるとは限らないのは過去のカード紹介記事でも散々述べてきたEDH構築の常。特に火力呪文というカテゴリはその最たるもので、対戦相手の総ライフがいつもの6倍あるという現実は、「火力と高効率クリーチャーで相手のライフを削りきる」というバーンの基本戦術に真っ向から「無理」をつきつけてくる上に、駄目押しのように、かき集めた火力呪文たちもハイランダールールの前に弾薬不足という新たな敵と戦うことを強いられる。

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というわけでここはひとつこのカードの火力モードやバーンデッキのことは忘れてしまい、長ったらしいフレーバーテキスト扱いしていたテキスト欄の下側三分の二に利用価値を見出してみよう。これまで見向きもされなかったカードや能力が、特異な環境においてにわかに輝き始めるのも、これまたEDHの常だ。

運用1

さて、テキストの順序が入れ替わってしまうがまずは二段攻撃モードの方から検討していこう。普通に打点上昇のために使うと4点火力モードを撃った場合に比べてダメージ効率が落ち、かといって二段攻撃の打撃力が火力モードに優る(≒パワー5以上の)生物が踊るようなデッキからは通常真っ先に《魔除け》そのものが抜けていく。ならばコンバットトリックとして運用しようかと思えば、隣に書いてある破壊不能モードと盛大に役割が被る上にあちらは自分の全パーマネントに効果を及ぼせる。いまいち噛み合いが悪いというか、自身の他のモードに殺されてしまった能力と評価せざるをえない。

それではEDHではどうなのかといえば、《ボロスの魔除け》の属する赤白、あるいはナヤカラー、 あまりにもジェネラルが脳筋揃いすぎて 他の色に比べて「戦闘」に頼る部分が殊更に強い。コストに対しての仕事量、召喚酔い、ブロッカーと障害が多いゆえに勝ち手段を検討する段階で真っ先に外されがちな「ジェネラルで21点殴る」が、この色においては大真面目に狙われる。 いらん苦労を強いられているだけじゃないかって?俺もそう思う。 そしてその目的において、攻撃一回分に相当する二段攻撃の価値はエクストラターンも同然だ。対戦相手を殴り倒すという、高いハードルを乗り越える助けとなってくれるだろう。

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運用2

話が横道に逸れるが、60枚構築においては割と一般的な「消耗戦の末に相手の息切れを待つ」という方針は、EDHにおいて敬遠されることが多い。タイマンの消耗戦など仕掛けようものなら脇の2人のどちらかがしれっとゲームセットまで持っていくだろうし、かといって全員を妨害しようとするとあまりにも対処しなければいけないものが多すぎる。対戦相手との協調というお題目も、最終的に背中から刺されてしまっては意味が無い。かくして対戦相手になど目もくれず、速度、速度、もっと速度──とばかりにチキンランは加熱、コンボ合戦になり、妨害カードも攻防一体のカウンターくらい、などという環境が生まれた。

個人的な印象で申し訳ないが、EDHに良い感情を持っていないプレイヤーはこの時期で認識が止まっているように感じる……が、それはまあさておくとして、あまりに環境が速度やコンボに傾いた結果、一部のプレイヤー達が逆に妨害の有用性について気付き始めた。コンボに向かって全リソースを吐き出しながらアクセルベタ踏みの全力で猛進するようなデッキは、一度躓かされると再起不能レベルの大惨事になるのだ。構築が先鋭化し、それが広く用いられるようになった時こそ、それを叩くことに主眼を置いた新たな構築理論が登場する余地が生まれ、健全な環境に戻す力が働くことは興味深い。

さて、そんな環境の変遷、生物関連のコンボの出現、妨害札や除去札の積極的な採用による環境の均衡という要素を受けて、かつてのコンボ環境においては「重く隙が大きいばかりで、各プレイヤーに影響を与えるからというだけで採用するのはデッキの練りが足りない」といった趣だった広域破壊カードが昨今の構築では平然と用いられるようになった。

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……えらく長い前振りだったが、これは破壊不能モードが有効に使えるということの証左である。僅か2マナで自分の全パーマネントに破壊不能を付与するこのカードは、対戦相手の計算を盛大に狂わせ、返す刀で斬り伏せる環境をお膳立てしてくれる代物だ。コンボ環境時代に比べてきちんと採用されるようになった単体除去に対しても耐性をくれるので、前項で説明した通りのジェネラルワントップになりがちなデッキ構成としても十二分に仕事をしてくれることだろう。


応用

この記事の冒頭でしつこいくらいに「EDHにおける火力呪文は弱い」ということを述べた。さて、火力というカテゴリからして弱いということは、積極的にデッキの枠を割いてまで火力呪文の採用に至るようなことはまずなくなるというのは容易に想像しうるだろう。そうして火力呪文が消え去り、採用カードの面でもプレイングの面でも火力に対してなんの対策をとらずともよくなった環境では、こんなカード群が台頭してくることも納得できるはずだ。

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かつて《オーガ》の紹介記事を書いた際、軽くではあるが他のペイライフカードについても言及し、それらが強力であると述べたことを覚えているだろうか。もちろん初期ライフ40というルールの恩恵を存分に受けられるからというのが最大の理由としてあるが、基本的に対戦相手によるライフへの干渉が戦闘タイミング以外ではほぼ起こらないため、ライフ減少後のプランの見通しを立てやすいからということも大いに影響している。──だからこそ、そこに付け込むことに意義がある。

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MtGには常に新たなカードが投入され続けているし、プレイヤー達の構築も日々進化している。時とともに構築における「正解」は遷ろい、メタゲームはさらに先へと進んでゆく。一度は使い物にならないと切り捨てたカードも、環境が変わるにつれて居所が見つかるかもしれないし、時にはそれが新たな構築理念を生み出すこともあるだろう。

下地となる環境を踏まえて、個々のカードが何故「強いカード」「弱いカード」たりうるのかを仔細に考察することは、いざ環境に変化が起きた時に必ず助けになるはずだし、更に言えばEDHだけの話でもない。是非とも考えを休めることなく、新たなカードを探し続けて欲しい。

2015-10-25

第六回EDHカード紹介: 《求道者テゼレット/Tezzeret the Seeker》

めでたく第六回まで続いたみんなで作るEDHカード紹介。今回のテーマは「プレインズウォーカー」。種類豊富なようでいて、実のところあまりEDHで使われることのないこのカードタイプ、打撲セレクションのカードはこちら──と、いつもなら続けるところだが、たまには違う切り口から話を始めてみよう。

EDHにおけるPWの弱さ

戦場に存在し続けるだけで、およそ尋常ではないアドバンテージを獲得していくPWというカードタイプ。スタンダードからヴィンテージまであまねくフォーマットにおいて力を振り撒くその姿は、まさにストーリー上のPWの強大さを余すことなく表現する素晴らしいデザインだ。だが冒頭で述べた通り、EDHというフォーマットにおいてのみ、ごくごく一部のカードを除いてその活躍ぶりは鳴りを潜め、そしてその現実は採用率という形で残酷に反映されている。

その理由はいくつか推測することができるが、第一に、通常の対戦と比して格段にPWが対処されてしまいやすく、第二に、各ターン1度ずつしか能力を起動できない制約が通常の対戦の半分しか自分のターンを迎える機会のない4人戦と絶望的に噛み合っていないことが挙げられる。

対戦相手のライフが各員40もある多人数戦では通常のコンバットでライフレースを挑むことはさほど意味をなさないが、数発叩けば沈んでしまうPWがいるなら話は別だ。普段はその身を持て余しているシステムクリーチャー達の格好の標的として叩きのめされてしまうだろうし、能力を活かす機会は半減、対処しなければならない脅威は3倍。2人対戦と比べて、都合6分の1程度しかPWの強さは発揮できない──というのはいささか強引に過ぎる計算式であるにせよ、そのカードパワーを大いに減じる事は議論を待たないだろう。

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さらに加えて、ほとんどのPWは通常の60枚構築、1対1の対戦を前提とした調整がなされており、タイマンであれば鬼のように強い能力ですら多人数戦ではコストに見合った見返りをなかなか満足に受けられない。強烈なロック性能を持つ《神》のプラス能力であろうとも、対象にできなかった脇の2人に対してはまるで無防備だ。

以上の点から、特に「プラス能力で忠誠度をチャージしてからマイナス能力を運用する」「奥義を目指す過程でアドバンテージも稼ぐ」ようなタイプの能力構成をしているPWが十全に真価を発揮する機会はまず訪れないし、そうでなくてもWWK発売当時の《神》の低評価の如く「4マナ払ってソーサリーの《渦巻く知識》or《送還》を撃って終わった」なんて結末に終わってしまうことが往々にして起こりうる。PWは、ことEDHにおいては、ルールに愛されなかった存在なのだ。

……と、ここで記事を閉じてしまうとただPWが弱いという主張をしただけで終わってしまう。これは採用に値するPWを紹介する記事だ。

ならばどのようなPWがEDHにおいて使用に堪え得るのかといえば、これは簡単だ。ここまで弱いところをあげつらってきたのだから、その逆張りをすればよい。すなわち、

  • 起動の機会が少ないのであれば、いっそ割り切って一度起動して使い捨てる運用ができ、
  • その一度きりの能力起動は多人数戦においても劇的なリターンを得られ
  • それを場に出た直後に初期忠誠度の範囲で執り行える

という条件が満たせるならばよいということになる。

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以上を踏まえて、ようやく今回紹介するカードの登場だ。

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Tezzeret the Seeker / 求道者テゼレット (3)(青)(青)

プレインズウォーカー ─ テゼレット

 

[+1]:アーティファクトを最大2つまで対象とし、それらをアンタップする。

[-X]:あなたのライブラリーから、点数で見たマナ・コストがX以下のアーティファクト・カードを1枚探し、それを戦場に出す。その後、あなたのライブラリーを切り直す。

[-5]:ターン終了時まで、あなたがコントロールするアーティファクトは基本のパワーとタフネスが5/5のアーティファクト・クリーチャーになる。

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概要

まず強く目を引くのは、アーティファクトをサーチし戦場に出す第二のモードだろう……というより、《テゼレット》の採用理由はほぼこの能力にある。EDHにはアーティファクトを鍵とした様々なコンボが存在することはご存知の通りで、このカードはそれらのコンボパーツに自由自在にアクセスでき、さらにコストの踏み倒しまで同時に行ってくれる。すなわち「《テゼレット》が無事に着地する」ということは、そのまま「コンボパーツが着地する」と換言することができる。たった一度の能力起動で、ゲームを決定づけるコンボの成立というリターン。これほど見事にPWに求める要件を満たすカードもそうそうないだろう。

そしてサーチという強力なアクションは、当然本来の用途で使っても一定の強さを発揮する。同一の機能を持つコンボパーツの水増しという構築は「コンボへ至るルートを増やす」メリットと「コンボを決める時以外は不要牌となる存在がデッキ内に増える」デメリットを常に併せ持っているが、サーチ行為の持つ柔軟性はそのデメリットだけを綺麗に解消してくれる。そして《テゼレット》が導く変幻自在のアーティファクトの能力──マナ加速、アドバンテージ源、相手への強烈な妨害、厄介な置物への対処──は、いざコンボを決めるという場面に負けず劣らず、盤面に対する素晴らしい干渉力を持っているのだ。

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運用

《Basalt》と《ブライトハース》のような複数のアーティファクトの組み合わせからなるコンボの場合、「相方」さえ引けば残った方になれるというサーチならではの強みがもちろんあるが、やはり特筆すべきは、真に「カード1枚で」ゲームが終わりうるアーティファクトを用いている場合だ。いかにも都合の良い話に聞こえるが、そんなカードが果たして存在するのか?

……存在するのだ。驚くべきことに。

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Proteus Staff / 変幻の杖 (3)

アーティファクト

 

(2)(青),(T):クリーチャー1体を対象とし、それをオーナーのライブラリーの一番下に置く。そのクリーチャーのコントローラーは、自分のライブラリーを、クリーチャー・カードが公開されるまで上から1枚ずつ公開する。そのプレイヤーは、そのカードを戦場に出し、残りを望む順番で自分のライブラリーの一番下に置く。この能力は、あなたがソーサリーを唱えられるときにのみ起動できる。

──散々引っ張ってまた変身かよ!!とお叱りの言葉を受けてしまいそうだが、《変身》《暴君》のコンボは実質1枚コンボのくせにやたらと多様なルートを取れるからこそ強いという側面もあるので、様々なカードを紹介する上でどうしても言及を避けられえないという事情をご寛恕いただきたい。

《潮吹きの暴君》はすっかりお馴染みとなったが、それを導くこのカード、マナコストは3マナである。これはテゼレットの忠誠度を残した状態で戦場へ出せることを意味する。……さて、《暴君》が如何様にコンボとなるか、今一度思い出してみよう。複数のアーティファクトへのバウンスループを構築することで無色有色の無限マナを生み出し、そのマナを元手に決め技となるカードへ展開していくのが基本構造だ。無限マナ、自分のパーマネントへのバウンス。そう、《暴君》の構築するループに《テゼレット》を組み込むことによって、本来ターン1回で完結するはずだったサーチ能力が好きなだけ使えるようになるのだ。そして《写本裁断機》だろうが《迫撃鞘》だろうが《ゴブリンの大砲》だろうがライブラリーから引きずり出せる《テゼレット》は、そのまま速やかにゲームを決めてくれることだろう。

コンボの過程に、終端に、そしてコンボに走らない場面ですら仕事に事欠かないこのカードは、まさしくEDHにおいても一級品のカードだ。自信を持ってお勧めしよう。

応用

《テゼレット》は、PWがEDHにおいて弱くなる要素に引っ掛からずに運用できるからこそ採用に足るということを長々と述べた。だがPWが活躍する手段はなにもルールの抜け道を探すだけにはとどまらない。PWが弱くならざるをえない原因たる基幹ルール──プレイヤーは4人、自分のターンは1度、そして相手のターンが3度──それ自体に干渉し、捻じ曲げることができることが青の強みだ。ここまで言えばお察しだろう。用いるのはこれらカード群だ。

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そしてこれらのカードをプレイするにあたって、今まで言及すらしなかったテゼレットのプラス能力は大いに役に立つことだろう。あるいはマイナス能力の2分割払いによるコンボパーツの複数サーチや、《Mana Crypt》サーチによる擬似コスト軽減から次ターンの万全の状態でのコンボスタートなど、単純に使うだけでも強いテイクターンカードは「ターン1度」の各種制限を存分に悪用することで大いに輝いてくれる。

PWに限ったことではないが、通常の構築フォーマットで強さが証明されているカードをそのまま採用しても、特異な環境たるEDHで活躍できるとは限らない。そして、やはりPWに限ったことではないが、フォーマットの特性に、自分のデッキに、よりマッチするカードを常に探す。あるいは特に深い考え無く使っても強いカードを、より輝かせるような場面を模索する。そのような姿勢を常に持ち続けて欲しい。