NHK の報道姿勢についてちょっと思う

ちょっと堅苦しい話になってしまいますが、NHK の放送で疑問に思うことがあり、ずっともやもやしていたので、ここで吐き出してしまうことにしました。

先日例会のことをちょっと書きましたが、その時に NHK の番組をいくつか観る機会がありました。まず最初に観たのは『「未来への提言」理論物理学者 リサ・ランドール〜異次元を語る〜』でした。この番組自体は素晴らしいもので、取り上げた題材はもとより、難しくなりがちな話題を宇宙飛行士の若田さんが分かりやすく質問して視聴者の立場で話を進めていく見事な手法など、実によくできた番組でした。ただ1つの点を除いて。

ランドール博士は今もっとも注目されている科学者の一人で、語り口も科学者とは思えないほどやさしいものでした。そして、番組では博士の生の声(英語)もわずかに聞き取ることができました。気になったのは、番組の初めの方にあった場面です。日本語での吹き替えでは「たしかに5次元空間は存在するのです」と
断言していた
のですが、博士は英語で「could say」だっかた「may happen」というような表現を使っていたと思います。つまり、本当は断言してなかったんですよ(聞き間違えてなければの話ですが)。それをどうして断言したかのように吹き替えてしまったのでしょうか?

この番組で若田さんがランドール博士に質問する内容などについては、さとみさんという方が書かれている人気ブログの中でからくりを披露されています。こうした準備をきちんとしていただけに、とても残念です。

(インタビューの事前相談について書かれた記事はこちら

その後、NHK 特集か何かの、「ワーキング・プア〜働く貧困層」とか何とかっていう番組と、クローズアップ現代の「日本人のモラルは低下したのか」のようなタイトルの番組も見ました。「ワーキング〜」の方は、よく取材されていて番組自体はやはり優れたものだと思うのですが、2つ気になる部分がありました。

1つは、仕事を探している30代の方がお金を使い果たしてしまい、ハロー・ワーク(って言うんですよね、今は)で紹介してもらった会社が歩いていける場所ではなかったので面接を断るしかなかった場面です。この時ハロー・ワークの職員は、「お金を一銭も持っていないということに愕然としました」とか「私どもとしては、いかんともしがたい」と言っていました。でも、それって人が一生懸命仕事を探しているのに、その人に何もしてあげないのと同じですよね。まさにお役所の対応。この人が悪いとは言いませんが、こういうケースは少なくないと思います。その点をハロー・ワークが現場の声として政府に意見するとか、NHK も黙ってないで問題提起をすればいいのにと強く思いました。

そしてもう1つは、番組の最後で進行役の方が「私は疑問に思います」で締めくくっていること。ドキュメンタリー番組としてそれに徹するのもいいですが、
「放送してそれでお終い。俺たちの仕事はここまでで十分」
という感じがします。国民からお金を取って、政府からも補助金(=つまり税金)をもらって放送している局なのだから、もっと意見や提言をしていくべきじゃないでしょうか?

これが、例えばイギリスの BBC 放送だったらどうでしょう。以前 BBC に勤めていた方のご家族に直接聞いた話ですが、放送の中で提起された問題は、国会でも真剣に受け止めて政策に反映されたりするそうです。NHK とは大違いです。もう少し見習って欲しいものです。

最後のモラルに関する番組は、単なる討論会でした。言いたいことを言うだけ。司会を含めて3人で話を進め、モラルの低下を嘆き、どうしたらいいと思うかを述べただけです。これも放送して終わり。
そこから先がないのです。

日本の政治や政治家は、口で批判されても動きません。それは誰でも分かりますよね。特に今の政治家はやりたい放題です。民意なんてまったく反映されない「政治ゲーム」を楽しんでいるだけ。少なくとも、海外にいる人間にはそう見えます。そういう政治や政治家に一番影響を与えるのはメディアなのですから、もっと国民の声を反映して、それを実際に提言していくようにできないのでしょうか。NHK がやっていることは、民放と同じレベルです。だったら NHK なんてなくてもいいとう感じもします。

こういう話をここに書くなら、自分で NHK に文句を言えばいいじゃないかと思われるかも知れませんが、文句を言って「はい、そうですか」と聞いてくれるでしょうか?このブログはほとんど読者がいないので影響力は皆無に等しいですが、こうやってインターネットという「メディア」で発信することは、無意味ではないと思ってます。それに、そういう気持ちを抱いて悶々としているより、こうして書いてしまうとすっきりします。単なるストレス発散なのかも知れませんが。。。

それにしても、海外から見ると日本のいいところ、悪いところが、日本にいた時よりもずっとよく分かります。NHK の人も、海外経験や広い見識のある人を迎えるべきじゃないでしょうか。結局は、エリート集団ですからね。