小橋引退してくれ

内側から見たノアの崩壊 (別冊宝島)

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PRO-WRESTLING NOAH 鉄人 小橋建太 ~絶対王者への道~(DVD 6枚組)

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先日、別冊宝島から発売された「内側から見たノアの崩壊」を読みまして、まーテンション下がること下がること。なによりも詐欺って怖いなーと思ったし、泉田や三沢夫人から大枚を騙し盗った凄腕詐欺師にして、撒いた出費の数倍を回収するに至らなかったほどノア、ひいてはプロレス界の景気が悪かったという悪夢じみた顛末。巻末には個人として債権者への返済を背負う泉田と、泉田同様ノアをリストラされたマイティ井上の対談。気が滅入るって! ま、それはそれとしまして。

一時期は「新・業界の盟主」と謳われたプロレスリング・ノアの凋落が、このところ目に余る。何よりまずいのは若手の層がスッカラカンであることだが、まあ団体の問題は団体の人間が解決するしかない。レスラーやフロントの皆さんに頑張っていただくしかない。今回わたくしが書きたいのは団体運営の話ではなく、リング上の問題についてである。

小橋建太は、いったい何をどうすれば引退してくれるんでしょうかね。小橋に対して「まだまだ頑張ってくれ!」と今、本気で思っているプロレスファンは何人いるんだろう。全然いないのではないかと、そう信じたい気持ちなのです。御存知の通り小橋はもうボロボロなんだけど、頑なに「小橋のプロレス」しかやらないもんだから、試合はもう見てられない有様になっている。先日仙台で行われた「ALL TOGETHER」では、ムーンサルトプレスを敢行したら膝を亀裂骨折した。

いつも世の中をナナメに見てウヒヒウヒヒと陰口叩いて暮らしているわたくしのようなカス野郎ですら、かつては小橋さん凄すぎるという記事([http://pencroft.hatenablog.com/entry/20040718/p1)を書いてしまったことがあるほど、小橋という男はプロレス界の至宝であり、特別なプロレスラーである。腎臓癌から奇跡の復活を果たしたあたりまではオレも心おきなく応援していたのだが、その後の小橋はヒジをやったりヒザをやったりしてボロボロ、試合はポンコツ、歩く姿もヨタヨタである。しかし小橋の輝かしいキャリア、特に全盛期の数年間の記憶があるならば、小橋が引退したとしても感謝こそすれ責めるやつはひとりもいないだろう。しかし驚かされるやら呆れるやら、小橋本人には引退するつもりが全然ないらしいのだ。

我々はすでに、三沢光晴を失っているのだ。小橋ほどの不世出のレスラーを、カタワにしていいとは思えない。もし馬場が生きていれば、小橋を諌めたかもしれない。しかし馬場も鶴田も、三沢までもがこの世を去ってしまった。オレは、こうなったらもうファンが小橋に引導を渡すしかないと思っている。「小橋引退しろ」垂れ幕とか作って、辞めろコールとかして伝えるしかないだろうと思う。しかし同時に、これはほとんど不可能だろうなとも思う。実際に小橋が「GRAND SWORD」全開で入場してきてごらんなさいよ、そんなもん現人神を崇めるように小橋コールと声援を送るしかないに決まっておるのだ。そうだ、小橋を取り巻く状況はここ数年、急速に宗教化しているようにオレには感じられる。小橋が我々民衆の罪を背負ってボロボロになり、十字架にかけられるキリストのように見えるのだ。そういや2005年に小橋が英国に遠征した際には、はじめて見る鉄人小橋が凄すぎるもんだからイギリス人の観客全員がアラーの神を崇めるように両手をあげて頭を垂れたという事件があった。なにしろ、小橋を見た人はああなってしまうのである。

しかしそれでも、呑気に小橋コールやってる場合じゃあないと思うのだ。上記の「引退しろ垂れ幕」なんかは観戦マナーを外れたテロ行為かもしれないが、それでも永きにわたって小橋に何かをもらってきたファンほど、今の小橋には引退してほしいと切実に願っているのではないだろうか。数十年後、年とってヨボヨボになってもそれなりに元気で生きている小橋建太をオレは見たい。なのに今も完全復活する気満々の小橋は、ズバリ言って底なしのバカである。だが我々は、そんな小橋のバカなところも愛していたのだ。だから「引退してくれ」というファンの思いは、よほど強く叫ばないと伝わらない。なにしろバカだから、仕方ないのである。