2006年のトーマス・クラウン・アフェアー

今年を象徴する紅白盤を二枚。

Loose

Loose

Futuresex/Lovesounds

Futuresex/Lovesounds

例えば2005年の暮れぐらいに「来年はプロデューサーとしてティンバランドが大忙しだよ」なんて言っても「まさか!」と狼少年扱いされかねないですが、本当にティンバ先生が奇跡的な大復活を果たした一年だったように思います。
まずは初夏にネリー・ファタードの3rdアルバムをプロデュース。彼女としても、音楽的にこれまでの混沌とした「フォークロアから2ステップまで」といったガーリーな闇鍋的ポップスから“ハクいスケ”R&B路線に大転換を果たした好盤でもあると思います。そんなアルバムを全面的にバックアップしたのがティム・モゥズリーakaトーマス・クラウンakaティンバランド大先生。80年代、NWの人達がこぞってアフリカ/ワールドミュージックを意識した時期がありましたが、その路線に物申さんとばかりに「今、俺様が」とティンバ先生がアフリカ回帰の80'sポップスを展開します。ネリー・ファタードのヴォーカルを殺すことなく、(ある種過剰とも言える)図太いキックを随所に配置しているのが印象的です。


一方、秋にリリースされたジャスティン・ティンバーレイクの2ndアルバム、こちらは彼の1stアルバムでもティンバ先生が何曲かトラックを担当するものの、どちらかと言うと当時本当に脂が乗っていたネプチューンズ主導のアルバム。今回の2ndでは全編ティンバ主導によるもので、1stでの雪辱を果たすかのような気合の入り具合が伺えるアルバムとなっております。上記のネリー嬢のモチーフがマドンナなら、ジャスティン君の場合はマイケル・ジャクソンにプリンス!


上記PV曲「My Love」ではジュリアナ(!)を連想させるような、ユーロビート的なシンセのフレーズをチョップ。ネリー・ファタードの「Loose」にしろ、このジャスティン・ティンバーレイクの「フューチャーセックス/ラヴサウンズ」にしろ、ギターなどよりシンセサイザーが終始鳴り響いている印象があり、つまりここでもキーワードは80'sポップスなわけです。で、アルバム終盤はこれまたアフリカ回帰的な多重コーラスを用いた壮大なバラード「Losing My Way」で締め括ります(アルバム最終曲はリック・ルービン作のピアノバラードですが)。
確か、今年のサンレコのインタビューでティンバ先生は「一時期は『ティンバランドなんてもうトレンドじゃないよな』みたいな事を噂されて、大分落ち込んで太っちゃったりしたんだ。音楽に対するモチベーションも下がる一方で、でもある時『このままじゃダメだ!』と思ってワークアウトなんか始めて体を絞ったら創作意欲も持ち直してきた」みたいな発言をしていました。まさに「16ブロック」のモス・デフじゃないけど「人は変われる!」。そうしたポジティヴなヴァイヴも、両作品から滲み出ているような気もします。
まさにティンバ・イヤーとも言える2006年でしたが、そんな彼の仕事で最も印象的だったのがR&B界の“キャバ嬢”(褒めてる)の面目躍如と言った、以下のPV(地下鉄でポールダンス!)での客演でしょうか。こういう依頼も嬉々として引き受ける姿勢が「職人だなぁ」と感心してしまいますね。