素晴らしき哉、父さんギツネ「ファンタスティック Mr.Fox」


ロアルド・ダールの児童文学をウェス・アンダーソンがストップモーションアニメとして映画化。原作未読。
ウェス・アンダーソンの映画って「子供が妙にませていたり冷めたことを言う」「大人が妙に馬鹿げたことを言ったり子供じみた行動に出る」この二つのギャップを楽しめるか否かで、結構好みが分かれるのではないだろうか。個人的には「ロイヤル・テネンバウムス」「ライフ・アクアティック」あたりまでは楽しめたけど、前作「ダージリン急行」では、インドの人たちの描き方があんまりにもアレだったので(その土地の人々に死に際してキンクスかなんかを流して感傷にひたるガキっぽさ)、「もういいかな」と思っていたのだけど、この「ファンタスティック Mr.Fox」に関して言えば、そうしたアンダーソン作品の特有の「幼さ・未成熟さ」的な味付けがプラスに作用していたように思う。
つまりはいつもアンダーソン作品のトーン(音楽もストーンズにビーチボーイズ、ジョルジュ・ドリュー「アメリカの夜」!という相変わらずさ)で、動物が主人公の人形劇をやっていて、その凝り方と言えば「テネンバウムス」でのハツカネズミなどをすでに見ていればわかるように、細部まで感心するほどの作り込み。「こうでなきゃダメ」というこだわりがヒシヒシ伝わってくるようで、見ていて非常に心地よさをおぼえる。
狐やアナグマが穴を掘る、という描写も「ライフ・アクアティック」の潜水艦を断面図で見せるシーンの楽しさがあって、やっぱりニヤニヤしてしまう。子供の頃に親に買って貰ってボロボロになるまで繰り返し読んだ、「カラスのパンやさん」「とこちゃんはどこ」、福音館のかがくのほんシリーズの「地球」「海」などの、かこさとしの絵本を思い出したりもした。

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↑パルプのジャーヴィス・コッカーが狂言回しみたいな感じでチラっと出てきて歌うシーンもあり。