シートン俗物記 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2009-11-21 晴れ

[]事業仕分けについて雑感

自滅する地方について上げようと思っていたのだが、これはちょっとな、と思ったので一言。


もうだめかもしらんね(伊藤剛のトカトニズム)

http://d.hatena.ne.jp/goito-mineral/20091118/1258497943

この政権のコンセプトをつきつめると、知的な達成に向けてがんばることや、人生向上心みたいなものが排除され、ただ生きているだけの人が賞揚される社会が待っているような気がします。

先端研究はいらない、文化的な啓蒙もいらない、ただただまんべんなく均等に子供手当てを支給することが求められている、というわけですから。


科学も、文化も、芸術も、よく考えられたもの、洗練されたもの、先端的なもの、つまり受容できる人の人数が必然的に少なくなるものはいらない、という社会です。


だって「文化大革命」ですよ。

比喩として言っているとして、ではこちらも比喩で返せば、この先にあるのは「下放」じゃないのか、「ポル・ポト」じゃないのかと思います。


「仕分け」の具体的な様子を聞いていて感じたのは、「専門家よりも、何も知らない人間のほうが正しい」という姿勢です。

マスコミ仕事をしていると、よく「それじゃ読者は分かりませんから」的なことを言われたりします。

ちがうよ。読者は分かるよ。少なくともおまえよりはよっぽど頭がいいよ。

構造的には、それとよく似ています。

仮想的に「大衆」を設定して、そこに依拠することで、どれだけでも考えずにものを進めてしまえる。

結果、行き着く先は「馬鹿こそが正しい」「ものを考えていない人間が正しい」という社会です。


まぁ、科学研究に対してリスペクトしてくださるのはうれしい限りなのだが、ちょっと違和感がある。

というのもだな。すでに20年ほど科学研究なんてのは「成果は?」「何の役に立つの?」「結果が出るまでの見通しは?」のような感じで「仕分け」されてきたからなんだわ。

自分理学系の固体物理実験屋だったから、予算なんてのは削られ放題で、科研費を申請しようにも、申請書に何て書こうか苦労したものだった。だから、なるべく予算を掛けないように頑張るとか、他の研究室から分与されてくる金だとか、いろいろ融通した。学会発表なんて自費だったから、車で延々と4人乗りで出掛けたり、健康ランドカプセルホテルに泊まったりした事もある。

外部資金を取ってくるともなれば、実用性についての話は当然出てくるから工学系に比べれば状況は厳しい。もちろん、自分研究は先端とは到底呼べないようなものだったが、常に「役に立つかどうかなんて基準を今持ち出すなよ」というのは実感としてあったのだ。

特に独法化以降、学内でも「選択と集中」は容赦なく進められた訳で、その段階で「何も知らない人間が判断する」状況は当然のようにあった。

で、その自分達が削られる一方の結果としての「選択と集中」であったのが、スパコン研究であった筈なのだから、当然「役に立つ」と判断されるだけの価値がある、とこちらも考えていたのだ。

ところがだ、事業仕分けで示されたスパコン研究の説明は信じられないほど貧弱な代物だった。

「え?これで説明しているつもりなの?」

これが正直なところの気持ち。だって、こちとらずっと「何も判らないド素人」に「どのような価値を持ちうるのか、たとえすぐに役立たなくてもどういった意味があるのか」について散々説明し続けてきたわけですよ。悪いけど、自分のやっている研究価値について説明する、なんて学部生でもやってることですわ。だって、就職活動で訊かれるものね。

自分がやっている(やっていく)研究がどういうものなのか、「何も判らないド素人」の就職担当者相手に、(彼らが飽きない程度に)手早くまとめて、しかも説得力を持たせなくてはならない。

しかも、議事録を見る限り、仕分け人は救いの手を伸ばしている。

どう見ても、スパコン研究プレゼンターが自覚が無さ過ぎたとしか思えない。

自分は一見ムダに見える研究であっても、それが最先端でなくても研究研究者に金を出してやるべきだろうとは思う。が、その一方で自分研究がどう位置づけられるものなのか、それはもっと研究者も自覚的であるべきだと思うよ。それは、金を引き出すためだけじゃなく、自分研究について客観的視点を持ち込む、という点でも重要だろう。

最先端研究、ということで、少し甘えすぎていたんではないか、というのが自分感想

これを機に、スパコン研究の意義についてもっと練り直して、より良き研究にしていける事を願っている。せっかく、オレ等の削った金を使っているんだからね。


ちなみに、自分スパコンを使う研究とは縁がないのだが、実験結果を照らし合わすためにシミュレーションを掛ける事はある。で、昔はSGI製のONYX搭載のワークステーションで数時間ブン回してやってたシミュレーションパソコンレベルでも十分可能になった。それも、数年前にはPC-UNIX上でないと不可能だったのが、XP上で可能なプログラム、それもネット上に公開されてたりする、で可能になった。だから、個人的には最先端スパコンよりも手軽に高速で走るマシンプログラムが手に入る方がよほど研究に有意義だなぁ、などと思う。

単に(短期間に終わるであろう)一位を目指すより、それが有効に使える環境も含めて研究して欲しいものだと思っているのだ。


で、このほかSpring-8なんかも意外に仕分け人はよく見ていると思うよ。だって、愛知県でも放射光施設の建設が進められているんですわ。


名古屋大学 小型シンクロトロン研究センタ

http://www.nusrc.nagoya-u.ac.jp/


「完成したら使いにきてください」なんて誘われたりしたぐらいで、全国で同様の施設が増えれば、Sprig-8の位置づけだって変わってくるだろう。


科学ってのは確かに「ド素人」には判りにくい部分がある。説明する時に「こんな説明じゃ全部は伝えきれていない」と考える事も確かだ。が、やはり「判らないくせに文句を付けるな」という態度は結局あまり結果を生まないと思う。伝えきれないまでも、自分の行っている研究に対して自覚的であるべきだ。でないと、旧ソ連テクノクラートと同じような事になるだろう、という気がする。

下上右左下上右左 2009/11/22 10:49 研究者にも意識改革が必要な時代になってきたというところでしょうか。
大企業や大金持ちみたいに、海外流出したりして・・

原田原田 2009/11/22 10:52 研究者じゃなくて、現場を知らない文部省の小役人でしょ。研究者上がりの毛利さんなんかまともな説明してたし。

のってのって 2009/11/22 11:30 複雑さや不透明性と権威が結びつくとバブルが生まれる。それがリーマンショックやら、建築偽装、今の日本国債。

passerbypasserby 2009/11/22 12:02 内容に、ではないんですが、「トカトントニズム」です。

伊藤さんはTwitterのつぶやきを拝見する限りではかなりアンチ民主党のようにお見受けしたんですが、そのへんのバイアス(??)が論調にも影響を及ぼしているのかもしれない、と思いました。勝手な推測ですが。

書を守るもの書を守るもの 2009/11/22 13:20 科学技術基本計画(平成18年3月28日閣議決定)より、
「基礎研究には、人文・社会科学を含め、研究者の自由な発想に基づく研究と、政策に基づき将来の応用を目指す基礎研究があり、それぞれ、意義を踏まえて推進する。すなわち、前者については、新しい知を生み続ける重厚な知的蓄積(多様性の苗床)を形成することを目指し、萌芽段階からの多様な研究や時流に流されない普遍的な知の探求を長期的視点の下で推進する。一方、後者については、次項以下に述べる政策課題対応型研究開発の一部と位置付けられるものであり、次項2.に基づく重点化を図りつつ、政策目標の達成に向け、経済・社会の変革につながる非連続的なイノベーションの源泉となる知識の創出を目指して進める。」
http://www.mext.go.jp/a_menu/kagaku/kihon/06032816/001/001/006.htm

ネットをあれこれ読んでいると、「研究者の自由な発想に基づく研究」を擁護する論理で「政策に基づき将来の応用を目指す基礎研究」を擁護しているように思えるものを見掛けて違和感があります。

時々拝見時々拝見 2009/11/22 16:47 スパコン、プレゼンがなってませんね。科学関係の予算が不足している何よりの証拠でしょう。
工業だろうと建設だろうと、(スパコンの裏づけのある)他国に全部負けて、工業関係の輸出は激減するんですよ、それで良いんですか、くらい私でも言えるのに。
政党助成金の仕分けしないんですかね?アメリカと国会議員の「成果」とかも。

通りすがりですが通りすがりですが 2009/11/22 17:19 高速道路無料化に反対の理由について聞きたい。

万年下っ端プログラマ万年下っ端プログラマ 2009/11/22 17:38 >研究者じゃなくて、現場を知らない文部省の小役人でしょ。

仕分の様子を実際に聞いてみると、文科省/理研から説明に来てた人の中で、一番偉そうな人の事を「局長」と呼んでいます。
中央省庁で云う「局長」が何かを考えれば……小役人だった方が、まだ、現場の事を知ってたでしょうね。

>スパコン、プレゼンがなってませんね。

プレゼンが酷いのも、マネージメントがダメダメな事の表れの一つなんじゃないんですかね?
何で、
「(この計画から、すでに共同開発先3社の内、2社が逃げてるけど)最後の1社も逃げる事は無いの? もし、最後の1社にも逃げられたら、どうなるの?」
と云う質問に、何故、答えられないんですかねぇ……。

256256 2009/11/22 18:16 「議事録を見る限り、仕分け人は救いの手を伸ばしている。」と書かれていますが、「議事録」とは何を指してますか?「第3WG評価コメント」ですか?

22222222 2009/11/22 19:42 科学利権屋阿鼻叫喚って感じですね。

野良夫野良夫 2009/11/23 10:23 常温核融合の荒田先生に1億くらい、ポーンと出しましょうよ。

   2009/11/24 15:28 伊藤のあだ名は「バカ」ですぜ?
まともに相手しちゃいけませんよ

通行人N通行人N 2009/11/26 16:46 トピックとは直接関係ない話題で申し訳ないのですが、すばらしい話だと思ったので。
国際貢献も「聖域無き事業仕分け」のターゲットとなったようです。

国際機関への拠出金「一覧は?」外務省「作っていない」
ttp://www.asahi.com/politics/update/1126/TKY200911250484.html

PKO教育施設「廃止」 首相「来年も仕分け継続」
ttp://www.asahi.com/politics/update/1124/TKY200911240406.html

こういったものはバラ撒きを継続するのかと思っていましたが、やりますね鳩山内閣。
見直しました。この調子で、海外からの批判の多い非民主国家へのODA供与や、
相手国から感謝されないような「縁の下の力持ち」的援助はどんどん無くしてほしいものです。
北欧の国々に習い、金額の多さではなく援助の質で勝負する海外支援を目指してほしい。

支出の切り詰め方において、今のところ民主党は自民党をはるかに上回っています。
あとは「税金をどう使っていくのか」でしっかりと方針を示してくれれば、
僕も民主党に投票する気になるのですが……

KK 2009/11/27 20:55 なかなか興味深いお話でした。

私は、いわゆる工学系の出身なので、昔に比べると
大学や研究機関は資金がもらえるようになったと思っていました。
理学系の方にとっては、予算削減は昔からずっと続くことだったのですね。
そんな状態で、「にわか」が偉そうに
>この政権のコンセプトをつきつめると、知的な達成に向けてがんばることや、人生の向上心みたいなものが排除され、ただ生きているだけの人が賞揚される社会が待っているような気がします。

なんてことを言われると腹が立つでしょうね。

90年代は工学系もひどいものだったそうですから、「科学立国」なんていつまで言っていられるのかが心配になってきます。

アシュラ王アシュラ王 2009/11/28 00:10 大学の卒検に自分のバイトのプログラマ・スキル(アセンブラ等の)は役に立ったなー。
4年制の大学に7年居たけど(笑)、4年生の時は大学に残ってくれないかと言われましたね。
結婚も決まってたし断りました。給料的に厳しいの判ってたから。

金を払って聞いてもらう歌と、
金を貰って聞いてもらえる歌が有るそうですが、
金を貰って研究できるなら、せめて説明ぐらいはできるべきですね。

kknekokkneko 2009/11/29 18:47 座布団10枚ですニャ〜。ノーベル賞もらった先生方よかよっぽど説得力あります。
勝手ながら拙ブログで紹介させていただきましたm(_ _)m

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