シートン俗物記

非才無能の俗物オッサンが適当なことを書きます

シモのはなし

ご無沙汰しておりました。さて、先日こんな話があったことをご存じでしょうか?


浅草寺トイレで“日中摩擦” 水に流さぬ中国人観光客 ゴミ箱に使用済み紙
http://sankei.jp.msn.com/life/trend/100818/trd1008182310017-n1.htm

東京・浅草の浅草寺で最近、トイレのゴミ箱に使用済みのトイレ紙を捨てる行為が目立っている。トイレ紙を流す習慣のない中国の観光客が悪気なく行っているとみられ、寺は中国語の張り紙で注意を促すなど対応しているが、事態はなかなか改善しないようだ。中国人観光客に人気があることで知られる浅草寺だが、思わぬトイレ文化の“日中摩擦”に関係者は頭を悩ましている。
 東京・浅草の浅草寺で最近、トイレのゴミ箱に使用済みのトイレ紙を捨てる行為が目立っている。トイレ紙を流す習慣のない中国の観光客が悪気なく行っているとみられ、寺は中国語の張り紙で注意を促すなど対応しているが、事態はなかなか改善しないようだ。中国人観光客に人気があることで知られる浅草寺だが、思わぬトイレ文化の“日中摩擦”に関係者は頭を悩ましている。

 浅草寺によると「トイレ紙問題」は昨年から顕著になり、特に中国人の観光ツアーの一行が訪れた後によくみられるという。

 中国ではトイレ紙の品質が悪くて詰まりやすいことなどから、使用済みの紙をゴミ箱に捨てる習慣がある。中国語の新聞「中文導報」(東京)の張石副編集長は「観光客に悪気はなく、『トイレを詰まらせたら大変』と考えてゴミ箱に捨てている」と解説する。

 寺は7月上旬、トイレに「水で流してください」という中国語の張り紙を掲示したが、効果は「紙の量が少し減った程度」(寺関係者)という。張り紙は中国で現在ほとんど使われていない旧字で書かれており、寺は内容が十分に伝わらなかったと判断。一般的な簡体字で「ご協力感謝します」という一文を加えた新しい張り紙を作成し、18日に張り出した。

実は、観光名所の秋葉原でも同様の現象が起きている。大手の家電量販店ではトイレの正しい使い方を説明する中国語などの張り紙を掲示。ゴミ箱の紙を回収するなどのトイレ清掃をこまめに行っている。

 張副編集長は「中国のトイレ事情が日本と同じになるには、あと20年くらい必要なのではないか」としている。


自分が行く(行った)国の多くが、紙をトイレに流さない(流せない)国で、むしろ日本のようにトイレットペーパーをドバドバ流す国の方が例外的です。


旅をするとは歩くこと その1
http://d.hatena.ne.jp/Dr-Seton/20090506/1241618888

「それから、水は水道水は飲まないように。水は店で買って飲んでください。トイレでは紙は流せません。紙は横のゴミ箱に捨ててください。水の勢いがそれほどではありませんし、紙も質がよくありません。」

そうか、そういえば今まで行った国は大体そんな感じだったな。ま、問題ないね。


自分はむしろ紙で拭くよりも、アラブ世界のように洗ってしまう方が効果的、と心得てます。左手に水を受けて、それでジャブジャブと股間を洗う。アラブ世界で左手が「不浄の手」とされているのも納得です。

紙を流すかどうかは、紙の質の問題だけではなく、下水道にも関わってきます。自分は海外において日本人観光客がトイレに紙を詰まらせて迷惑を掛けているのを何度と無く体験しているので、日本でも用を足した紙は、備え付けのゴミ箱に捨てる方が良いんじゃないの?と考えてきました。


使用済みの紙が下水道に与える負荷は大きくて、下水管だけじゃなく、下水処理場でも紙を分解するのに大量の曝気が必要で、しかも汚泥量を増加させます。環境面で見れば、日本のトイレ利用法は問題があるのではないでしょうか。


だから、浅草寺は発想を変えて、使用済みの紙を捨てるゴミ箱を設置するべきだと思います。その方が、下水道に掛ける負担も減りますよ。


もちろん、洗浄機能付き便器を導入する、という手段もあるわけで、これなら使用済み紙の量を減らせるし、例え捨てるにしろ、混乱を防ぐ効果があるでしょう。
各メーカーさんはトイレの節水能力アップに努めていて本当に頭が下がります。


最新のトイレは地球にやさしい技術がいっぱい(トイレナビ)
http://www.sanitary-net.com/saving/index.html

便器本体

【節水機能】各社独自の技術にて節水性能を向上し、近年は、洗浄水量6リットル以下が標準となりました。

【CO2削減】洗浄水量を抑えることで、実は地球温暖化防止に貢献します。トイレの節水技術は低炭素化社会の実現に役立っております。


ここで、ペーパーの使用を減らす(無くす)事が出来れば、さらに素晴らしいと思うので、今回のエピソードを
「中国人はマナーがなっていない、おわり」
で済ますのはもったいない。むしろ、日本のトイレ使用法再考に繋げて欲しいものです。


さて、紙に限らずタフなトイレ体験が海外では付き物なのですが、私の体験したトイレエピソードを少し紹介します。


中国奥地を旅した時のこと。バスの休憩のために山の集落で降車しました。実はその時に猛烈に腹を下していて、バスの振動で「あ、もうかんにん…」というような墜落気分を何度も覚えながらも、何とか剣が峰で持ち堪えていました。で、休憩時に用を足そうと考えて、厠所はどこか?と尋ねると、村の人はある小屋に案内してくれます。
掘っ立て小屋のようなそこには簡単な仕切りと溝が切ってありました。そこで用を足せ、という事らしい。が、何かがおかしい。と、仕切りの下から「ブヒブヒ」と鼻先が覗きます。
「…!」
こ、これが噂に聞く中国の「豚トイレ」というものかぁ!!
落ち着かないだけでなく、もしかして○○を後ろから囓られたりするんじゃね?
という恐怖に竦み上がり、結局そこでは用を足せず我慢してしまいました。

それにしても、繊維分の多い食事をする(せざるをえない)人々の排泄物は、豚にとって食料と成り得ようが、今どきの人の食事では、ブタにもあまり良くなさそうな気がします。


もう一つが、ベトナムメコンデルタ沿いでの体験。
椰子に囲まれた集落でトイレを尋ねると、開けた池へ連れて行ってくれました。ここで用を足せ、という。見ると池に突き出した高床式と呼ぶも粗末な小屋とそれに繋がる橋があります。小屋や橋ったって、小屋に壁はなく椰子の葉で葺いた屋根がある大きめの犬小屋のようなもので、橋もそれに相応しいサイズです。小屋の床には大きな穴が開いているのが見えて、手すりにトイレットペーパーが引っかけてあります。つまり、極めて大きめの水洗トイレ。
で、池に落ちた排泄物は池のエビや魚のエサになるらしい。紙もプカプカ浮いているし。
「豚トイレ」とは違って、○○を囓られる心配は無さそうだが、とにかく華奢な橋と小屋が恐ろしい。池には絶対落ちたくない!ベトナム人は華奢だから大丈夫だろうが、自分の体重で保つのか?
というわけで、ここでも我慢してしまいました。


が、自分の知る限り一番おそろしいトイレの話は椎名誠さんのエピソード。
あまりにも恐ろしいので、覚悟のある方だけ読んでください。


「ロシアのニタリノフの便座について」に載っている話なのだが、モスクワのなんという事の無いレストラン。厨房の近くにある地下一階のトイレにその恐怖はあった。

私のあけたドアの先は日本ふうに言うと男便所と女便所がそれぞれタタミ半畳ほどのスペースで続いていた。女便所は一段高いところにあり、真ん中にしゃがみ式の便器があった。問題はそこに散在し堆積するおびただしい糞の山であった。あるものは暗黒色にひからびて固まり、あるものは円形状にだらしなく広がり、あるものは暗赤茶緑オウド色といったあんばいのまことに複雑な色配合混濁ぶりをみせて横たわり、またあるものは灰色の紙にくるまって台地の上からぐいんとその半分ほどを突き出し、虚空に身をよじっていた。
それらの糞の堆積物は女便所の台地から下に流れ落ち、そこにもまたいくつかの円型古墳状の盛りあがりを見せてじっとうずくまっていた。


椎名さんの描写力ゆえですが、目の前に迫るような怖ろしさがあります。

シモの話は面白いですね。今後も機会があれば、スカトロジーの話をしていこうかと思います。では。

ロシアにおけるニタリノフの便座について (新潮文庫)

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「トイレと文化」考―はばかりながら (文春文庫)

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