選挙と医療政策2


以前取り上げた「産科新設」を公約に市長が当選した自治体の続報です。ちなみにこの自治体を含む医療圏では,産科の2次施設である国立長野病院から医師が引き上げられたことがしばらく前に話題になっていました。


東御市民病院が婦人科外来を開設 - ある産婦人科医のひとりごとで引用されている記事をさらに引用。

東御市は9月上旬をめどに婦人科外来を開設し、週1度程度の診察を始める。同市在住で上田市産院の非常勤医、木村宗昭氏が非常勤で勤務する。4月の市長選で、市内での産科開設を掲げ初当選した花岡利夫市長の公約に沿った格好。市は木村氏の常勤化に期待を寄せているが、同一地域内での産科医の”引っ張り合い”との指摘もあり、機能分散による地域の産科医療提供体制への懸念も広がっている。

東御市側は、東御市民病院への木村氏の勤務は「本人の意思であり、2002年〜04年まで市民病院で勤務していた」と説明するが、産科医を事実上、”引き抜かれた”形の上田市の母袋創一市長は「東御市側からは何の説明もない。現状で産婦人科機能が分散することはどうか」と懸念を示している。
(医療タイムス、長野、2008年9月2日)

元僻地公立病院勤務の身としては,何となく舞台裏は想像できます。あくまで当方の推測ですが,市としては産科医を招聘すべく大学医局などの公式なルートを通じて努力はされたのでしょうけど,当然余っている産科医など見つかるはずもなく,以前市民病院に勤務していた医師に「週1回でも」と頼み込んで,形だけでも外来開設に漕ぎつけたといったところではないでしょうか。


この方針に対するある産婦人科医のひとりごと管理人の先生のコメントには全面的に同意します。

産科二次施設が休止に追い込まれた医療圏では、産科一次施設での分娩取扱いの継続も今後ますます厳しくなっていくことが予想されます。冷静に考えて、公立の産科一次施設を今作ったとしても、果たしてその施設を何年間維持することが可能なのでしょうか? この問題に対して各自治体の首長がそれぞれ個別に対応していたんでは、いつまでたっても地域の産科医療提供体制立て直しの第1歩を踏み出すことすらできません。

引き抜かれた側の上田市が何の説明も受けていないというのが本当なら,当然当該地域の産科医料の連携について話し合いがあったわけでもないでしょうし,単純に産科機能を拡散させただけということになります。市長としては公約した以上後には引けないんでしょうけど,「無理なことは無理」であることを説明する責任を現場に丸投げすることだけはやめていただきたいものです。