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Dr.Poohの日記 このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

2010-04-05 Mon

診療明細書についての院内掲示


4月から廃止された電子化加算(3点)の代わりということで新設となった明細書発行体制等加算(1点)ですが,これを算定してもしなくても明細書は原則として患者さん全員に発行することが義務付けられています。


医療費の内容の分かる領収証及び個別の診療報酬の算定項目の分かる明細書の交付について(PDF)

3 電子情報処理組織の使用による請求又は光ディスク等を用いた請求により療養の給付費等の請求を行うこと(以下「レセプト電子請求」という。)が義務付けられた保険医療機関及び保険薬局については、明細書を即時に発行できる基盤が整っていると考えられることから、領収証を交付するに当たっては、正当な理由がない限り、明細書を無償で交付しなければならない旨義務付けることとしたものであること。その際、病名告知や患者のプライバシーにも配慮するため、明細書を発行する旨を院内掲示等により明示するとともに、会計窓口に「明細書には薬剤の名称や行った検査の名称が記載されます。明細書の交付を希望しない場合は事前に申し出 て下さい。」と掲示すること等を通じて、その意向を的確に確認できるようにすること。院内掲示は別紙様式7を参考とすること。

発行にともなう事務経費の持ち出しを考えるとこうした加算も算定していくという判断になるのでしょうけど,やはり釈然としないものはあります。明細書義務化については以前のエントリで述べたとおり,患者さん自身が診療報酬請求に「不正」がないか監視するという目的があるわけですが,これは本来であれば保険者なり医療行政にあるはずの説明責任を患者さんと医療機関に丸投げしたとも言えます。


で,上記通達に示された院内掲示の参考例を見るとなかなか味わい深いものがあったりします。

平成○年○月

▲▲病院


「個別の診療報酬の算定項目の分かる明細書」の発行について


当院では、医療の透明化や患者への情報提供を積極的に推進していく観点から、平成○年○月○日より、領収証の発行の際に、個別の診療報酬の算定項目の分かる明細書を無料で発行することと致しました。

明細書には、使用した薬剤の名称や行われた検査の名称が記載されるものですので、その点、御理解いただき、明細書の発行を希望されない方は、会計窓口にてその旨お申し出下さい。

医療事務向けの難解な専門用語が羅列された文書をそのまま渡すことが「医療の透明化」ではないと思うのですが,それでも「積極的に推進」していくと主張し「発行することと致し」たのは厚労省の諮問機関である中医協であって,けっして「当院」ではありません。そして現在の診療報酬体系が患者さんだけでなく医療側にとっても難解かつ不合理となっているのはその中医協における合意の結果なのです。

まあ,以前にコメント欄でもご指摘頂いたとおり,診療報酬体系が想定している医療行為が,実際に必要な診療といかに乖離しているか,そのために医療側が診療報酬を請求するさいに苦労しているかという点がこれまで患者さんの目に触れなかったのは確かですし,今回の明細書発行によりそのことが認知されることは決して悪いことばかりではないのかもしれません。

そのことを踏まえて,院内掲示例を極力尊重するかたちで補足追加してみましたがどうでしょうか。

平成○年○月

▲▲病院


「個別の診療報酬の算定項目の分かる明細書」の発行について


当院では、医療の透明化や患者への情報提供を積極的に推進していくことで不適切な診療報酬を患者さんご自身で点検して頂くという観点から出された厚生労働省の通達に従い、平成○年○月○日より、領収証の発行の際に、個別の診療報酬の算定項目の分かる明細書を無料で発行することと致しました。

明細書には、使用した薬剤の名称や行われた検査の名称、各種加算・管理料など項目が医療保険事務そのままの表記で記載され、場合によってはその内容が非常に分かりにくくなっています。分かりにくい点については診療報酬請求で定められた規則にしたがったものですので、その点、御理解いただき、納得できない点については当院で可能な範囲でご説明致しますが、当院としてもすべての規則についてその根拠を把握するところではありませんので,その場合は保険者または厚生労働省担当課へお問い合わせ頂けると幸いです。なお、明細書の発行を希望されない方は、会計窓口にてその旨お申し出下さい。


関連エントリ

■診療報酬明細書は全員に必要か


 

santasanta 2010/04/05 09:29 4月になってから近所のクリニックを受診したところ、やっぱり張り紙がありました。内容は「デフォルト明細書発行。不要なら申し出て」ということでしたが、文言はこのエントリで例示されていたものほど仰々しくありませんでした。
ちなみに、クリニック分も薬局分も明細書と領収証は別の紙に印刷されていましたので、医療費控除の申告で明細書が税務署に行っちゃう心配はしなくてよさそうです。
で、明細書を見比べて見ると今回のケースでは薬局の方が「これなんだよ」と難癖つけられそうな……1年ぶりくらいに行った薬局なのに「薬剤服用歴管理指導料」300円って、別のクリニックに行ってた最近の服用歴なんて知らないだろとか、処方箋通りに錠剤とカプセルを棚から出して袋に入れるだけで「調剤技術料」1100円とかトラブルでるんじゃないかと他人事ながら心配になってしまいました。

luckdragon2009luckdragon2009 2010/04/05 09:59 レセプトの言葉をリアルに書くと誤解の元を生みそうな...。

rijinrijin 2010/04/05 12:10  厚労省担当課の電話番号など併記されるとナイスですね。

…目を付けられてもつまらないので、あまりオススメしませんが。

DrPoohDrPooh 2010/04/05 12:53 >santaさん
やはり政策誘導的な項目は誤解を招きそうです。ジェネリック加算なんて,売上増のためにジェネリックを勧めたのか,なんて不信を招いたりしそう。その代わりに調剤基本料が引き下げられたことなんて患者さんは知らないですからね。

>luckdragon2009さん
専門用語をそのまま一般のかたが受け取ると誤解するのはよく見られることです。一般のかたも勉強すべきだ,というなら厚労省が責任持って周知して頂きたいですね。

>rijinさん
さすがにそこまでは…。というか実際にはここまでやると,くどすぎて誰も読んでくれないような。

physicianphysician 2010/04/05 16:47 未告知のmalignancy患者さんがいるのですが、悪性疾患なんとか料とった明細渡しちゃったのですが、どうなるんでしょうかねぇ。

luckdragon2009luckdragon2009 2010/04/05 17:06 あーー。告知の問題が。
以前言った記憶が...現実に...。

luckdragon2009luckdragon2009 2010/04/05 17:09 ちなみに、何か既視感あるなあ、と思ったら、これ資格者の請求書に似てます。
今、携帯なんで、自宅帰ったら説明コメント入れます。

DrPoohDrPooh 2010/04/05 17:37 >physicianさん
厚労省通達に沿った書式なら病名は明示されていないと思います。ただ,抗癌剤が処方されていたり,腫瘍マーカーの検査を施行していれば知られる可能性はありますね。未告知を貫くなら,悪性疾患ではないけれど必要なのでそうした処方や検査を行ったと説明するくらいでしょうか。それで納得して頂けるかどうか判りませんが。
いまさらですが,「告知はすべきであり,病名は隠してはいけない」という規範があると,未告知のケースにどう対処するかという議論はしにくくなるんでしょうね。

rijinrijin 2010/04/05 18:20  推進した勢力は自己決定権万能とも言うべき主張に終始していましたから、未告知とか知らされない権利なんて、興味ないんでしょう。

 訴えるならあちらを訴えていただきたい。

luckdragon2009luckdragon2009 2010/04/06 03:29 調べました。

ですが、資格者業も、近年の公正取引委員会からの通達を受け、報酬が自由化されているようで、報酬の基準を表示し、説明を行うことの義務を課されているのみです。なので、医療業務のような細かな義務は存在せず、業務の説明に関する義務はあっても、細目説明までの義務はありません。
まあ、法務であっても、法の理論までの授業みたいな義務まではないようなので、確かに、そりゃそうだな、と思います。

もちろん、専門用語の難解さ、はあるのですが、いわゆる政治的報酬の設定などはないので(というか、そんなのがあったら、逆に公正取引じゃないだろ、と突っ込まれますね。)、そういう説明事項はありません(微妙に残っているようではあるが、まあ、さほど問題ではない)。

てなわけで、医療保険の難解さ、また、医療費用の政治的設定(医療機関の規模とか、看護師の数の設定とかは、まさにそうですよね。)は、他資格業の説明事項にはない部分ですね。

でも、これが印刷されていた場合、医師側の設定内容ではないし、真面目な話、以前のエントリーでも出てましたけど、説明したら、逆に厚生労働省がこまりそうな...。(苦笑)
また、あの 30円の加算(深夜の電話待機?)の説明なんぞしたら、逆に患者さんから同情されたりして...。(苦笑)

luckdragon2009luckdragon2009 2010/04/06 03:34 病名の明確な表記がなければ、未告知問題は発生しないでしょうけど、示唆する診療細目があれば、多分、本人には分かります。
ダイレクトに病名が表記されてないから、判明しない、てのは、多分軽く考えすぎだと思います。
そういう意味で言えば、やはり軽率な決定であり、誤解を生み、問題ある決定だと思いました。> 診療保険の細目を印刷せよ、との指示。

でも、前のコメントでも書いたのですが、これ、厚生労働省も意外に困ったりしませんかね? 誰が得する設定なのでしょうか? 誰にも利益がなさそうな気がしますけど...。

DrPoohDrPooh 2010/04/06 06:06 >luckdragon2009さん
患者さんが厳しくチェックすれば医療費が抑制されるとすれば厚労省や保険者にとってはメリットなんでしょう。実際そんなにうまくいくかどうかは別として。
あと,昨日のニュースでは,薬害被害があったとき証拠になる,みたいなことを言ってました。ただ処方された証拠にはなっても因果関係の証明は簡単ではないでしょう。無過失補償に活用するという話ならいいことだとは思いますが,裁判の証拠となると…。

luckdragon2009luckdragon2009 2010/04/06 09:55 えー、だって薬は前から記載されて、医師からも説明されてましたけど...。報道見てないから良く分かりません。やはり、不可解ですねえ。

rijinrijin 2010/04/06 13:38  たとえば、内服薬ではなくて注射薬の場合、以前であればご本人の手許には情報は残りませんでした。

 これが被害者側弁護士を悩ませていたわけです。

 今後は、どのクスリを使ったのか(たとえば陣痛促進剤など)は、領収書に既に記されているから、証拠保全以前の段階ではっきりわかるわけです。

 この仕組みで最も利益(しかも一枚で数千万円)を得るのは被害者側弁護士ということになるのではないかと思っています。

luckdragon2009luckdragon2009 2010/04/06 14:51 説明ありがとうございます。
注射や、施術での内容の開示なんですね。
理解しました。

santasanta 2010/04/06 19:04 医療内容の開示ではなくて、あくまで保険請求内容の開示です。ですから、処置の過程でちょっとだけ使った薬剤で請求してないものは落ちています。私のケースだと、たとえばリドカインのショックで死んでも明細書だけでは因果関係読み取れません。

それはともかくとして、私が受け取った明細書を見る限り、ハンコも何にもない単にプリンタで印刷しただけの紙です。こんなのいくらでもでっちあげて作れるような気がしますけど、証拠として採用されるんでしょうか?

DrPoohDrPooh 2010/04/06 21:53 例えばある薬品の副作用が報じられて,自分の明細書に当該薬品が記載されているのに気がついた誰かが「被害者」という認識に至るとして,その過程で弁護士が介入する場面が想定されるのではないかと。明細書は単なる火種であって,実際の証拠はカルテ開示なりすればいいわけですから。
…という風に当方は理解しているのですが如何でしょうか。もちろん実際に因果関係が立証されるとは限りませんし,無理筋の医療訴訟をあえて煽るような弁護士ばかりではないとは思いますが。

luckdragon2009luckdragon2009 2010/04/07 00:11 みたら、基本的にはレセプトのマスタ文言(公開されてますよね)を印刷している事例が基本的なようですよね。
ちなみに、マスタ文言には見事に「悪性**」はありますし、腫瘍マーカーもあるし。

某漢方の内容も、多岐にわたって存在してました。

なんか、結構読んでくと、不思議な感じ。

あ、ちなみに、単なる請求事項項目にすぎないと思うので、ここから因果関係を読むのは困難でしょう。

あと、印刷物よりデータが良いな。本当にくれるんだったら、安全性も考えて。

いや、USB メモリとか持ってって、そこに転写してくれた方がよっぽどいい。管理しやすいし。文字列データにも容易になるでしょ。PC持ってない人には印刷でいいけどさ。

luckdragon2009luckdragon2009 2010/04/07 00:18 ちなみに、資格者領収書には職印を押します。
まあ、改竄は可能ですけどね。証明にはなります。

医療機関のも、まあ、改竄しようと思えば、いくらでも改竄は可能でしょうねえ。普通の印刷物ですし。ただ、医療機関の名前は入ってますけど。

luckdragon2009luckdragon2009 2010/04/07 00:22 ちなみに、弁護士さんと付き合った感覚から言うと、弁護士さんから煽ることはないでしょう。単に、相手が感情的になってたら、依頼にそれが反映されてしまうだけで、弁護士さんとしては相手の依頼を拒否できませんので。

いわゆる業務受付の義務があるので。
忌避の禁止かな。

santasanta 2010/04/07 00:54 NHKの「あさイチ」という番組(勝村氏出演)では、血液製剤肝炎患者の話でカルテ保管期限を過ぎてからでも明細書があれば何を処方されたかわかるから良い。という話の流れでした。
医療機関側の1次資料が残っている期間ならともかく、医療機関側に何も残っていない状態でハンコも押してない「大昔の明細書」なんて持ち出したら水掛け論にならないのかなと思って見ていた訳です。

なあなあ 2010/04/07 01:26 今日行ったクリニックにも掲示がしてありました。基本発行、不要であれば発行しない、と。
受付の人が明細書と領収証のサンプルを見せてくれて、「当院の場合はほとんど領収証と同内容になりますが…」と説明してくれました。
「あ、いらないです。なんか大変ですねえ…」と言いつつ
1.いる
2.場合によってはいる
3.いらない
というようなことが書かれた用紙の3に丸して署名してきました。
患者としては、紙にデリケートな個人情報書かれたものがやたら増やされるのはかえって迷惑です。

luckdragon2009luckdragon2009 2010/04/07 01:29 うーむ。
患者が改竄するかも、とかいう視点はないのかねえ。
証拠ってのは相互に存在して、拮抗していた状態が、争い、といるのであって、片方にしかない証拠ってのは、言ったもん勝ちだよ。

民事訴訟の場合なんかは、片方書証だと、片方の言い分が一方的に通っちゃうし。

だから、記録に残しなさい、とは言うけど、それは片方が残さない状態なら、争点にするのはアンフェア。

もちろん裁判で勝つためにやることはあるでしょうけど、アンフェア。

luckdragon2009luckdragon2009 2010/04/07 01:32 あ、間に入ってしまいましたが、私のは Santaさんの意見に関するコメントです。

裁判に、片方書証で使う想定にすると、アンフェア、という事ですね。

luckdragon2009luckdragon2009 2010/04/07 02:41 実際には改竄すれば、私文書偽造罪ですし、一方に文書あっても、どこかに診療の記録自体は記録されていると思いますので、実務上の問題は生じにくいと思いますが、現場の鬱陶しさは、ある意味、いやーんな感じですよね。
> レセプト並みの明細書

DrPoohDrPooh 2010/04/07 05:46 カルテの法定保管期間が過ぎたあとに証拠になるという話ですね。上でも書きましたが,無過失補償に活用するという話ならいいことだとは思いますけど…。

rijinrijin 2010/04/07 21:02 > 「大昔の明細書」

 誰も取ってませんって。

DrPoohDrPooh 2010/04/07 22:41 15年前にうちで出してもらったという薬を持参して「これと同じのを出してくれ」と言われたことはあります。散薬だったので何の薬かは分かりませんでしたが…。

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